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SS:はじめての炭酸

デスマーチからはじまる異世界狂想曲( Web版 ) — ncode.syosetu.com · All chapters

SS:はじめての炭酸

※再掲載SSです。新作は18時です。

半月近く休み無く働いていたので、今日はお休みにした。

オレは、中庭の木陰に、自作のデッキチェアを置いて惰眠を貪る。

それにしても、これだけ暑いと炭酸が飲みたくなる。たしか、炭酸水がそれなりに残っていたはずだ。ルルに頼んで、ポテチを揚げるように頼んで、飲み物の準備を始める。葡萄ジュースに炭酸を加えてスパークリングワイン風にしてみた。ちょっと甘みがたりない気がしたので、砂糖を追加投入する。

リザにも手伝ってもらって、皆が学習カードの遊び方を学んでいる場所に、ポテチと炭酸葡萄ジュースを差し入れた。

「しゅわしゅわり~?」

「甘くて美味しいのに、しゅわしゅわと弾けるのです!」

「くぅ~、久々の炭酸ね~ できればキョージュペッパーが飲みたいわ~」

単純に喜ぶ3人に、驚いて固まる子供達。驚いてゴブレットを放してしまった子もいたが、タマが器用にキャッチしてあげていた。

「はう、ぷちぷちする」

「?!」

「ひっく」

中にはシャックリが出て止まらない子もいたり、なかなか盛況だった。

「これは、葡萄山脈の特産品ではないですか?」

「よく知っているね。知り合いから貰ったんだよ。珍しいから、皆で楽しもうと思ってね」

ミテルナ女史は、小さい頃に先代のシーメン子爵に振舞ってもらった事があるとかで知っていた。彼女によると、炭酸水は迷宮都市では非常に高価らしい。このあたりでは産出しないうえに、炭酸が抜けないようにするには密閉するしかなく、運搬中の振動で密閉容器が破裂する事が多いので、めったに入荷しないそうだ。コップ1杯で金貨1枚くらいするらしい。その話を聞いていた子供達が固まっていたが、アリサが「飲まなくても、時間が経ったら、ただの水になるから飲みなさい」と言い聞かせてくれた。

ポテチと甘い炭酸水という組み合わせが合いすぎたのか、菓子皿は瞬く間に空になった。ポテチの粉を指で丹念に掬う子供達に、「また作ってあげるね」とルルが話していた。

後日、練成で簡単に炭酸が抽出できる事が判った。エールなどの酒が微炭酸だった事を思い出してからは早かった。当然、地元の錬金術士達も知っていたが、わざわざ炭酸を分離抽出する意味が無かったからしていなかっただけらしい。

あとは、炭酸を安価に取り出せるようになれば、新しい名物が産まれそうだ。

オレは、グラスの中で弾ける泡を見つめながら、そんな未来を空想する。

迷宮中層に炭酸水の湧き出る場所があるのを知ったのは、この1週間後の事だ。

※2013/10/23の活動報告に掲載したショートストーリーです。