LNCrawler

3-5.異世界の日本人

デスマーチからはじまる異世界狂想曲( Web版 ) — ncode.syosetu.com · All chapters

3-5.異世界の日本人

今回は幼女との会話のみです

※8/16 誤字修正しました。

サトゥーです。外国で日本人に会うと警戒心の薄れる典型的な日本人なサトゥーです。

同じ言葉が話せるとか、価値観の基本が近いと安心するのです。

◇

「正しくは橘亜里沙という日本人の記憶を無くさずにクボォーク王国に転生した元日本人ね。あなたも転生? いいえ、その黒髪からしたら勇者として召喚されたのかしら? 佐藤さん?」

AR表示される彼女の情報には元日本人だとか橘亜里沙という日本名は表示されていない。

オレのステータスにも日本人とか鈴木一郎とか書いてないから同じか。

「どうしたの黙っちゃって? わたしが会った日本人はあなたで2人目」

その言葉にオレの視線はもう一つのベッドで寝ているルルに行く。

「ルルは違うわよ? 会ったことないけど、あの娘の曽祖父が日本人だったそうよ。 隔世遺伝って残酷よね。 日本で生まれてたらアイドルにだって成れたのに」

「お前が精神魔法で「ちがうわよ」」

精神魔法で不細工だと思わせたのかと聞こうとしたが被せるように否定された。

「こっちの美的感覚だとノッペリした起伏の無い顔に薄い口唇、白くない肌、ちいさなお尻。好まれないポイントが巧みに集まってる感じなの。お陰で奴隷として買い手が付かなくて良かったけどね」

時代と場所で美人のタイプが変わると言うが……不運な。

「それで佐藤さんは転生者か召喚者かどちらなの?」

「それはどう区別するんだ?」

正直に話すか秘密にするか?

精神魔法で心を操ったり押し倒してくるようなヤツだが手がかりなのは間違い無いだろう。いざとなったら『他人に話すな』とか命令すればいいか。

「転生者は元の世界で事故とかで死んで、この世界に生まれ変わった人。召喚者は召喚魔法で無理矢理この世界に拉致られた人。勇者とかは召喚者ね」

偏見がたっぷり込められたセリフだが、オレはどちらに該当するんだろう?

「転生者は必ず赤ん坊からなのか?」

「物語だと成人した姿で転生とかあるけど、この世界だと赤ん坊からしか無いわ」

えらく断定するな。そう確認してみると。

「転生の時に神さまにそう言われたもの」

神に会ったのか? 日本でそんな事を言うヤツがいたら正気を疑うな。

「召喚者は元の姿で召喚されるのか? 服装とか持ち物とか容姿とか」

「召喚された人はその時に着ていた服装のままらしいわ。もちろん容姿もそのまま」

服装はそのままだったが、オレが若返ったのはどうしてだ?

「それは伝聞か?」

「サガ帝国の勇者様が言ってたから間違いないと思う。異世界から勇者を召喚できる国はサガ帝国だけだから」

ならサガ帝国へ行けば帰る方法も判るのかな? 後で忘れずに確認しよう。

「なるほど、だがオレはどちらでも無いな。仕事場で仮眠を取って、気がついたら荒野に立っていたからな」

「神さまには会わなかった?」

「会ってないな」

アリサは腕を組んで唸っている。そろそろ服を着せないと。

「それじゃ、この世界に来たとき召喚陣の中に出た?」

「いや、荒野に一人だけだ」

「なら最初から高レベルとか? 魔力が無限にあるとか? スキルがたくさんあるとか?」

「最初は1レベルだったし、魔力も10だった。スキルもなかったな」

……いや 特殊能力 ( アビリティ ) というのがあったか。流星雨とか。

「何ソレ、無理ゲーもいいところね?」

おっとオレが同情されたり、尋問されてどうする。

「オレの事よりお前の事だ。順番に持っているスキルを全部言っていけ。ギフトや 特殊能力 ( アビリティ ) なんかもだ。一応言っておく『命令』だ」

「命令しなくても答えるわよ」

「まずは精神魔法、レベル5よ。なかなかでしょう? 生後手に入ったスキルポイントは全部これにつぎ込んだわ」

変な気がして確認してみたらレベルアップ毎に手に入るスキルポイントは2~12ほどで平均7ポイント(彼女は2d6と表現していた)、必要なポイントは1固定ではなくスキル毎に違い、スキルレベルが上がるたびに必要量が増えていくらしい。

