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16-5.色々な結末

デスマーチからはじまる異世界狂想曲( Web版 ) — ncode.syosetu.com · All chapters

16-5.色々な結末

※2017/8/1 誤字修正しました。

※2017/8/1 一部修正しました。

サトゥーです。才能に恵まれなかったのか、小さい頃から賭け事はどうにも苦手です。大学時代には競馬や麻雀などに誘われる事がありましたが、今一つ面白さが分かりませんでした。賭博を楽しむにも、適性があるのかもしれませんね。

◇

「準備はいいか?」

「はい」

ヘイム氏の問いに、ヒヒイロカネで作った魔槍ゲイボ グル ( ・・ ) を掲げる。

「では始めよう」

広い演習場の中央付近にある開始線に立つ。

彼我の距離は二〇メートルといったところだ。

「魔刃よ、我が剣に宿れ」

ヘイム氏の魔剣に赤い光が宿る。

今気づいたけど、事前に身体強化を施したらしく、彼の魔力ゲージが減っていた。

「我が名を刻みし魔剣ヘイムよ。我に風よりも速い――」

ヘイム氏の魔剣に組み込んだ「 加速射出陣 《 アクセラレーション・カタパルト 》 」を最初から使ってくる気らしい。

オレは初手を彼に譲ることにし、魔槍を下段に――。

――え?

