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2-10.悪魔の迷宮(3)

デスマーチからはじまる異世界狂想曲( Web版 ) — ncode.syosetu.com · All chapters

2-10.悪魔の迷宮(3)

※2018/6/11 誤字修正しました。

※2013/4/7 罠発見スキルを取得後すぐに有効化するように変更しました。

サトゥーです。早くもお日様の恋しい軟弱者のサトゥーです。

ゲームだとダンジョンもいいけど。

ジメジメした地下で、虫、虫、蛙、虫、ヘビと戦ってたらイヤになってきました。

◇

あれから6部屋くらい過ぎたが、未だに生きた人間には会っていない。遺体には何度か出会ったが……。

「ご主人さま、 魔核 ( コア ) の回収が終わりました」

「よし、小休止する」

水筒から一口水を飲んでリザたちにまわす。

いつのまにか『旦那さま』から『ご主人さま』に呼び方が変わってたな。そっちの方が呼びやすいみたいだから放置しておくか。

リザが水筒を取り落とす。

落ちた水筒から水が零れる……。

「も、申し訳ございません! ご主人様!!!」

リザが必死に水筒を拾う。手元が 覚束無 ( おぼつかな ) いようだ。

そういえば、さっきの戦いでポチとタマも投擲の命中率が悪かったな……。

「疲れたか?」

「申し訳ございません! 大切な水をこぼしてしまいました。いかようにも罰してください」

……大げさな。いや、リザは本気でそう思っているようだ。

「リザ、水はまた手に入れればいい。それより体調が悪いんじゃないか?」

「申し訳ございません……。先ほどから体が重く、思うように動かせません」

ポチとタマは水を飲む元気もないようで地面にヘタりこんでいる。

一応確認するが状態異常は無い。恐らく疲れだろう。

「小休止ではなく一旦、休憩にする」

ポチとタマを抱え上げて水を飲ませる。

甘芋揚げを3人に分配して食べさせる。3人とも眠気に負けそうな感じだが、お腹は減っているのか、食べさせている手まで齧りそうな勢いだ。

「食べ終わったら、3時間ほど眠れ」

ポチとタマはオレの足を枕にして寝ている。リザは少し離れた所で遠慮がちに丸まって眠りについた。

3人が寝ている間に彼女達のステータスを観察する。

10分毎に能力値が1ポイントずつくらい本来の値に近づいている。休憩し始めてから2時間ほどでグレーだったスキルが白く変わる。

スキルといえば、3人は何故レベルアップでスキルが増えたんだろう?

何かの行いですぐに覚えるわけじゃないんだろうか?

どうも睡眠中にレベルアップを体に反映しているような感じだ。

……まったく古典の迷宮名作のようだ。馬小屋以外だと老化しそうで怖いな。

◇

さらに幾つかの部屋を突破した。前の休息の時は3レベルほど上がった状態で限界に来たみたいだから、あと2部屋ほど突破したら休憩した方がいいな……。

「止まって!」

タマが間延びせず警告するのは珍しい。

でも前方に敵は居ないが?

「どうした?」

「地面が~変?」

疑問形で聞き返された。何かが変だが、何が変なのかはわからないと言ったところか? じっと見つめると、地面の質感が違う。色は同じなんだが……。

違いを目で理解するより前に、AR表示で「罠: 生命吸収 ( ドレイン ) 」と表示された。

そりゃ迷宮なんだし罠くらいあるよな。

ここまで罠が無かったので意識から消えていた。

「よくやったタマ。そこに罠がある」

「あい!」

タマの頭と猫耳を撫でてやる。

3人を下がらせてから、罠のある場所に石を投げてみたが発動しなかった。罠の名前から考えて生き物にしか反応しないんだろう。

発動範囲までは表示されないので、端を通って安全かは分からない。

獣娘の誰かに踏ませてみるのは論外だ。

この先の部屋にいるのはネズミの魔物だ、石を遠投して誘い出してみるか。

石を3個ほど連続で投げてみる。

「ネズミ来た」

ポチからの報告を受けて、3人を下がらせる。ここのネズミは10レベルと弱いが2~4匹の群れで行動するのだ。罠を突破するものもいるかもしれないので距離を取る。

罠よりかなり奥でネズミが黒い火花に捕まる。結果的に3匹のネズミは全て別々の罠にかかった。この通路には3つも罠がしかけられていたようだ。

>「罠解除スキルを得た」

>「罠利用スキルを得た」

>「罠発見スキルを得た」

罠が再使用可能なタイプかもしれないので 魔核 ( コア ) の回収をせずに先に進む。

罠発見スキルだけは直ぐにスキルポイントを割り当てて 有効化 ( アクティベート ) した。

◇

リザの渾身の突きが巨大蛙の口内に放たれる。左右から飛びついたポチとタマが短剣を蛙の頭に突き立てて止めを刺す。

「よし! 良くやった!」

「はい!」「あい!」「なのです!」

はじめて3人だけで魔物を仕留めたのを誉める。相手が単体のレベル10で特殊攻撃が舌での拘束のみだったので、試しにやらせてみたが結構余裕がありそうだった。やはり獣人の戦闘力は同じレベルの人族より高いのだろう。

