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16-3.嫁入り皇女

デスマーチからはじまる異世界狂想曲( Web版 ) — ncode.syosetu.com · All chapters

16-3.嫁入り皇女

※2017/8/2 誤字修正しました。

※2018/5/21 一部修正しました。

サトゥーです。小学校の頃、晴天の雨を「狐の嫁入り」と教えてもらいました。不思議と脳内にイメージが浮かび上がった覚えがあります。なぜか、着物姿の狐耳娘でしたけどね。

◇

「お久しぶりね、ペンドラゴン伯爵」

「ご無沙汰しております、リットン伯爵夫人」

舞踏会の翌日、オレは迷宮都市の太守夫人――アシネン侯爵夫人の友人で、王都の門閥貴族に影響力の大きいエマ・リットン伯爵夫人が開催するお茶会に参加していた。

「初めてお会いした時は士爵だったのに、もう爵位が並ばれてしまったわね。来年には逆転されてしまいそうだわ」

本気とも冗談とも取れる微妙な口調で、伯爵夫人が言う。

「さすがにそれはありませんよ。私の爵位が今以上に上がる事はありませんし」

「あら? それじゃあ、本当に陛下やソルトリック殿下の直臣にならないのかしら?」

オレの言葉に、伯爵夫人が目を丸くして驚いていた。

彼女の情報網なら、もうとっくに知っていたはずだから、その情報が正しいのか確認したのだろう。

そして、オレの選択は事前に情報を知っている伯爵夫人さえ、驚く程の事だったらしい。

オレは伯爵夫人のお茶会の中央の席へと案内された。

彼女と親しい高位貴族のご婦人達が座る席だ。

話題の前半は勇者ハヤトの事や魔王殺しの事が中心だった。

昨日の第一王子のサロンで語った内容と同じだが、ご婦人達が好む内容に重きを置いて再構成してある。

受けが良かったのでよしとしよう。

「サトゥー様は天罰の頃は南洋にいらしたのでしょう? やはり海の魔物が襲ってきたのかしら?」

「ええ、島くらいある巨大なクラーケンが地元の軍隊と戦っているのを見ましたよ」

「ペンドラゴン卿も戦われたの?」

「少し助力しただけです。私の乗る船には大砲も載っていましたから」

使ってはいないけどさ。

「まあ、そちらでも武勇を重ねられたのね」

「シガ王国のある中央以南は、勇者ナナシ様と黄金騎士団が活躍されていましたのよ」

「そうなのですか、それはぜひとも拝見したかったです」

遠見の魔法である程度はチェックしたけど、断片しか見ていないんだよね。

随員のブラウニー達に録画機材を持たせるんだったよ。

「大陸西方の諸国は天罰による魔物の 連鎖暴走 ( スタンピード ) で、今も混乱が続いているそうですわ」

「大陸北部のサガ帝国はあまり噂がありませんでしたわね」

「あの国は沢山の軍用飛空艇や強力な騎士団がありますもの」

「歴代の勇者様達が残された聖剣や聖遺物も多いと言いますし」

なるほど、大陸西方以外は安定し始めているって認識で広がっている訳か。

なお、大陸東方にあるイタチ帝国は壊滅し、デジマ島のみが残存していると思われていた。

実際にはイタチ帝国外縁の教区は今も健在なのだが、その辺りは知られていないようだ。

「物々しいお話は殿方にお任せいたしましょう」

今日のお茶菓子が運ばれてきたタイミングで、伯爵夫人が話題を変えた。

オレも殿方なのだが、なぜか彼女の中ではその枠組みに入っていないようだ。

「ペンドラゴン卿は昨晩おモテになったのでしょう?」

昨日の舞踏会に参加していた伯爵夫人が、そんな話題を振ってきた。