コマ落としのように眼前に迫ったヘイム氏が、電光石火の突きを放ってきた。

――マジかっ。

事前に加速射出陣を発動状態にしていたらしい。

オレは構える前の槍で、赤い残光を曳く魔剣の突きを弾く。

赤い光の粉が散り、その向こうでヘイム氏の口が動くのが見えた。

「―― 閃光 ( フラッシュ ) 」

ゼロ距離で放たれた閃光が視界を白く染める。

発動を保留していた詠唱済みの光魔法を使ったようだ。

幻惑された視界が戻る刹那の時をヘイム氏が待ってくれるはずもなく、さきほど突きを弾いた方向と逆側から、必殺の斬撃が襲ってきた。

空気の振動が伝えてくる彼の動きをトレースし、蹴り上げた魔槍の石突きで迎撃する。

――GYWEEEEEEN。

剣と槍の石突きが激しい金属音を響かせた。

白く染まった視界に、赤い烈光が上書きされていく。

「―― 加速射出陣 《 アクセラレーション・カタパルト 》 !」

刹那の静寂をヘイム氏の叫びが切り裂く。

足裏から伝わる振動が彼の踏み込みのタイミングを伝えてくれる。

「――瞬動」

縮地にならないギリギリの速度で身を反らす。

光量調整スキルのお陰で、一瞬で色が戻った視界に、ヘイム氏が突きの姿勢で宙を舞っているのが映った。

彼は空中で身をひねり、弓を引き絞るように剣を後ろに引く。

――もしかして。

ヘイム氏の魔力が剣身に集まる。

けっして届かない距離で出した彼の突きは、赤い光弾となって迫ってきた。

――魔刃砲だ。

シガ八剣筆頭のジュレバーグ氏が使っていた秘奥義を彼も会得したらしい。

飛燕の速度で迫る魔刃砲の光弾を、オレも返礼とばかりに魔槍から撃ち出した小さな魔刃砲で迎撃してみせた。

爆音の向こうから、カリナ嬢達の歓声が聞こえてくる。

「三度の奇襲をしのいだあげくに、隠し球の魔刃砲すら防いでみせるかよ」

着地したヘイム氏が男臭い笑みを浮かべる。

このおしゃべりは魔力回復と呼吸を整える為だろう。

「奇襲は魔物の方が狡猾ですよ。魔刃砲の方は優秀な先生がいましたから」

オレの言葉に、ヘイム氏がチラリとリザを一瞥した。

リザではなくエルフ師匠の事だが、特に訂正する必要もないので、そのまま会話を続ける。

「魔槍の力を見せてみろ。今度はこちらが受けきってもみせよう」

ヘイム氏の口から、スポーツマンシップに溢れる発言が出た。

彼は「 反撃 ( カウンター ) 」スキルを持っているので、うかつな大技は危険だ。

――主に手加減的な意味で。

オレは槍を軽く振って、下段に構えを取る。

「――参ります」

瞬動を用いて踏み込み、三分の一の距離を詰めたところで、リザ達が使う最速モードの瞬動に切り替える。

そのまま長柄の利点を活かした突きで、アウトレンジから攻めてみた。

ヘイム氏はそれを鈍重なはずの大剣で、器用に捌いていく。

まるで細剣でも使っているかのようだ。

オレが瞬動でフェイントを入れるのは想定済みのようで、右に左に瞬動で位置を変えつつ攻撃しても、それらをすべて防いでみせた。

彼の背後に回って出した突きさえも、背に回した大剣で受けてしまうほどだ。

さすがはシガ八剣のナンバー2だけある。

もしかしたら、シガ八剣筆頭のジュレバーグ氏よりも強いかもね。

適当なタイミングで距離を取り、ヘイム氏と観客が息を整える時間を作った。

「さすがはキシュレシガルザ姉妹が自分たちより強いと言うだけある」

ヘイム氏が間合いを計りつつ、攻めるタイミングを探っている。

「だが、未だに本気を出していないな?」

――なぜバレた。

今回は水魔法の「 発汗 ( スウェティング ) 」や複合魔法の「 苦戦偽装 《 フェイク・ハード・ファイト 》 」まで使っているのに。

この試合、理想を言えばヘイム氏と引き分けるのが良いんだけど、うかつに引き分けを狙うとバレそうなんだよね。

かといって、簡単に勝つとシガ八剣のブランド力が地に落ちるし、簡単に負けるとリザ達の名誉や魔王殺しの称号――ひいてはサガ帝国の勇者ハヤトの名声にまで陰りが出てしまう。

なかなか面倒な話だ。

「本気の技を出してみせろ」

「では勇者ハヤト様に伝授された奥義で応えましょう」

なので、凄い必殺技を連発して演習場を粉砕し、魔王殺しの凄さをアピールしつつ、「それを凌ぎ切った凄いヘイム氏」という感じでいこうと思う。

「死なないでくださいね」

オレは本心からそう告げて、魔槍ゲイボグルに魔刃を帯びさせる。

観客達の間から「ペンドラゴン伯爵が魔刃を使ったぞ!」と驚く声が上がった。

もしかして、今まで人前で魔刃を使っていなかったっけ?

