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14-12.オーユゴック公爵領(1)

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14-12.オーユゴック公爵領(1)

※2015/11/9 誤字修正しました。

※少し長いです。

サトゥーです。「永遠」とつく言葉は多いですね。「永遠の愛」なら良いのですが、「永遠の別れ」なんて言葉には近寄りたくないものです。

◇

「――優勝はルル・ワタリ! 奇跡の料理人の弟子ルル・ワタリ士爵が最優秀を勝ち取りました!」

司会に呼ばれて、緊張した面持ちのルルが壇上に上がる。

特別審査員席に座っているオレを係員が呼びに来た。

オレは優勝者へのトロフィー授与役だ。

なお、身内が出場しているので、オレは寸評だけで採点は行なっていない。

「よく頑張ったね、ルル。優勝おめでとう」

「はい、ありがとうございます!」

ルルがトロフィーを受け取ると会場から拍手が巻き起こる。

エチゴヤ商会が設置した超大型シアタービジョンがあるので、闘技場の客席からでも今のシーンがよく見えたはずだ。

試合中に美味しそうな料理を見せつけられたせいか、買い食いをしている観客が多い。

「続きまして、準優勝はエチゴヤ商会の料理人、ミスター・エックスです!」

黒いローブを身に纏い、包帯で肌を隠したうえにサングラスまで装備させてある。

この場で謎の料理人ミスター・エックスの正体を知るのはオレとアリサの二人だけだ。

「決勝でルル・ワタリに僅差で敗れたものの、それまでの戦いで圧勝してみせた彼の料理の腕はまさに奇跡! 優勝のルル・ワタリ士爵と共に切磋琢磨して、シガ王国の料理を未知の領域へ引き上げてくれる事を期待しています!」

