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14-11.ガニーカ侯爵領

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14-11.ガニーカ侯爵領

※2015/11/7 誤字修正しました。

※2015/11/1 一部修正しました。

サトゥーです。破滅の前兆は意外なほど多いものです。ただ、破滅に直面するまで、多くの前兆は見逃されてしまうものなのでしょう。

◇

「ひもの~?」

「サッカーナばっかりなのです」

オレはタマとポチの二人を連れてガニーカ侯爵領の大きめの漁村の一つを訪れていた。

この村には昼食用の魚と山岳地帯の国に寄った時の贈り物に使えそうな物を物色しに来たのだ。

このガニーカ侯爵領は王都とオーユゴック公爵領を結ぶ空路の中間にある東西に長い領地で、領地の殆どが海に面している。

「商人様、商品の買い付けにゃ?」

魚を干す台の間を歩き、人の多い場所に向かっていると、妙な語尾の娘が声を掛けてきた。

タマと同じ猫人の娘だ。タマと違って毛並みと目付きが悪いが、こちらに悪感情は持っていないようだ。

貴族だと訂正するのも面倒なので、彼女の勘違いのまま話を進める事にした。

「やー、助かるにゃー。ここ半月ほどめちゃめちゃ魚が捕れて食べきれなくて、干し魚を作りまくっていたんだにゃ。なのにいつもの行商人が『領内のどの漁村でも豊漁で値がつかん』とか言って買い渋るから困ってたんだにゃ」

