LNCrawler

16-幕間1.そのころの王都

デスマーチからはじまる異世界狂想曲( Web版 ) — ncode.syosetu.com · All chapters

16-幕間1.そのころの王都

※2017/10/5 誤字修正しました。

「アリサ、どっち?」

「ショートケーキもいいけど、秋はやっぱモンブランでしょ!」

「そう?」

ミーアはよく分からないという顔で、ショートケーキの皿を取った。

「んまい」

やっぱ、ルルの作るケーキは絶品だわ。

甘くて美味しいものを食べると、授業の疲れが吹っ飛ぶのよね。

「ねぇねぇ、ミーア」

「 なに ( ふぁみ ) ?」

わたしが問いかけると、ショートケーキを頬張っていたミーアが首を傾げた。

くぅ、可愛い。ミーアはこういう仕草が似合うわ。

「ご主人様は今頃どんな事件に遭遇していると思う?」

「むぅ――」

ミーアが眉を寄せる。

「――世界の危機」

「あー、やっぱり?」

ご主人様ってば、何か厄神にでも呪われてるんじゃないかってくらい事件に遭遇するもんね。

もっとも、毎回チートパワーで一掃しちゃうから、本人は自分の不運さ加減に気付いていないみたいだけどさ。

普通なら、「不運だぁあああ」とでも叫ぶくらいはしそうなレベルだもんね。

「世界の危機を連れてくるのはどんな人だと思う?」

「……可愛い子」

ミーアが嫌そうに答えた。

うん、わたしもそう思う。

◇

「創作の時間は、自由に心の赴くままの情熱を迸らせるのです」

せんせー、が難しい事を言ってる。

「ポチはお話~?」

「もちろんなのです。今日は『リュリュのお散歩』を書くのです」

ポチがシュピッのポーズで宣言する。

「タマは絵を描くのです?」

「おふこーすぅ~」

タマは絵を描く。

絵を描くのはタマ。

それぐらい自然な事。アリサが言っていた。

「なんの絵を描くのです?」

「難し~」

描きたいモノが多すぎる。

「なら、晩ご飯で食べたいものを描くといいのです」

「ないす~」

ポチはテンサイ。

でも、お野菜は嫌い。ちょっと苦いから。

好きなのは肉。

今日食べたいのはハンバーグ。

それもナイフを入れるとチーズが流れてくる熱々のチーズ入りハンバーグを食べたい。

とろりと流れてきたチーズにポテトを絡めるのも好き。

チーズとハンバーグは正義。

タマは情熱を筆に乗せる。

さあ――。

「――タマさん、授業終了の時間です」

せんせー、がゆさゆさする。

没頭している間に、授業時間が終わってた。

「にゅ?」

周りの子達がみんなタマを見てる。

ちょっと照れる。

「ポチ、よだれ~?」

横で絵を覗き込んでたポチが、だらだらと涎を流していた。

よく見ると、チナまで口の端から涎が見える。

「タ、タマさん。この絵はお売りになられるのかしら?」

「売らない~?」

チナが尋ねてきた。

これはご主人様にあげる絵。

きっと「タマ、頑張ったね」って誉めてくれる。

もしかしたら、お膝の上に乗せて頭を撫でてくれるかも。

「にへへ~」

思わず笑みが漏れる。

帰ったら、ブラウニーに 額 ( がく ) を作ってもらおーっと。

◇

「――美味しい」

王都でも評判の店と聞いて来てみたけど、噂以上のおいしさだった。

シンプルな豆腐のお鍋なのに、ダシが利いていて薬味を溶いたツユに付けるまでもなくうまみがある。

「ルルの合格点が取れるなんて凄いですわ」

「でも、カリナ様、このお鍋はとても美味しいですよ?」

一緒にお店に来ていたカリナ様とゼナさんが、こちらを眺めて話すばかりで、なかなか豆腐に箸を付けない。

「お二人とも、せっかく美味しいお鍋なんですから、食べ頃の間に」

「たしかに、煮えすぎて味が落ちたら勿体ないですね」

「そうですわね。サトゥーの作る料理には及ばないけれど、確かに美味しいですわ」

カリナ様、ご主人様の料理は別格なんです。

なんてったって、ご主人様は「奇跡の料理人」なんですから。

「 ところで ( ほころれ ) 、ゼナ」

「はい、なんでしょう?」

『カリナ殿、咀嚼中に喋るのは行儀が悪いぞ』

「 ごめんなさい ( ほめんらさい ) 」

カリナ様が口にモノを入れたまま喋って、ラカさんに叱られている。

お豆腐を呑み込んだカリナ様が続きを話す。

「システィーナ殿下は何をしてらっしゃるの?」

「け――いえ、サトゥーさん達が戻ったときに式を挙げるため、準備に奔走されているようです」

「式?」

「え、えーっと、私も詳しくは……」

アリサが殿下と打ち合わせしていたお話かしら?

「私もよく知りませんけど、お祝いのようなモノってアリサが言っていました」

「お祝い?」

カリナ様が首を傾げるので、想像で言葉を付け加えた。

「そうなんですの?」

「え、ええ。そのお祝いの為に、全員分のドレスを作るそうですよ」

――ドレス。

わたしにはあまり縁がない装備です。

「ポチ達も作るんですの?」

「はい、システィーナ様は孤島宮殿の全員分を作ると仰っていました」

……という事は私も?

そっとお腹に手を当て、背筋に冷や汗が流れるのを感じた。

「あら? ルル、もう食べないんですの?」

「はい、味は分かりましたし――」

――ウェストが危険ですから。

リザさんやナナさんの横に並ぶには、もう少しウェストを絞らないといけません。

孤島宮殿経由で迷宮都市へ行って、少し運動をしないと。

顔の不利を補うためにも、美しいボディラインを築かねば!!

乙女の戦いは始まる前が重要なのです。

※活動報告に「イベントのお知らせ」をアップしています。ご興味があればご覧下さい。

※アニメ公式サイトで主要キャラクターの声優さんによるキャストコメント動画が公開されています。