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9-30.害虫駆除作戦

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9-30.害虫駆除作戦

※9/8 誤字修正しました。

サトゥーです。好事魔多しと言います。一見順調な時ほど、何かを見落としているのです。ヒマな時こそ、見直しをするべきだと思うのです。

◇

「あ、サトゥーさん! お預かりしたカカシ7号ですが、正常にクラゲの検知をこなして、発見報告を『もーるす』信号で通知するところまで成功したそうです」

公都から帰ってきたオレを迎えたのは、ルーアさんのそんな報告だった。

プタの街でのちょっとした騒動に介入していたので、帰るのが遅くなってしまった。決して、綺麗なお姉さんのいる店で遊んでいたからではない。

カカシ3号までは自分で実験していたのだが、将来的に運用するジーアさんに任せた方がよいのではないかとルーアさんに提案されて方針を変えた。何より、実験の殆どがジーアさんの魔法頼りだったので、彼女に任せても実質的な作業に変わりが無いからだ。

カカシ7号は、ビーチボールに浮き輪を重ねたような形をしている。浮き輪にあたる部分が 魔力蓄積器 ( バッテリー ) で、ビーチボールの部分が本体だ。本体には賢者の石を核にした動力炉が組み込まれ、余剰魔力が魔力蓄積器に保管される。蓄積された魔力は、敵検知時の信号送信や軌道修正に使う予定だ。

ジーアさん達の詰めている展望台に、カカシと連動した警報器を設置する事でクラゲ検知は充分らしい。殲滅自体は、遠距離魔法が得意なエルフを常駐する事で対処する事になった。

ルーアさんから詳細な実験結果の入ったファイルを受け取って、一緒に樹上の家に向かう。

「ご主人さま、お帰りなのです!」

そこに、ポチが文字通り飛んできた。

「おかり~ みてみて~?」

タマも、踊るように宙返りしている。

2人は、御伽噺に出てくる妖精の様な格好をしている。羽妖精と同じような羽があり、それをパタパタと動かして飛んでいる。羽には魔力の流れを感じるので、魔法道具かエルフに飛行魔法を掛けてもらったのだろう。ポチのはトンボっぽい透明な羽で、タマのは黄色い蝶のような羽だ。

2人してオレの傍を飛びながらポーズを付けて「褒めて」オーラを出していたので、素直に褒める。

「2人とも可愛いよ。妖精さんみたいだ」

「えへへ~」

「嬉しいのです!」

ポチが「もっと褒めて」オーラを出してきたので、身もだえするまで褒めちぎった。もちろん、タマもだ。

満足した2人がオレの前まで飛んできて、それぞれ両手を差し出して一緒に飛ぼうと誘ってくれる。

せっかくなので空の散歩としゃれ込みますか。

二人が手を引いてくれるのに合わせて天駆で浮き上がる。ルーアさんに、先に上に行くと断ってから3人で空を舞った。

「この可愛い衣装は、誰に着せてもらったんだい?」

「アリサ~」

「アリサが、作ってくれたのです」

アリサが作ったのか、たしかにエルフ達の民族衣装とも違う感じだ。今度、ポチに先端に星飾りの付いた短杖を、タマには、先端に三日月の飾りが付いた短杖を作ってやろう。タマは可愛いらしい方が好きだから、やはりハートの方にしようかな?

「アーゼが魔法を掛けてくれたのです」

「アーゼえらい~」

「へ~、ちゃんとお礼は言ったかい?」

「あい!」

「はい、なのです!」

2人を楽しませてくれたお礼に、アイアリーゼさんにはプリンアラモードを作ってあげよう。前にミーアに作ってあげたやつを凄く羨ましそうに見ていたから喜ぶだろう。

「あなたの妖精、とってもかわいいアリサちゃん、登場!」

「登場」

寝ぼけた事を言いながら、新たにアリサとミーアが樹上の家から飛んできた。

ポチやタマと違い、こっちの2人は、シースルーの羽衣のような衣装を着たエロ可愛い衣装になっている。ナナやアイアリーゼさんならともかく、アリサやミーアだと特にHな気分にはならない。勿論、下着は普通に付けているので、大事なところはちゃんと隠れている。

「どう? 今晩くらい劣情に負けそうにならない?」

「ならない」

毎日一緒に風呂に入っているのに、今更半裸の格好を見たくらいで何を言う。子供達の教育に悪いので、デコピンでアリサを黙らせる。

アリサやミーアも交えて、しばし空のダンスを踊る。その姿がエルフ達の興味を惹いたのか、一人、また一人と楽しそうな曲を奏で始める。みんな即興なのに、よくこんな風にあわせられるモノだ。

バルコニーから羨ましそうに見ていたエプロン姿のルルとナナを「 理力の手 ( マジック・ハンド ) 」で持ち上げて、空のダンスに参加させてあげる。柱の陰から覗いていたリザに、参加するか目で問うたのだが、顔の前に両手を小さく上げてフルフルと首を横に振っていたので、武士の情けで見逃してあげる。そういえば、リザは空が苦手だったっけ。

