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10-51.階層の主(2)

デスマーチからはじまる異世界狂想曲( Web版 ) — ncode.syosetu.com · All chapters

10-51.階層の主(2)

新年あけましておめでとうございます!

本年もデスマを、よろしくお願いいたします。

※アリサ視点です。

※2/11 誤字修正しました。

ポチの視力が回復するまでの間、わたしの火弾やナナの理槍で赤雷烏賊の目を狙う。

ダメね。 抵抗 ( レジスト ) されちゃって通じないや。

「ルル、砲撃でイカの目を狙えない?」

「イカさんは攻撃の時に体を捻るから、ちょっと狙えないかも。もうちょっと動きが止まってくれたら当てられると思うんだけど」

『ポチがやるのです!』

『タマもやるる~』

つなぎっぱなしにしている空間魔法の「 戦術輪話 ( タクティカル・トーク ) 」から、ポチとタマの元気な声が入ってきた。

へ? ポチ?

「ポチ、目は大丈夫?」

『ポーション飲んだら治ったのです!』

いや、普通は治らないわよ?

まあ、いいや。

「いける?」

「任せてなのです!」

「あい」

う~ん、赤雷烏賊の 脅威評価値 ( ヘイト ) が上がりすぎて盾役の砂の巨人からポチやタマにターゲットが移りそうで怖いけど。魅了の目さえ潰したら、なんとかなる、か。

よし、女は度胸っていうしね!

「じゃ、お願い」

「うけたまわり~」「なのです!」

ポチとタマがシュタッとシュピのポーズをそれぞれ取って、全力で小剣に魔力を集める。

「いちごあじ~?」

「ここはとっておきのジャーキー味なのです!」

2人が腰のポーチから取り出したMP回復ポーションを飲み下す。

うげっ、ビーフジャーキー味のポーションなんてよく飲むわね。

赤雷烏賊が何度目かの放電を終えたタイミングで、ポチとタマが突撃する。瞬動で急接近したポチが、大きな刃を生み出したオリハルコンの剣を赤雷烏賊の片目に突き立てた。痛みに赤雷烏賊が目を閉じる。

「まだまだ~、なのです!」

おお! 突き立てた状態から魔刃砲を打ち出して、片目を爆破か……可愛い顔してなかなかエグイ技を使うわね。

「じゃばらそ~ん、あんど~、どりる~」

反対側から接近したタマが、魔刃でコーティングした蛇腹剣を目玉に伸ばして突き刺す。今度は、蛇腹剣を短くする力に乗って自分を持ち上げてる。よく抜けないもんだと思ったけど、たしか先端からトゲがでるんだっけ。エグさではタマも一緒ね。

接近したタマが、もう片手の回転刃のオリハルコンの剣を突き立てる。ほんと、あんなネタ武器を本当に使いこなすなんて、ちみっ子は凄いわ。

おっと、範囲が来そう。

「ナナっ」

「ダイオウイカよ! 偉いと思うならホタルイカのように輝いてみせろ、と道破します!」

ああ、そんな挑発したら。

赤雷烏賊の表面がチカチカと瞬き、閃光がナナを襲う。

「すごいっ」

横でルルが息を呑む。

ナナを中心に十重二十重の魔法の盾や魔法壁が浮かんでナナを守っている。

発動したのを見るのは2回目だけど、ふざけた防御力だわ。

◇

敵の体力を半分ほど削ったところで、リザが勝負にでる。

「ポチ、タマ、連携を行きますよ」

「あいあい~」

「らじゃなのです!」

おお! コンボ技ね!

「一の太刀なのです! 魔刃突貫 ( ヴォーパルランス ) !」

真っ赤に全身を光らせたポチが瞬動付きで突撃する。

犬娘突撃でいいじゃん。

「二の太刀~? 魔刃双牙 ( バンキッシュ・ファング ) 」

タマが、両手の小剣から巨大な牙のような刃を生み出す。それを手に突撃したタマが、コマの様に体を回転させながら、交互に剣を突き立て噛み跡のような傷を穿っていく。

赤雷烏賊が、苦し紛れの触手を叩き付けてくるが、タマは華麗にそれを避けていく。

そんな紙一重でアクロバティックに避けなくていいから! そういうのは仮面のアサシンにでも任せておきなさい!

