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12-23.王都の魔法陣

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12-23.王都の魔法陣

※2014/10/24 誤字修正しました。

※2014/10/19 加筆修正しました。

※2014/10/20 後書きに人物紹介を追加

サトゥーです。花見をしながら食べる桜餅は格別です。熱い緑茶があれば文句なしですね。

でも、異世界には手を出すのが躊躇われる桜餅があるようです……。

◇

「アリサ! 『 戦術輪話 ( タクティカル・トーク ) 』の魔法を起動してくれ」

「おっけー!」

アリサが無詠唱で相互通信魔法を起動する。

オレはそれを待たずに、天駆で魔法陣に向けて飛翔した。

今日は何が出てくるか判らないので、ナナと同型のオリハルコン製の黄金の鎧を着込んでいる。銀仮面を付けたままでも装備できるが、カチャカチャ五月蝿いので仮面は外してある。

「オレはあの魔法陣を破壊しに行ってくるが、皆には王都の魔物退治を頼みたい」

「戦術輪話」を経由して、オレの言葉に皆が口々に承諾の言葉を返す。

それに耳を傾けながら、視界の半分を占めるマップで王都の魔物の状況を監視する。

――個別に倒すには多い。

雑魚はオレの方で一掃しよう。

範囲魔法やレーザーだと、地下道や家屋への被害が大きすぎる。

ここはやはり、小目標向けの魔法を使うべきだろう。

オレは術理魔法の「 誘導矢 ( リモート・アロー ) 」を使おうとして思い留まる。

あの赤縄模様の魔物達は、一瞬だけとはいえリザの槍を防いでみせた。あの防御膜を先に潰してから 止 ( とど ) めを刺した方が良いだろう。

オレは「 誘導気絶弾 ( リモート・スタン ) 」を起動する。

マップに次々現れるロックオン・マークを確認して、「 誘導気絶弾 ( リモート・スタン ) 」を一斉掃射する。

続けて、「 誘導矢 ( リモート・アロー ) 」を同じ目標に向けて発射する。

目論見は上手く当たったようで、赤縄の魔物達を示す光点が100ほど消えた。

魔法陣に到着するまでの10秒ほどの間に、それを20セット繰り返して路上の雑魚の殆どを始末した。

クラウソラスも十三の刃に分離して、魔物の除去に鋭意派遣中だ。

だが、屋内に出現した魔物は、さきほどのパターンでは倒せない。

それに、王都の魔物は次々湧いてくるようで、減った端から補充されている。

やはり、混乱を収めるには元凶を断たないといけないようだ。

オレは「戦術輪話」でアリサに声を掛ける。

「アリサ、指揮室の地図を見ろ。北西を左上にして、縦横を10分割してあるだろう?」

『ちょっと待って』

アリサの回答を待つ間、魔法陣の構成を読み解く。

性質 ( たち ) の悪い魔法陣だと、破壊される事をトリガーとした罠のような物があるので、いきなり力ずくで壊すわけにはいかないのだ。

『ええ、確認したわ』

「その枠に横軸にAからJ、縦軸に0から9を振れ」

通話の向こうで、ペンを片手に奮戦するアリサ達の声が聞こえる。

『……OK書いたわよ』

「じゃ、いくぞD3にタマを派遣。貴族の屋敷にトカゲ型の魔物が大量に侵入している。頼んだぞ、タマ」

『あいあいさ~』

タマの軽快な言葉を耳に、魔法陣の解析を続ける。

「今度はB1だ。大型の魔物が出ている。現在は騎士団が戦っているが、このまま戦線が拡大したら、孤児院に被害が――」

『アリサ、転送を。マスター、許可を』

「許可する」

平坦な言葉に焦りを滲ませたナナを下町に派遣する。

――よし、解析完了。

どうやら、王都の源泉から強制的に魔力を汲み上げて、王都に放出する仕組みらしい。

大掛かりなサイズの割りに単純な機能だ。

オレは「 魔法破壊 ( ブレイク・マジック ) 」を発動して、魔法陣を破壊する。

硝子のような破片と白光を残して、魔法陣が壊れた。