「貴様こそ慢心して死ぬなよ」

ヘイム氏の言葉に微笑を返す。

「行きます―― 閃光延烈斬 《 シャイニング・ブレード 》 」

かつて見た勇者ハヤトの光属性の必殺技を模倣する。

魔槍ゲイボグルから放たれた赤い衝撃波が、演習場に幾条もの爪痕を刻む。

本来は斬撃として放つのだが、今回は槍なのでビームのように連射してみた。

演習場に土煙が満ちる。

レーダーの光点が土煙の向こうに隠れたヘイム氏の動きを伝えてきた。

オレは魔刃を帯びさせた魔槍を引き絞り、次の必殺技の準備をする。

赤く輝く魔剣を担いだヘイム氏が、土煙を引き裂いて現れた。

「 閃光螺旋突き 《 シャイニング・ストラッシュ 》 」

「 竜角斬 《 ドラゴンホーン・スラッシャー 》 !!!」

二人の必殺技が激突する。

せっかく作ったヘイム氏の魔剣を折らないように命中角度をずらし、オレの閃光螺旋突きはその威力の大部分を空の彼方へと散らせる。

竜の角さえ切断しそうなヘイム氏の必殺技が、閃光螺旋突きの余波を突き破って、オレの背後にある演習場を打ち砕いていく。

「はぁあああああああああ!」

雄叫びを上げるヘイム氏の魔剣とオレの魔槍がせめぎ合い、真っ赤に輝く光の粒子で周囲を染め上げた。

軽くステップを踏んで、漫画のように地面を陥没させる。

オレ達を見守る観衆から大きな歓声が上がった。

よしよし、いい感じだ。

「いくぞ、ヘイム殿!」

「こいっ、ペンドラゴン! お前の全てを見せろ!」

BL臭のするヘイム氏の発言をスルーして、次の必殺技を放つ。

「 魔槍竜退撃 ( ドラグ・バスター ) 」

かつてリザが「 階層の主 ( フロア・マスター ) 」との戦いで使った必殺技だ。

十六連撃の突きがヘイム氏を襲い、彼はその全てを捌ききってみせた。

勢いを余らせたオレの魔槍が、 地面に刺さる ( ・・・・・・ ) 。

ヘイム氏がニヤリと口角を上げる。

彼の魔剣が赤い光を帯びて、先ほどの竜角斬のモーションに入る。

これこそが彼の狙っていた 反撃 ( カウンター ) のタイミングだったのだろう。

だが――。

「絶の技。魔刃爆裂」

――オレもまたこれを狙っていたのだ。

魔槍に宿っていた赤い光が地面に吸い込まれ、竜角斬を放つ直前のヘイム氏を巻き込んで爆散した。

かつてリザが「 階層の主 ( フロア・マスター ) 」を爆散させた技を地面に使ってみたのだ。

観客視点で言うと、避けようのないヘイム氏の必殺技を、自爆同然の技で防いでみせた事になる。

「まだまだぁあああああああああああ!」

――うげっ、マジか。

血みどろでボロボロになったヘイム氏が、防御を無視して突っ込んできた。

いやいや、本当に死んじゃうよ?

オレは彼を殺さないように注意しながら、掌打で意識を刈り取る。

だが、その刹那のタイミングで彼の攻撃は届いた。

彼の魔剣はオレの頬を掠め、一筋の傷を作ってみせたのだ。

オレの自己治癒スキルによって一瞬で傷は消えてしまったが、王国の守り手たるシガ八剣の意地を見せてもらった気分だ。

◇

「ペンドラゴン伯爵、貴公の本気を見せてもらった」

死にかけだったヘイム氏は、演習場に控えていた魔法使い達によって癒やされ、すでに歩ける状態まで回復している。

彼の背後に見える演習場は、巨大ゴーレム達と土魔法使いによって均され、今はカリナ嬢とシガ八剣の「草刈り」のリュオナ女史が戦っている。

オレ達が戦っている間に、彼女たちの対戦が決まっていたらしい。

この後で、レイラス殿とゼナさんの戦いまであるそうだ。

リザは「主の許可がないから」という理由で対戦を断っていた。

レベル差がありすぎるから、戦ったとしても手加減の下手なリザなら一方的な展開になりそうだし、良い判断だと思う。

「――俺の完敗だ」

「いえ、私の負けです。ヘイム殿の最後の攻撃を防げたのは運が良かっただけです」

せっかくノーカンに近い幕引きにしたのに、「完敗」なんて言われたら意味がない。

それに下手に彼の負けを認めてしまうと、色々と面倒ごとが増えそうだしね。

「引き分けで良いではないか――」

空気の読めるソルトリック第一王子が素敵な仲裁をしてくれた。

「――どちらも見事だった。後で褒美の品を届けさせる。これからもシガ王国の為、その卓越した技を磨け」

オレはヘイム氏と一緒に、臣下の礼を取って彼の賞賛を受ける。

「勝負あり! 勝者、リュオナ殿!」

おっと、話している間にカリナ嬢が負けてしまったらしい。

どちらも本能で戦うタイプだが、対人戦闘経験の差でリュオナ女史に軍配があがったようだ。

カリナ嬢もポチやタマとよく戦っているけど、魔物戦を想定した訓練だから、今ひとつ対人戦闘の駆け引きなんかは学べないんだよね。

「救護班! 肩と肋骨が折れちまった。治癒を頼む」

ボロボロのリュオナ女史が、治癒の得意な聖騎士達を呼ぶ。

「負けてしまいましたわ」

「お疲れ様です」

しょんぼりとしたカリナ嬢に、冷たいおしぼりを手渡す。

ちなみに、ラカに守られたカリナ嬢にはかすり傷一つない。

敗北判定は相手に振り回されて目を回して倒れたからのようだ。

「カリナ様、相手はシガ八剣様ですもの。負けて当たり前ですよ」

ゼナさんがカリナ嬢を慰める。

「そんなの言い訳にならないですわ。ゼナは勝ってくださいませ」

「大丈夫です。ゼナ様なら、落ち着いて戦えば勝てますよ」

「は、はい。頑張ります」

カリナ嬢とリザがゼナさんを応援する。

◇

「――あれはありなのか?」

「はい、ご主人様。勝負を挑まれたときに、ゼナ様が魔法主体だが構わないかとレイラス殿に尋ねて、是と回答を頂いています」

オレ達の視線の先では、空に舞い上がったゼナさんが、空中から「 気槌 ( エア・ハンマー ) 」をたたき込む一方的な戦闘が繰り広げられていた。

最初のうちはレイラス氏が地上から光魔法で反撃していたが、ゼナさんが纏う「 積層気壁 《 ヘビー・エア・ウォール 》 」で完全に防がれてからは、聖盾による防御に徹している。

