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12-25.桜色の上級魔族(2)

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12-25.桜色の上級魔族(2)

※2014/11/5 誤字修正しました。

※2014/11/9 一部訂正しました。

サトゥーです。ゲームでは特定の手順を踏まないと倒せない敵というのが一頃流行りました。理不尽感が不評だったせいか、徐々に主流から外れ、最近では特定の手順を踏むと“早く”倒せる敵が増えたようです。

◇

『さあ、どうするポヨ? 普通の攻撃は通用しないポヨ。観念して固有スキルを使って攻撃してくるポヨ』

――ふむ。 固有 ( ユニーク ) スキルか

光魔法の「 幻影 ( イリュージョン ) 」で、アリサが固有スキルを使う時の紫色のエフェクトに似た映像を表示する。

『ようやく、その気になったポヨね』

「や、やめろ! 魔王になるつもりか!」

魔法陣を破壊する為の禁呪の詠唱を続けるミトの護衛をしていたテンチャンが、焦ったように叫ぶ。

――詠唱?

勇者でも禁呪は詠唱が必要なのか……。

オレは「 集光 ( コンデンス ) 」と「 光線 ( レーザー ) 」のコンボ魔法を叩き込む。

クジラを解体した時とは違い、桜餅魔族を食材にするほど悪趣味な事はしないので、縦横無尽の細切れにして「 火炎炉 ( フォージ ) 」で焼き尽くした。

さっきのエフェクトは、こちらの攻撃を避けさせない為のダミーだ。

反射とか魔法無効とかされると面倒なので、保険をかけてみた。

桜餅魔族はポヨと悲鳴を上げる間もなく退場したが、やはり簡単には終わってくれないらしく、先ほどと同じように半透明の姿で現れて復活を果した。

「そこの紫髪! 上級魔法ではなく禁呪を使え!」

『その程度じゃ無駄ポヨ。今日は魔力が溢れてるから復活し放題――』

最後まで言わせずに、先ほどの魔法コンボを繰り返す。

テンチャンがゴチャゴチャとアドバイスをしているが、無理なものは無理だ。

まったく、こんな事なら地下の禁書庫でアリサやミーアが使える禁呪を先にゲットしておくんだった。

『キョキョキョキョ、幾らでも復活――』

桜餅魔族が復活すると同時に、再び魔法コンボで沈める。

「なっ――」

テンチャンの方向から驚きの声が聞こえたが、構っているヒマは無いのでスルーする。

先ほどの攻撃の時に魔法の出始めが素通りしていた。

レトロゲームの再登場無敵時間のように、復活する瞬間は姿が見えていてもダメージが通らなかった。

先ほど魔力がどうとか言っていたので、周辺の魔力を「 魔力強奪 ( マナドレイン ) 」で吸収してから倒したり、再出現時や倒す寸前に「 魔法破壊 ( ブレイク・マジック ) 」を叩き込んだりしてみたが、結果は変わらずだった。

十回ほど繰り返してみたが、相手の復活は止まらない。

――魔法がダメなら、次は聖剣でいってみよう。

鋳造聖剣をストレージから取り出し、聖剣デュランダルに集めた魔力を注いで過剰供給寸前の状態にする。

まばゆい青光が鋳造聖剣から漏れ始める。

もちろん、さっきと同じ紫色のエフェクトも出して演出した。

『ほー? 聖剣の二刀流ポヨ?』

閃駆で桜餅魔族の足元に移動し、「 短気絶 ( ショート・スタン ) 」を全力で叩き込んで桜餅魔族を数十メートルほど浮かせる。

ポヨポヨと耳障りな悲鳴は無視して、縮地で桜餅魔族の真下に潜り込んで鋳造聖剣を真上に投擲した。

――まばゆい閃光が周囲を青く染める。

鋳造聖剣だった物は桜餅魔族を軽々と貫通し、上空の魔法陣を半径100メートルほど引きちぎって上空に消えた。

投げ始めた時点で崩壊していたから、本当の意味で消滅してしまったのだろう。

鋳造聖剣に貫かれた桜餅魔族は、一瞬だけ形を保っていたが、次の瞬間に幾つかの桜色の靄の輪っかに変わり、その後の爆風と共に宙に溶けて消えてしまった。

テンチャンの顎が外れそうになっているのが視界の隅に映る。

せっかくの美貌が台無しだ。

◇

『今のは驚かされたポヨ。さすがは神の力を分け与えられた卵だけはあるポヨ』

やっぱり復活したか――。

それと、今のは普通に人の力だ。固有スキルは使っていない。

さっきまで呆けていたテンチャンが、復活した桜餅魔族を見て勢いを取り戻す。

「何度やっても無駄だ! そんなに無茶な力の使い方をしたら、その内魔王に成ってしまうぞ!」

テンチャンの声に上空を見上げるが、ミトの詠唱はまだ折り返し地点といったところだ。

禁呪は長すぎる……。

――あれ?