だが、王都に蓋をするように展開された巨大な魔法陣だ。

オレが一度に壊したのは、ほんの一部でしかない。連鎖的に数百メートルほどの範囲が壊れたが、魔法陣自体に補修機能があるのか壊れた端から勝手に復元を始めてしまった。

――やっかいだ。

オレに上級の「 連鎖魔法破壊 《 チェイン・ブレイク・マジック 》 」や「 魔法中和 ( ニュートラル・マジック ) 」があれば一発なのに。

◇

オレは雑魚の掃討を続けながら、うちの子達の派遣先を指示する。

みんなの頑張りのお陰で、王都の人的被害は抑えられているが、それでも死者が出ていないわけではない。

この混乱を少しでも早く片付ける為に、もう一度魔法陣の破壊を試みる。

今度は「 魔力強奪 ( マナドレイン ) 」と「 魔法破壊 ( ブレイク・マジック ) 」を連続起動してみる。

やはり、構成を砕かれた上に魔力を吸い上げられては、魔法陣の再生も働かないようだ。

後は全力で魔法陣を砕いて回ろう。

邪魔さえ入らなければカップラーメンができるよりも早く――。

――その思考がフラグだったかのように、危機感知が反応した。

地表から襲ってきた白光を閃駆で回避する。

閃駆の速さに置いていかれた自在盾が一枚、その白光に打ち砕かれてしまう。

獣娘達の必殺技でも一撃は耐える自在盾を一瞬でだ。

さっきの白光には見覚えがある。

黒竜ヘイロンの使う 竜の吐息 ( ドラゴンブレス ) の一撃にそっくりだ。

再び撃ちこまれた白光を自在盾二枚で防ぐ。

上手く自在盾の角度を付けて白光を逸らしたら、一枚だけでもなんとか防げるみたいだ。

相手が二発目を撃ってくれたおかげで、赤点で埋まるマップの中から、白光を撃った者を特定できた。

距離は400メートルほど。地表を高速で接近してくる。

驚いた事に、あれだけの威力の白光を使ったのに、相手のレベルはわずか30だ。

名前は「テンチャン」。大昔の漫画に出てくるエセ中国人のような名前をしている。

性別は女性で、種族はナナと同じ「ホムンクルス」。称号は「使い魔」となっていた。

認識阻害のアイテムを所持しているのか、鑑定とAR表示で表示される情報が異なるようだ。

そして街路の陰から飛び出してきたのは、背中にコウモリのような翼を生やした銀髪の美女だった。

黒いベールで顔の半分が隠れているが、きっと美人に違いない。

手には白い刀身の大剣を掴んでいる。

「魔族か魔王か知らぬが、王都に混乱を 齎 ( もたら ) した黒幕であろう。我が竜爪剣の露と消えよ」

「誤解――」

オレが最後まで言葉を紡ぐ前に襲ってきた大剣を、ストレージから取り出した聖剣デュランダルで受ける。

どうやら誤解しているだけで魔族に敵対する者のようなので、閃駆で避けたり、いつもみたいに掌打からの気絶コンボをせずに会話を試みる。

できれば雑魚排除要員に追加したい。

空を滑るように移動しながら、二合三合と剣を打ち合う。青い軌跡と刃の間から漏れる火花が王都の夜空を彩る。

どうやら、銀髪美女は察しが悪いらしい。

明らかに聖剣なのに、未だにオレが魔族だと思っているようだ。

「天ちゃ~ん、待ってよ~」

通りや建物をピョンピョンと飛び跳ねる黒髪の女性がこちらに向かってくる。

なんの冗談か、手に持っているのは箒のようだ。

――気のせいか、どこかで聞いた声だ。

「ミト! こいつは強敵だ。まだ孵化していないが、魔王になるのは時間の問題だ。私がひきつけている間に禁呪で始末しろ」

「え~、王都の中で禁呪なんか使ったら、どれだけ被害がでるか」

「甘いぞ! その甘さでどれだけのオーク達が犠牲になったか忘れたか!」

「ううっ、それは言わない約束だよぅ」

何やら取り込んでいるようなので、アリサ達に次の派遣場所を指示する。

クラウソラスが頑張っているが、増える速度が速すぎる。うちの子達も雑魚退治に回ってほしいところだが、あまり空間転移を使いすぎたら魔法薬の飲みすぎでアリサが倒れてしまう。