なお、積層気壁を突破できるレイラス氏の中級攻撃魔法は、発動が早いゼナさんの下級風魔法で中断させられていた。

ゼナさんが使う上級の風魔法なら、あっという間に勝負が付きそうだが、優しいゼナさんはレイラス氏が大怪我を負うのを恐れて使えないようだ。

『――高度が下がっているぞ』

「本当ですわ」

ラカの指摘通り、ゼナさんの滞空する高さが下がっている。

彼女の使う「 飛行 ( フライ ) 」は制御が難しいから、攻撃魔法の連続で制御が緩んでいるのかもしれない。

教えてあげたいが、試合中は周囲からのアドバイスが禁止されている。

「――ご主人様」

リザの呼び声に、視線を地上に戻した。

レイラス氏が重装備をパージして、凄まじい速度で駆け出す。

「 昇空閃 ( レイジング・ブレイド ) 」

魔刃を帯びた魔剣を片手に、ゼナさんの足下で聖盾を捨てて必殺技を放つ。

レイラス氏が瞬動スキルと跳躍スキルの重ね技に、斬り上げタイプの必殺技の勢いを重ねて、空中のゼナさんに迫る。

「■■■■ 風盾 ( ウィンド・シールド ) 」

ゼナさんが慌てて、詠唱の早い風魔法を使う。

レイラス氏の魔剣が風盾を軽々と切り裂いた。

「下級魔法など――」

それを見た誰かが呟く。

だが、それは勘違いだ。

ゼナさんが狙ったのは、レイラス氏の必殺技を防ぐ事じゃない。

風盾の残滓でレイラス氏を押し戻し、自分が上空に移動する推進力にするためだ。

そして、さらに――。

「破棄」

「ぬぉおおおおっ」

――身にまとう風魔法を解除して発生した暴風で、レイラス氏を地上へと叩き落とす。

レイラス氏は魔剣で暴風を切り裂いたが、そこにゼナさんからダメ押しの一撃が届いた。

「……■■■ 落気槌 ( フォールン・ハンマー ) 」

体勢を崩したレイラス氏に、ゼナさんの重い風魔法が炸裂し、受け身を取る間もなく地面に叩きつけられた。

常人なら死んでもおかしくないが、さすがはシガ八剣。

すばやく跳ね起きて、近くにあった聖盾に飛びつく。

伸ばした彼の手が聖盾に触れようとしたその瞬間、彼の背中に重力加速を得たゼナさんの追撃が決まった。

「ぐはっ――」

「■■■■ 風縛 ( エア・ホールド ) !」

詠唱短縮された風縛がレイラス氏を縛り上げ、その喉元にゼナさんの抜いた短剣が添えられる。

「勝者! ゼナ・マリエンテール!」

多くの人たちが予想していなかった勝利に、鼓膜が破れそうな大歓声が上がった。

「見事だ。ゼナ殿」

「ありがとうございます、レイラス様」

レイラス氏の称賛にゼナさんが恥ずかしそうに答え、健闘をたたえる握手を交わす。

審判は気づいていなかったが、決着判定時にレイラス氏の利き腕は風縛をレジストしており、審判の早合点が無ければ、手に持った魔剣でゼナさんに反撃する事が可能な状態だった。

だが、彼は審判の判定を受け入れ、相打ちには持っていかなかったようだ。

あの困ったシャロリック第三王子のお目付役を任されていただけはあるね。

◇

――おや?

執事風の衣装を着た紳士が、演習場に駆け込んできた。

誰かを探しているようだ。

何かあったのかな?

