LNCrawler

16-15.新たな旅路

デスマーチからはじまる異世界狂想曲( Web版 ) — ncode.syosetu.com · All chapters

16-15.新たな旅路

※2017/9/24 誤字修正しました。

サトゥーです。クエストという言葉はゲームで学びました。昔は好きなときに始められる小イベントだったんですが、最近は突発的に始まったり時間でなくなったりとバリエーションが増えてきました。次はどんなクエストが増えるのか楽しみです。

◇

「えー、それってお使いクエストじゃん」

「ああ、テニオン神も笑ってた」

アリサの風邪が治ったタイミングで、皆を集めて報告会を行なっていた。

「ふーん、なんだか私の神様のイメージと違うわね」

アリサが複雑そうな顔で眉を 顰 ( ひそ ) める。

「それに神様ってカタコトしか話さないかと思ったわ」

「アリサが転生する時もそうだった?」

アリサの言葉に、たまたま遊びに来ていた元鬱魔王ことシズカが尋ねる。

「うん、カタコトっていうか幾つもの意味が重なったイメージみたいなヤツね」

「それなら一緒だわ。前にユイカもそう言っていた」

シズカと小鬼姫ユイカは面識があったらしい。

どちらも、ひきこもり系女子力が高いから、気が合うのかもね。

「オレが最初に会話したときもそんな感じだったよ。流暢な会話が成立したのはセーラさんのお陰かな?」

「大した事ではありません。――こういうのは内助の功というのかしら」

横に澄まし顔で座っていたセーラが、オレの腕を抱いて頭を預けてくる。

「「「あー!」」」

「ぎるてぃ」

それを見たアリサ、ヒカル、カリナ嬢、コア・ツーが叫びを上げ、女教師ルックのミーア先生がオレの膝の上に乗りながら断罪の言葉を告げる。

元気がなかったヒカルだが、覇王を例の将軍の墓所に葬った事で気持ちに一区切りがついたのか、ここ数日は元気な顔を見せてくれるようになった。

ここしばらく姿を見なかったダンジョンコアの外部探査用ホムンクルスであるコア・ツーは、海岸の岩場で貝取りに嵌まっていたそうだ。

何が楽しいのか分からないが、食卓に貝料理が多かったのは彼女のせいだったらしい。

なお、無言でセーラを羨ましそうに見ていたのは、ルルとゼナさんの二人だ。

タマとポチの二人はさっきから、ソファーに座るオレの足下で、バターになりそうな勢いでぐるぐる回って遊んでいる。きっと難しい話に飽きたのだろう。

「セーラ様、人前でべたべたと身を寄せるのは少々はしたないですよ」

システィーナ王女は余裕な表情でセーラを窘める。

アリサとミーアが「ぐぬぬ、正妻候補の風格?」「否定、一番」なんて会話を交わしていた。

「失礼致しました。公都から戻るまでは毎日の事だったので、習慣になっていました」

セーラさんが爆弾を落とす。

その言葉は事実だが、それはオレに対するリーングランデ嬢の過剰なスキンシップを見たセーラが、ヤキモチを焼いてベタベタしてきたというのがその実態だ。

リーングランデ嬢のスキンシップはセーラに構ってもらうためのモノなので、彼女にオレへの恋愛感情はない――と思う。

「サトゥー、序列は大切です。セーラ様の色香に迷う前に、ミト様や私と義務を果たしてください」

「――義務?」

システィーナ王女の言葉にヒカルが首を傾げる。

義務って、貴族としての子作りの義務のことかな?

