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9-15.ボルエナンの秘密

デスマーチからはじまる異世界狂想曲( Web版 ) — ncode.syosetu.com · All chapters

9-15.ボルエナンの秘密

※8/25 誤字修正しました。

サトゥーです。初めてサセボのホームテンボスに行った時は、その異国情緒あふれるテーマパークに驚いたものです。昼間にオランダの民族衣装を着ていたお姉さんたちが、夜中の居酒屋でTシャツにGパン姿なのを見かけた時は、少しショックでした。

◇

どこまで行くつもりなんだ?

「この先」

エルフ達の自然に溶け込んだ町並みを眺めながら、ミーアの後ろを付いていく。

「こっち」

ミーアが手招きしているのは、色とりどりのキノコを丸く輪を描くように植えてある広場だ。輪は同心円で二重になっている。

AR表示には「 妖精の環 ( フェアリーリング ) 」と表示されている。

「これは何だい?」

「環」

何かの儀式をする場所なのかな? 婚姻とかじゃない事を祈ろう。

「 転移 ( リロケート ) 」

ミーアの合図で2つのキノコの輪が交互に点滅する。どこに転移するのかわからないが、ミーアのする事だから悪い事じゃないだろう。

光の点滅速度が上がるほどに地面から噴出す光が強くなる。交互点滅が終わった時、転移が発動した。

次の瞬間、オレ達は、平屋の家が規則正しく建つ町並みを見下ろす丘の上にいた。

上を見上げると、木の枝のようなものに支えられた透明な天蓋がある。町全体を覆うようなサイズだ。

地下なのか?

「本当の街」

ミーアに手を引かれるままに、少し離れた場所にある路面電車のホームのような場所に行く。その駅のような場所には、術理魔法の 自走する板 《 フローティング・ボード 》 の様な板が浮かんでいた。板は透明だが、色が付いているから術理魔法のとは少し違うみたいだ。

オレ達がホームに着くのに少し遅れて、板に乗った青年が到着した。見た目は少年なんだが、似合わないヒゲを生やしているので青年としてみた。む、昔のトラウマが――似合わなくたっていいじゃないか。

「おかえり、ミーア。もう連れてきちゃったのかい? やあ、ボクはツトレイーヤ。ツーヤと呼んでほしい。ボクも100年ほど前までは人族の国に留学していたんだ」

その青年が、オレに気さくに話しかけてくる。

彼が言うには、先ほどまでオレ達がいたのは、来客用に演出された「いかにも」エルフらしい街として建造されたモノなのだそうだ。

来客用の演出と言っても悪意ある詐欺のためのものではなく、あくまで客を歓迎しもてなす為のモノらしい。なんでも、400年ほど前に、戦いに疲れ、この地で余生を送ったサガ勇者が主導して作ったという話だ。

青年の話が長いのにムクレたミーアが手を引っ張るので、青年に再会を約束してその場は失礼させてもらった。

ホームらしき場所に浮かぶ板に、ミーアが器用に飛び乗る。板は、少し沈んだ後、元の高さに復元した。彼女の勧めるままに横にあった同じ板に飛び乗る。彼女の告げる番地のような番号を受けて、板が走り出す。オレの乗る板は何も言っていないのに、その後をついていく。

家々は、どれも200坪ほどの敷地に、白い樹脂のような素材を外壁に使ったスレート葺きの屋根の家だ。もっとも壁には蔦が覆っているので、外壁の色が見えている場所はわずかだ。家を区切るのは 塀 ( へい ) ではなく生垣や花壇だ。どちらかというと花壇が優勢みたいだ。

しかし、誰もいないな。

みんな、上の町で宴会に参加中なのだろうか?

板は、オレ達を乗せて時速20キロほどの速さで、街を滑るように飛んでいく。道路はアスファルトというかハードコートのテニス場の地面みたいというか、茶色の細かいビーズのような小石を固めたような感じの素材でできている。

ミーアに聞いてみたが、興味がなかったのか、「知らない」と言われてしまった。物知りっぽかったし、ツーヤ青年に再会したときに尋ねてみよう。

そして、一軒の家の前で、緩やかに板が止まる。板は、静かに地面に降下し、そのまま地面に吸い込まれるようにして消えた。

◇

ミーアに案内されて来た家は、ファンタジーというよりは近代建築の方が近い印象を受ける。

何がそうさせるのかは、すぐに判った。

窓だ。

こちらの世界の窓は比較的小さな窓が多く、どれも木板で作られた換気や採光のために作られた穴だった。

だが、目の前のミーアの家は、透明度の高い大きなガラス窓やガラス戸が使われている。公都の屋敷の中にはオークガラスを使うものもあったが、ここまでタップリ使っていなかったし、大抵は嵌め殺しになっていた。ここのは、レールのある窓枠に嵌っているので、現代建築の家のようにスライド式に開閉するのだろう。