なんとはなしに見ていると、その紳士は第一王子の取り巻きのところへと駆け寄って、何か耳打ちしている。

「王都防空隊――」

「なんだとっ、それは 真 ( まこと ) か?!」

「――御意」

喧噪のせいで肝心な部分が聞き取れなかったが、青い顔をした取り巻き貴族がオレのところに走ってきた。

「ペンドラゴン伯爵、申し訳ないが先日の賭けを降りたいのだが、了承してもらえぬだろうか?」

「別に――」

「どうされた? 賭け嫌いの奥方にでも知られたのか?」

構わないと言おうとしたところで、別の貴族に割り込まれた。

取り巻き貴族が一層青い顔になる。

すると、そこに別の貴族が割り込んできた。

具合でも悪いのか、ものすごい脂汗だ。

「わ、私も卿と同じく賭けを降りたい。ただ降りるのも失礼に当たる。この伝家の宝剣を詫びに差し出そう」

「どうしたのだ、卿まで」

「ええい、どけ。私はペンドラゴン伯爵と話しておるのだ」

訝しげな貴族紳士を押し退け、脂汗貴族と蒼白貴族がオレに詰め寄る。

なんていうか、二人とも顔が真剣すぎて怖い。

「このような場所では外聞がよろしくありません――」

後でサロンで話そうと言うと、より一層焦った感じになった。

「い、いや、改めるほどではない」

「た、頼むからこの宝剣を受け取ってくれ」

――なにか変だな。

そう思って、なんとなくマップ検索してみた。

あった。

聖骸動甲冑だ。

どうやら、聖骸動甲冑が見つかった情報を得た者達が、結果が公表される前に賭けを降りようと考えたようだ。

オレは申し出た二人の貴族をメモしておく。

おそらく、この二人の家は情報収集能力が高いだろうからね。

「貴公ら、何を隠しておる」

訝しげな顔の第一王子が二人の貴族に問い質した。

こうもあからさまだと、そりゃ不審に思うよね。

『サトゥー殿、西南西からワイバーンが接近している』

「ありがとう、ラカ」

ラカの報告に礼を言う。

接近してくるのは王都防空隊のワイバーンだから大丈夫だ。

すぐにワイバーンが視界に入り、王子の取り巻き貴族達が騒ぎ出す。

王都在住なら普段から見慣れていそうなものだけど、ワイバーン達が王都上空を飛行する事はないから、軍隊と縁遠い人達には分からなかったのかもね。

「何事だ騒々しい」

「で、殿下! あれを!」

「騒ぐな! 王都防空隊のワイバーンではないか!」

王子に一喝されて、取り巻き達が落ち着きを取り戻す。

「ああああ、ペンドラゴン伯爵、お願いだ」

「た、頼む、後生だから――」

脂汗貴族と蒼白貴族がオレの服を掴まんばかりに懇願する。

その姿を見て、他の貴族達も不安を覚えたのか、お互いに顔を見合わせてひそひそと言葉を交わし始めた。

「聖骸動甲冑だ! 聖骸動甲冑が西方の魔封峡谷で見つかったぞ!」

そこにワイバーンから降りた兵士が叫んだ。

「なるほど、そういう事か――」

納得する王子と対照的に、脂汗貴族と蒼白貴族が絶望に泣き崩れた。

他の貴族達も蒼白な顔を見合わせる。

懇願するような貴族達の視線がオレに集まった。

そんなに見られても困る。

オレとしては賭けの賞品に魅力はないのだが、「賭けはノーカンだ」と言う事はできない。

そんなことをしたら、無謀な賭けを仕掛けてくるような困ったヤツが、今後次々と現れそうだからね。

さて、落としどころはどうするのがスマートだろう。

こんな時はアリサの助言が欲しいね。

※次回更新は 8/6(日) の予定です。

※2017/8/2 追記

活動報告に[デスマ11巻の見どころ&帯付き表紙公開]を公開しました!

ネル&謎の美少女のキャラデザも公開中です。

※2017/7/31 光量調整スキルによって、ほんの一瞬で視界が復活している事を明記しました。

【宣伝】

最新11巻とコミカライズ版5巻は、8/10(木)ごろ発売予定です。

活動報告に新刊の見所や書影紹介がるので宜しければご覧ください。

同時期発売の月刊ドラゴンエイジには、コミカライズ5巻の掛け替えカバーが付くそうです。