結婚もしていないのに、いくらなんでも気が早すぎる。

「ちょーっと待ったぁあああ!」

アリサがバンッと手を突き出して叫ぶ。

「順番は私達が先! ルル、あたし、ミーア、アーゼたんで予約が入ってるんだから」

「異議。婚約者一番」

「タマも~」

「ポチもご主人様のお嫁さんになるのです!」

アリサの言葉に年少組が食いついてきた。

うん、頑張ってうやむやにしてくれたまえ。

◇

「そういえばミトの勇者召喚の時はどうだったの? パリオン神と会ったんでしょ?」

「えー? そうね、昔の天罰の時に神の声を聞いたけど、あれと一緒だったし。たぶんアリサ達のとも一緒だと思うわよ」

ヒカルがサガ帝国に勇者召喚されたときに、パリオン神が仲介したそうだ。

そういえば――。

神あるいは神の眷属っぽい「絵の幼女」は普通に話していたっけ。

「ヒカ――ミト、送還時に地球の祭神に止められたと言っていただろ? 祭神の言葉も一緒だったのか?」

「んー? 天之水花比売 ( あまのみずはなひめ ) は普通に喋ってたよ」

その違いはなんだろう?

「こっちの神様はもっと高位の存在なんじゃないの? 私達と次元が違うから意思疎通ができない的な?」

アリサが予想を口にする。

SFに登場する神様にありがちな設定だ。

高次の存在にしては俗っぽい気もするけどさ。

「パリオン神も紫色の光みたいな感じで白い空間に浮いてた?」

「転生の神はそんな感じだったの? パリオン神は神殿みたいな場所で会ったよ。水色の水晶でできた幼女像みたいな姿をしていたけど、単なる偶像っぽかったかな」

「ふーん、ハヤトは可愛い幼女だって言っていたから、人によって見え方が違うみたいね」

なるほど、これまであまり神々に興味がなかったから聞かなかったけど、けっこう人によってイメージが違うらしい。

もしかしたら、その人の神のイメージで姿が見えるのかな?

◇

「神々の試練には連れていってくれるんでしょうね?」

仲間達を代表してアリサが尋ねてきた。

「悪いけど試練は一人で受けるよ」

「ダメよ! 何があるか分からないのよ? 一人なんて危険だわ!」

アリサがダンッと机を叩いて主張する。

危ないから一人でやるんだよ。

「大丈夫だよ。いざとなったら、アリサが助けに来てくれるだろ? 眷属パワー、でさ」

ぐぬぬと納得しない顔のアリサに、そう説得する。

「お任せ下さい。ご主人様の命とあらば、この竜槍で神さえも貫いてごらんにいれましょう」

「神即斬~?」

「神様は悪い子なのです? いい神様は斬っちゃダメなのですよ?」

気炎を上げるリザとタマに、珍しくポチが常識的な意見をしている。

「神様と敵対する気はないから大丈夫だよ」

困り顔のセーラや神々を普通に信じているゼナさんやカリナ嬢を安心させる。

もっとも、向こうが噛みついてきたときの備えはしてある。

アリサの対神用の空間魔法禁呪「 神話崩壊 ( ミソロジー・ダウン ) 」のコードを流用した精霊魔法をミーア用に開発してあり、「 神話喰狼 ( ミソロジー・イーター ) 」という魔法名で、白金色の巨狼型疑似精霊を使役するヤツだ。

また、ポチの聖剣ポチやタマの忍者刀、ナナの大剣は、イタチ帝国の技術を使って天竜の牙の粉末を塗布して強化しておいた。

なお、この粉末はタマとポチの二人がヒカルと一緒にフジサン山脈の天竜の所へ行って得たモノだ。

まさか、デンタルケアのついでに武器の強化素材を採取できるとは、誰も思わなかった事だろう。

ルルの加速砲の弾丸にも、上記の粉を塗布してある。

「ほんとーに、危なくなったらすぐに呼んでよ? 漫画の主人公みたいに秘めた力が目覚めて大逆転、なんて奇跡はないんだからね?」

心配性のアリサがオレに念を押す。

目覚めそうな「秘めた力」には二つばかり心当たりがあるが、そうそうご都合主義的に使えるようになるとは思えないし、天命を待つ相手と事を構える可能性がある以上、予め人事を尽くしておくのは必要不可欠だと思う。

