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16-27.ガルレオン同盟(3)

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16-27.ガルレオン同盟(3)

※2017/12/17 誤字修正しました。

サトゥーです。水族館と言えばイルカショーが花形ですが、アシカの見た目を裏切る水中での機動性の高さや可愛いペンギン達の仕草も捨てがたいと思うのです。

そういえば、一緒に行った幼馴染みは水槽の伊勢エビを見て、海老フライが食べたいと言っていましたっけ。

◇

「『軍勢を指揮し、集団の武を示せ』、ですか――」

ガルレオン神殿からの帰り道、オレは同行するミーア、カリナ嬢、システィーナ王女に今回の試練の件を伝えた。

「――これは私の出番のようですね」

システィーナ王女のメガネがキラリと光を反射させた。

そういえば久々にメガネをかけたシスティーナ王女を見た気がする。

「むぅ、海」

テンションの上がったシスティーナ王女に、ミーアが海を指し示しながら指摘する。

「確かに……私のゴーレムは水に浮きませんわね」

「沿岸での防衛ならできますよ。船に乗せるなら、木製のゴーレムを用意するのもアリですね」

木製のゴーレムは基本的に非戦闘用だが、一般兵よりは遥かに強いので海賊相手なら問題ないはずだ。

「わたくしも活躍したいですわ!」

「同意」

カリナ嬢の言葉に、ミーアがこくりと頷いた。

接近戦主体のカリナ嬢や個体戦闘力の高い疑似精霊を操るミーアは、システィーナ王女と違って一人で軍団を率いるタイプじゃない。

「ならば、カリナ様には先陣を切っていただきましょう」

「ええ、望むところですわ!」

彼女の容姿なら、兵士達の士気はうなぎ登りになるだろう。

「ミーアは水の精霊達を使役して海戦を有利にしてもらおうかな?」

「ん、頑張る」

ふんすっ、と鼻息荒く胸をはるミーアの頭を撫で、オレ達は飛空挺へと乗り込んだ。

まずは、現状把握からしよう。

◇

「サトゥー様、周辺空域および海面付近に船影や人影はありません」

「ありがとう」

オレは高々度まで上昇させた飛空挺から飛び出す。

「ちょっと行ってくる。しばらく滞空していてくれ」

「らじゃーです!」

敬礼する飛行服ブラウニーにそう告げて、オレは閃駆でマップの外へと向かう。

ガルレオン同盟諸国や隣接マップを順番に巡り、「全マップ探査」の魔法で情報を収集していく。

「予想以上に海賊が多いな……」

大小合わせて100隻以上の船、それらの船に10人から100人の海賊が乗り込んでいる。

数千人の海賊達が集結すれば、確かに国家を相手に戦えそうだ。

ただし、海賊達は単独で行動している船が多く、3隻以上の船団を構成する者達は希らしい。

レベルは15~30の範囲と3~7の範囲に分布が偏っており、前者が3割、後者が7割となっている。

一番強そうな海賊でもレベル43なので、単独ならばカリナ嬢でも余裕で勝てるだろう。

海賊を構成する種族は人族や獣人が多い。

海棲の亜人種は 鰓人族 ( ギルマン ) がほとんどで、 鰭人族 ( マーメイド ) はあまりいないようだ。

海賊達の多くは、商船団が行き交う海域近くを航行しているか、追跡を振り切りやすい群島や岩礁の多い海域にある独立した街や集落を拠点としているようだ。

「骸骨大公は――いた」

称号を持っていたのは、大型の戦列砲艦を旗艦にした小船団の船長で、レベルは意外に低くレベル24しかない。

たぶん、個人としての戦闘力は低めの指揮官タイプの海賊なのだろう。

指揮する船も海賊と言うよりは、どこかの国の軍隊のようだしね。

もっとも、所有スキルが詐術や交渉、説得、脅迫、威圧なので、あまり有能な指揮官には見えないが……。

「ふむ、気のせいか?」

海賊達の三割くらいが、骸骨大公の船が停泊する港に向かっている気がする。

本当に一大勢力を作ってガルレオン同盟に挑むつもりなのかな?