身内以外は幼女まみれだった昨日の事を知っているはずなのに、酷い。

「ビスタール閣下も一族から選りすぐりの美女を集めたと仰っていたそうですけれど、ペンドラゴン卿のお眼鏡に適う方はいらしたかしら?」

伯爵夫人が笑みを浮かべて問う。

彼女も昨日の嫌がらせの件を知っていたようだ。

「個性的な方が多かったですね」

どこから集めたのか、ビスタール公爵に問い詰めたいほどだ。

「私の恋人の一人が言っていたのですけれど――」

同じ卓に座っていた妖艶な感じの貴婦人が、色っぽい口調で話し始めた。

「――また、聖骸動甲冑の噂が立っているそうですわよ」

貴婦人がオレにウィンクした。

きっと、彼女はオレが第一王子のサロンでした賭けの事を知っているに違いない。

「ね、ペンドラゴン卿」

スルーしていたら、色っぽい声で促されたので、昨日の話を開陳してみた。

オレが聖骸動甲冑がある方にジョーク回路付きのダイヤの鍵を賭け、他の貴族達が利権や鉱山などを賭けた件を語る。

「まあ、幾ら勝てる賭けだからといって、皆様大人げありませんわ」

貴婦人の一人が賭けに乗った貴族達に対して憤慨する。

彼女達からしても、聖骸動甲冑が見つかる可能性はないと思っているようだ。

「ペンドラゴン閣下、お賭けになった金剛石の鍵を見せてくださいませ」

「ええ、構いませんよ」

若いご婦人のお願いを快諾し、懐から取り出したダイヤモンドの鍵をテーブルの上に置く。

「まあ……」

「なんて大きな金剛石かしら」

「それよりも、金剛石をここまで見事に加工するなんて」

「精緻な加工も見事ですけれど、金剛石の中に魔法回路のようなものがありますわよ」

「これは神代の 秘宝 ( アーティファクト ) に違いありません」

貴婦人達が一斉に鍵を覗き込んで、興奮気味に言葉を交わす。

正面の席の貴婦人の胸元が危険な感じになっているので、視線を少し横に逸らした。

「サトゥー様、この秘宝はどのような力を秘めていますの?」

「私が調べさせた者によると『単体ではなんの効果もない。対になる魔法装置がある可能性が考えられる』と言っておりました」

可能性は無限大だからね。

オレは狐につままれたような顔の貴婦人に微笑んで、鍵内部に 青液 ( ブルー ) で作った回路に魔力をながして、綺麗な模様を浮かべてやる。

「青い光!」

「聖遺物なのかしら?」

「――綺麗」

「なんてステキなのかしら?」

「殿方が賭け草を積み上げるはずですわね」

貴婦人達がうっとりと青い光を湛えた鍵を見つめる。

土魔法使いと魔法道具技師がいれば、色ガラスと光石で同じ事くらいできそうだけどね。

お茶会からの帰り際、伯爵夫人が小声で一つ情報をくれた。

シャロリック第三王子が軟禁先の修道院から脱走し、行方知れず、との事だ。

なんだか、久々に第二代国王以外を指すシャロリックって名前を聞いたよ。

◇

「がっこー」

「がっこー来た、のです!」

「幼生体の気配がすると報告します」

お茶会の翌日、オレは変装セットで姿を変えたタマ、ポチ、ナナを連れて、王立学院の幼年学舎へとやってきていた。

他の子達も誘ったのだが、ルルは学校に嫌な思い出があるようで悲しい顔をされてしまったし、リザは「私には必要ありません」と頑なに拒否されてしまった。

一番学習が必要そうなカリナ嬢は「この歳で学校なんて嫌ですわ」と断られてしまったので、システィーナ殿下に相談してみたところ、セーラやゼナさんと一緒に自分の花嫁修業の会に参加させますと請け負ってくれた。

