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14-幕間3.サトゥーの研究(1)

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14-幕間3.サトゥーの研究(1)

※2016/5/16 誤字修正しました。

サトゥーです。世の中には研究に金がかかるというと首を傾げる人がいます。ペンと紙があれば研究できるとでも思っているんでしょうか?

◇

「こちらサトゥー。虚空探査機を回収しました」

『こちらベリウナン氏族のサーゼ。虚空探査機の再使用は可能か?』

「はい、エーテルドライブが凹んでいるだけで、魔素収集枝なんかは無事です」

ベリウナン氏族のハイエルフと遠距離でも 通信遅延 ( ラグ ) のない「 無限遠話 ( ワールド・フォン ) 」の魔法で話しながら、虚空探査機の修理を終える。

この虚空探査機はクラゲの巣を調査するために、ベリウナン氏族が主導で発進させたモノだ。

消息を絶った虚空探査機の調査を頼まれて、閃駆と目視ユニット配置で探しに来たところ、内惑星軌道と外惑星軌道の間にあったデブリ群の一つに引っかかっているのを見つけた。

せっかくここまで来た事だし、幾つかのデブリに土魔法で虚空対応の家を建て、その中に転移用の刻印板を設置しておく。

後はデブリを一つ残して、別々の速度で深宇宙に向けて射出した。

これで目視ユニット配置を繰り返さなくても、この辺に来られそうだ。

オレは余計な作業を終えた後、虚空探査機に魔力を充填して予定軌道に乗るように押し出す。

「こちらサトゥー。虚空探査機を発進させました。ビーコンの発信を確認したので、そちらでも明日くらいから受信できるはずです」

『感謝するサトゥー。一度ベリウナンの森に寄ってくれ、森を挙げて感謝の宴を開きたい』

「ありがとうございます、サーゼ様」

ベリウナン氏族のエルフ達の間で保存食の研究が流行っているそうなので、エチゴヤ商会の新製品も持ち込んで色々と研究話に花を咲かせたい。

マップ情報によると、現在のマップ外縁付近に大型のデブリが沢山あるようなので、寄ってみることにした。

◇

「おおう、宝の山だな」

岩石のデブリが多いが、三割くらいは鉄鉱石でできたモノが混ざっている。中には純粋な鉄塊すら浮かんでいるようだ。

マップ探査で探したところ雑多な合金塊が多かったが、大理石の岩塊、黄金塊なんかも見付かった。

まるで、わざわざ精錬した後に虚空に捨てたかのようだ。

少し疑問だったが、有用なのは間違いないので、進路上のデブリをストレージに収納していく。

どれも小さな島くらいあるので、ただの鉄塊でも大金持ちになれそうだ。

――危機感知。

「げっ、放射性物質じゃないか」

AR表示された情報に驚きながら、空間魔法の「 空間消滅 ( ディスインテグレイト ) 」で放射性物質の塊を消し去る。

平和利用もできるんだろうが、ファンタジー世界に核物質は似合わない。

ムクロが「神々が材料になる放射性物質を全て鉛に変える奇跡を使った」と言っていたが、さすがに虚空まで神の奇跡は届かなかったようだ。

それに、必要になったら空間魔法か術理魔法で核融合系の魔法でも作ればいい。

なお、虚空には常に宇宙線があるようだが、密度が低いので虚空服を着るか「 宇宙服 ( アストロスーツ ) 」の魔法を使っていれば問題ない。

そんな風にデブリ群の中を彷徨っていたら、一際大きな鉄塊を見つけた。

剣のような形をしているが、さすがにこんな巨大な剣は振れない。斬り付けるにしても 月くらい ( ・・・・ ) 大きな相手 ( ・・・・・ ) じゃないと意味がなさそうだ。

ストレージに収納できるか試したら、問題無く収納できた。オレのストレージは本当にサイズ無限らしい。

浮遊大陸のベースにも考えたが大きすぎる。

もう少し小さなヤツがいい。落下した時の被害を考えたら、浮遊大陸ではなく浮遊島くらいにした方がいいかもしれないね。

目標サイズを小さくしたら色々と候補が増えた。

堅い石英の巨大結晶があったので、それを候補に選ぶ。

もっと堅い 酸化アルミニウム結晶 ( コランダム ) や ケイ酸塩鉱物 ( トパーズ ) の塊もあったのだが、孤島宮殿くらいのサイズしかなかったので、候補から外してしまった。