禁呪には詠唱が必要だというなら、無詠唱で使える流星雨は上級魔法なのか?

あれより威力が上の魔法があるのか……まさに禁呪だな、世界が壊れそうだ。

そんな風に余計な事を考えて隙を見せたせいか、桜餅魔族が触手で攻撃してきた。

オレは空に逃げながらデュランダルで触手を切り裂く。

後追いで襲ってきた桜餅魔族の使う上級の術理魔法による攻撃を、デュランダルでまとめて斬り裂く。柱の様なサイズの魔法の矢を撃つ攻城用魔法だ。

術理魔法には他の系統に比べて強い範囲攻撃が無いから、周辺被害を恐れて空に逃げる必要は無かったかもしれない。

「ヤツを倒したいなら周辺空間ごと潰せ! さもなくばキサマが消耗するだけだぞ」

『そのハエの言う通りポヨ。これだけ魔力の溢れる空間なら、無限に再生できるポヨ』

テンチャンの叫びに桜餅魔族も余裕ぶった発言をしてきた。

だが、今の言葉で思いついた事がある。

オレは「 戦術輪話 ( タクティカル・トーク ) 」を通して話しかける。

「――アリサ、今の言葉を聞いていたか?」

『もっちのロンよ!』

アリサの言葉に脱力しかけるが、今は突っ込みを入れている場合でもない。

「来い、アリサ」

『おっけー!』

転移してきたアリサが、オレの横に並ぶ。

「よばれて飛び出てじゃんばらじゃんじゃんじゃん――」

「先に結界を構築しろ」

「ほいさ!」

馬鹿な登場セリフを途中で止めて、行動に移らせる。

アリサがエメラルドでできたような杖をシャキンッと構える。虚空で回収した世界樹の枝を使った物だ。

アリサの空間魔法が桜餅魔族を囲む円柱状の結界を作り出す。

『これは………ポヨ?』

桜餅魔族の驚きに構っている場合じゃない。

枯渇しかけのアリサの魔力を、「 魔力譲渡 ( トランスファー ) 」の魔法で補充してやる。

「ユニークスキルは禁止だ」

「えー? アリサちゃんの見せ場が……」

「普通の空間破壊を使え」

「ほーい」

アリサの杖が一瞬光り、上級空間魔法の「 空間破壊 ( スマッシャー ) 」が桜餅魔族に叩きつけられ――。

◇

――帰還転移、緊急発動。

瞬間的に発生した危機感知の反応に、オレはアリサを連れて屋敷へと転移した。

一瞬過ぎて詳細は判らなかったが、アリサの「 空間破壊 ( スマッシャー ) 」が桜餅魔族の防御壁を破壊した瞬間に、なんらかの反射系のスキルか魔法が発動したのを知覚した。