値段を聞いてみると、干し魚は王都の相場の5%程度と異様に安かったので、勧められるままに大人買いする事にした。

この娘がこの村の顔役らしく、娘が指示すると大柄な猫人や 鰓 ( えら ) 人が次々と荷を運んでくる。

「干し魚だけでいいのかにゃ? 干しアワビや綺麗な貝殻細工なんかもあるにゃよ?」

商魂たくましい猫人の娘が、単価の高い商品を売り込んできた。

貝殻細工は今一つ良い出来ではなかったが、未亡人や貧乏な家の子達の手仕事という話だったので、大した額でもないし纏め買いしてやる事にした。

内陸にあるエチゴヤ商会の支社で売らせれば良いだろう。

さらに漁師らしき鰓人が活きの良いサバのような青魚を売りに来たので、篭1つ分ほど買っておく。

一人から買うと、次々と漁師達が魚を売りに殺到してきた。

大漁だという話は本当らしい。

「タコ~?」

「迷宮の外のタコはちっちゃいのです」

海産物の中に交ざっていたタコを見たタマとポチが首を傾げる。

迷宮産の体長10メートル以上ある 迷宮蛸 ( ダンジョン・オクトパス ) と比べたら小さくて当たり前だ。

もっとも、それさえも外洋にいる 巨大蛸 ( クラーケン ) 系と比べたら小型に分類される。

そんなやりとりをしながらも、買い取った商品をタマとポチの二人が、魔法の鞄に詰めていく。

「しごと~しごと~」

「ポチもお仕事頑張るのです」

「魔法の鞄にゃ! さすがはお大尽様は違うのにゃ!」

その様子を見ていた猫人が騒ぐ。

王都の商人で持っている者は多かったが、漁村を回る行商人で持っているものはまずいないだろうから珍しいのだろう。

そこにボロを纏った猫人のお爺さんが現れた。

気のせいか、周りの人達の目が険しい。

「聞け! 皆の衆! この豊漁は深き海の底から海底人が襲ってくる予兆じゃ! 今の内に海辺を捨てて山に逃げるのじゃ!」

――海底人って。

そんな周囲の空気を読まず、お爺さんが海を睨み付けながら演説をする。

念の為、海をマップ検索してみたが、海底人というのはいなかった。もちろん、領外の海も検索してある。

魔物は大量にいたが、それはいつもの事なのでスルーした。

「ベムト爺さん、今はお客さんが来ているにゃ。寝言は家に帰って飼い犬にしてやる事にゃ」

猫人の娘がそう言い捨てると、周りの村人達もお爺さんを嘲笑する。

う~ん、こういう空気は嫌いだ。

猫人の娘に決済を促して、村人の興味をお爺さんからオレに誘導する。

「失礼、支払いは現金と宝石のどちらがいいかな?」

「もちろん、現金にゃ! 皆で分けられるように銅貨で払ってもらえると助かるにゃ」

これだけ大量に買ったのに銅貨73枚で済んでしまった。ここのところ金貨でしか買い物をしていなかったので変な感じだ。

積み上げた銅貨を見た村人達が、「今日は宴会だ!」と騒ぎ出す。

オレ達も誘われたが、お昼の用意があるので固辞した。

◇

さっきのお爺さんの言葉が気になったので、お昼の後でガニーカ侯爵領の外にある「帰還転移」ポイントに移動して「全マップ探査」を再実行したが、大陸棚辺りの海底に 深海豚鬼 ( シーオーク ) という初見の魔物が大量発生しているくらいしか新情報はなかった。

大陸棚に生息しているのに深海というネーミングはどうかと思うが、細かいことを気にしても仕方ない。

一応、 深海豚鬼 ( シーオーク ) を一匹だけ空間魔法で引き寄せて確認してみる。

この 深海豚鬼 ( シーオーク ) は手足がヒレになった豚で、額にカジキのようなツノがついている。平均レベル3で非常に弱い。デミゴブリンのように色々な亜種がいるようだ。

多少数が多いが、海棲の魔物に蹂躙される程度の強さなので、何十キロも強敵だらけの海を踏破して地上に攻め込む事はないだろう。

そうそういつも世界の危機が転がっているはずがないしね。

「おかえりなさいませ、旦那様」

「ただいま」

小型飛空艇に転移で戻ると、飛行服姿のブラウニーが迎えてくれた。

無人でも航行可能なのだが、普段の巡航時は希望するブラウニー達に交代で操船してもらっている。

この飛行服を着たブラウニーは、その中でも一番の飛空艇マニアで、お手製のゴーグルや飛行服を着て任務に当たっているそうだ。

しかも、快適な船内の艦橋ではなく、強風や日差しに晒される上甲板にある操舵席で操船するのが好きらしい。

ブラウニーが操舵に戻ったところで、後部甲板の防風魔法装置をオンにして、ストレージから取り出したビーチチェアに寝そべって、観光省の情報とマップで得た情報の確認を行なった。

このガニーカ侯爵領は東西に長い領地で全長1000キロ近い海岸線を有するが、居住エリアは非常に僅かで、4つの都市と7つの街、そしてそれらの周辺にある村々しか存在しない。

海岸沿いには40~50キロ毎に魔物が入らないように結界柱で守られた入り江があり、沿岸を航行する船の避難場所になっている。

この入り江で徴収した入港料がガニーカ侯爵領の収入源となっているそうだ。

マップで見た限りだと、領内の村の殆どはこの安全な入り江沿いに存在するみたいだ。

千里眼 ( エクストラ・クレアボヤンス ) の魔法で見た限りでは、豊漁は先ほどの村だけでなく領内の村や町で共通しているようだ。

なお、この「 千里眼 ( エクストラ・クレアボヤンス ) 」は「 遠見 ( クレアボヤンス ) 」の上位魔法で、マップ内であればどこにでも視線を飛ばす事ができる。