これをベースに浮遊島を作ろう。

拠点としては孤島宮殿の方が良いのだが、浮遊島という単語の魅力には勝てなかったのだ。

そんな風に浮かれていたせいか、オレは虚空にある危険に配慮するのを忘れていた。

いつの間にかマップ外縁を越えて、次のマップに入り込んでいたのだ。

◇

「うぉおおっ」

ずいんずいん、と金属的な音が「 宇宙服 ( アストロスーツ ) 」の魔法で守られたオレの耳に届く。

自動防御アイテムの作り出す結界に、銀色の槍が弾かれる。

槍は槍でもヤリイカのようなフォルムだ。

どうやら、クラゲなどの怪生物の一種から攻撃を受けたらしい。

赤い光を後ろに噴射しながら虚空を高速移動しているようだ。

攻撃を失敗したヤリイカが、遠くに見える黒い球体の向こうに消える。小惑星くらいある球体だ。

オレは迂闊に追いかけたりせず、「全マップ探査」の魔法で情報を収集した。

このエリアにいるのは先ほどの「ヤリイカ」が100匹ほど、それから前方にある黒い球体だけのようだ。

そう、あの巨大な球体も「未確認物体」という表示の怪生物の一種だった。

前に見た「白玉宇宙怪獣」や「鈍色宇宙怪獣」も最初に出会った時は「未確認物体」だったっけ。

オレが一定距離まで近寄ると、黒い球体がくぱぁと開いた。

初めは黒いヒトデに見えたそれが、八本の触手を伸ばしてオレに迫る。

――黒蛸宇宙怪獣か!

先端が紐状に細かく分かれた触手が飛んでくる。

羽毛のように見えた先端の細い紐が、高層ビルなみの太さだと判った。

――デカイ。

本体の直径だけでも100キロメートルくらいはあるかもしれない。

いやいや、デカすぎるから。

月でも直径3500キロメートルくらいだったはず。

こんな天文学的なサイズの相手をどうしろって言うんだ。

過去最大サイズだった鈍色宇宙怪獣でも直径3キロメートルしかなかったのに……。

でも、こんなのが惑星軌道に来たら大変な事になりそうだ。

オレはオリハルコン製の杖を取り出し、遠距離攻撃向きの禁呪を使用する。

―― 神威白滅光線 ( ディバイン・バニッシング・レーザー ) 。

大陸を両断するという逸話のある禁呪が烈光で虚空を灼く。

触手の陰からオレに奇襲をかけようとしたヤリイカが、烈光に灼かれて一瞬で蒸発した。

巨大な触手を二本切断したところで、早々に対処された。

触手の先や本体の周りに浮かんだ漆黒の球体に、直進するはずのレーザーが湾曲されて吸い込まれてしまったのだ。

まさかとは思うが、あの黒いのはブラックホールの一種なのだろうか?