司会がやけに熱い口調でミスター・エックスを讃える。

オレが先ほどのより小さいトロフィーを渡すと、観客席よりも審査員席の方から熱い拍手が巻き起こった。

オレや仲間達の舌に合わせて作ったルルよりも、審査員達の舌に合わせた味付けにしたミスター・エックスの方が彼らには高評価だったのだろう。

最後の決勝で、ルルがその事に気づかなかったら、彼女の優勝はなかったかも知れない。

「――あ、あの! ミスター・エックスさん」

「なんだ、ルル殿?」

トロフィーを受け取って壇上を去ろうとするミスター・エックスをルルが呼び止める。

「私の足りない所を教えてくれてありがとうございます!」

「ふん、気付いたのはキサマ自身だ」

「いいえ! あなたが『お前は誰に食べさせるつもりで作っている』と問いかけて下さらなかったら、私は間違ったまま、独りよがりな料理を作り続けていたかもしれません」

「それが解ればお前の料理はもっと美味くなる。次に会う日を楽しみにしているぞ」

「はい! 今度は負けません!」

片腕を上げて去っていくミスター・エックスに、優勝したルルが挑戦者のような宣言をしていた。

それを見送ってから、オレは三位以下の出場者に参加賞メダルと料理の寸評を伝える。

他の6人の料理人達の料理も美味しかったが、ルルの腕はその中でも際立っていた。

彼女が慢心しないようにとライバルを用意したのは間違っていなかったようだ。

「ルル! 優勝おめでとう!」

「おめ~」

「めでたいのです!」

「ん、偉い」

控え室に戻ったルルを仲間達が次々に祝福する。

そこにギュルギュルとお腹の音が鳴り響く。

リザの両手に抱えられているタマとポチの音が一番大きかったが、リザやカリナ嬢のお腹も鳴っていたのを聞き耳スキルが拾っていた。

「食べに行くのも遠いから、大会運営委員から調理器具を借りて何か作って食べようか?」

「「「わ~い」」」

「やった! なのです!」

よほど嬉しかったのか、タマが五人に分身してくるくると踊る。

そのうちの一体はリザの腕に抱えられたままだ。

忍者マンガにあるような影分身ではなく、魔法の一種に違いない。

オレもタマ先生に習って、本格的に忍者してみよう。

なお、仲間内で軽く昼食を取ろうとしただけなのに、なぜか会場を巻き込んだバーベキュー大会へと発展してしまった。

大会中に「消化補助」魔法薬を飲んで、大量の料理を食べていたオレはひたすら串を焼く係だったが、皆が喜んでいたので良しとしよう。

なお、ミスター・エックスことサトゥー人形を遠隔操作しながらの一人二役はなかなか大変だったので、ルルとの再戦までに別の方法を考えようと思う。

◇

「ルル・ワタリに『オーユゴック公爵領特級厨師』のノレンと副賞を授ける」

公爵城の式典で、ルルが公爵から祝辞と暖簾を授かっている。

これまで暖簾を入り口に掲げた店など見た事がないので、結納でスルメやコンブを贈るような縁起物の一種なのだろう。

ミスター・エックス先生は急病につき、エチゴヤ商会のオーユゴック支店長の幹部娘が代理で、緊張に顔を強ばらせながら、「オーユゴック公爵領一級厨師」の暖簾と副賞を受け取っていた。