オレはエチゴヤ商会の支配人に 遠話 ( テレフォン ) の魔法で連絡を取る。

『はい、エルテリーナです』

「支配人、ガニーカ侯爵領の豊漁の話は知っているか?」

『――はい、存じております。侯爵領の支店から報告が届いています』

支配人の言葉を聞いてティファリーザから受け取っていた報告書を再チェックする。

確かに報告が来ていたが、例年より2割ほど豊漁と書かれてあった。

「前に貰った資料よりも、現地での漁獲量が急増しているようだ」

『支店に指示して買い付けを増やしますか?』

「ああ、保存可能な干物なら、従来の相場を超えない限り幾ら買っても構わん」

『承知いたしました』

話が早くて助かるが、捌く当てがあるのかとか、保管場所はどうするのか、などの確認がないのは少し寂しい。

買い集めた保存食は、内陸の領地や国に支店を出すときの目玉商品にすれば良いだろう。

◇

ガニーカ侯爵領の領都に到着した飛空艇を、次期侯爵を筆頭に領内の貴族達が出迎えてくれた。

これは偏にシスティーナ王女が同行しているからだろう。

できれば初めての都市なので皆と一緒に散策したいのだが、夕方の晩餐まではシスティーナ王女やセーラと共にガニーカ侯爵夫人主催のお茶会に参加する事になった。

贈り物にはいつものお菓子セットと魔法で作ったガラス工芸品各種を用意してある。

ガニーカ侯爵は船乗りでもあるとの事だったので、 大型帆 ( キャラベル ) 船のガラス模型も用意した。

実物をそのまま模したので、特に苦労はない。ガラスの剣よりは見栄えが良いだろうと思って選んだ。

「おお! これほどのガラス細工はオーユゴック公爵領でもお目に掛かった事がない。素晴らしい! 実に素晴らしい品だ! これほどの品への返礼は家宝の海王五叉矛か双海竜長杖でなければ釣り合わぬ」

ガニーカ侯爵はよほど気に入ったのか、奥方や家臣達が目をつり上げるような冗談で称賛してくれた。

観光省の情報によると、彼が言った海王五叉矛は海棲の魔物への特効に加え、広範囲に分布する海棲の魔物を怯ませる効果があるので、輸送船団の守護になくてはならない品なのだ。

双海竜長杖は水系の魔法の補助をしてくれる魔法の杖で、水魔法の禁術「 神威大津波 ( ディバイン・タイダル・ウェーブ ) 」のキーとしても用いられる。

ガニーカ侯爵領には禁術が使えるほどの術者がいないが、土地柄か水系の魔法使いが多いので侯爵領の魔術師達のあこがれの装備らしい。

「――あなた?」

「冗談に決まっておろう。子爵には我が末娘をやろう」

「侯爵閣下、ご冗談を余り重ねると、蛇の尾が竜の尾に変わると申しますよ?」

「システィーナ殿下は故事に詳しい。お前達も殿下を見習え――」

第一夫人にニッコリと釘を刺された侯爵が世迷い事を言い出したが、オレがいつものように断わる前に王女が先に対処してくれた。

侯爵が言ったお前達とは、この場にいる彼の縁戚の娘達の事だろう。

「子爵様、迷宮とはどのような場所なのですか?」

「殿下、王都で流行の楽曲とはどのような物があるのでしょう?」

「セーラ様、私も来年から神殿にご奉公に行くのです。神殿のお話を聞かせていただけませんか?」

侯爵が政務に戻ると、娘さん達から怒濤の質問攻めにあった。

大体は王女への質問なのだが、流行の楽曲や衣装、装飾品に興味のない王女がオレに話を振るので、お茶を飲むヒマもない。

娘さん達は皆楽しそうなのだが、一人だけ浮かない顔の少女がいる。

彼女は侯爵の娘ではなく、侯爵の姪にあたる伯爵令嬢だ。

一五歳にしては体格が良く、すっきりした目鼻立ちに肩で切りそろえた髪から、溌剌とした印象を受ける。レベルは10でスキルは「水魔法」「操船」「礼儀作法」を持っている。

「ネーレイナ様、甘い物はお嫌いでしたか?」

「いいえ、今まで味わった事の無いような素敵なお菓子でした」

件の伯爵令嬢に話題を振ってみたが、迷惑そうなニュアンスを感じたので、お茶会ではその辺りで話をやめておいた。

◇

晩餐後、男女に分かれてのサロンではガニーカ侯爵お勧めのラム酒や上級貴族達が持ち寄った自慢の銘酒を堪能させてもらった。この領地は呑兵衛貴族が多いようだ。

酔い覚ましにバルコニーで海からの風に当たっていると、聞き耳スキルが女性二人の会話を拾ってきた。

「ネーレイナ、本当に海の向こうから海底人が攻めてくるのでしょうか?」

「姫様……それは私にも分かりません」

どうやら伯爵令嬢のネーレイナと侯爵の長女が話しているようだ。

「ですが、家臣達に調べさせたところ、漁師達が普段見かけないような遠海の魚や魔物を見かけたという話を幾つも拾って参りました。さらに先月帰還するはずだったドンスデン男爵の船団も未だに戻りません」

