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15-19.イタチ帝国、帝都へ

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15-19.イタチ帝国、帝都へ

※2016/9/13 誤字修正しました。

※2016/9/22 一部修正しました。

サトゥーです。悪事千里を走る、と言いますが、本当の悪事は秘されて人目に付かずに深く静かに進行しているようです。

◇

「ご主――クロ様、都市が見えてきました」

リザの報告にオレも身を乗り出して窓外を確認する。

オレはクロとしてイタチ帝国のレテ市に向かっており、同行しているのはリザとゼナさんの二人、それからエチゴヤ商会の幹部候補生の少女だけだ。

リザとゼナさんは、二人ともエチゴヤ商会の制服を着て、皇帝のギアス対策であるミラーグラスを掛けている。

なお、幹部候補生が一緒にいるのは、とある危険任務を担当してもらう為だ。

本来はオレがその役目を担うはずだったのだが、エチゴヤ商会の幹部達や孤島宮殿の仲間達に猛反対された為、最初に志願してきた彼女が担当となった。

十二分な安全策を用意してあるとはいえ、絶対に安全だとは言い切れないので、この任務成功の暁には彼女の願いを一つ叶えてやろうと思う。

「なかなか大きな都市だ」

「ふんっ、シガ王国のキサマには信じられぬかもしれんが、あれは帝都ではない。我が帝国の都市は皆どれもシガ王国の王都並みに多くの民を抱えているのだ」

オレの発言を素早く拾って自慢したのは、この飛空艇の主であるイタチ帝国の 宮殿騎士 ( テンプル・ナイト ) のリートディルト嬢だ。

王弟の策略によって、彼女は最近まで魔王討伐を知らず、治療後に迷宮へ突撃してから、今日までずっと彷徨っていたらしい。

そのお陰か、彼女のレベルも一つ上がり、彼女の護衛騎士達も少し数を減らしつつも、結構なレベルアップをしていた。

現在は王弟の親書を皇帝に届ける役目を負った事になっているオレの護衛で帝都へと向かっている。

「高度が下がっている?」

「あのレテ市で乗り物を替える」

浮遊感を覚えて呟くと、リートディルト嬢が親切に教えてくれた。

彼女も空の旅がヒマだったのだろう。

◇

「遅いぞ!」

「すまん、少し 準備 ( ・・ ) に手間取った」

準備を終えた ( ・・・・・・ ) オレ達がレテ市の待機室からでると、待ちくたびれていたリートディルト嬢が不機嫌そうにしていた。

「入国審査室はこちらだ」

「思ったよりも空いているのだな」

「我が国は鎖国している。普段は一日に数人、多くても10人を超える事はない」

リートディルト嬢に付いていくと、沢山の護衛に囲まれた紫髪の少女が待っていた。

彼女とオレ達の間には透明な魔力壁が展開されており、普通の中級攻撃魔法くらいなら余裕で防げそうな感じだ。

転生者である彼女の名前はルイズ。日本人にしては珍しい名前だが、転生者が日本人と決まっているわけでもない――もしかしたら、親がラノベ好きだったのかもしれないけどさ。