ちらりと見えた樹上の家のリビングに、巨大ヒヨコのクッションに体を預けてへばっているアイアリーゼさんの姿が見えた。連日、クラゲ捕獲に魔法を使い続けているのに、ミーア達の「お願い」に負けて飛行魔法を人数分掛けたせいに違いない。陣中見舞いには、プリンよりも栄養ドリンクの方を持参しよう。

◇

「アーゼ様、大変です。ベリウナン氏族が、作戦を決行したそうです」

「ふごっ!」

ちょっと、ハイエルフ様、乙女なんだからその音は無いと思います。さっきまで美味しそうに食べていたプリンの欠片を、横にいたルーアさんに拭いてもらいながら、乱入してきたエルフさんに問い返す。この人の名前は何だっけ? そう、たしかジーアさんの姉のローアさんだ。

「結果は?!」

「成功だそうです。欠員なし。怪我人は、焦って世界樹を掴んで火傷を負ったうっかり者が一人いただけとの事です」

良かった、成功したんだ。

しかし、予定では何かあった時のフォローの為にも、このボルエナンの里が一番最初に駆除作戦を実行するはずだった。何か予定が変わったのだろうか?

「ふぁきにひろばひらになっれくれらんならよかっらひゃない」

アリサが、プリンアラモードに添えられていた桃を口にしながら、意味不明な言葉を吐き出している。まったく行儀の悪い。

「アリサ、口に物を入れたまま喋るのは止しなさい」

オレが注意するよりも早く、リザが注意してくれたのだが――

「ちゃんと味わってから喋りなさい。それは美味しい食事への冒涜です」

――注意するポイントが少し違ったみたいだ。

アリサは、リザに注意されたとおり咀嚼を終えてから喋りだす。

「先に人柱になってくれたんだから良かったじゃない。これで、秘密作戦も安全にできるんじゃない?」

アリサとリザには、アイアリーゼさんの許可を貰って話せる範囲で、クラゲの事を話してある。もちろん、この2人にも世界樹の役割や作戦失敗時の影響なんかの話は、許可してもらえなかったので話していない。

もっとも、アリサはオレと一緒に、エルフの長老さんからエーテル理論を色々教えてもらっていたし、エルフ達が料理の礼だと言って置いていった沢山の本を読んでいたので、自力で答えを見つけているような気もする。

「私達の予定は、変更なしです」

「わかりました。今日、明日の2日は予定通り最低限の監視員を残して、全員に休養を取らせます」

別人の様にキリっとしたアイアリーゼさんの言葉に、ローアさんが気合を滾らせて入ってきた時と同じ勢いで 妖精の環 ( フェアリーリング ) の方へ走っていた。元気な人だ。

◇

展望エリアには、500人強のエルフが集まっている。全員が30レベル超えの猛者ばかりだ。彼らは3交代で、10日も掛けてクラゲ達を睡眠薬で眠らせて、氷の檻に捕らえる作業を続けていた。

4隻の光船で、世界樹の外側にクラゲを吊り上げる班、アイアリーゼさんを筆頭に精霊魔法でクラゲを連行する班、最後は多脚戦車のようなゴーレム馬車に乗って枝の上を移動して風魔法や術理魔法でクラゲを虚空の彼方に打ち上げる班の3つに分けてある。

エルフたちだけで駆除できないと、数百年後とかにクラゲの被害が出た時に困るので、オレは員数外になっている。

もちろん、何かがあったときのために、ジーアさんの詰めている指令室に待機させてもらっている。

「さあ、ボルエナンの子供達! クラゲの檻作戦を始めるわよ! 慎重に楽しく、油断無くいきましょう!」

アイアリーゼさんが、 範囲遠話 ( マス・テレフォン ) で虚空のエルフ達に作戦開始を宣言する。司令塔からの指示は、通信魔法具で行うようだ。虚空で作業するエルフ達が持つ子機は、携帯電話サイズの小さなものだ。勇者ハヤトに貰った通信機よりも何倍も高性能みたいだ。

じれったくなるようなゆっくりとした動作で、クラゲの檻が少しずつ世界樹の外側へと移動を始める。

氷の檻に閉じ込める時にクラゲの脚を切っていなかったのか、檻を持ち上げるときに、クラゲの脚が世界樹に絡まって、幾本もの枝が折れてしまっている。

ここからは、ガラスの破片と言うか、霜が剥がれるようなキラキラした光が見える。

もったいない。

貧乏性なのか、重力に引かれて落ちていく世界樹の枝を見過ごせなかった。気が付いたら天駆と縮地を駆使して、可能なものをすべてストレージに回収した。

だが、結果的に、この少しみっともない行為が、多くのエルフ達の命を救うことになる。

静かな虚空が騒がしくなったのは、この少し後の事だ。

活動報告にポチSSをアップしてあります。良かったらご覧下さい。