後でクロになって労いの酒でもプレゼントしよう。

式典もつつがなく終わり、オレ達は城を辞去し貴族街の一角に来ていた。

「へー、ここがルルが貰ったお屋敷?」

「え、ええ……そうみたいね」

屋敷の前に止めた馬車から眺めるのは、優勝の副賞として受け取った大きな屋敷だ。

上級貴族の屋敷に比べたら小ぶりだが、下級貴族でも上の方、男爵級の貴族が住むような立派な建物だった。

場所的には下級貴族街に位置するが、貴族専用港と公爵城を結ぶ大通りに面しているので、かなりの好立地だ。

「お待たせいたしました、ペンドラゴン子爵様。すぐに門を開けるのでしばしお待ち下さい」

屋敷から駆け寄ってきた執事が、オレにそう声を掛けて門を開く。

見覚えのある彼は、前にウォルゴック伯爵邸に滞在していた時に離れの屋敷を統轄していた執事さんだ。

たぶん、公都のウォルゴック前伯爵が手配してくれたのだろう。

屋敷の入り口前のロータリーには、30人ほどのメイド達が整列している。

素晴らしい事に全員メイド服だ。

ようやくシガ王国にも浸透し始めたらしい。

「「「お帰りなさいませ、旦那様」」」

馬車から降りたオレに、メイド達が一斉に頭を下げる。

AR表示によると彼女達は、ロイド侯とホーエン伯が派遣してくれた使用人らしい。

「この館の主人は私ではなく、こちらのワタリ士爵ですよ?」

「こ、これは失礼しました」

オレの指摘に執事が詫びて頭を下げる。

情報伝達に齟齬があったらしい。

屋敷の中は掃除がされているだけでなく、上級貴族の屋敷にあるような立派な調度品が既に用意されていた。

しかも――。

「凄いです! 調理用の魔法道具まで完備されています」

「ホーエン伯爵の魔法道具工房の職人達が腕を競った品でございます。ご愛用くださると主人も喜びます」

新品の魔法道具を見て喜ぶルルに、ホーエン伯爵家から派遣されたベテランメイドが答える。

ここには常駐しないから、電子レンジや蒸気調理器やIHクッキングヒーターなんかは持ち込まないでおこう。

ルルは暖簾と一緒に貰ったミスリル合金製の包丁セットで料理をしたそうだったが、夕方からの晩餐会に呼ばれているので少し時間が無い。

未練そうな視線を厨房に向けていたルルだが、アリサに呼ばれて後ろ髪引かれるような顔でクローゼットルームにドレスアップに向かった。

◇

「さあ、お嬢様、お手をどうぞ」

「え、あの? 私がエスコートされていいんでしょうか?」

オレが差し出した手を、ルルが遠慮しながらも嬉しそうに掴む。

今日はルルが主役なので、遠慮は無用だ。

「ペンドラゴン卿がいらしたわ!」

「子爵様! 私の事をお覚えでしょうか?」

「サトゥー様! 私と踊って下さい」

会場に入ると、見覚えのある公都のロリ令嬢達や見知らぬ年長の令嬢達が集まってきた。

こんなに人気な理由が不明だが、セーラと王女がガードしてくれたので、ルルのエスコートを中断せずに済んだ。

「こ、こんなに立派な舞踏会に私なんかが来て良かったんでしょうか?」

「大丈夫です。ゼナ様も他の令嬢達に負けないほど、お綺麗ですよ」

不安そうなゼナさんをリザがフォローしてくれている。

王城のパーティーの方が派手だった気もするが、奥ゆかしいゼナさんには誤差くらいの違いなのだろう。

早めに慣れるためにも、こういう機会にはもっと参加してもらうようにしよう。

「にくうみゃ~」

「こっちの肉も美味しいのです」

「カットフルーツ」

「ミーア! このフルーツがバラだと報告します」

「ん、綺麗」

タマ、ポチ、ミーア、ナナはカリナ嬢と一緒に料理に夢中だ。

「肉には、こちらのタレを掛けるみたいですわね」

「タレがこぼれる~?」

「こうやって外側にもう一枚肉を巻いてやれば漏れないのです」

「さすが、ポチですわ」

「ないす~」

楽しそうで何よりだ。

「ご存知ありませんでしたか? オリオン卿なら故郷に里帰りされていますよ」

見覚えのあった青年貴族に声を掛けて尋ねてみたところ、カリナ嬢の弟であるオリオン君はムーノ伯爵領に帰省中だと教えられた。

このところ飛空艇で移動ばかりだったから、ムーノ伯爵領からの手紙を受け取れていなかったようだ。

「サトゥー殿、東方の小国群の系図とか纏めておいたよ」

「助かります」

トルマが東方の小国群の情報が詰まった冊子を手渡してくれる。

軽く目を通したが、観光省の資料より重要人物の嗜好などの折衝に向いた情報が記載されていた。

この才能を外務省で生かせば出世できそうなのに……。

「サトゥー殿! 焼き肉大会に呼んでくれんとは酷いではないか!」

「しかりしかり! 家来に教えられて駆けつけた時には終わっていたのだぞ!」

いつもニコニコしているロイド侯とホーエン伯がすごい剣幕で詰め寄ってきた。

この二人も審査員として大量の料理を食べた後だったはずなのだが、それでも食べようという気力が残っていたとは思わなかった。

「申し訳ございません。お二人の胃腸を心配して、後日にしようと思い、秘密にしておりました」

「そ、そうか! さすがはサトゥー殿だ」

「う、うむ! 後日の焼き肉大会を楽しみにしておるぞ!」

焼き肉大会は決定なのか……二人とも胃腸が若いな。

その後、シーメン子爵やエムリン子爵、さらにウォルゴック前伯爵夫妻までが参加を表明して、焼き肉大会の規模がどんどん大きくなっていく。

明日軽くやるつもりだったのだが、招待客が増えすぎたので、二日後に公爵城の広場を借り切って行なう事になった。

料理以外の手配はロイド侯の家臣が代行してくれる事になったので、オレは必要な食材や道具を彼に伝えるだけで済みそうだ。

「巫女長様が?!」

