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15-13.迷宮の勇者(2)

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15-13.迷宮の勇者(2)

※2016/8/10 誤字修正しました。

※2016/8/10 ちょっとだけ加筆しました。

サトゥーです。昔の映画で小さくなって体内を冒険するのがありました。子供心にも荒唐無稽に感じたものですが、それでも映画の終わり頃には食い入るように見ていた覚えがあります。タイトルは忘れてしまいましたが、リメイク版が作られたら是非見てみたいものです。

◇

「サトゥー、この秘宝『魔王方位針』はすごいぞ」

オレが提供した魔法道具の効果を確認していた勇者が驚きの声を上げた。

なんでも、イタチ帝国が提供した魔探器は瘴気の分布を示すだけのアイテムで、魔王を直接指すアイテムではなかったそうだ。

「はい、とある遺跡で発見したのですが、ハヤト様のお役に立つのではと思って運んでまいりました」

勇者ハヤトが持つ「魔王方位針」は立体方位磁石みたいな外見をしている。中が空洞になったダイヤ球の中央に、オリハルコンの針が浮かんでいる感じだ。

もちろん、言うまでもなくオレの自作なので、来歴はデタラメだったりする。

これはオレがデジマ島を訪れる前日に作ったアイテムで、オレのマップ情報を受信して魔王へと至る通路を指し示す。

アイテムとの通信は隣接亜空間を経由した電波なので、普通の魔法中和や魔力阻害系のトラップでは防げないはずだ。

「本当に、このちっこいのがあたしらより強いのか?」

「見えねぇ~」

勇者パーティーに復帰したルススとフィフィが、タマとポチを見て納得がいかなそうな顔をしている。

「タマ強い~?」

「ポチだってすごく強いのです」

「二人とも、慢心はいけませんよ」

「ん、謙虚」

昨日から興奮しっぱなしのタマとポチをリザとミーアが窘めてくれる。

「それが魔法銃? 弓よりも凄いって本当?」

ルルの持つライフル型の魔法銃を興味深そうに眺めるのは弓兵のウィーヤリィ嬢だ。

今日のルルは可憐装備浮遊盾増設バージョンに、魔法銃を装備している。

この浮遊盾はエチゴヤ商会からの試供品という事になっており、勇者ハヤトのサポートメンバーである黒騎士達にも装備させてある。

毎回、黒騎士達の損耗が激しかったそうなので、黒騎士達だけでなく回復役のロレイヤや神官達からも感謝された。

なお、イタチ赤騎士達は王弟の残した待機命令で今回は参加していない。

「はい、たぶん」

「たぶん?」

「これよりも、ご主人様の射る弓の方が強いと思います」

「ふむ、そんなものか……」

黄金鎧のオプションである浮遊砲台や加速砲はともかく、ルルが持つライフル型魔法銃は火杖の2~3倍程度の威力しかない。

軍用の魔力砲の半分くらいの威力だ。

「サトゥー、こんなに沢山の『魔法の鞄』を提供してもらってよかったの?」

「それに、中級や上級の魔法薬だけじゃなく、エリクサーや血玉なんて貴重品まで」

「ええ、ハヤト様の為に持ち込んだ品ですから」

リーングランデ嬢とメリーエスト皇女が、提供した物資や装備のお礼を言ってきた。

二人とも再会時は死にそうな顔をしていたが、十分な休息を経て血色が良くなっている。

「いいじゃん、リーンの義弟からの貢ぎ物なんだから、遠慮無く貰っておけば」

「私はまだセーラとの結婚を認めた訳じゃないわ」

斥候のセイナの言葉の一部にリーングランデ嬢が反応した。

たしかにセーラは一緒に暮らしているが、そういう色っぽい関係になった事はない。

「そうなの?」

「はい、リーングランデ様が勘違いしているだけで、妹のセーラ様との関係は――そうですね、親しい友人というのが一番よく当てはまると思います」

質問に答えると、セイナが顎に手を当てて何かを考え始めた。

「だったら、この間のエリクサーのお礼をしないとダメだね。ボクは勇者様のモノだから、あげられないけど、サガ帝国から爵位でも大金でも分捕ったげるよ」

どうやって分捕るのか気になるが、オレとしては実利的なものよりも、サガ帝国の勇者召喚陣を見物できる方が嬉しいので、そう告げてみた。

「どちらも不要です。どうしても心苦しいというのなら、私とムーノ伯爵に勇者召喚陣を一目見せていただけたらそれで十分です」

オレ単独だと「なんの為に」と疑われそうだが、勇者研究家で有名なムーノ伯爵を挙げておけば、 主 ( あるじ ) 想いの青年貴族と受け止めてくれるに違いない。

ムーノ伯爵なら、きっと歓迎してくれるだろうしね。

「それくらいなら、皇帝陛下に上奏してあげるわ」

「いいの、メリー?」

「ええ、勇者召喚陣はパリオン様の加護で、普通の手段では破壊できないから」

ゲームなんかにある破壊不能オブジェクトってやつかな?

皇女殿下が約束してくれた事だし、この戦いが終わってもイタチ帝国皇帝への謁見ができないようなら、先にサガ帝国に訪問してみるのもいいかもね。

◇

「サトゥー、絶対に死ぬな」

「はい、ハヤト様も御武運をお祈りしております」

「アリサ王女も、絶対に護れ」

「ええ、お約束します」

かつて中継基地があった場所で黙祷をしたあと、オレと勇者一行は別の道を進む。

別段仲違いしたわけではなく、勇者一行は魔王の所へ、オレ達は他の最下層にいる中ボス的な守護者を討伐する事になっている。

前回の勇者の戦いでは、 迷宮核 ( ダンジョン・コア ) の部屋に乱入した直後に、魔王と守護者が入れ替わり、迷宮核も 偽核 ( フェイク・コア ) に替わってしまったそうだ。