直線距離で60キロメートル以上離れていたはずのタコが、コマ落としのように急接近した。

反射的にユニット配置で直上方向へ逃げたので事なきを得たが、異様な加速だ。

……そういえば白玉宇宙怪獣もこんな感じの加速をしていたっけ。

一息入れる暇もなく、タコが急加速してきた。

慣性無視の機動はほどほどにしてほしいものだ。

消費魔力の低い上級光魔法「 光子力線 ( フォトン・レーザー ) 」で攻撃の届くポイントを探るも、残念ながら徒労に終わった。

漆黒の球体以外の黒い体表でも魔力を吸い上げる機能があるらしく、かすめた「光子力線」の構成が緩んでいた。

オレは「 並列思考 ( スレッド・シンク ) 」スキルの助けを借りて、タコから一定距離を保ちながら思考を続ける。

危機感知の告知が多すぎて思考の妨げになるので、一時的に告知先をログに変更しておいた。

タコと連係してくるヤリイカがうっとうしかったので、虚空専用疑似精霊フルバーニアン4を産み出して相手をさせておく。

ベリウナン氏族とブライナン氏族の研究成果を魔改造した疑似精霊で、高威力レーザーを備えた超高機動タイプだ。

稼働時間が短い欠点があるが、それは性能とのトレードオフなので仕方ない。

全長500メートルもある巨大疑似精霊なのに、周りのスケールが大きすぎるせいで小さく見える。

アニメのドッグファイトのようなヤリイカと疑似精霊の戦いは録画して後で楽しむとして、オレはタコの相手をしよう。

幾度ものユニット配置を繰り返し、マップの中央付近を飛び回る。

――ちぃいい。

パターンが読まれたのか、転移先に漆黒の球体が待っていた。

ああも巨大だと、まるで短距離転移するかのような速さだ。

イタチ人族の「魔喰い」を修理した機械よりはるかに強烈な勢いで、魔力が吸収されていく。

このまま魔力がなくなったら――。

不意にオレの脳裏にアイデアが閃いた。

ユニット配置で漆黒の大地へ降り立つ。

タコの表面だ。

やはり、タコの黒い肌にも魔力を吸収する性質があるらしく、オレの「 宇宙服 ( アストロスーツ ) 」の魔法が解けていく。

だが、いつまでも自分が吸う立場だと思うなよ?

オレは中級術理魔法の「 魔力強奪 ( マナドレイン ) 」を実行する。

残念ながら、上級や禁呪にこれ以上効率的な呪文はなかった。もちろん、オレが使用した場合に限った話だが。

凄まじい速さで魔力を吸い上げると、体表の黒い色が失われ、白い地肌が見えてきた。

――VOWVOOOOOWWWN。

タコの悲鳴が黒い体表を伝わってくる。

慌ててオレから逃げようとするが、どんなに慣性無視の機動をしようと無駄だ。オレの「 理力の腕 ( マジック・アーム ) 」は、がっちりとタコの白い体表に食い込んでいる。