アリサ達後衛陣に装備させているディバイン・ドレスには魔力回復用の賢者の石が付いているが、それでも燃費の悪い空間魔法の消費量には追いつかないのだ。

内輪の話が終わったのか、ミトと呼ばれていた女性が「 立方体 ( キューブ ) 」の魔法で作り出した足場を使って、オレの前に上がってきた。

「そこのキミ! 固有スキルを遣いすぎると魔王に落ちるんだよ。だから――」

――オレを指差すポーズに見覚えがある。

「……ヒカル?」

「へっ?」

オレの呟きに反応したミトとやらに、閃駆で接近してデュランダルを一閃する。

テンチャンが横からミトのカバーにやってきたが、「 短気絶 ( ショート・スタン ) 」の弾幕で追い払う。

キャッと短い悲鳴を上げて両手で胸を掻き抱くミトを見つめる。

オレが斬ったのは顔を隠す認識遮断のベールだけだ。エロゲーの悪役みたいに服まで両断したりしない。

そこに現れたのは、ナナシと同じ顔。

正しくはナナシのモデルにした人物の顔とうりふたつ――いや、少し老けたか。

AR表示される彼女のステータスを眺めながら、確信を篭めて声を掛ける。

「王祖ヤマト――」

「なっ」

「――受け取れ」

絶句するミト――王祖ヤマトに、派遣先から帰還させたクラウソラスを投げ渡す。

もちろん、再契約し易いようにクラウソラスから魔力を抜いた後でだ。

「クラウソラス?! どうして?」

「理由は敵を倒してから話してやる」

オレはそうミトに告げて眼下を睥睨する。

さっきから、徐々に反応が強くなっていた危機感知の示す方向だ。

視線の先の貴族屋敷を崩しながら三体の魔族が現れた。それの内の一体は明らかに威圧感が違う。恐らく上級魔族だろう。

威圧感とは裏腹に、桃色の桜餅のような丸い魔族がぽよりと揺れた。

それを見下ろしながら、クラウソラスに魔力を注ぐミトに話かける。

「王祖ヤマト、魔法陣の解除と上級魔族の退治のどちらが得意だ」

「う~ん、聖杖も聖骸動甲冑もないから戦闘力は最盛期の半分くらいだよ」

ならば、思案するまでも無い。

王祖ヤマトの逸話がどこまで真実か判らないが、術理魔法の達人だったのは信じてもいいだろう。レベル89の実力を見せてもらおう。

「ならば魔法陣の解除を頼む。何度か試したが中級の魔術では破壊しきれなかった」

「ほい、任せて」

「ミト! こんな怪しい者の言葉に従うのか!」

「うん。だって、この人がその気なら私も天ちゃんも今頃生きてないよ?」

もしかして、ユイカみたいにオレの隠されたレベルとかを見抜いたのか?

さすがはヤマト石の作者といったところか。

ふよふよと桜餅もどきが浮かび上がってくる。

漫画だったら、この手のタイプは物理無効だったり、攻撃を反射してくる強敵だが、現実ではどうだろうか。

何の為にこんなに回りくどい事をしているのか聞いてみたいが、好奇心を優先できるほど状況に余裕は無い。

悪いが、クジラ達を始末した時の技で秒殺させてもらおう――。

※次回更新は 10/26(日) の予定です。

※2014/10/19 サトゥーの装備を書き忘れていたので加筆修正しました。

感想返しが止まっていてすみません。

月末くらいには書籍版の三巻の情報を出せそうです。

※一話使ってミトとナナシを対決させようと思ったのですが、こんな感じに落ち着きました。

●人物紹介(12-22と同じ内容ですが……)

【ミト】     ゼナ幕間に登場した女性。下級竜とケンカをして勝利した模様

【天ちゃん】   ゼナ幕間で名前だけ登場した人物。フジサン山脈に住むらしい。

【ユイカ】 迷宮下層でサトゥーと出会った多重人格の転生者。13種類の固有スキルを持つ。ゴブリンのお姫様。