遠回しに、オレの気持ちはアーゼさん一択である事を告げたのだが、システィーナ殿下とセーラから「分かっています」と良い笑顔で言われてしまった。

どういう意味の「分かっています」かを問いたい気持ちはあったが、おそらくやぶ蛇になると思うのでオレは沈黙を保ったのだ。

「ここ~?」

「騎士学舎より小さいのです」

「小さい事は良い事だと告げます」

キョロキョロと校舎を見回す三人を連れて、オレは幼年学舎の学長室へと向かった。

ここに来るのはシロとクロウの入学以来だ。

「ようこそ、ペンドラゴン伯爵閣下」

「お久しぶりです、学長殿」

オレは顔を隠していた外套のフードを下ろし、学長に対して貴族の礼を取った。

タマとポチがオレのマネをする。

「キシュレシガルザ姉妹かと思ったら違うのですね」

今日のタマとポチは変身セットで普段の彼女達と違う猫人と犬人の姿になっている。

当初は猫耳族や犬耳族が良いとアリサが主張していたのだが、毛が押さえられる感触が嫌だという二人の言葉を優先してこのようになった。

ナナは普通に変装マスクと赤毛のカツラにしてある。

「学長殿には真実を話しましょう――」

オレは三人の正体を話し、三人の学業の妨げになるので変装していると説明した。

「なるほど――閣下のお言葉はごもっともです。 私 ( わたくし ) も三人の学習が捗るように秘密を厳守すると誓いましょう」

「ご理解いただけて感謝いたします」

オレは学長の厚意に礼を言う。

その後、授業の受け方などをクラス担任の女教師から説明され、その日は終了となった。

教室に乱入しようとするナナを止めるのが少し大変だった。

明日からはシロとクロウのいる教室に編入となるので、シロとクロウの二人に伝えて、ナナの手綱を掴んでもらおうと思う。

「しゃて~?」

「マブダチもいるのです!」

二人の視線の先には、騎士学舎に所属するタマとポチの友人達がいた。

タマの尻尾がピンッと立ち、ポチの尻尾が千切れそうなくらい振られる。

飛び出していこうとする二人の腰のベルトを掴んで止める。

「にゅ~?」

「意地悪はダメなのですよ?」

こてりと首を傾ける二人に、どう説明したものかと迷う。

「二人は今変装しているから――」

ダメだと言おうとして口ごもる。

「にゅにゅにゅ~?」

「正体が知られたらダメなのです?」

タマとポチが悲しそうに眉を下げる。

別に良いんじゃないだろうか?