スキルなどは隠蔽されていて見えない。レベルは34、種族は猫耳族だ。

ぴこぴこ動く耳が可愛い。

「そちらの椅子に腰掛けてください」

目を伏せてそう告げた少女が、上目遣いにこちらを見て目を見開いた。

『は、俳優のアレックス? でもでも、白髪だし違うのかな?』

少女は小声で呟くと、鑑定をしようとオレを凝視した。

アレックスという名前に心当たりはないが、きっとクロの顔に似た外国人タレントだろう。

「職務なら構わんが、興味本位で人を鑑定するのはマナーに反するぞ」

自分の事を棚に上げてそう告げると、少女は叱られたように肩を竦めて「ごめんなさい」と呟くように謝った。

どうやら、この子は素直な性格らしい。

「それより、入国審査とやらを済ませてくれ」

「は、はい!」

オレの偉そうな物言いに、少女の護衛が不快そうに眉を顰めていたが背景としてスルーする。

「私の言葉を聞いて、異論が無かったら、『誓約する』と口にしてください」

少女はそう告げると、紫色の燐光に包まれた。

恐らく、ユニークスキルを使ったのだろう。

「レテ市のこの部屋に入ってから、イタチ帝国を出るまでの記憶は、それまでのモノとは分別され、イタチ帝国を出た時点で失われます」

少女が言い慣れた感じに告げて沈黙する。

オレ達が「誓約する」と口にするのを待っているのだろう。

『誓約します』

幹部候補生がはっきりとそう告げると、彼女の頭部に紫色の光でできた冠が一瞬だけ表示されて消えた。

あれがユニークスキルの発動した証なのだろう。

さて、検証しよう。

オレは幹部候補生を部屋からエチゴヤ商会へとユニット配置で移動する。

「き、消えた?!」

姿を消した幹部候補生に少女が驚きの声を上げ、それに反応した彼女の護衛達やリートディルト嬢が剣に手を掛ける。

「慌てるな」

オレは片手を振ってそれを制し、待機室で入れ替わった クロ人形 ( ・・・・ ) を 憑依 ( ポゼッション ) モードからリモートに切り替えて、エチゴヤ商会の本体に意識を戻す。

視界が切り替わり、さっきまでのクロ人形の見ていたレテ市の入国審査室の光景から、オレ自身の目で見るエチゴヤ商会の部屋になる。

「記憶はどうだ?」

エチゴヤ商会に戻した幹部候補生の 人形 ( ・・ ) と幹部候補生本人に確認する。

「ログおよび位置情報はレテ市到着で途切れてイマス」

「わ、私の記憶は入国管理室での事を憶えています」

なるほど、憑依モードでも影響を受けるのは身代わり人形だけで済むようだ。

「協力感謝する。オレは任務に戻るが、今回の功績に報いて有給休暇と特別ボーナスを弾むから、今日はゆっくりと休養を取れ」

「は、はい! クロ様!」

オレが労うと、幹部候補生が直立して敬礼のポーズを取った。

かなり緊張しているようなので、軽く手を振って退出を促し、オレはイタチ帝国に置いたままの クロ人形 ( ・・・・ ) をリモートから 憑依 ( ポゼッション ) モードに戻す。

すると、僅かなタイムラグの後、再びレテ市の入国審査室が視界に戻ってくる。

オレは手に持っていた緑と赤の宝石が付いた魔法道具を見せる。

「緑色が光っている。どうやら、本国に戻した部下は問題無いようだ」

「なっ! 私を疑っていたんですか?!」

オレが告げると、心外だとばかりにルイズ嬢が立ち上がって憤慨した。

「初対面の相手を無条件に信じてどうする」

「そ、それはそうですけど……」

オレの言葉にルイズ嬢が口ごもった。

彼女の護衛達が口々にオレを批難する言葉を口にしていたが、相手にするのも面倒なので聞き流す。

「クロ殿、その魔法道具は渡していただきます。他にも通信の魔法道具があればこの場で提出してください」

「これは受信専用のアンテナのようなモノ――と言っても信じるまい。誓ってこれ以外に通信魔法道具は持っていない」

ルイズ嬢の補佐官らしき男性がこちらの部屋にやってきて、オレから魔法道具を受け取る。

オレが嘘を言っていないことを壁の向こうの仲間に確認して、彼は元の部屋に戻っていった。

「ところで、誓約はまだ有効か? 有効なら、このまま宣誓するが?」

「は、はい。大丈夫です」

ルイズ嬢が頷くのを待ってから、オレ達は「誓約する」と告げて儀式を終了させた。

言うまでもなく、リザやゼナさんも身代わり人形装備なので問題無い。

「あ、あの……」

「なんだ? まだ他にも儀式はあるのか?」

リートディルト嬢に促されて部屋を出ようとしたオレを、ルイズ嬢が躊躇いがちに呼び止める。

「……お名前を、その」

「クロだ」

彼女はこういう外人タレント顔が好きらしい。

「ク、クロ? もしかして日本人――」

「黒竜山脈の主が名付けてくれた名だ。我が主ナナシ様もクロという名を聞いて同じように言っていた」

「そう、ですか」

小さく呟く彼女に命名の話をしたら、なぜかがっかりされた。

彼女は何を期待していたんだろう?

