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幕間:お餅つき

デスマーチからはじまる異世界狂想曲( Web版 ) — ncode.syosetu.com · All chapters

幕間:お餅つき

※正月ネタです。

本日2度目の更新です。「10-51.階層の主(2)」を未読な方はご注意ください。

※1/2 一部改稿

※2/11 誤字修正しました。

サトゥーです。正月といえば、お節料理にお餅にお年玉でしょうか。初詣や年賀状なんかも正月の定番ですね。子供の頃はお年玉を握りしめてオモチャ屋にゲームを買いに走っていましたが、大人になってからは酒を飲んでごろごろとしていた記憶しかありません。シゴト? 正月ニシゴトナンテナイヨ?

◇

「アリサのほっぺはモチみたいに伸びるな」

「いふぁい、はんふぇーひふぇるから――」

薄いほっぺなのに、どうしてこんなにモチモチしてるんだろう。

「モチってなんなのです?」

「のびる~?」

ポチとタマがモチという言葉に目聡く反応して寄ってきた。

「モチっていうのはね――」

「あの、ご主人様、アリサへのお仕置きはその辺で……」

モチの説明をしようとしたところで、ルルが控えめに取りなしてきた。視線を下に下げるとアリサが涙目で見上げている。ごめん、忘れてた。

◇

さっそく杵と臼を用意し、餅米の準備をする。残念ながら、餅米は一晩ほど水に浸しておかないといけないので、いきなり餅つきはできない。

熟成を促進する魔法があるのに、餅米や豆を一晩浸ける手間を省略するような魔法が無いのは、魔法使い達の怠慢だと思う。

たぶん、水系だと思うので、今晩にでも何通りか試作してみよう。

ミーアは暗記がキライだから渋りそうだけど、美味しいお餅を食べさせた後に、餅を手軽に作るための魔法だと説得すれば進んで覚えてくれるに違いない。

餅の中に入れる小豆や黒豆も餅米同様、一晩ほど水に浸しておく。餡の類いは、前にムーノ巻きとかを作った時に量産してあるのだが、豆大福とかを作るのには使えないからね。

他にも思いつくままに具材の準備を進める。

定番の和菓子系だけじゃなく、チーズとかイチゴとかも用意するかな。

そうだ、この際だから色々と変なのも用意してみるか。

どんな具材が受けるか判らないからね。

◇

「ぺったん~」

「ペッタンなのです!」

オレが餅つきを始めるとポチとタマもやりたがったので交代した。

臼の傍で餅をひっくり返す役はナナが担当している。

「わたしも! ひっくり返すのやりたい!」

「いいよ、コレ付けてから交代しな」

アリサとミーアも興味津々だったので、薄い手袋を渡してやる。

「ん? なんで手袋?」

「ポチやタマの振る杵が当たったら手首が千切れるぞ? この手袋はルルが迷宮で使ってるのと同じだから、当たる前に魔法の小盾が出てガードしてくれるんだよ」

お餅が手にくっつかないのが装備する主目的なんだけど、これだけ脅せば慎重に作業してくれるだろう。

大怪我しても、治癒魔法で一瞬で治るんだけど、血の混ざったピンク色の餅とか食べたくないからね。

おっかなびっくりお餅を返すアリサやミーアを眺めながら、ルルと一緒にお餅を丸める。丸めるときに、先に作っておいた具材を入れていく。

屋敷付きの幼女メイド達も、餅を丸めるのを手伝ってくれている。

「あちちっ、よくルル様も旦那様も平気ですね」

「うふふ、冷たい水に手を浸してからやればいいんですよ」

「うう、手がべたべたする」

「こっちの粉を手にまぶしてからすればくっつきませんよ」

まあ熱いけど、フォージの中に手を入れるのと比べたらたいしたことはない。

ルルが適度に幼女メイド達をサポートしてくれているので、それを微笑ましく眺めながら作業を続けた。

「ぽちー!」

「たまぁ~」

「あちち、もちがもちがあーーーー」

「アリサ」

騒がしい悲鳴に振り向くと、餅をつくときに変なアクションを入れようとしたポチが何か失敗したようだ。どうやら、杵に付いていた餅が体に巻き付いてしまったようで、餅まみれになってしまったらしい。

その横では、伸びた餅を頭からかぶったアリサが、酷い事になっている。

ルルが「あらあら、まあまあ」と主婦っぽい言葉を呟きながら事態の収拾に向かってくれた。

火傷はミーアの水魔法で、汚れはルルの生活魔法で綺麗になったようだが、食べ物を扱っている時にうかつな事をしたポチと、それを唆したアリサの2人が正座してリザに説教されていた。