この部屋は今までの部屋の3倍近い広さ高さがある。これだけ広いなら他にも敵がいそうなものだが他に敵影は無い。

部屋の端に家があった。正しくは縦に半分に切り取られた家だ。恐らく迷宮ができたときに巻き込まれた家だろう。残念ながらレーダーに人影は無い……。

リザが解体し、ポチとタマは出口を警戒している。今回はリザが解体当番か。スキルの事もあるのでローテーションで役目を交代させている。

「ポチ、タマ、あの家を調べに行くよ。ついておいで」

2人を連れて家に向かう。

家の中には生者も死者も居なかったが色々な物があった。どうやら富裕層の隠れ家的な家だったようだ。

儀礼用の小剣が2本、鑑定してみると意外にちゃんとした攻撃力がある実用的なものだった。ベタな事に壁掛けの絵の背後に隠し金庫があった。魔法短銃で鍵を撃ち抜いて中を確認する。金貨の入った袋と宝石の他に 竜鱗粉 ( ドラゴン・パウダー ) という名前の魔法の素材が小瓶に入っていた。持ち主は錬金術士か?

嵩張らない宝飾品は回収したが美術品など大きなものは放置した。

美術品の中に2つほど剥製の台座だけが置いてあった。どうでもいいが修繕中だったのだろうか? ファンタジー生物の剥製なら見てみたかった。

>「発掘スキルを得た」

>「宝物発見スキルを得た」

>「宝箱開錠スキルを得た」

台所に 点火魔具 ( テンダー・ロッド ) があった。魔法の品はコレだけだったが、フライパンと片手鍋、食器4人分は麻袋に入れて持っていく事にした。

水瓶から水を補充し、徳利くらいの素焼きの小瓶がたくさんあったので油を入れて即席の火炎瓶を作ってストレージに入れておく。

「こっち、チーズと干し肉!なのです~♪」

崩れた家具をどけると、そこには大きな黒パンの塊3つとチーズ、燻製肉の塊があった。AR表示で腐っていないのを確認してチーズと肉を一切れずつポチとタマに与える。

「残りはリザと一緒に食べよう」

「あい!」「はい! 美味しいのです~」

食料の入った袋はタマに武器や小物の入った袋はポチに持たせ、俺は水瓶とたらいを抱えて外に出た。

外に出ると 魔核 ( コア ) の回収は終わっていた。

「ご主人さま、お願いがあるのですが……。火を起こしたいのですがいいでしょうか?」

「地下で火? 理由はなんだい?」

リザは少し口ごもってから、

「そのう、その蛙の肉を焼いて食べたいな……と。すみません」

「謝らなくていいが、食えるのか?」

「はい、大丈夫です。昔、同じ系統の巨大蛙を解体して食べた事があります。内臓には毒があるのでそれを避ければ大丈夫です。ただ焼かないと中毒の危険があるので……」

地下だが空気は流れてるし、かなり上ってきたから酸欠の心配も無いか。

「よし、許可する」

リザがポチとタマに蛙の足の肉を解体してくるように指示して、自分は袋から木片と木屑を出して並べていく。なるほど、このために部屋で木片を見つけるたびに回収してたのか。

リザが火打石で火を点けようとするのを止めて、さっきの 点火魔具 ( テンダー・ロッド ) を使って火をつける。……チャッカ○ン?

リザに家から回収してきた調理器具と食器を渡す。

程なくポチとタマが足肉を頭上に掲げて持ってくる。

「肉~」「なのです~」

……なんだろう、さっきの燻製肉より嬉しそうだ。

リザは肉片を切り分けて、フライパンの上に並べて焼き始める。

やけた肉を木串に刺して、こちらに差し出してくる。

……食べなきゃダメ?

「ありがとうリザ」

覚悟を決めて食べる……鶏肉っぽい淡白な感じだが正直味が薄い。塩のみの味付けなら仕方ないか。家の中に調味料を探しに行くのも面倒だ。

オレが食べるのを見つめる3人。

そうか許可待ちか。

「見てないで食え。ちゃんと食って休養を取らないと迷宮脱出まで保たないぞ!」

許可を受けてポチとタマがフライパンの上の肉を食べ始める。リザも焼くだけでなく、ちゃんと食べているな。

オレはそれを横目に黒パンとチーズと燻製肉をもそもそと食べる。

それから30分ほど解体、焼く、食べるのサイクルを繰り返し、燃料が尽きたところで宴会は終了した。

リザの提案で、念のため1塊ほどの肉を布で包んで袋に入れておいた。

前と同じなら、あと2、3戦したら体調を崩しそうなので満腹の間に休息を取らせることにした。

3人に行水させ、新しい服に着替えさせ、毛布を与えて眠らせた。

戦いですぐ汚れるだろうが、清潔にして眠る方が気持ちいいだろ?

前回の引きで主人公が気がつかなかったのは「獣娘と主人公だとスキルの手に入るタイミングが違う」でした。

今回はまるっと迷宮でウロウロするだけでした。

予定では今回で出口まで行くはずだったんですが、迷宮編書くのが楽しくて……。

ちょっとテンポが悪くて申し訳ない~。