「海の向こうで、何が起こっているのかしらね――」

焦りを感じるネーレイナ嬢の訴えに、侯爵長女はどこか他人事のように呟いて嘆息した。

ふむ、分布か……それは調べていなかったな。

マップで見てみたが、以前の情報を暗記しているわけではないのでよく分からない。

面白そうだし、ちょっと調べてみよう。

「――タマ」

「よんだ~?」

本当に来るとは思わなかった。

「晩ご飯は美味しかったかい?」

「ガニーカ・エビが美味しかった~」

ドレス姿のタマが笑みを浮かべる。

今日の晩餐にはオレや王女達だけではなく、獣娘達を含めた仲間全員が招かれていた。

「そうか、ちょっとしてほしい事があるんだけど――」

「なんくるないさ~?」

タマが姿を消してしばらくして、幾つかの人影がバルコニーに現れた。

タマに呼びに行ってもらったのは、リザ、ポチ、ナナ、そしてゼナさんの4人だ。

「楽しい夜会の最中に悪いんだけど、城下町の聞き込みを頼みたいんだ」

「承知しました、ご主人様。ご指示を」

オレの急なお願いをリザが快諾してくれた。

さきほどの会話の裏付けを取ってもらおうと思ったのだ。

「城下町、酒場の船乗りから情報を集めてきてほしい」

「承知いたしました」

「あいあい~」

「らじゃなのです」

「イエス、マスター」

「が、頑張ります!」

リザとゼナさん、ポチとナナの組み合わせで港近くにゲートを開いて調査に向かってもらう。

もちろん、地味な普段着に着替えてからだ。

荒くれ者のいる港沿いの酒場に送り出すのは気が引けたが、今のこの子達なら酔っ払いのセクハラくらい余裕で排除できるはずだ。やり過ぎにだけは気をつけてほしい。

「タマは~?」

「タマには特別任務だ」

「にんにん~」

忍者には忍者の仕事があるのだ。

「わたし達をおいてけぼりにしようったって、そうはいかないんだから!」

「ん、一緒」

タマが消えた後に、転移で現れたのはアリサとミーアだ。

「初めから、のけ者にする気はないよ。アリサはセーラと一緒にネーレイナ嬢から情報収集、ミーアはオレと一緒に書庫に侵入して古文書の調査だ」

侯爵から直接聞き取りを行なうのは、ある程度調べてからで良いだろう。

「え~、わたしもご主人様と一緒がいい」

「なら、セーラの聞き込みが終わったら『 遠話 ( テレフォン ) 』で声を掛けてくれたら呼び寄せるよ」

「しゃーないわね。アリサちゃんはいい女だから、それでオッケーしてあげるわ」

最後にパチンとウィンクしなかったら、少しはぐっときたのに……。

◇

「ミーアはそっちの鎖付きの本を頼む。オレは向こう側から順番に検索してみるよ」

「ん、了解」

暗い書庫に空間魔法で侵入したオレ達はさっそく調査を開始した。

ミーアには闇魔法の「暗視」を付与してやる。

マジメに本を読んで捜すのは面倒なので、棚単位で本をストレージに収納してから、文字検索で「海底人」「深淵」「災害」の三つのキーワードで捜していく。

こちらはハズレだったのか、半分に当たる棚10個分を調査してもそれらしき記述を見つけられなかった。

『ご主人様、聞き込み完了したわよ』

「分かった、こっちに呼び寄せる」

セーラはまだネーレイナ嬢や侯爵令嬢達と一緒だったのでアリサだけを呼び寄せる。

「セーラはまだネーたん達と話してるから置いてきたわよ。海底人ってのはノストラダムスの大予言みたいなニュアンスだったわね。侯爵令嬢の話だと侯爵家の歴史書には、海底人が本当に攻めてきたみたいな話はなかったそうよ」

なるほど、いわゆる末世論と同じようなものらしい。

城下町に聞き込みにいった4人の話でも、与太話の一つとして「海底人が攻めてくる」という噂が流布していたそうだ。

漁村の調査に向かっていたタマによると、沖合でしか見かけない魚が近海で獲れたり、強めの魔物が沿岸で暴れる事件が多いのは事実との事だった。

「あった」

ミーアがぽつりと呟く。

彼女の小さな指が押さえる場所には、確かに「海底人」の文字があった。

◇

「ねぇ、本当にいるの?」

「さあ、あの本に書かれてある事が本当ならいるかもね」

アリサの問いに肩を竦める。

ミーアが見つけた本にはこう書かれてあった――。

『天地開闢のような地揺れが続き、海が干上がり人々は手掴みで海の幸を得、地上で動けぬ海の魔物を倒して使い切れぬほどの魔核を手に入れた』

地震で潮が引くのは元の世界でもあった。

『その幸福も長くは続かず、干上がった海の彼方から、海底都市ネネリエの忌まわしき住民達が押し寄せてきた。住民達は海底人を名乗り、沿岸の漁村の人々を頭から囓り、喰らっていった』