なんとも謎の機能だが、アリサによるとネット小説界のダンジョンマスター物ではごく普通の仕組みらしい。

偽核を全て潰せば交換もできないそうなので、オレ達はそちらの殲滅を担当する。

「アリサ王女、この戦いが終わったら――」

「ダメですよ、勇者様」

死亡フラグを立てようとした勇者の口を、アリサの人差し指が止めた。

なおも、何か言いたそうだったが、勇者も縁起が悪いと思ったのかそれ以上は口にしなかった。

「じゃあ、またな」

「はい、お気を付けて」

「ハヤト様、御武運を」

アリサがそう言って勇者の頬にキスをすると、珍しく狼狽した勇者が従者達に小突かれていた。たぶん、嫉妬だろう。

なお、カリナ嬢は持ち前のコミュ障を発揮して、オレが幾ら勧めても勇者に激励の言葉一つ掛けられなかった。

これがコミュ障脱却の原動力にでもなればいいんだけどね。

「それじゃ、オレ達も行こうか」

勇者達の姿が見えなくなったところで、守護者のいる最下層へと移動を始めた。

彼らは偽核を一つだと思い込んでいたが、マップ検索によると偽核と守護者のセットは7つあった。

順番に巡ったら少し面倒だが、 転移門 ( ゲート ) の魔法を使えばすぐに終わるだろう。

「ねぇねぇ、守護者を早く倒し終わったらさ」

歩きながら、アリサが話しかけてくる。

「わたし達も魔王討伐を手伝いに行かない?」

「もちろん、そのつもりだよ」

魔王に協力する謎の「 迷宮の主 ( ダンジョン・マスター ) 」に対処する役目をやろうと思う。

それに、もし魔王が話の分かるヤツなら、「神の欠片」を別の魔物に移植して、勇者にはそっちの急造魔王を倒して「真の勇者」になってもらいたい。

もっとも、そう都合良く物事が運ぶとは思わないけどさ。

◇

「守護者というのは1体ではないのですね」

「マスター、9体もいると報告します」

「ねぇ、 本物なの ( ・・・・ ) ?」

「ああ、本物だ。だから、手を出しちゃダメだよ」

オレは仲間達に待機を命じ、一人で守護者の間へと入る。

「こんばんは リートディルト様 ( ・・・・・・・・ ) 、こんな場所で再会するとは奇遇ですね」

「サトゥー、私を全力で倒せ。この間の借りを返す為に、私は全力で支配に抵抗する」

額から脂汗を流す彼女の傍らには、状態「支配: 迷宮の主 ( ダンジョン・マスター ) 」とAR表示されている。

彼女の背後に控える8人は、彼女の従者達だろう。

従者達も、彼女と同じく支配状態になっていた。

どういう経緯で、 迷宮の主 ( ダンジョン・マスター ) に支配されたのか少し気になるので、手早く彼女達の懐に縮地で跳び込み、軽い攻撃で昏倒させていく。

「なんていうか、身も蓋もない攻撃よね」

「そうか?」

アリサの呟きに軽く答え、彼女達の支配を「魔法破壊」で解除した。

AR表示さえされない魔王の呪いに比べたら楽勝だ。

さて、何があったのか、調べてみよう。

尋問のような不確かで手間のかかる方法ではなく、死霊魔法の禁呪「 魂魄侵入 ( ソウル・イントルード ) 」で記憶を読み取る事にした。

精神魔法の禁呪「 精神潜伏 ( サイコ・ダイブ ) 」でも良いが、こちらは高確率で相手が廃人になるので前者を選んだ。