自分用に進めている奥の手も、試練の旅へ出発する前に完成させておかないと。

「分かっているよ。それに一人なのは試練の時だけだよ。試練前まではリザとナナに同行してもらうし、試練後は皆で外国観光を堪能しよう」

「承知いたしました」

「マスターの安全は必ず守ると告げます」

大陸西方はフルー帝国時代の文化が残っている国が多いそうだから、きっと美味しい料理や珍しいモノがいっぱいあると思うんだよね。

他の子から不満そうな声はあったが、ペンドラゴンチーム最強の矛と盾が一緒なら大丈夫、と皆が納得してくれた。

万事に卒のないゼナさんも一緒に連れていってもいいんだけど、ゼナさんを連れていくとカリナ嬢やセーラも付いてきたがるのでメンバーに入れなかった。

今回の旅で、神の欠片を有するアリサとヒカル、そして神託スキルを持つセーラは、神々から盗み見られるバックドア的に使われる可能性があるので、アリサとヒカルに相談した結果、試練前に連れていかない事にしたのだ。

言うまでもないが、引きこもり体質の魔王シズカは最初から行く気がないようなので、考慮の対象外だ。

「そうだ、ネズさんが『帰りたい』以外を喋ったわよ」

そのシズカがなんでもないことのように口にした。

「ネズさんって、ネズミの魔王だった人?」

「うん、その人」

ネズミの魔王は日本への郷愁が強すぎて、ユニークスキルの過剰使用で魂の器が壊れてしまった人だ。

神の欠片を除去した後、エリクサーや精神魔法でなんとか肉体や魂の器を癒やしたものの、心を閉ざしてしまっていたので、シズカの暮らす異界の一角で、ブラウニー達に介護してもらっていたのだ。

「ハム左衛門を育てる間に、心が癒えたみたいね」

「ハム左衛門って、ハムスター? 安直よね~」

アリサがオレをちろりと見る。

ネーミングセンスがないのはお互い様だ。

「あはは、リスよ」

「へ?」

「だから、ハム左衛門はネズさんが森で拾ったリスの子なのよ」

「なんでじゃー!」

アリサの突っ込みはともかく、ネズ氏が回復してきたようで良かった。

同一世界でなくていいなら、一度くらいネズ氏を地球に連れていってもいいかもね。

なお、元剣魔王の狐っ子は黒竜山脈で緑の幼竜や黒竜ヘイロンと戦闘訓練の日々らしい。

たまにリザと一緒に見物に行くが、魔王時代より剣技が冴え渡る感じだった。

◇

「少し所用で大陸西部に行って参ります」

「大陸西部――」

一応、観光大臣の職にあるので、宰相と国王に旅に出ることを言いにきた。

「次の救済は大陸西方なのですな」

「さすがは竜の化身、 戦場 ( いくさば ) の臭いには敏感だ」

国王と宰相が小声で呟く。

サトゥーの正体が「竜の化身」説は、二人の中では既に確定事項らしい。

「宰相閣下、西方は天罰の影響で混乱しているとの噂を耳にしましたが、今も続いているのでしょうか?」

「うむ、魔物による混乱はサガ帝国が派遣した勇者によって沈静化したのだが、さしもの勇者にも荒れた国土はどうにもならぬ。西方では穀倉地帯を奪い合う争いが起こり始めているとの事だ」

遠い他国にまで手を出す気はないけど、旅先で飢饉の規模が酷いようなら手を差し伸べるのも吝かではない。

自動工場で量産されるクロレラ系の保存食なら、日本の人口を賄えるくらい溜まってきたし、ここらで少し放出するのもありだろう。

「システィーナも連れていかれるのか?」

「そのつもりでしたが、治安が乱れた場所にお連れして万が一の事があってはいけません。殿下は王城でお待ち戴く事にいたしましょう」

詐術スキルの助けを借りて、適当な言い訳を口にする。

同様の理由で、セーラやカリナ嬢も置いていく事になった。ゼナさんもだ。

「それが良い。 妃 ( きさき ) も久々にシスティーナと過ごしたいと言っておったので、丁度良かろう」

システィーナ王女は禁書庫の主で、実母や同母兄妹ともあまり交流をしていなかったみたいだしね。

「――ペンドラゴン伯爵」

用件が終わったところで、国王から呼ばれた。

なんだろう?