「三の技。 魔槍竜退撃 ( ドラグ・バスター ) !」

ポチとタマの攻撃で体の表面にあった防御膜を失っていた赤雷烏賊の背に、リザの魔槍の連撃が叩き込まれる。最後にくるりと体を回転させて、そのベクトルを乗せた一撃を突き立てる。その一撃は、連撃でズタズタになっていた体表を突き抜け深くえぐり込まれたみたいだ。

リザが、口に咥えていたMP回復ポーションを噛み砕き、飲み干す。

枯渇寸前の魔力がみるみる回復していく。まったく上級ポーションなみの回復量よね。

「絶の技。魔刃爆裂」

赤雷烏賊の体の奥で赤い光が幾つも瞬くのが見えた。

内側から表皮を破って赤い刃がそこかしこから顔を見せている。

触手がリザの左右から迫る。

「腕なのか足なのかはっきりしろと断罪します!」

身体強化をしたナナが、人外じみた速さでリザと触手の間に割り込んだ。

片方の触手を大盾で防ぎ、もう片方の触手を空中に浮かぶ魔法の盾で受け止める。

みんな、凄い。

これで赤雷烏賊の残体力は4割を切った。

◇

「アリサ、そろそろ」

「おっけー」

ミーアの操る流砂の巨人の体力が尽きて崩壊する。

そこに「 迷路 ( ラビリンス ) 」の呪文を使って時間を稼ぐ。せいぜい30秒も保てば良い方だけど、それで十分なのよね。

横でコクコクとMP回復ポーションを飲むミーアから、蜂蜜の匂いがする。この子は蜂蜜味か。みんな好き放題改良してもらってるわね。

崩れた砂を材料に、今度は流砂の蛇が産み出され赤雷烏賊を拘束する。

「ルル、準備して」

「うん、分かった」

魔法で皆のサポートをしていたルルに、砲撃準備を促す。

わたしも、空間魔法で赤雷烏賊を動かないように固定しよう。

ただし、狙いは赤雷烏賊じゃない。直接狙ったらレジストされちゃうもんね。

狙うのは、赤雷烏賊に絡みつく流砂の蛇の方だ。流砂の蛇を空間に固定し、間接的に赤雷烏賊を拘束する。

ポーチから、MP回復ポーションを取り出して一気に呷る。にがっ。

ルルの加速弾が当たったら、残り3割を切るはず。 暴走 ( スタンピード ) 状態に入る前に、ユニークスキル全開で「 空間消滅 ( ディスインテグレイト ) 」の大魔法を叩き込んで一気に止めをさしてやる。

ルルが、ポーチから滑腔砲を取り出して構える。

目で問うてくるルルに頷いて、GOサインを出した。

「照準完了。固定」

『イエスマイレディー、ディメンジョンパイル スタンバイ』

ルルの指令に、滑腔砲のサポート音声が応える。

不可視の次元杭が重たい滑腔砲の砲身を空中に固定する。

「仮想砲身展開」

『オーケー、ヴァーチャルバレル スプレッド』

滑腔砲の前方に20メートルほどの理力の砲身が展開される。

くぅ、燃えるわ!

「加速魔法陣、制限解除」

『アイアイマム、バッテリー フルチャージ』

滑腔砲の横に付いていた魔力筒から、魔法陣を生み出すための魔力が充填される。

あれ? いつも1目盛り分なのに、予備筒も含めて全部カラになってない?

『アクセラレーション オーバードライブ』

仮想砲身に沿って赤く光る魔法陣が展開されていく――って、何枚出す気だ!

あれ? 加速魔法陣って3枚じゃなかった?

100枚くらい出てない?

「準備完了! アリサ?」

準備が完了したルルが、タイミングを問うてきた。もちろんGOよ。

赤雷烏賊を指さして発射を指令する。

「 撃て ( てー ) !」

『イグニッション!』

ルルの細い指が引き金を絞り込み、砲弾が発射される。

バンだかドンだか聞き取れない程の爆音を残して、青い軌跡がルルの滑腔砲から撃ち出された。

え? 実体弾よね?

どうしてレーザーみたいなの?

うっは、一撃で赤雷烏賊の胴体に大穴が開いてる。

大穴の周りが内側にえぐり込むように陥没してて、赤雷烏賊の体が後ろに引っ張られていく。 終 ( つい ) には、固まった流砂の蛇に裂かれるように赤雷烏賊がズタズタの輪切りになってしまった。

げっ、延長線上の迷宮の壁面まで抉れてるじゃない!

そこに、我らがご主人様の暢気な声が耳に入ってきた。

「やっぱ、マッハ20は凄いね」

マッハ? 20って、音速の20倍って事?!

ちょっとは自重しなさいよ!

でも、驚きすぎて口からはあうあうとバカみたいな声しかでない。

「いや、レールガンがマッハ20って聞いたからさ、魔法で実現できないか追求したのが、あの滑腔砲なんだよ」

どうりでライフリングしないはずだわ。

「ありさ~」

「勝利のポーズするですよ!」

え? 今ので終わり?

うそっ? わたしの出番が。

あのユニークスキル、まだ使ってないんですけどっ。

ポチとタマに手を引かれて広場の真ん中に出現した宝箱の前で、勝利のポーズを取って記念撮影した。2枚目は、師匠達も集めて撮影する。

こうして、わたし達はミスリル証を手に入れた。

これで10章は終わりです。

最後の一行に込めたアリサのやるせなさをお楽しみください。

※年末年始の投稿予定については、活動報告をご覧ください。

18時以外に投稿する分は、活動報告で発表済みのものなので、ご注意を!