「――ここでの暮らしは幸せか?」

「は、はい。残業ゼロどころか、月の半分くらいはお休みですし、周りの人達は親切に色々と気に掛けてくださいますから」

オレの質問にきょとんとした後に、素直に質問に答えてくれた。

彼女の様子を考えるに、言葉通りの状況らしい。

それならば、特にオレが世話を焼く事もないだろう。

「そうか、職場に困ったらデジマ島のエチゴヤ商会を訪ねろ」

それでも、これくらいの一言は許されると思う。

◇

「ここからは飛行機で帝都の空港に向かう」

「飛空艇ではないのですか?」

リートディルト嬢の言葉に、ゼナさんが疑問を口にした。

ゼナさんとリザは翻訳指輪を使っているので、イタチ帝国の人達との意思疎通は万全だ。

「そうだ。飛行機は速いぞ」

子供のような顔でリートディルト嬢が自慢する。

案内された先の空港には20人乗りくらいの小さなプロペラ機が待っていた。

機体のフォルムはオレの知る飛行機に近い。

中は席一つ当たりが広めで、左右に一列ずつの8席しかなかった。

座席も豪華だったし、貴賓用の飛行機のようだ。

離陸の時にリザやゼナさんから小さな悲鳴が漏れていた。

二人とも空を飛べるのに怖いのかと思ったが、それぞれ別の理由があったようだ。

「竜の背に乗ったときと似ていますが、急激な浮遊感は気持ちの悪いモノですね」

なるほど、リザの場合は離陸時がジャンプなので、浮遊感はほとんど覚えないだろう。

「私は飛行機が落ちるんじゃないかと不安になっちゃいました」

ゼナさんらしい心配だ。

窓から飛行機の翼が揺れているのが見えたから、不安だったのかもしれない。

飛行機が落ちたとしても、ゼナさんの装備ならかすり傷程度で済むので心配は無用だったりする。

「あの線は鉄道でしょうか?」

「そのようだ」

「あれはイタチ帝国の誇る都市間弾道列車の 煙車路 ( えんしゃろ ) だ」

リザの質問に答えると、リートディルト嬢が自慢気に単語の間違いを訂正した。

オレ達に鉄道の知識がある事を疑問に思わないところは、ポンコツ可愛いと思う。

そして、帝都の近くまで来たところで、リザがそれを見つけた。

「あれはなんでしょう?」

「結界柱にしては大きいですね。何かの塔でしょうか?」

「それにしては金属のように光を反射していますね」

リザが見つけ、ゼナさんが首を傾げた視線の先にあったのは――。

「あれは……『ぶれいんず』の白の塔だ。ごうごうやかましい音がするので、帝都から隔離してある」

いやそうな顔でリートディルト嬢が告げた。

――ロケット?

弾道ミサイルにしては大きいし、人工衛星でも打ち上げようとしているんだろうか?