二人の友達なら黙ってくれるだろうし、もし正体がバレたとしても、ダミーの犬人猫人を大量に雇用して学院に編入させれば、新しい変装で紛れ込ますくらいできるだろう。

なにより、失敗から学ぶ事は、子供達にとって必要な事だしね。

「しゃてー」

「マブダチ、なのです」

二人に許可を出した途端、トモダチの所に駆けていた。

◇

「あれはサガ帝国の高速飛空艇ですね」

降下してくる瀟洒な飛空艇を見上げながら呟く。

タマとポチが旧交を温めた翌日、オレは王城へ呼び出されていた。

ヒカルの事前情報によると、サガ帝国からの使節団がやってくるとの事だった。

ザイクーオン戦で大怪我を負い廃人寸前だった勇者メイコは、既にサガ帝国に帰国済みだ。

恐らく、使節団の目的は勇者メイコを治療した件で、エチゴヤ商会の後ろ盾をしているミツクニ公爵に感状でも届けに来たのだろう。

「あれは皇族の専用船だ」

ソルトリック第一王子が平坦な声で呟いた。

それ以降の補足はなかったので、彼の側近達と同様に沈黙を保つ。

ちょっと居心地が悪い。

AR表示によると、飛空艇にはメリーエスト・サガ第二一皇女――皇帝が代替わりしたから皇妹が乗船している事が分かった。

恐らく、勇者関係者という事で派遣されたのだろう。

「行くぞ」

飛空艇が着陸し、風が収まったところで、第一王子が空港の建物の外に足を踏み出した。

オレも彼の一歩後ろを並んで歩く。

飛空艇の側面が開き、純白のドレスを纏った高校生くらいの女の子が姿を見せた。

メリーエスト嬢ではない。

「はじめまして、トリーメヌス皇女殿下。シガ王国へようこそ」

第一王子が皇女を迎える。

彼女はメリーエスト嬢の姪らしい。

「お出迎えありがとうございます。ソルトリック殿下。ご尊顔を拝する事ができて感激しております」

「このような場所で立ち話でもあるまい。城へ参ろう」

第一王子がマントをバサリと払って、皇女一行を先導して歩き出す。

「あら? サトゥーも出迎えに?」

「お久しぶりです、メリーエスト殿下」

喪服のような印象を受ける黒いドレスを着たメリーエスト嬢が、気さくに話しかけてくる。

「リーンはもうシガ王国に戻っているかしら?」

勇者メイコと一緒に保護したときにエチゴヤ商会で療養していたリーングランデ嬢だが、勇者メイコをサガ帝国に送り返すときに、随員としてサガ帝国に同行していた。

メリーエスト嬢の言いようだと、彼女が飛空艇で出発するよりも先にリーングランデ嬢がサガ帝国を発っていたようだ。

オレは軽くマップ検索してみた。

リーングランデ嬢はオーユゴック公爵領の葡萄山脈付近にいるようだ。

光点は停止しているようなので、葡萄山脈で何かしているのだろう。

軽く「遠見」の魔法で覗いてみると、葡萄山脈の巨岩の上に腰掛けて大河を見下ろしている。

気のせいか、黄昏れた感じだ。

「私は存じませんが、オーユゴック公爵領の方も王都に来られていましたから、後で聞いておきましょう」

「ありがとう」

そんな会話を交わしながら、皇女一行の後ろをついていく。

前の方でこちらをチラリと振り返った皇女が、お付きの侍女と内緒話するのを聞き耳スキルが拾ってきた。

「メリーエスト叔母上が勇者様以外の方と親しくされているのを初めて見ました」

「あの方は勇者ハヤト様とご一緒に魔王を討伐されたペンドラゴン子爵様ですよ」

「まあ、あの方が? ずいぶんお若いのですね」

「姫様と同い年にございます」

皇女がさっきとは違う種類の興味を抱いた瞳でこちらを盗み見る。

とりあえず無視するのも感じが悪いので、微笑み返しておいた。

「サトゥーはリーンのような子より、ああいう大人しい娘が好み?」

メリーエスト嬢が小声で尋ねてきた。

シスコンで扱いづらいリーングランデ嬢よりは、普通そうな皇女の方がマシにみえる。

「どちらもお綺麗ですが、年下に恋した事はありませんね」

メリーエスト嬢も22歳だから、オレからしたら年下だね。

落ち着いてるからもっと年上にも見えるけどさ。

「そうなの? 男性は若い娘の方がいいと聞くけど?」

「人によりますよ。私は自分より年上の方が好みです」

具体的には一億歳くらい。

「……そう」

メリーエスト嬢がそう言った後、話題を途切れさせた。

この後、国王の謁見の間で、魔王退治の件でのオレの貢献への感謝や褒賞などが告げられた。

半月ほど前に貰った前サガ皇帝ルーガン二世からの勲章と違い、サガ帝国の新皇帝から何種類かの勲章、パリオン神殿からも魔王殺しの件で聖者認定書を貰った。物騒な聖者もあったもんだ。

なお、名誉貴族の爵位も提示されたが、そちらは断ってある。

大使役のトリーメヌス皇女は新皇帝の長女で、ソルトリック第一王子の長男の第一夫人候補でもあるそうだ。

皇女は16歳で成人済みだが、第一王子の長男は10歳なので、しばらくは婚約者という形をとるらしい。

第一王子の側近によると、メリーエスト嬢は第一王子の夫人候補にと打診があったらしいが、夫人達の序列がややこしくなるので、トリーメヌス皇女を彼の息子の第一夫人候補とする事で収めたらしい。

