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16-16.太陽の国へ

デスマーチからはじまる異世界狂想曲( Web版 ) — ncode.syosetu.com · All chapters

16-16.太陽の国へ

※2017/10/4 誤字修正しました。

サトゥーです。お家騒動も革命も、根っこは積もり積もった不満だと思うのです。一般人には意味が無いように見えるガス抜きも、支配者にとっては国家転覆を防止する策なのかもしれません。

◇

「ご主人様、あれはなんでしょう?」

「黒雲のようにも靄のようにも見えると告げます」

飛空艇の甲板で小砂海の漁を眺めていたオレは、リザとナナの言葉に振り返る。

視界の先、小砂海の遙か彼方に黒い靄のようなモノが見える。

「砂嵐かな?」

オレはマップを開いて調べてみる。

ここは迷宮都市セリビーラの西にある大砂漠、その中央南部の山脈を越えた先にある小砂海と呼ばれる水のようにきめ細かい砂で満たされた砂漠だ。

小砂海という名前だが、面積的には日本列島を三個くらい並べられるくらい広い。

二人が見つけた黒靄の場所には、砂塵迷宮という死んだダンジョンがあるようだ。

空間魔法の「遠見」で確認してみたところ、数十個の竜巻が中心にある砂塵迷宮を守るかのように回遊している。

これが黒い靄のように見えたのだろう。

ちょっと興味があったので、飛空艇を寄せてみる。

「あんまり近寄ると危なそうだね」

一定距離まで飛空艇で近付くと、番犬のように何本かの竜巻が寄ってくる。

「竜巻たいふ~ん?」

いつの間にかタマが甲板の手すりに乗って竜巻見物をしていた。

忍術で影を渡ってきたのだろう。

「タマ、授業をサボっちゃダメだよ」

「だいじょぶ~?」

タマがにへへと笑いながら「サボってない~?」と続ける。

空間魔法で確認してみたら、王都の幼年学舎でタマが授業を受けている姿があった。

「影分身~?」

影分身はそういう忍術じゃない。

「授業中は忍術禁止」

そう言ってタマを「ほっぺぐにぐに」の刑に処す。

タマが「にゃははははは~」と笑い転げる。

なかなか楽しい。

「ご主人様、砂上船が賊に襲われています」

砂塵迷宮の向こう側、けっこう離れた距離で一隻の中型船が十隻以上のヨット風小型船に襲われていた。

「えまーじぇんし~?」

調査に向かおうとするタマを捕まえて、影に落とす。

「にゅ?」

「こっちはいいから授業を受けてきなさい」

「あい~」

残念そうにしながらも、タマが「にんにん」と言いながら影に沈んでいった。

さて、正義の味方でもしにいこうかな?