本当にロケット風の塔かもしれないけどさ。

そんな会話をしている間にも飛行機は高度を下げ、帝都から少し離れた郊外の飛行場へと着陸した。

生憎の曇り空で帝都の様子は見えなかったが、すぐに着くんだし、まあいいだろう。

降下するときにリザとゼナさんが座席の手摺りを握りつぶしていたのが印象的だった。

二人掛けや三人掛けの場合は、防御魔法を使っておいた方が良さそうだ。

◇

「これが我が帝国の首都だ!」

オレ達を乗せた煙車がトンネルを抜け、高台の路線から帝都が一望できる場所に出たとたん、リートディルト嬢が自慢気にナビしてくれた。

「こ、これが帝都」

「す、すごく大きな建物がいっぱいです」

リザとゼナさんが驚きの声を漏らす。

そこには林立する摩天楼と中央に偉容を誇る巨大なドーム型の建築物が見えた。

「どうだ! 帝都は凄かろう?」

「あのドームが皇帝の城か?」

「そうだ」

疑問を口にするとリートディルト嬢がそれを肯定してくれた。

「変わった形だな」

「ふふん、伊達や酔狂であのような形をしているのではないぞ?」

リートディルト嬢が優越感に満ちた顔で、こちらを見下ろして沈黙する。

恐らく、オレが問い掛けるのを待っているのだろう。

こうまでアホ可愛いと、思わず意地悪な行動をしてしまいそうだ。

「空からの襲撃を警戒しているのだろう? それとも太陽光発電でもしているのか?」

オレの発言のどちらかが正解だったらしく、リートディルト嬢が面白くなさそうに沈黙してしまった。

ちょっと、大人げなかったかもしれない。

オレ達を乗せた煙車は帝都の巨大な門を抜け、立派な駅へと到着した。

さて、「全マップ探査」で得たイタチ帝国の帝都の情報だが――。

人口は30万人を超え、最多を誇るのはイタチ人族ではなくネズミ人族とウサギ人族の二種族で、イタチ人族は第三位だった。人族もいるがその割合はあまり高くない。

特筆するべきは、奴隷が一人もいない事だろう。

階級に一級市民から三級市民まであるので、三級市民が奴隷と同じ扱いの可能性は残るけどね。

帝国臣民の平均レベルは3しかなく、シガ王国の平均と同じくらいだが、兵士の平均が10レベルと高く、騎士達も平均30近くある。

リートディルト嬢の所属する 宮殿騎士団 ( テンプル・ナイツ ) は噂通り、レベル50超えが107人もいるようだ。その内の10人が60レベルを超え、騎士団長とナンバー2はレベル70に達していた。

この辺りの面々をマキワ王国の侵略戦争に使っていたら、オレ達が介入する間もなく終わっていたに違いない。

反面、宮廷魔法使いのレベルはあまり突出しておらず、レベル50台が2人いる以外は、平均40程だった。

宮殿騎士団 ( テンプル・ナイツ ) の半数が魔法スキルを持つ事から、宮廷魔法使いの役割は戦闘以外に特化しているのかもしれない。

残念ながら、皇帝や軍師トウヤの二人はマップに引っかかってこなかった。

どこか別マップに潜んでいるのだろう。

「あれ? あの顔どこかで見たことない?」

「う~ん、アレックスっぽいけど、ちょっと背が低くなくなくない?」

駅舎内のパーラーでパフェを食べていた黒髪と紫髪の女性達が、オレを指差して話すのが聞こえた。

彼女達はイタチ帝国の研究機関「ぶれいんず」に所属しているらしい。

紫髪の少女は転生者として、もう一人の黒髪の少女も、明らかな日本人顔をしている。

確認するのを忘れていたので再検索したところ、帝都内には様々な年齢の転生者が10人以上もおり、「ぶれいんず」の中には目の前の黒髪の少女のように、ユニークスキルを 持たない ( ・・・・ ) 日本人風の名前の者達も多く所属していた。