本気で負けそうな時の桜餅魔族の切り札だろう。

――やっかいな。

「な、何があったの?」

「たぶん、魔法反射だ。危うく自分達の魔法でやられるところだったよ」

アリサに魔力譲渡してやりながら、オレの見解を伝える。

前に「黄金の猪王」と戦った時に側近の上級魔族も使っていたから間違いないだろう。

上級の術理魔法に「 魔法反射 ( マジック・リフレクション ) 」というのがあったから、多分それだと思う。

格上の魔法は返せないらしいから、オレの魔法は大丈夫だと思うが、アリサやミーアの攻撃魔法が通じないのは痛い。

『マスター、上級魔族出没地点の隣接区画の住民の退避が完了しましたと報告します』

『完了~?』

『こっちも、完了なのです』

よし、これでもう少し威力のある攻撃も使える。

オレは 皆 ( みんな ) に労いの言葉を告げた後、皆の回収を指示して閃駆で戦場へと戻る。

オレがいない僅かの間に、桜餅魔族の攻撃対象はミトに変わっていた。

何本ものピンク色の触手がミトを襲う。

クラウソラスの自動攻撃とテンチャンが、辛うじてミトへの攻撃を防いでいる。

自動攻撃だと威力が低いのか、触手の軌道を逸らすのがやっとのようだ。

オレは閃駆で接近して触手をデュランダルで切り払い、桜餅魔族の攻撃の矢面に立った。

◇

――さて、次の手だ。

空間ごと潰せないなら、魔法の供給を断つ方を優先しよう。

ミトの呪文詠唱はしばらく終わらない。

オレは桜餅魔族の直上でヤツの攻撃を防ぎながら、マップを開いて探し物をする。

その間も王都に湧く雑魚魔物の始末をする為に「 誘導気絶弾 ( リモート・スタン ) 」と「 誘導矢 ( リモート・アロー ) 」を連射するのを忘れない。

17秒後にようやく発見した。

目標位置は、桜餅魔族の出現した場所の地下300メートルの地下空洞のような場所だ。

自由の光の構成員が十数名がいるようだ。

オレが求める物は、そいつらがいる中心地点にあった。

――聖杯。その状態は「混沌」。

オレは「 集光 ( コンデンス ) 」と「 光線 ( レーザー ) 」のコンボ魔法を撃ち込んで破壊しようかと考えたが、聖杯に魔力を充填するだけの結果になる予感がしたので取りやめた。

……もちろん、周りの人間も巻き込みそうだったのも、理由の一つだ。

オレは少し黙考して、決断する。

「リザ、上級魔族と戦ってみるか?」

『ご命令とあらば、勝利できずとも存分に闘ってみせましょう』

オレの言葉にリザが即答する。

「 皆 ( みんな ) はどうだい?」

『おふこーす』

『も、もちろん、戦うのです!』

『マスターの命令を受諾』

『愚問よね~』

『ん』

『が、頑張ります』

皆の答えを確認して、オレは作戦を伝える。

目的はあくまでオレが聖杯を破壊するまでの時間稼ぎだ。

ミーアの作る擬似精霊のベヒモスを使い捨ての盾にして、前衛陣によるヒットアンドアウェイによる攻撃を命じる。

「ルル、砲台の方は使えるか?」

『ダメです。“はんぐあっぷ”しちゃいました』

「ならばルルはアリサとミーアの護衛を頼む。魔族が潜んでいるかもしれないから充分注意するんだ」

『はい!』

オレは会話しつつも、桜餅魔族に「 短気絶 ( ショート・スタン ) 」を間断なく撃ち続けてヤツを地面にめり込ませ、周辺の地形を凹ませる。

これはヤツが上級魔法を使っても被害が上空に流れるようにする為だ。

「アリサは戦闘エリアの隔離に徹しろ。できればヤツが上級魔法を使おうとしたら結界魔法で阻止してくれ」

『難しい事言うわね。でも、任されたわ! ご主人様の お願い ( オーダー ) は確かに受け取ったわよ』

アリサの男前な発言で作戦がスタートした。

もう一度、桜餅魔族に「 爆裂 ( エクスプロージョン ) 」を叩き込んで、一度始末してから 皆 ( みんな ) と交代する。

「……■■ 魔獣王創造 ( クリエート・ベヒモス ) 」

戦場の端に陣取ったミーアが、象とカバの合いの子みたいな生き物を呼び出す。

こうして対象物のある場所だと、その巨体がよく判る。

「PUWAOOOOWWNNN!!」

ベヒモスが雄たけびを上げて桜餅魔族に突撃して、がっぷりと組み合う。

「 魔刃螺旋突撃 ( ヴォーパル・ストライク ) なのです!」

エチゴヤの屋上から「加速門」でカタパルト発射されてきたポチが、最初の一撃を桜餅魔族に与える。

桜餅魔族の防壁をガラスの薄膜のように砕いて突き破り、桜餅魔族の体表にめり込んで止まった。

続いてタマが「加速門」から打ち出されてくる。

――大丈夫、充分互角に戦えている。

桜餅魔族の防御力と再生力は優れているが、攻撃力は今まで対戦したどの上級魔族よりも低い。

オリハルコン製の黄金鎧に身を守られたうちの子達を害する事はできない。

ヤツにも隠し玉はあるだろうけど、ヤツがそれを使う前にオレが聖杯を破壊して戻るまでだ。

さっさと聖杯を破壊して、この戦いに終止符を打とう。

皆 ( みんな ) の晴れ舞台と、ルルの成人の祝いの為にも、今日中に片付けないとね!

※次回更新は 11/9(日) です。

※2014/11/2 ルルの成人式については9/13の活動報告にあるアリサSSをご覧下さい。そのうち本編側にも掲載します。

※2014/11/9 聖杯の傍の敵を訂正しました。百体の魔族はリストラされました。

●今回は新規登場キャラがいないので簡易人物紹介はありません。