パリオン神殿の司祭と話していたセーラが驚きの声を上げた。

青い顔でこちらに駆けてくるセーラの姿に、悪い予感が脳裏を過ぎった。

◇

「巫女長様!」

セーラと一緒に訪れたテニオン神殿で、オレ達二人は巫女長のいる聖域へと案内された。

王女を始めとした面々は応接間で待たされていたので、もしかしたら、セーラの婚約者か何かと誤解されているかもしれない。

「……セーラ、最期に会えて嬉しいわ……」

「最期なんて! 最期なんて、言わないでください……」

聖域で再会した巫女長は、力なく横たわっていた。

状態が「老衰」となっている。

「……ナナシさんも連れてきてくれたのね」

「いいえ、この方はサトゥーさんです」

「あの時の子ね……来て……」

巫女長の招きにオレもセーラの横に座る。

「……セーラをお願い」

巫女長が震える手で、セーラの手の上にオレの手を重ね、その上に自分の手を重ねる。

細く、軽い手だ……。

「……セーラ、あなたは運命に打ち勝ったの」

巫女長の瞳から光が失われていく。

「だから……幸せに、なり、なさい……」

「巫女長様!」

意識を失った巫女長にセーラが取り縋る。

「「「巫女長様!」」」

司祭達がセーラを下がらせて、巫女長に神聖魔法による治療を始める。

セーラも参加しようとしたが、神職にないものが参加すると聖域のブースト効果が下がるからと、参加を拒否された。

やがて高位司祭や神官、巫女達の尽力によって、容態が安定した事を確認して、オレ達は聖域を後にした。

セーラは残りたがっていたが、邪魔になりそうだったので連れて帰る。

なお、神殿には大量の魔力回復薬を提供しておいた。

◇

……寿命か。

セーラの髪を撫でながら、巫女長の容態に思いを馳せる。

先ほどまでオレに縋って泣いていたセーラも、泣き疲れて眠ってしまった。

軽く精神魔法の「安眠」をかけておく。これで明日まで休息をとれるだろう。

オレはナナシに変身して、テニオン神殿の聖域へと向かう。

巫女長の状態から「昏睡」が無くなったので、ナナシとして見舞う為だ。

神殿内はオレの支配領域にないので、ユニット配置ではなく、近くに移動してから天駆で侵入する。

当直の巫女が部屋にいたが、疲れて居眠りをしているようだったので、セーラと同様に「安眠」の魔法で眠らせておいた。

「……ナナシさん?」

月明かりの差し込む部屋に、巫女長の透明な声が響く。

「見舞いが遅れてすまない」

「いいの……あなたは来て下さったもの……」

こちらに差し伸ばす手を掴む。

「……天に召される時がきたの」

オレが否定の言葉を発する前に、巫女長が静かに首を小さく振る。

「いいのよ……自分の状態はよく分かっているわ……」

自分の経験の少なさが腹立たしい。

こんな時に気休めの言葉一つも出てこないなんて――。

「ねぇ、最期のお願いがあるの……仮面を取ってお顔を見せて……」

巫女長の頼みに応え、オレは白い仮面を外す。

「やっぱり、あなたがナナシさんだったのね……」

巫女長が消えてしまいそうな笑顔を浮かべる。

「セーラをお願い……」

昼の時と同じように巫女長の瞳から輝きが減じていく。

オレは当番の巫女に「覚醒」の魔法を使う。

「巫女長!」

「名前で呼んで……私はリリー……」

抱き上げて名を呼ぶが、巫女長は儚い笑みを浮かべて目を閉じる。

オレの腕の中で彼女の生命の波長が消えていく。

当番の巫女が慌てて高位の司祭達を呼びに行ったが、彼らも過労状態で倒れている。

彼らが来るまではオレがなんとか間を繋ごう。

「リリー!」

巫女長の名を呼びながら禁呪の「生命力譲渡」を使う。

ほんの少しだけ巫女長の体力減少が止まったが、すぐに減り始める。

オレは聖剣をストレージから取り出し、魔力の続く限り「生命力譲渡」を繰り返す。

魔力はともかく、「生命力譲渡」に必要な血玉が足りなくなりそうだ。

司祭達も急いでいるようだが、昼間よりも状態が悪い。

彼らが間に合ったところで、対処可能とも思えない。

ついに血玉がなくなった。

真祖バンの所に貰いに行っているヒマはない。

100……90……80、考えている間にも巫女長の命は尽きていく。

――マダだ!

オレは「生命力譲渡」のコードを開き、血玉ではなく上位素材である血珠を使えるように術式を改変する。

……70……60……。

酷使される脳が焼けるような痛みを訴えるが、聞いてやらん。

……50……40……。

できた!

だが、「生命力譲渡・改」を詠唱しているヒマはない。

オレは裏技を使う事にした。魔法欄に登録済みの「生命力譲渡」のコードを改良版で上書きする。

……30……20……。

先ほどに倍する痛みに気を失いそうになるが、なんとか持ちこたえる。

――「生命力譲渡・改」発動。

よし! 巫女長の体力低下が止まった。

何度も繰り返すことで、一定値まで押し戻せたが、このままだとさっきの二の舞が待っている。

血珠は血玉に比べたら沢山あるが、無限にあるわけではない。

何か、手は無いか……。

オレは記憶を手繰る。

なんでもいい、何かヒントがあれば……。

オレの顔に微かな感触があった。

巫女長が繊手を伸ばし、オレの頬に流れる涙を拭ってくれる。

「ナナシさん、ありがとう……もういいの」

意識を取り戻した巫女長が音にならない言葉を紡ぐ。

その目には光が戻らない。

「この……老いた体を……休ませてあげて……」

老いはどうしようもないのか……。

魔王を圧倒する力があっても、自然の摂理の前にはどうしようもないのか……。

ただ泣いて、奇跡を祈る事しかできないのか……。

――本当にそうか?