津波の比喩な気もするけど、クトゥルフ神話に傾倒した転生者の残した創作話な気もする。

『だが、海底人達の暴虐も長くは続かなかった。神より授けられた海王五叉矛を操るガニーカ王によって海底人達は陸上から追い払われ、双海竜長杖を携えた王妃の魔法で深淵の彼方へ押し戻された』

昔はガニーカ侯爵領も独立した王国だったらしい。

これがRPGなら、海王五叉矛と双海竜長杖を見つけ出して危機を救うのだろうが、面倒なのでガニーカ侯爵に貸与を頼んでいない。

――そんな情報を得たオレは 深海豚鬼 ( シーオーク ) の群生地の上空に来ていた。

ミーアの見つけた本と同時期に書かれた本に、食い散らかされた 深海豚鬼 ( シーオーク ) の死骸が大量に海岸に打ち上げられる事件があったと書かれていたからだ。

ここには壮絶なジャンケン勝負を勝ち抜いたアリサしか連れてきていない。

「それじゃ、いってみよう」

オレは魔法欄から「 海裂き ( シー・ディバイド ) 」を実行する。

上級魔法にしては消費魔力が多い。

海水を押しのけて、半径数キロの垂直な穴が生まれた。

「うおおお、あんたはどっかの預言者か!」

びっくりしたアリサがオレの頭に抱きついてくる。

今日はセクハラする余裕もないようだ。

干上がった海底をピチピチと跳ねる 深海豚鬼 ( シーオーク ) の群れをスルーして天駆で移動する。

現在発動している「 海裂き ( シー・ディバイド ) 」の基点はオレになるので、オレの移動に合わせて干上がる範囲が移動していく。

たまにレベル三〇以上の美味しそうな魔物も転がっていたので、アリサの空間魔法で倒させた。

これならレベルアップの必要経験値が多いミーアを連れてくるべきだったかもしれない。

しばらく進むと海溝のような垂直の崖に出会った。

少し降りるとレーダーの有効範囲が狭まった。この海溝は別マップらしい。

魔法欄から全マップ探査をしてみたところ、海溝の底に「海底都市ネネリエ」というのがあるのが分かった。

しかも、都市内にはレベル10~40ほどの「 海底人 ( ネロイド ) 」という名前の魔物が何万匹もいるようだ。

その魔物の三割近くの状態が「飢餓」もしくは「飢え」になっていた。

もしかしたら、近い将来、この 海底人 ( ネロイド ) 達が 深海豚鬼 ( シーオーク ) の群れを襲い、逃げ惑う 深海豚鬼 ( シーオーク ) 達を追って沿岸部まで来たかもしれない。

だが、それは決して起こらない。

なぜなら――。

◇

「良かったわね、迷宮以外にレベリングできる場所が増えて」

「そうだな。アリサ達が戦うには弱いけど、ゼナさん達の訓練にはもってこいだろう」

空間魔法で完全隔離したので、 海底人 ( ネロイド ) 達が海底都市から逃げ出す事はできない。

一応、魔物でも「海底人」という名前だったので接触してみたが、オレ達を見るなり食い殺そうと襲ってきたので殲滅対象に変更した。

言語スキルも増えなかったし、会話も成立しなかったしね。

ゼナさん達のレベル上げついでに、海底都市の見物や探索もできてとってもお得だ。

途中でアリサが倒していた 深海豚鬼 ( シーオーク ) の残骸やストレージ内のマズイ蟲系魔物の死骸を投げ込んでおいたので、飢餓で全滅している事もないはずだ。

今日も世は事も無し――。

世界の危機なんて、そうそう転がっている訳がないのだ。

※次回更新は 11/8(日) の予定です。

次回は公都の人々との再会とルルの料理大会です。

※2015/11/1 海底人の描写を追加しました。