「サガ帝国のトリーメヌス皇女の随員として訪れた皇妹のメリーエスト殿の事は存じていよう?」

「ええ、勇者ハヤト様とともに魔王と戦った 戦友 ( ・・ ) です」

厭な予感がしたので、「戦友」というのを強く主張した。

「ふむ、友か……サガ帝国の現皇帝から、メリーエスト殿を貴公の妻にと打診があった」

いや、もうそういうのはいいですから……。

オレの顔をみた国王が全てを悟ったように目を伏せ、一つ重く咳払いをする。

「気が進まぬなら断っても構わぬ。ただ、先方の面子がある故、受けるにしろ、断るにしろ、今回の旅が終わってから答えを聞かせてもらう」

「承知いたしました」

国王によると、この件を断ってもサガ帝国との国交に影響はないそうだ。

「――とはいえ、メリーエスト殿と格が合う相手が他にどれほどおられるか。このままでは修道院の片隅で寂しく余生を送らせる事になるのであろうか……哀れな」

宰相が小さく呟いた。

そんな風に同情を買おうとしても、嫁にはしませんよ?

メリーエスト嬢が気に入った男性をパワーレベリングして、即製魔王を倒させればいくらでも格が合うし、年齢だって若返りの薬をたくさん使えば解決するはずだ。

いっそのこと、勇者ハヤトの世界にロリ化したリーングランデ嬢やメリーエスト嬢を配達するのもありかもしれない。

なんて妄想が脳裏を過ぎったが、実行するのはいささか問題が多い。

縁談を断った時にでも、向こうから相談されたら提案するくらいでいいだろう。

とりあえず、大陸西方への旅も許可が出たし、適当に知人の屋敷を訪問して、旅に出る挨拶回りをしよう。

それから数日の間、王都や迷宮都市の知り合いを順番に訪ね、旧交を温めた。

◇

「――何か足りない気がする」

オレは孤島宮殿の研究室の奥にある隔離実験室で一人呟いた。

ここはユイカによる結界が重ねがけしてあるので、万が一の場合にも外部に被害が及ぶことはない。

――おや?