前者も深層の記憶を読もうとすると障害が発生しかねない危険な魔法だが、直近の戦闘経緯を知るだけなので、そんな危険性はないはずだ。やばそうなら接続を切れば良いしね。

「ふむ、上級死霊魔法の『 完全憑依 ( パーフェクト・ポゼッション ) 』とあまり変わらない感じだね」

「相変わらず、びっくりする魔法よね」

オレがリートディルト嬢の口で喋ると、アリサが驚いた声を上げた。

自分の会話で聞こえる高い声に、オレも違和感がある。

「リザ、オレが調べている間、アリサがオレの身体にイタズラしないように捕まえておいてくれ」

「はい、承知いたしました」

こっそりとオレの身体に手を伸ばそうとしていたアリサをリザがホールドしたのを見届けて、リートディルト嬢の意識に潜り込んだ。

◇

「リートディルト様、そろそろ引き返さないと食料や水はともかく、魔法薬や補助系の魔法道具が尽きます」

「やむをえないわね。この先の部屋を探索したら戻りましょう」

オレは俯瞰視点から、リートディルト嬢の記憶を手繰る。

どうやら、リートディルト嬢達は最下層まで辿り着いていたようだ。

彼女の従者の中に、勇者一行で見かけた斥候系冒険者の姿があった。

たぶん、彼の案内でスムーズに侵攻できたのだろう。

もしくは、何者かがここに彼女達を導いたか――。

「あれは守護者というヤツかしら?」

広間の端にうずくまった存在を見て、リートディルト嬢が呟く。

呟きながらも、内心では違うと彼女は理解していたようだ。

節穴かと思った彼女の「竜眼」とやらも、それなりに敵の格を見抜く力があるらしい。

「 紫色 ( ・・ ) の甲羅をした亀人でしょうか?」

「いや、違う――」

冒険者が上ずった声で、リートディルト嬢達の会話を否定した。

「あ、あれは魔王だ」

その冒険者の発言に、リートディルト嬢は内心で「やはりそうか」と確信を深めた。

「ま、魔王だと?!」

「ただの魔物ではないのか?」

「眠っているようだぞ、今のうちに 退 《 ひ 》 こう」

部下達の動揺と弱気な発言をふがいなく感じながらも、同時にそれが妥当だとも感じているようだ。

「総員、静かに退却。以後、私語を禁じる」

そう呟いたリートディルト嬢の足下でパキッとお約束の音がした。

小枝ではなく、脆い小石を踏み砕いたようだ。

恐る恐る振り向いたリートディルト嬢の瞳に映るのは、紫の甲羅の一部が持ち上がり、その奥から覗く紫色をした二つの熾火のようなものだった。

「総員、全力で走れ!」

怖気 ( おぞけ ) に萎縮しそうな身体に鞭を打って、リートディルト嬢が走る。

幸い、魔王はまだ起き上がれていない。

「入り口に見えない壁があるぞ!」

「どけっ! 斬鋼閃!」

リートディルト嬢の剣技が唸るが、透明な結界はその攻撃を柳に風と受け流す。

「面妖な! 剣は通るのに、この身体は拒絶するというのか!」

該当する魔法は知らないから、 迷宮の主 ( ダンジョン・マスター ) の能力か魔王のユニークスキルのいずれかだろう。

――ZHWWWUUUUUUUWN。

魔王の咆哮が広間に響き、リートディルト嬢以外の者達を「恐怖」で縛った。

「このくらいの恐怖、なんて。真の恐怖にくらべたら、どうという事はない」