メネア王女の祖国ルモォークで行われていた「日本人召喚」実験は、イタチ帝国の本国で継続していたらしい。

どうやら、帝都での仕事が一つ増えたようだ。

パーラーの女性達が楽しそうな雰囲気なのが救いだね。

◇おまけ◇

――ぐへへへ、こんな好機を逃すようなアリサちゃんじゃないわよ。

抜き足差し足忍び足で、孤島宮殿からシガ王国王都のエチゴヤ商会へと向かう。

「エルテリーナ」

「おねがい、ティファ。その手を離して」

エチゴヤ商会に行くと、ご主人様の前でユリユリな会話が繰り広げられていた。

ご主人様の頬に人差し指を伸ばした支配人のエルテリーナさんの手を、洋風超絶美少女のティファリーザが握りしめて阻止している。

そういえば、今現在ご主人様の奴隷のままなのは、このティファリーザだけなのよね。

なんだか、ちょっと特別扱いっぽくて悔しい。

「あの柔らかそうなほっぺに、ちょっとだけ触れてみたいのよ」

うんうん、エルっちの言葉には共感できる。

あのほっぺはつつくと、とっても気持ちいい。

ご主人様が嫌そうに手を振り払うのがとってもキュートで、あのリアクションだけでしばらく妄想が捗るほどだ。

「相手の意識のないところで、そのような行いをするのは卑怯です」

ティファリーザはマジメ過ぎる。

でもでも、アリサちゃんの目は誤魔化されないわよ。

あれはエルっちを諫めながら、自分に言い聞かせている顔だわ。

よっし、ここは伝道師アリサちゃんの 実力 ( ジツリキ ) を見せてあげましょうかね。

「聞いたわよ! 二人とも!」

「ア、アリサさん」

「もう一人問題児が……」

なにげにティファリーザってば、わたしに冷たいのよね。

複式簿記を三日で覚え込ませた時は、あんなに素直だったのに。

「ティファリーザの言う通り、ご主人様のほっぺを 突 ( つつ ) くのは意識のあるときが一番よ!」

なぜか、わたしの言葉を聞いたティファリーザが訝しげな表情になる。

「意識のないときにするのは、コレよ!」

私はそう言って、ソファーに腰掛けるご主人様の膝の上に頭を載せる。

――至福!

できればあの細い指で髪を撫でてほしいけど、それは我慢だ。

膝の辺りを撫でたいけど、二人の絡みつくような視線が重たいので自重する。

「ア、アリサさん、私にも……」

十分堪能したところで、懇願するエルテリーナと交代する。

ティファリーザは物欲しそうな顔でみるだけで、止めることも交代を願うこともない。

なんだか、損な性分の子ね。

ここはアリサちゃんが一肌脱いでやろうじゃないの!

「そろそろ交代ね」

「も、もうですか?」

「そうよ、順番よ順番!」

わたしはそう言って、名残惜しそうなエルテリーナをご主人様の膝から押し退ける。

「次はアンタよ」

「わ、わたしは……その」

赤い顔をしたティファリーザがモジモジとうつむく。

なんだろう、この可愛い生き物は。

「何言ってるのよ、わたしやエルテリーナの所行を見逃した時点で共犯よ?」

わたしの一言に、ティファリーザがショックを受けたような顔になる。

「毒を喰らわば皿まで、って言うじゃない」

そんなティファリーザの耳元で囁く。

きっと今のわたしの顔は悪人っぽくなっているに違いない。

「ほらほら、こっちのひ~ざはや~らかいぞ~」

誘惑に屈したティファリーザが、ご主人様の膝の上に横たわる。

「どうよ?」

「えっと、その……気持ちいいです」

よっしゃー! 「気持ちいい」戴きました!!

ぐへへと笑う視界の先で、ティファリーザの金色の髪が撫でられる。

「――へっ?」

そこには目を開けたご主人様が優しい笑顔でティファリーザを見下ろしている。

「あ、あのクロ様、こ、これは」

「うん、わかってる大丈夫だよ」

ご主人様が膝の上であたふたするティファリーザに、やさしくそう告げる。

「犯人はアリサだろ?」

――ヤバイ、バレてる。

あーばよ、ご主人様!

わたしはそう心の中で告げて転移しようとしたが、魔法が中和されていてできなかった。

走って逃げだそうにも、いつの間にか孤島宮殿へのゲートも閉じている。

「分かっているね、アリサ?」

「は、はじめてなの。優しくしてね?」

場を和ませようとしたわたしの言葉をご主人様はスルーして、デコピンと頭グリグリの刑に処されてしまった。

ちょー痛かったけど、久々の膝枕も堪能できたし、今日は良い日だったわ。

※次回更新は 9/18(日) の予定です。

※2016/9/22 通信魔導具の辺りを修正しました。