オレが特殊なのか、何か法則があるのか?

「 自己確認 ( セルフ・ステータス ) は、自分のステータスを確認するスキルよ。ヤマト石で見れるものより詳しいの。一番重要なのはレベルが上がったときのスキルポイント割り振りを自分で決められる事ね」

彼女の話だとスキルはポイントの許す限り一覧の中から自由に好きなモノが選べ、転生者や召喚者は必ず持っているスキルらしい。

オレにスキルを覚えやすい特殊能力があるのかと思ったら、実は劣化バージョンだったとは……。

一般人はレベルが上がる時に修行をしていた範囲のなかから一定確率で覚えるそうだ。

「 能力鑑定 ( ステータス・チェック ) は他人のステータスが見れるスキルなの。便利よ~。本当は 鑑定 ( アナライズ ) の方が良かったんだけど、転生特典ポイントが足りなかったのよね」

ヤマト石と同じ効果があるスキルらしい。

類似スキルに「 武器鑑定 ( ウェポン・チェック ) 」「 防具鑑定 ( アーマー・チェック ) 」「 宝石鑑定 ( ジェム・チェック ) 」「 貨幣鑑定 ( コイン・チェック ) 」「 植物鑑定 ( プラント・チェック ) 」などが色々あり、それらの包括スキルが「 鑑定 ( アナライズ ) 」なのだそうだ。

転生特典ポイントは転生するときに神さまがくれるものだと言っていた。

「 技能隠蔽 ( ハイド・スキル ) は自分の持ってるスキルを隠すスキルよ。一度使うと解除するまで 鑑定 ( アナライズ ) やヤマト石で調べても『スキルなし』に見えるの」

オレのAR表示だと「スキル不明」になったという事は 鑑定 ( アナライズ ) とは違う系統の能力なのだろうか?

「 宝物庫 ( アイテムボックス ) は名前の通り。ゲームとかでよくある収納庫ってヤツね。勇者達が標準で持ってる 無限収納 ( インベントリ ) と違って、収納数が有限だけど嵩張らないし重さもないし、便利よ~」

収納数を聞いたら100種類のアイテムで、同じ種類のアイテムなら100個まで重ねて持てるらしい。水のような不定形なモノは約1リットルで1個扱いになるそうだ。

オレのストレージはどちらかと言うと 無限収納 ( インベントリ ) に近い機能なのか?

そこまで言ってアリサが「ちょっと喉が渇いたわ」と言って芝居がかった動きで手を横に振り「アイテムボックス・オープン」と唱える。

彼女の前に平面の黒い穴が開き、その中に手を差し入れ中から水差しを取り出すと直接口をつけて飲む。その横顔が得意そうだ。

水を飲む仕草や口の端から零れた水が裸の胸を伝うのが年不相応にエロい。中身は何歳なんだコイツ?