この時、彼女の脳裏に浮かんだのが、オレが扮した鼠人の姿だったのが解せない。

ちょっと威圧スキルを使っただけじゃないか。

「雷系の魔法か、やっかいだ」

魔王の傍に現れた無数の雷球が、リートディルト嬢達に降り注ぐ。

「防げ! トウヤの盾よ!」

リートディルト嬢がポーチから取り出した魔法道具を宙に投げると、透明な下敷きのような薄膜が重なった防御壁が生まれる。

魔王の雷球が防御壁に触れ、耳が痛くなる轟音と髪の毛が逆立つような静電気が、周囲にまき散らされる。

防御壁はパリパリと頼りなく砕けていったが、なんとか最後まで雷球を防ぎきる事ができた。

彼女の記憶によると、イタチ帝国の軍師がくれた使い捨てアイテムだったらしい。

「トウヤの鍵よ、扉を開け!」

同じく鍵型の使い捨てアイテムを使うと、謎結界の前に黒い穴が開いた。

まるで、昔話の三枚の御札のようだ。

続けて、帝都で「ぶれいんず」から貰った「狂戦士の息吹」という水薬を仲間達に振りまいて、恐怖状態を無理やり解除する。

かなり手荒だが、有効な手段だと思う。

「往け! 戦士達よ、この黒い穴の向こうが戦場だ」

リートディルト嬢が叫ぶと彼女の仲間達が雄叫びを上げて、結界の穴に飛び込んでいく。

最後の一人に続いて飛び込もうとした次の瞬間、コマ落としのように彼女の視界が切り替わった。

―― 引き寄せ ( エビルスナップ ) か。

リートディルト嬢は何が起こったか把握できていなかったようだが、これは「黄金の猪王」の前座で戦った赤肌魔族の使った空間魔法の一種だ。

四つん這いで立ち上がった魔王が、リートディルト嬢を睥睨する。

その顔や四肢は亀ではなく鼠のそれだった。

「がぇRYUIEり、DWYNい」

「魔王の術かっ」

悪態を吐くのももどかしく、リートディルト嬢が腰のポーチから取り出した「加速」の魔法薬を飲み下す。

勇者ハヤトが黄肌魔族戦で使っていた禁断の強化薬だ。

「かえ、りぃいい、とぅわぁいいぃいいい」

――帰りたい?

加速した彼女の耳に、魔王の咆哮が意味ある言葉に聞こえた。

「トウヤの鎖よ。私に限界を超えさせて――《滅私》」

彼女の言葉と同時に、鎖がジャラジャラと締め上げるような幻聴が響く。

リートディルト嬢が魔王の攻撃を避けながら、瞬動を発動する。

水の中を走るような抵抗が身体を捕らえ、僅かに剥き出しになった皮膚を風が切り裂いていく。

彼女の二本の剣が赤い輝きを纏った。

「斬鋼芒裂閃」

かつてイタチ帝国でオレが受けた技よりも、遥かに速く重い斬撃が魔王に放たれた。

剥き出しになっていた鼠の手足が裂け、紫色の体毛が鮮血と共に飛び散る。

残光が六芒星のような軌跡を描き、魔王を血煙の向こうに沈める。

「――やったか!」

ここで追撃を放てれば、あるいは未来が変わったかも知れない。

だが、戦いに「たられば」はない。

――ZHWUUU。

血煙の向こうに紫色の輝きが一つ。

「なんという、異形」

リートディルト嬢が呟きながら距離を取り、腰のポーチから中級魔力回復薬を取り出して口にくわえる。

魔王のいる方角から飛んできた銀色の塊を、両手に持った剣で受け止める。

――ロケットパンチ?