無防備になった体表に、炎系の禁呪「 煉獄の白焔 《 ホワイト・インフェルノ 》 」を使う。

白い炎がタコを灼き灰も残さず抉っていく。

数百メートル級のクレーターができたが、皮下脂肪にも魔力吸収層があったせいで思った以上の破壊ができなかった。

ここまで非現実的なサイズだと、オレの禁呪でも瞬殺できないのか……。

――不意に頭上の星が消える。

漆黒の球体がオレを包み込むように迫ってきた。

タコは自身の肉体を傷つける事も厭わずに、漆黒の球体でオレを殺しにかかったようだ。

抉られたタコの白い体液が虚空に噴出する。

◇

オレはその様子を虚空から見下ろす。

僅かに残っていた隙間から、なんとかユニット配置で逃げ出せたのだ。ユニット配置の連続使用で1000キロメートルほど離れたところで、禁呪で使った魔力の回復を待つ。

オレの脳裏に、月すら刺せそうな剣状の鉄塊が過ぎった。

「魔法がダメなら、物理で殴ればいいか」

体格差が激しいが、なんとかしてみせよう。

オレは虚空専用疑似精霊フルバーニアン3を召喚する。これは先ほどのフルバーニアン4と違ってレーザーは搭載していない。その代わりに鞭状の長い触手を持つ。

運搬や虚空探査機の初期加速を作るための疑似精霊なのだ。

8体をリンクさせた疑似精霊を、タコに向かって加速させる。

この体が潰れそうな加速があれば、1000キロメートルの距離も一瞬だ。

タコが急速に逃げ出すが、今回はその巨体が 仇 ( あだ ) になった。

オレはストレージから取り出した 岩塊 ( ・・ ) をタコの表面に叩き付ける。

岩塊はタコの表面で砕けたが、小さくなった岩塊の多くは散弾のようにタコの内部を抉った。

疑似精霊達の特攻がその傷をさらに押し広げる。

――VOWVOOOOOWWWN。

音の伝わらない虚空に、タコの悲鳴が響き渡った。

おそらくエーテルを伝播しているのだろう。

「こういう巨大生物退治のセオリーは――」

オレは岩塊の散弾と疑似精霊が開けた大穴に飛び込む。

傷口が凄い勢いで塞がっていくが、オレが通り抜ける余裕はたっぷりある。

――それに、オレの 速度ベクトル ( ・・・・・・ ) は 失われていない ( ・・・・・・・ ) のだ。

急速に狭まるタコの肉壁に向けて、 第二弾 ( ・・・ ) の鉄塊を放つ。

――VOWVOOOOOWWWN。

外皮ほど硬くなかった肉壁は深々と鉄塊に貫かれた。

どうやら中心部の広大な空間――タコの胃部に到着したようだ。胃部は縦長の涙滴形で、短径でも数キロメートルを超える。

胃の内部に漆黒の球体が現れる。

内壁からも白玉宇宙怪獣のような生き物が湧き出てきた。

体内にも攻撃手段があるとは恐れ入る。

――だが、もう遅い。

オレはストレージから、アイテムを取り出す。

月さえ貫けそうな鉄塊の剣だ。

面倒だから、これは月貫剣と名付けよう。

――VOWVOOOOOWWWN。

内側から異物に引き裂かれたタコの悲鳴が胃壁の内側を震わせる。

オレは月貫剣の出し入れを繰り返して、無限にも見えるタコの体力ゲージを削っていく。

それを阻止しようと、白玉宇宙怪獣もどきや漆黒の球体が襲ってきた。

高機動を誇る白玉宇宙怪獣もどきも、移動が制限された胃の内部では本領発揮できるはずもなく、オレの上級光魔法「 光子力線 ( フォトン・レーザー ) 」で易々と薙ぎ払われた。

漆黒の球体の方は少し手こずったが、「 魔力強奪 ( マナドレイン ) 」で魔力を奪って消滅させられる事が判ってからは楽だった。

何度も補充が来たが、攻略法が判ってしまえば単なる作業だ。

一時間を超える長丁場も、やがて終わる。

>「黒蛸宇宙怪獣:抜け殻」を倒した!

――あれ? 抜け殻?

オレはストレージに黒蛸宇宙怪獣の死骸を収納し、虚空に復帰する。

周りの虚空に黒蛸宇宙怪獣内部に寄生していた白玉宇宙怪獣が何千匹も浮かんでいたが、それらも一斉に外宇宙方向に逃げ出す。

逃げる先には「黒蛸宇宙怪獣」とよく似た質感の物体が、彗星のような尾を引いて飛翔していた。

――逃がさないよ?

オレは「黒蛸宇宙怪獣・小」にマーカーを付ける。

これでいい。

オレは後を追わずに詠唱を始める。

こちらは惑星近傍では危なくて使えない呪文だったので、改良後も魔法一覧に登録する機会がなかったヤツだ。

長い詠唱が終わる頃には「黒蛸宇宙怪獣・小」はマップの外縁を飛び越えていた。

今から追いかけても追うのは大変だ。

なので、 引き寄せる ( ・・・・・ ) 。

空間魔法の禁呪「 万物引き寄せ 《 アポート・エニー・オブジェクト 》 」を選択する。

詠唱完了後とはいえ、メニューから二つ目の魔法を起動できるのは「 並列思考 ( スレッド・シンク ) 」スキルの助けがあってこそだ。

目の前に出現した「黒蛸宇宙怪獣・小」は速度ベクトルを失い呆然と虚空に浮かぶ。

そこに発動句前で待機していたオリジナルの禁呪を発動する。

原初の炎が虚空に溢れ、再発進したタコを焼き尽くす。前回と違って指向性はバッチリだ。

タコは必死で漆黒の球体を出して吸い込もうとしていたが、 無意味だ ( ・・・・ ) 。

本物のブラックホールならともかく、魔法を吸い込むしか能がない技でこの炎は対処できない。

なぜなら、発動が魔法で多量の魔力を内包するものの、あくまで物理現象の炎だからだ。

「終了かな?」

タコが燃え尽きた跡に、何か浮かんでいる。

子蛸か卵かと思ったが違うようだ。

「――聖樹石?」

色が真っ黒だが、聖樹石――いわゆる「賢者の石」と同質の巨大な物体が浮かんでいた。

原初の炎に含まれていた膨大な 魔素 ( マナ ) が、タコの漆黒の球体で凝縮されて結晶化したのだろうか?