サガ帝国の皇族ともなると、結婚相手にも相応の格が必要になるようだ。

◇

「やはり、サトゥー殿の作ったエビ天は格別だ」

「なんの! サトゥー殿の紅ショウガのテンプラこそ至高!」

サガ帝国の使節を迎えた晩、オレ達のチーム「ペンドラゴン」はオーユゴック公爵の王都屋敷で開催された舞踏会に参加していた。

主賓はオレ達なのだが、歓迎の舞踏会で求婚を回避する為に、ルルと一緒に調理をしている。

ロイド侯とホーエン伯がバリケードになってくれているのだ。

「――ァンデ様!」

屋敷の入り口の方からざわめきが聞こえてきた。

バタンと舞踏会場の扉が開いて、騎士服姿の美女が姿を現した。

「「「リーングランデ様!」」」

昼間は葡萄山脈で物思いに耽っていたリーングランデ嬢が、溌剌とした笑顔で公爵領の貴族達に愛想を振りまいている。

飛行木馬を使ったにしても早い。

何か新しい乗り物でもゲットしたのかもね。

「お祖父様、お父様、お久しぶりです」

「リーン! 元気だったかい」

リーングランデ嬢の父親が涙を流しながら、笑顔で彼女を抱き締める。

「よくぞ使命を果たした。私はお前を誇りに思う」

公爵の方は重々しく告げながらも、目元に涙が滲んでいた。

リーングランデ嬢は魔王討伐後に帰省もせずに、勇者メイコのサポートをしていたらしい。

そんな家族愛溢れる姿を愛でている内に、テンプラはオーユゴック公爵領の美食家達の腹の内に消え、オレはトルマ主催の慰労会という名の二次会に連行されていた。

こちらの二次会は飲み会のような感じなので、仲間達は先に帰してある。

「あなたって、魔王殺しになった後でも変わらないのね?」

「人間なんてそうそう変わりませんよ」

高そうなワインの瓶を持ったリーングランデ嬢がオレの横に腰掛けた。

オレの杯にワインを注ぎながら、リーングランデ嬢がサガ帝国に帰還した勇者メイコのその後を教えてくれた。

「精神的に少し不安定だったけど、パリオン神殿の神官達と一緒に、魔物による災害が大きかった地方へ慰問に行く仕事をしているわ」

リーングランデ嬢が普通の声でそう言った後、オレの耳を引っ張って小声で追加の情報をくれた。

サガ帝国に帰国した当時は廃人一歩手前だったのに、今では慰問に出かけられるほど回復したようだ。

きっと、パリオン神あたりかサガ帝国の高位神官が、祈願魔法なんかで治療したのだろう。

「あまり詳しく言えないけど、サガ帝国がハヤトの代わりに呼んだ勇者はメイコだけじゃないの」

うん、知ってる。

「でも、勇者召喚には莫大な魔力と神への祈願がいるわ。こんなに簡単に召喚なんてできるはずがない。もしかしたら、帝国はやっちゃいけない手段に手をだしたのかも……」

憂いのある顔でリーングランデ嬢が呟く。

とても色っぽい顔だけど、吐息を感じるくらいの距離だという事を把握してほしい。

さっきから周りの貴族達から好奇の視線がすごいです。

「リーンよ! ペンドラゴン卿なら結婚相手に申し分ないぞ!」

酔った公爵がそう焚き付けると、他の貴族達も尻馬に乗って囃し立てる。

「それはいい! サトゥー君とリーンの子供なら、きっと歴史に名を残す英雄になるぞ!」

トルマが酒臭い息を吐きながら、オレとリーングランデ嬢を密着させるように抱きついた。

「それもいいかもね。ハヤトがいないなら――」

リーングランデ嬢が憂いのある顔でそう呟いて、しなだれかかってくる。

かなり酔っているようだ。

周りから黄色い悲鳴と野太いブーイングが巻き起こった。

さっきまで囃し立てていたくせに酷い。

公爵やリーングランデ嬢の父親である次期公爵は満足そうだ。

「むぅ」

「ギルティ!!!」

「姉様っ!!」

そんな声がホールの入り口から聞こえてきた。

オレを迎えにやってきていた鉄壁ペアやセーラが、憤怒の形相で足早にこちらへ向かってくるのが見えた。

キミタチ、これは不可抗力なのだよ。

※次回更新は 7/23(日) の予定です。

※2017/7/18 15-18の記述や勇者メイコとサトゥーの関係が間違っていたので修正しました。

※2017/7/18 サガ帝国の皇帝が代替わりしていたので、皇女⇒皇妹、皇孫女⇒皇女になります。

※2017/7/19 指摘箇所を微修正

※2018/5/21 リーングランデとの会話でメイコ以外の勇者に関する記述が矛盾していたので修正しました。