ミーアが入り口のドアに触れると、圧搾空気の漏れるような音がして、自動的にドアが開く。彼女に手を引かれて中に入ると、後ろで自動的にドアが閉まった。なかなかSFちっくだ。どうせなら、エアロックみたいに二重扉だったら面白かったのに。

廊下の天井は透けていて、天蓋の向こうの太陽が差し込んでいる。

だが、2つの硝子を透過しているせいか、その光は柔らかい。

ミーアに手を引かれるままに廊下を歩む。

さすがに廊下まで魔法の仕組みがあるわけではないようだ。

「ここ」

ここはミーアの部屋らしい。

ベッドが1つに机が1つ。ベッドの傍らにある作り付けの棚には、ペンギンのようなデフォルメされた鳥のヌイグルミが並んでいる。全体的に、淡いピンクの色調の部屋だ。観葉植物のようなものは無い。

これは部屋を見せたかったって事かな。

なんていうか、現代の女子中学生みたいな部屋だ。

「見ちゃダメ」

ミーアがウォークイン・クローゼットのような衣裳部屋に入っていった。

言われなくても覗いたりしないよ。

黙って出てきてしまったので、「 遠話 ( テレフォン ) 」の魔法を使ってアリサに連絡を取る。

「ふぁい、こひらアリサちゃんれすよ~」

「すまない、間違えた」

明らかに酔いを感じるアリサの言葉に、そっと「 遠話 ( テレフォン ) 」の魔法を解除する。今度はリザに向けて「 遠話 ( テレフォン ) 」を発動するが、返答はなかった。寝ているようだ。最後にミーア母に繋いで、家にお邪魔している事を伝えておいた。

その日は、夜半過ぎまでミーアのファッションショーに付き合う事になった。いかにもな緑の三角帽付きのエルフの民族衣装や、ワンピースのような服、七分丈のパンツに短めのスカートを合わせたような衣装など、思ったよりも豊富なバリエーションだった。

そのまま疲れて眠くなってしまった彼女をベッドに寝かせ、オレもその横で添い寝して眠ってしまった。

言い訳させてもらうと、昨晩は黒竜との対決や徹夜の飲み会で疲れていたんだ。

オレは夢も見ない泥のような眠りに、落ちた。

◇

「ギルティ オア ノットギルティ!」

「ぎるて~」

「ぎるてぃ、なのです!」

「ご主人さま、ぎるてぃです」

目が覚めた先には、眦を吊り上げたアリサに、ベッドに楽しそうにダイブしたポチとタマ、それから泣きそうな顔のルルの姿があった。ナナとリザも一緒だったが、2人は沈黙を守っている。いや、ナナが進み出て、アリサの肩に手を置いた。

「アリサ。小官はマスターを擁護します」

おお、弁護人が現れた。

いや、元から無罪なんだが。

「なによ、ナナは浮気を容認するの?」

「アリサ、よく聴いてください」

「言ってみなさいよぉ」

冷静に詰め寄るナナに、少し引くアリサ。

なんだろう、ナナが余計な事を言う気がして仕方ない。

「マスターとミーアは、種族が違います。交配を試みても子孫は生まれません。従って、浮気はありえません」

久々に見たナナのドヤ顔だが、予想通り、的外れな擁護だった。しかし、言外にオレがミーアと間違いを犯したと言っていないか?

「ミーア!」

うわ、ミーア父が来てしまった。

「あらあら、仲がいいのね」

「ん、相思相愛」

だから、恋愛感情は無いってば。

ミーア母は分かっていて楽しんでいるようだが、ミーア父は誤解したままだ。

ミーア父の誤解は、ミーア母が加勢してくれるまで解けなかった。いや、誤解が解けたというよりは、ミーア母のマシンガントークに溺れて有耶無耶になっただけという気もする。

ミーア母は、たっぷり喋った後に、本題に入った。

用事があったのなら、もっと早く切り出してください。

「さて、サトゥーさん、ミーアとの事は追々聞かせてもらうという事で、今日は、長老会の方へ顔をだしてくださらないかしら?」

噂のハイエルフに会えるかもしれないからな。

エルフ達を見る限り、ダイナマイトボディーは期待できそうにないけれど、普通じゃ会えないはずだから、ちょっと楽しみだ。

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