足下に気配を感じて視線を落とすと影空間の中からこちらにアピールするタマと目が合った。

ユイカの結界に阻まれて中に入れないようで、ガラスにへばりつく猫のような可愛い姿で必死に訴えている。

オレは結界を開いてタマを招き入れる。

「ご主人様~?」

結界で阻まれていたのが寂しかったのか、オレの身体を登ったタマが肩車ポジションに落ち着くと、おもむろにオレの髪に頬を擦り付け始めた。

ぽんぽんとタマの頭を軽く叩いてやると、すぐに落ち着きを取り戻す。

「どうかしたのかい?」

「ご飯呼びにきた~? 今日は煮込みはんば~ぐ~?」

なるほど、もうそんな時間だったか。

「あれなに~?」

タマの視線の先にはオレがさっきまで手を入れていた武器が並んでいる。

「あれは聖魔剣っていう剣だよ」

聖魔剣は青と赤の光が混ざり紫色となった光を発している。

かつてドハル老と作った聖魔剣を一人で再現してみたやつだ。

あの時と同様に、神には届かない予感がする。

オレは聖魔剣をストレージに収納する。

「あっちの黒い箱も剣~?」

「ああ、あれは比較用に出していた剣だよ」

そのままだと危ないので、計測機器と一緒に隔離結界で包んでいた。

「――にゅ!」

隔離結界を解くと、タマが総毛立ってオレの肩に爪を立てた。

ちょっと刺激が強すぎたようだ。

オレは台座から神剣を持ち上げ、白い鞘に納刀してからストレージへと収納する。

「こっちも怖いかい?」

「……あい」

神剣の横にあった 黒い槍 ( ・・・ ) を持ち上げてタマに尋ねると、こくりと頷いて肯定の言葉が返ってきた。

反応からして、さっきの神剣よりはマシなようだ。

ストレージに槍を収納すると、タマの身体が弛緩するのが伝わってくる。

「それじゃ、ご飯を食べに行こうか」

「あい~?」

次は謎の空白スキルを検証するつもりだったけど、それは食事の後でいいだろう。

◇

そして、試練の旅への出発の日――。

「それでは行ってくると勇ましく告げます」

完全武装のナナが、飛空艇のタラップ前で見送りの人達に向かって敬礼する。

別に戦地に赴任するわけじゃないから。

「皆、仲良くするのですよ」

「いてら~?」

「お土産は肉がいいのです」

リザの言葉にタマとポチがマイペースに告げる。

「硬くて頑丈な肉をたくさん狩ってきますね」

「おう、ぐれいと~?」

「ポ、ポチはあんまり硬くない肉がいいのです」

肉好きの獣娘達にも、それなりに嗜好に違いがあるらしい。

「シガ王国の事は任せておいて」

「ああ、ミトがいるから安心して遠征できるよ」

ヒカルがいれば大抵の脅威は排除できるだろうしね。

「あら? ミトたんだけ?」

「不服」

「もちろん、みんながいるからさ」

アリサとミーアの頭を撫で、皆の後ろで拗ねるカリナ嬢を一瞥する。

今、声をかけるとカリナ嬢を連れていくことになりそうなので、ここはスルーしておいて、出航後に孤島宮殿でフォローしよう。

ユニット配置ですぐに帰れるしね。

「サトゥー!」

遠くから手を振ってやってくるのはリーングランデ嬢だ。

「大陸西方に行くんでしょ? 私も一緒に行ってあげようか? 向こうには知り合いも伝手もたくさんあるわよ?」

「ね、姉様!」

リーングランデ嬢の人脈は頼りになりそうだけど、それには孤島宮殿やオレの正体を伝える必要があるので遠慮する事にした。

「ご厚意はありがたいのですが、今度の旅は私用ですから」

「そう?」

オレが断るとは思っていなかったらしく、リーングランデ嬢が少し面白くなさそうな顔になる。

「そういえばメリーとの縁談が来てるんでしょ? メリーを娶るなら私も一緒にどう? サトゥーなら嫁も一杯いるし、私一人くらい増えても問題ないでしょ?」

「問題あります! 好きでもない人に嫁いでどうするというのですか!」

リーングランデ嬢の言葉にセーラが激昂した。

顔を背けたリーングランデ嬢の「――だって、好きな人にはもう会えないもの」という切ない呟きは、「聞き耳」スキルを持つオレと忍者タマくらいにしか聞こえていなかったに違いない。

「メリーエスト殿下の縁談については旅から帰ったら、という事になっておりますので」

「なーんだ、断っちゃうのか。勿体ない。メリーはサトゥーより年上だけど、女の私から見てもグッとくる肢体をしてるわよ?」

「姉様!」

ハヤトが送還されてから、情緒不安定で絡み上戸なリーングランデ嬢の相手はセーラに任せて、他の面子に声をかける。

「ゼナさん、子供達の通学護衛をよろしくお願いします」

「はい! お任せ下さい」

胸を叩いて了解してくれるゼナさんが頼もしい。

「サトゥー、こちらの庶事は私に任せて心置きなく試練を果たして下さい」

「はい、システィーナ様」

庶事っていうのは貴族間の調整やソルトリック第一王子の相手かな?

別れを終えたオレ達は飛空艇に乗り込む。

仲間達がいる場所から離れた場所には、凄まじい数の群衆が手を振ってくれていた。

オレが手を振り返すと、耳が痛くなるような歓声が沸く。

まるでアイドルかスター選手にでもなった気分だ。

なお、ソルトリック第一王子や国の重鎮達とは前日の内に挨拶をしておいたので、この場には来ていない。

さすがにVIPがこんな場所に来たら暗殺が怖いからね。

「サトゥー様、出航準備完了です。行き先は変更ありませんか?」

「ああ、変更なしだ」

飛空艇は王都上空を一周し、迷宮都市の上を飛び越え大砂漠上空を進む。

最初の試練がある場所は、ヘラルオン神の中央神殿のある国だ。

オレ達の乗る飛空艇は大砂漠を南西に下り、大砂漠と接する小砂海にある中堅国家へと進路を向ける。

目指すは「太陽の国」サニア王国――。

どんな国なのか今から楽しみだ。

※次回更新は 10/1(日) の予定です。