色々と使い道が多そうなので、ストレージへと収納する。

浮遊島の動力源に使えそうだ。

タコの抜け殻は体表に魔力吸収能力があったので、「魔喰い」みたいな道具を作ってみるのもいいかもね。

◇

「タコ焼き旨っ」

「こっちの明石焼きも美味いぞ」

表面をカリカリに焼いてソースたっぷりのタコ焼きも美味いが、ダシにつけて食べるふにゃりとした質感の明石焼きも捨てがたい。

使ったのは黒蛸宇宙怪獣の死骸ではなく、孤島列島の海で捕まえた普通のタコだ。

「どちらも甲乙付けがたいほど美味しいですわ」

「びみ~」

「トリビアーンなのです」

「ん、美味」

王女やセーラ、それにゼナさんはタコの奇妙な外見に忌避感を抱いてタコ焼き会に来なかったが、カリナ嬢は美味しそうに食べていた。

ミーアもタコは普通に食べられるようだ。

一応突っ込んでおくが、ポチはトリビアじゃなくてトレビアンだからね。

「タコの代わりに干し肉を入れるのも美味しそうですね」

「うふふ、試してみましょうか?」

リザの肉好きな発言にルルが微笑む。

「ルル、私も試作を希望すると告げます」

「タマも~」

「ポチも、なのです!」

その言葉にナナ、タマ、ポチの三人も乗り気だ。

カリナ嬢も同意したいようだが、アツアツのタコ焼きが口に入っていてそれどころではないらしい。

やっぱり、みんなでゆっくり食べるオヤツは格別だね。

今度はゼナさん達も楽しめるメニューを考えるとしよう。

◇

「でっかいわね~」

「まだ浮かぶだけだけどね」

虚空で浮遊機関を取り付けたデブリ島を、ストレージに入れて砂漠の異界へと運び込んだ。

黒蛸を倒した月貫剣より遥かに小さいので楽勝だ。

この島を浮かべる浮遊機関は虚空の属性石生産工場で作製した闇石ではなく、タコの死骸の中から見付かった闇晶珠の塊を用いている。

闇晶珠というのは闇石製造の過程で希に生まれる高純度結晶だ。

他にも高純度の金属結晶や 酸化アルミニウム結晶 ( コランダム ) や ケイ酸塩鉱物 ( トパーズ ) の塊なんかがタコの体内で見付かっている。

構造的に見て排泄孔近くに存在していた。

恐らくデブリ群に浮かんでいた結晶塊はタコの体内で不要と処理された排泄物だったのだろう。

オレの脳裏に惑星をガリゴリと囓る黒蛸達が浮かんだ。

「気のせいだな――」

「何が?」

「――なんでもないよ」

心配そうなアリサに笑顔を向ける。

「そうだ、新しく重力制御魔法と慣性制御魔法を作ったんだ。一緒に飛んでみないか?」

「本当? 飛んでみたい――実験はしたんでしょうね?」

「当たり前だろ?」

アリサの失礼な発言を即答で否定する。

実験無しで仲間達に使うには危険すぎるからね。

オレは重力魔法の「 重力制御 《 グラビイティー・コントロール 》 」と術理魔法の「 慣性制御 《 イナーシャル・コントロール 》 」を発動する。

万が一の時は「 慣性破棄 《 イナーシャル・キャンセル 》 」を使えばいいだろう。

オレはアリサを連れて飛び上がり、浮遊孤島の表面を削る作業用ドール達を眺める。

「このまま外宇宙への播種船になりそうね。ご主人様とわたしでアダムとイブなんてステキ」

アリサの妄言が聞こえてきたが、軽くスルーする。

虚空はこの地上以上の危険地帯だぞ。普通ならバッドエンド直行な、ナイトメアモードも真っ青な場所だ。

この恒星系のマップを制覇するまでは、とてもじゃないが連れ出せないね。

それに、浮遊機関は重力を吸うだけで虚空では機動力がない。

今使っている魔法を応用した重力制御機関でも作れたら虚空でも使えそうだ。

まずは、系外調査用疑似精霊の重力子バージョンでも試作してみようかな。

オレは新たな研究案が浮かんだことにニンマリと微笑んだ。

※次回更新は 5/22(日) の予定です。

※長くなりすぎたので2話に分けました。

幕間は次回で終了し、5/29(日)から15章が始まります。

※大理石、ウラニウム……きっと、過去の転生者や勇者が名付け広めたのでしょう。

※放射性物質について気になる方は「11-16.地下帝国の戦争」あたりをご覧下さい。

※「幕間:魔法が使いたい[宝珠編]」で「 煉獄の白焔 《 ホワイト・インフェルノ 》 」が上級魔法と書かれていたと報告を受けたので、13章の方の呪文を上級魔法「 火炎地獄 ( インフェルノ ) 」に変更しました。