ワイヤーのようなものでパンチが引き戻され、魔王の着込んだメカメカしい強化服の腕に合体する。

なんとなく、子供の頃に見たヒーローにこんな感じのヤツがいた気がする。

「今度はこちらの番だ――」

魔力が回復したリートディルト嬢が叫ぶが、その途中で腰が砕けたように地面に崩れ落ちた。

「――もう、時間切れか」

以前、会社で五連徹をして過労で倒れた時と同じような怠さが、リートディルト嬢を襲っている。

手から力が抜け、感触も無いまま剣が地面に転がる音を耳が拾った。

「やー、現地人もなかなかやるじゃん」

朦朧として判然としない視界と違って、彼女の長い耳はちゃんと周囲の音を拾ってくれている。

「よー、大丈夫かーい?」

「は、HWARA減ったWWN」

「オーケー、オーケー。ミクドのハンバーグでも、十九朗のラーメンでも好きな物を――」

――MUESHIMUESHIHAYGUEEEEWN。

魔王の咆哮と地面が抉れる音、そして小さな石が自分の鎧に当たる音が耳に届く。

「うえー、ぐろいなー、俺ちゃん夢に見そう」

腐敗臭 ( ・・・ ) と何かを貪る にゅちゃ ( ・・・・ ) にゅちゃ ( ・・・・ ) した音が微かに聞こえた。

「ほらほら、こっちにちゃんとしたの出したから、そんなのぺっ、しなよー」

リートディルト嬢の情報入力の精度が下がっている。

どうやら、気を失う寸前らしい。

「ふう、俺ちゃん好みの美少女だけど、 獣姦 ( ・・ ) は趣味じゃないんだよー」

なぜか、彼の言葉だけは耳にはっきり届く。

―― 獣姦 ( ・・ ) ?

長耳 ( ブーチ ) 族のリートディルト嬢は、少し耳が長い以外は普通の人族と同じ容姿だ。

獣姦なんて表現には似合わない。

オレが疑問に思う間にも、当時の再生は続く。

どうも、一時停止はないらしい。

「勿体ないけど、あの規格外野郎への足止め役をやってもらおうかなー」

何かがリートディルト嬢の魂を縛り付ける感触を追体験する。

なかなか気持ち悪い。今すぐにでも、 迷宮の主 ( ダンジョン・マスター ) を殴りたい最低な気分だ。

「絶対勝てないと思うけど、俺ちゃんが逃げる時間くらいは稼いでよー」

そう告げて、 迷宮の主 ( ダンジョン・マスター ) が立ち去った。

◇

「――ふう、疲れた」

リートディルト嬢との接続を解除し、頭の奥に流れ込んでいた黒い靄を掴んで剥がす。

どうやら、リートディルト嬢にはブービートラップとしての役割もあったようだ。

あわよくばオレがリートディルト嬢経由で「支配」されないか試したのだろう。

「お疲れ様! さあ、リザさん! もう、離してよ」

靴の脱げたつま先を必死にオレに伸ばしていたアリサが、焦ったようにリザに訴える。

たぶん、オレの周りで猫鍋の猫達のように寄り添う他の子達の中に混ざりたかったのだろう。

カリナ嬢もタマやポチと一緒にオレの膝に頭を載せていたが、オレと目が合うと脱兎のごとく距離を取った。

「ご主人様、よろしいですか?」

「ああ、離してやっていいよ」

リザに首肯してやる。

解放されたアリサが某三代目怪盗のようなジャンプで飛び込んできたが、それを「 理力の手 ( マジック・ハンド ) 」で受け止め、空中で怒るアリサに手に入れた情報を告げる。

「アリサ、ここの 迷宮の主 ( ダンジョン・マスター ) は転生者か転移者のどっちかみたいだ」

【新刊発売記念更新の予定表】

8/10 (水) 15-14.勇者vs魔王※勇者視点です

※書籍新刊公式発売日まで、あと1日!

早売りのお店や専門店ではもう発売されているようです。

(電子版は公式発売日までお待ち下さい)

※漫画版3巻は本日公式発売です。電子版も本日から配信開始との事です。

※新刊の詳細や見所は、活動報告「デスマ8巻の見所&帯付き表紙公開」をご覧下さい。

※書籍版の感想や誤字報告は、活動報告の「デスマ8巻の感想(ネタバレok)」にお願い致します。