「せめてコップを使え」というと取り出すのにも片付けるのにも魔力がいるから出し入れは最小限にしているとの回答が返ってきた。

ストレージとも少し違うな。飲み終わった水差しを戻そうとするので、戻す作業をやらせてもらった。なんというか薄ぼんやりと品物の見える黒い箱に品物を置くような感じだ。

>「 宝物庫 ( アイテムボックス ) スキルを得た」

ストレージの下位互換みたいなスキルは要らないんだが……。

それよりも残った「 不倒不屈 ( ネバー・ギブアップ ) 」と「 全力全開 ( オーバー・ブースト ) 」のどちらかの能力が300ものレベル差を越えて精神魔法を届かせたのかが知りたい。

「ふふふん、どうお買い得だったでしょ? これだけスキル持ってる奴隷なんてめったにいないんだから!」

「他には無いのか?」

「うっ」と口ごもり「もう、欲張りさんね~」と芝居がかった感じに外人みたいにお手上げポーズを取る。

頭にチョップを打っておく。

「乱暴反対! 他にはね、 固有 ( ユニーク ) スキルが2つあるの!」

凄いでしょ? とポーズを取るので乱暴に頭を撫でる。「髪がみだれる~」と言いながらも少し嬉しそうだ。

「この能力はルルも知らないわ。一つ目はね、 全力全開 ( オーバー・ブースト ) って言うの。全部の魔力やスタミナを消費して一撃の効果を何倍にも跳ね上げるのよ~。素敵でしょ? まさにヒロインのための能力よね~」

使い捨ての大砲みたいだな。

「もう一つはね、 不倒不屈 ( ネバー・ギブアップ ) 。どんな強敵が相手でも絶対諦めないための力よ! 具体的にはどんなにレベル差や防御力が高くても10%くらいの確率で魔法や攻撃が通るの! 凄いでしょ~」

「ただし3回までしか使えないの。使っても1ヶ月毎に1回分ずつ回復するんだけどね。ご主人さまに魔法がなかなか効かなかったから、ムキになって3回分全部使っちゃった」

オレに魔法を掛けるのに利用したのはこっちのスキルだろう。ログに「~の魔法に抵抗した」というのがたくさんあったから間違いないな。

やっかいなスキルだ。敵じゃなくて良かったと言うべきか?

これは後で聞いた話だが、このスキルの効果時間中でも、完全耐性を持つ相手には意味が無いらしい。例えば水魔法無効の水の大精霊に初級の 水弾 ( ウォータ・ショット ) を使ってもダメなのだそうだ。

◇

「幾つか確認したい事がある」

「どうぞ~」

「精神魔法を詠唱無しで使っていたがどうやったんだ?」

「ん~と、 自己確認 ( セルフ・ステータス ) の隠し機能なんだけど、一度覚えた魔法なら呪文の最後の 発動語句 ( コマンドワード ) を頭の中で読み上げるだけで使えるの」

期待して聞いてみたが覚えるには、やはり一度唱える必要があるらしい。裏技は無いのか……。

「もしかして魔法使えないの?」

「呪文の詠唱で躓いていてね……」

うん、嘘は吐いてない。2つほど使えるがあれはかなりイレギュラーだ。

「そうよね~ 私も最初に他の人の詠唱を聞いたときは諦めかけたもん。結局1年くらい掛かったわ」

「そうだなチャレンジを始めてまだ2日、実質2時間ほどだしな」

「なにそれ、短すぎ~。それで覚えられるなら魔法使いはもっと増えてるわよ」

寒くなってきたと言いながら抱きついてきたのを引き剥がし、ベッド脇に落ちていた服と掛け布団を押し付ける。

◇

「さっき聞きそびれた。お前が最初に会った日本人とは誰だ」

「お前じゃなくてアリサって呼んで欲しいな~」

「答えろ、アリサ」

アリサはわざとらしい溜めを入れてから言う。

「それはサガ帝国の勇者ハヤト・マサキよ」

ライバルっぽい人の名前がようやく登場。

サトゥーの動揺に上手く付け込んで襲った事実を有耶無耶にするアリサ。このまま逃げ切れるか?

アリサは結構重要な事を喋ってましたが、サトゥーはそれほど優秀じゃないので幾つも聞き逃しています。

主人公は日本人なのがバレたのに、バレた理由を聞くのを忘れるほど内心動揺しています。アイテムボックスの中身も確認してませんしね~。