◇

大量の餅を、プレーン、甘味、主食、色モノの4種に分類しながら並べていく。

ちょっと作りすぎたかもしれない。

余った分は、孤児院や養成所に持っていけばいいか。

「んまい。やっぱ、つきたてのお餅ってサイコーね」

「のびるる~?」

「も、もちの人は手強いのです。口の上にくっついて~」

「おいし」

年少組は、つきたてのプレーンなお餅を堪能している。

「そうだ! やっぱ、餅は焼かないと!」

「いま、リザが道具を取りに行ってくれてるよ」

餅を片手に力説するアリサをなだめる。

「こっちのお餅は、具が入ってますよ」

「こし餡が入っているのです!」

「まめもおいし~?」

「ん、蜂蜜餅、美味し」

「ああ、焼き網が来る前に満腹になっちゃう――はちみつっ?!」

何か気になったのか、アリサが餅を食いながら目を剥いている。

蜂蜜餅は、餅を噛みしめると中からトロリと蜂蜜が出てくる。そのまま咀嚼すると餅に蜂蜜が絡んで意外と合うんだよね。ちょっと甘すぎるから、オレは1個で十分って感想だ。

「こっちのは角煮が入っているのです!」

「こっちは、てりやきちきん~」

「ん、カスタード」

おおむね好評のようだな。

おや? アリサがorzの格好で地面に突っ伏している。

胸焼けでもしたのか?

「どうした?」

「に、にっぽんの文化が魔改造されていく」

おおげさな。

食は進化していくモノなんだよ。

「保守的なアリサ向きなのが来たぞ」

リザが運んできてくれた、七輪もどきの魔法道具と金網を指さす。

さっそく復活したアリサが、金網の上に餅を並べて焼き始めた。

なぜか上手く膨らまないので、表面を魔法で乾燥させたり、その表面に切れ込みを付けたりと色々試行錯誤してみた。

「餅が生きているのです!」

「ぷくぷく~?」

「スライム?」

年少組が金網の上で膨らむ餅に釘付けだ。うん、苦労した甲斐があった。

平静を装っているが、リザもさっきから餅の動きを目で追っている。

そろそろ頃合いかな?

砂糖醤油を入れた皿をアリサに渡してやる。

「くぅ~ やっぱ、お餅はこの食べ方だよね~」

でも、保守的な砂糖醤油を付けた焼き餅や、磯辺焼きを楽しんでいるのは、オレとアリサだけのようで、他の面々はネタで用意した奇抜な餅の方が受けているようだ。

「ちーずのせ~中身がみーとそーす~?」

「こっちのお餅は、ハンバーグ先生が隠れていたのです!」

「キャラメル味」

「こちらのテリヤキマヨ味は素晴らしいです。噛むことによって餅にテリヤキの味が移り、違った食感の肉を食べているかのような――」

まあ、好評だからいいや。

きな粉餅を口に運びながら楽しそうな面々を愛でる。

そうだ、今度は草餅やずんだ餅なんかにもチャレンジしてみようかな。春の王国会議には桜餅とかいいかもしれない。

「おぜんざいの用意ができましたよ」

ぜんざいの入った鍋を抱えたルルが厨房から出てきた。

その後ろには食器を持った屋敷のメイド隊が続いている。

「ああ、甘辛いモチからぜんざいへのコンボは危険だわ! これで辛いのにつながったら無限コンボが来ちゃう! 幸せすぎて怖い!」

「もちこわい~」

「ぜんざいだって怖いのです!」

ルルとメイド隊をねぎらいながら、彼女たちの食べる餅を新たについてやる。

ぜんざいを食べながら、しきりに恐縮するミテルナ女史や、いつの間にか混ざっていたミーティア王女とその侍女が、ミーアの勧める甘味餅に目を丸くしたりと、楽しい時を過ごした。

パーティー終了後に、ナナは余った餅がたくさん入ったケースを抱えて、孤児院に慰問に行ってしまった。きっと、今頃、餅と幼生体にまみれているのだろう。

◇

後日、この餅パーティーの事を知った迷宮都市の知人達の所に、餅を配ることになってしまった。

迷宮都市での餅米の値段を知った幼女メイド達や孤児院の教師達が、顔を青くして卒倒しそうな一幕も。仕入れ値は安かったんですよ?

餅を食べた後におせち料理が食べたいとアリサにねだられたが、残念ながらレシピがさっぱり判らないので再現不能だった。

おせちを作る母や祖母の傍で味見をするのは得意だったんだけどね。

しまった! 雑煮ネタを入れ忘れた!

お餅ってバリエーション豊かですよね~

SSネタのつもりが普通に1話分の分量になってしまった……。

※1/2 お餅を焼くシーンを少し修正しました。

桜餅や草餅などの前振りを追加してあります。

※補足

孤児院建設後~フロアマスター討伐に出発までの間のお話です。

作中でも書いていますが、アリサのホッペを見てモチをつこうと考えたので、作内の時系列が正月のわけではありません。