◇

「――手助けは必要なかったかな?」

ヨット風小型船の群れに襲われていた砂上の中型船を助けに向かったんだけど、中型船から放たれた巨大な火球が次々と小型船を殲滅し始めたのだ。

救援も必要なさそうだし、遠巻きに飛空艇を旋回させるよう操縦席のブラウニーに伝える。

「マスター、小型船は海賊ですか? と問います」

「いや、砂賊っていうみたいだね」

無法者には違いないので、蹂躙する側を止める気はない。

「それほど余裕ってわけでもないのかな?」

中型船は一撃一殺で小型船を沈めているけど、どうも船の固定武装ではなく、乗り込んでいる一人の魔法使いに依存しているらしい。

AR表示される情報からして、魔法使いの残魔力が尽きる方が早そうだ。

砂賊もそれに勘付いているようで、何隻も仲間が沈められているのに逃げ出す様子がない。

「ご主人様、砂賊を退治いたしますか?」

「そうだね――」

リザの言葉に首肯する。

なぜか、リザとナナが何かを期待するような視線でオレを見ている。

「少し懲らしめておいで」

「承知」

「カタパルト発進だと告げます」

甲板の一部が分離して、カタパルト用のレールが伸びる。

レールの上に四重の加速門の魔法陣が現れた。

リザとナナがサーフボード型の浮遊ボードを取り出して、カタパルトに向かう。

あの浮遊ボードは前に大砂漠で加速門の実験をしたときに造った遊具だ。

視界の先では、中型船が半数の砂賊船を沈めていたが、ついに魔法使いの魔力が尽きたようで、残り六隻の船が接舷しようと距離を詰めている。

「行きます」

「マスター、行ってくるぞと勇ましく告げます」

リザとナナがカタパルト発進し、浮遊ボードで滑空して最後尾の砂賊の船に着地した。

リザの魔槍が砂賊を次々に戦闘不能にしていき、ナナは剣と大盾で砂賊も船も関係なく蹂躙している。

「飛空艇で中型船の上を通り過ぎてくれ」

「イエッサー」

操縦席のブラウニーに指示し、眼下の状況を確認する。

砂賊船の一隻が中型船に接舷を果たし、中型船の甲板で戦いを始めていた。

砂賊のうち、砂賊船長を含む三人ほどが妙に強い。

「ちょっと行ってくる」

「ご武運を!」

飛空艇が中型船をフライパスする直前、オレは中型船の甲板に飛び降りた。

「●●●」

>「サニア国語」スキルを得た。

これから訪問する国の言葉だ。

丁度いいので、スキルポイントを割り振って 有効化 ( アクティベート ) しておく。

術理魔法の「 翻訳 ( トランスレート ) 」やエルフの翻訳指輪があるけど、細かなニュアンスは個別の言語スキルの方が優秀なんだよね。

「何モンだ、てめぇ!」

「お節介な観光者だよ」

眼帯を嵌めたキャラ付けの濃い砂賊の船長が 誰何 ( すいか ) してきた。

「杖の一族に味方するなら、我らの敵だ」

「剣の一族の絶技、その身で浴びろ」

先ほど上から見かけた妙に強い三人の内の残り二人だ。

よく分からない単語が多いけど、単なる砂賊ってわけでもないらしい。

「絶技――《甲殻砕き》」

「絶技――《髪間貫き》」

身体強化を併用した技らしく、妙なオーラを帯びて二人が突っ込んできた。

どんな技か見てみたいので、腰に差した妖精剣に魔刃を張って受け流す準備をするだけにとどめる。

この二人だけに構っていると、さっきの眼帯船長が甲板に血の雨を降らせるので、「 理力の手 ( マジック・ハンド ) 」で眼帯船長や砂賊達の殺戮を邪魔しておく。

左から来る「貫き」の剣士は剣速が異様に速く鋭い。

レベル30くらいなのに、剣速だけならシガ八剣と遜色ない速さだ。

でも――。

「――直線過ぎる」

フェイントかと思ったけど、一撃必殺系の技だったらしく、普通に受け流せた。

ここから繋がる技があるかもしれないので、追撃はせずにおく。

「ぬぉおおおおおお」

右側から「砕き」の剣士が雄叫びを上げて剣を振り下ろしてきた。

剣の周りに風が渦巻き、魔法的なエンチャントを受けているような不思議な効果を伴っている。

このまま食らったら痛そうだし、避けたら甲板が砕けそうだ。

でもまあ――。

「――遅い」

オレは懐に飛び込み、振り下ろす剣を持つ手を掴んで投げ飛ばした。

投げるときに手首の骨を折る技を思いついたが、考えただけで痛そうなので止めておく。

追撃に備えようと、剣士達に向き直ったが、来る様子がない。

「馬鹿な、決して避けられぬ必中の『髪間貫き』を受け流しただと?」

「こいつ『甲殻砕き』の『渦』を初見で避けてみせた」

なんだか、バトル漫画のような御託を並べ始めた。

ちょっと悠長すぎる。

「ベルベ、 あれ ( ・・ ) を使うぞ」

「だが、秘絶技は門外不出。このような場所で――」

「あれはバケモノだ。使わねば密命を果たせぬ」

ああ、そういう内々の話は余所でやってください。

「一言いいかな?」

オレの言葉に、剣士達が殺気の篭もりすぎた視線を向けてきた。

「悠長にしていると――」

危ないと言いたかったのだが、忠告より先にグシャッとかバキッといった音が甲板に響いた。

言うまでもないが、他の船から飛び移ってきたリザとナナが、二人の剣士を叩きのめした音だ。

「ご主人様、遅くなりました」

「マスター、他の船は制圧したと告げます」

「お疲れ様」

砂賊船の半数は帆が折れ、残り半数も操船すべき砂賊が昏倒しているため、揃って漂流を始めている。

「武器を捨てろ!」

お約束のセリフが甲板に轟く。

そちらを見ると、砂賊船長が上品なローブを身に纏った魔法使い風の少女を拘束していた。

この辺りの国は褐色の肌で黒髪の人が多いのに、少女はアルビノのように真っ白な肌に薄い金色の髪をしている。

「はやく、捨てやがれ!」

砂賊船長が片刃の湾曲刀を少女の喉に向ける。

なるほど、捨てないと人質の命が危ないと主張しているらしい。

オレは妖精剣を鞘に納める。

それを見た砂賊船長がニヤリと口角を上げた。

「リザ」

「――承知」

リザが魔槍を下げる。

リザが僅かに魔槍をしゃくると、先端から赤い光弾――魔刃砲が放たれた。

光弾は目にもとまらないような速さで、砂賊船長の肩を撃ち抜き、その余波で甲板の上に吹き飛ばす。

少女が怪我をしないように、砂賊船長の片刃刀は「 理力の手 ( マジック・ハンド ) 」で固定してある。

「ハイファ様、お怪我はありませんか?」

「ええ、あの方達が助けてくださったのです」

侍女らしき女性が船内から飛び出してきて、ハイファと呼ばれた少女を助け起こした。

奇遇な事に、ハイファと呼ばれた少女は、オレ達が向かうサニア王国の支配階級の一員らしい。

所属は「杖の一族」となっており、彼女はその長の娘にあたる。

「若様! 南西から五隻の軍船が来ます」

上空のブラウニーが拡声器で報告してきた。

「――ハ、ハイファ様」

「追っ手のようですね」

ハイファと侍女が不穏な会話を交わす。

「小破したこの船では逃げ切れません――」

おろおろする侍女の視線が、上空に待機する飛空艇を捉えた。

「――あなた!」

侍女がオレに豊満な胸を押しつけるようにして訴えてきた。

感触は素敵だが、なんとなくやっかいごとの臭いがする。

「他国の方とお見受けいたします。ハイファ様を国賊の手から、お助け下さい」

色仕掛けをする侍女を引き剥がし、ハイファに顔を向ける。

ハイファの後ろ、砂丘の向こうに黒い軍船が見えた。

なんとなく生物的なフォルムの装甲をした軍船だ。魔物の素材を使っているのだろう。

ハイファを助けるのは簡単だが、問題はそこじゃない。

あの船の所属が、これからオレ達が向かうサニア王国というのが問題だ。

さて、どうしたモノか。

まさか、これも神が課す試練の一つじゃないよね?

※次回更新は 10/8(日) の予定です。

※活動報告に、アニメ化追加情報、書籍全巻重版報告、カドカワBOOKS2周年記念(ポチタマSS)などについて記載してあるので、宜しかったらご覧下さい。

10/4 追記

※活動報告に「イベントのお知らせ」をアップしています。ご興味があればご覧下さい。

※アニメ公式サイトで主要キャラクターの声優さんによるキャストコメント動画が公開されています。