『奇跡を待つなんてダメよ。自分で起こさなきゃ!』

脳裏にお日様のように笑うアリサの顔が過ぎった。

そうだな、アリサ。

――奇跡を起こしてやる。

思い出せサトゥー。

オレにはまだ手段が残っているはずだ。

木や魚、そういった生命の創造ができるなら、人だって例外じゃないはず。

禁忌なんて知るものか。

――「 異界 ( アナザーワールド ) 」のソースコード展開。目的のコードを捜せ。

巫女長の命を「生命力譲渡・改」で維持している為に、解析が遅々として進まない。

泣き言を言うな、サトゥー。

安物のCPUでもできるのに、オレに並行処理ができないわけがない。

マルチコアが無理でも、マルチスレッドくらいしてみせろ。

普段のオレならあり得ないほどの無茶な思考で、処理を時分割していく。

>「 並列思考 ( スレッド・シンク ) 」スキルを得た。

>「 並列魔法行使 ( バックグラウンド・キャスト ) 」スキルを得た。

イージーモード万歳。

スキルを 有効化 ( アクティベート ) すると、処理が格段に楽になった。

――これなら間に合う!

聖剣の魔力が尽き、手に持っていた血珠が力を失い塵に変わる。

――それがどうした。

オレはストレージから予備を取り出して、治癒と設計を継続する。

備えあれば憂いなし。

意地悪なフラグをへし折り、オレはついに新魔法を完成させる。

「■■■■■ ■ …… ■ 『 生命遡航 ( ジェネレイト・ライフ ) 』」

巫女長の体が虹色の光に包まれる。

光に隠れて見えないが、AR表示される状態が「老衰、危篤」から「なし」に変わった。

「泣いているのナナシさん?」

光の中から涼やかな声が聞こえる。

光に包まれた手がオレの涙を拭う。

「巫女長様!」

一番足の速い司祭がようやく部屋へと飛び込んできた。

彼に少し遅れて、次々と神官や巫女達が駆け込んでくる。

巫女長を包む虹色の光に驚いているのか、皆一様に部屋の入り口で足を止めた。

白い仮面を付けて彼らに振り向く。

背後で虹色の光が消えていく。

「……巫女長、さま?」

呆気にとられたような表情の神殿長が、戸惑ったように疑問の声を上げた。

巫女長を振り返ってみれば、そこにはぶかぶかの寝具を纏った6歳ほどの幼女が戸惑った顔で頬に手を添えていた。

>称号「奇跡の行使者」を得た。

◇

「本当に巫女長様なのですか?」

「これで3度目ですよ、セーラ」

ロリ巫女長がセーラの驚く様子を楽しそうに見ている。

前に「蘇生の秘宝」で生き返ったセーラの時のように軽度の疲労状態になっているが、それ以外は極めて健康な状態だ。

「でも、どうして?」

「奇跡を賜ったのよ」

ロリ巫女長がこちらを見て、意味深に微笑む。

彼女が若返ったのは「神の奇跡」という事にしてある。

これまで以上にテニオン神に祈る信徒が増えるだろうから、テニオン神も文句は言ってこないはずだ。たぶん。

ここまで若返らせるつもりはなかったのだが、命の危機がなくなっただけで良しとしよう。

ロリ巫女長も「これならセーラの妹でも通用しそうね」と喜んでいた事だしね。

表向きは見習い巫女という形で、周囲にお披露目する事になっている。

なお、焼き肉大会にはロリ巫女長も楽しそうに参加していた事を追記しておく。

※次回更新は 11/15(日) の予定です。

次回はアシカ人族の子供達やドハル老のターンのはず!

※2015/11/9 ロリ巫女長の年齢と表情描写を変更しました。