「対するガルレオン同盟の戦力はっと――」

商船の数こそ多いが、純粋な戦闘艦は少なめだ。

沿岸を守ったり密輸を摘発する為の小型船を除けば、魔力炉や魔力砲を搭載した中型や大型の帆船が60隻くらい。ガルレォーク市単体で9隻ほどだ。

レベル30超えの優秀な戦士や指揮官もいたが、ごく少数で、構成員の多くはレベル一桁の弱兵ばかりだった。

商船を護衛するのは金で雇われた傭兵達で、半数以上は罪科を背負った犯罪者や元海賊、さらには現役の海賊達がパートタイムで傭兵をしている船さえあった。

これらの護衛は中型以下のガレー船やガレー帆船が多く、魔力炉を搭載した船は少なめだ。

そして、それらの護衛船がガルレオン同盟全体で90隻ほどいる。

護衛の傭兵達は海賊よりも平均レベルが高かったが、一番優秀な戦士でもレベル31が最高だったので、個人の武力は低めと言えるだろう。

全軍を集結させれば海賊に余裕で勝てる。

傭兵を切り崩されたり、同盟内で離反する都市や国がいなければ指揮官がよほど無能でない限り大丈夫だ。

まあ、全軍を集結させるのが難しいんだろうけどさ。

「さてと――」

外洋まで出たついでに、深海に潜って魔物のチェックをしておく。

危なそうなのは「深淵に潜む者」と呼ばれるレベル50~70の大型の魔物くらいで、後はどこの海域でも変わらないような魔物達ばかりだ。

ガルレォーク市の港で見かけたシーオークもいたが、100匹程度の群れが細々と集まっているくらいなので、特に考慮しなくていいだろう。

「あとは港で保護した幼女人魚の故郷を――見つけた」

ガルレォーク市の北方のマップに、人魚達の村が点在しており、その中の一つがあの幼女人魚の故郷のようだ。

オレは情報収集を終え、飛空艇の甲板へとユニット配置で帰還した。

◇

「おかえり」

「ただいま、ミーア」

素早くオレを見つけたミーアが、トタトタと駆け寄ってきてぽふんと抱きついた。

すりすりとオレの胸に額を擦りつける。

「まさか、もう調査が終わったのですか?」

「ええ、分析はまだですが、情報収集は終わりました」

冗談半分の顔で言うシスティーナ王女に首肯する。

「ほ、本当に?」

「さすがは、わ、 私 ( わたくし ) の……ですわ!」

「ん、えらい」

驚くシスティーナ王女に、我が事のように自慢げなカリナ嬢、そして背伸びをしてオレの頭を撫でようとするミーア。

三者三様のリアクションが返ってきた。

なお、聞き耳スキルが拾ってきたカリナ嬢の「……」部分には「サトゥー」という単語が隠されていたらしい。

「サトゥーがいれば、世界を征服できますわね」

「その予定はありません」

システィーナ王女の冗談を、笑顔で否定する。

世界を征服するだけなら簡単だろうけど、その後に待っている統治というマゾゲーに参加するのは御免蒙りたい。

「次は港で耳にした噂の件を調べるのかしら?」

「ええ、そうですね」

次にやるべきは、同盟内の不和の調査と骸骨大公とやらが本当に海賊勢力を糾合しようとしているかの確認だ。

それを口にしようとしたオレの視界に、メイド服のブラウニーが部屋に入ってくるのが見えた。

「サトゥー様、人魚っ子が目を覚ましたですよ~」

どうやら、先ほどの調査は後回しらしい。

◇

「●●●●」

>「鰭人族語」スキルを得た。

「落ち着いて大丈夫だから」

パニック気味の人魚幼女をメイド服のブラウニー達があやしている。

『ここは安全だから落ち着いて』

オレは「 翻訳 ( トランスレート ) 」の魔法を使いながら、人魚幼女に話しかける。

サニア王国の時と同様にスキルポイントを割り当てる事も考えたが、今回の試練にはあまり関係なさそうなので、上級術理魔法の「翻訳」ですませた。

『……ニフのコトバ。ニンゲン話せる? ここはどこ?』

最初の内に翻訳が雑なのは魔法の仕様のようだ。

『ここは君が漂着していた港の近くだよ』

『人族の街?』

『ガルレオン同盟やガルレォーク市というのは分かるかな?』

オレの問いに人魚幼女がふるふると首を横に振った。

『迷子なら、君の故郷まで送ってあげるけど?』

『ニュアは迷子じゃない!』

オレの言葉に人魚幼女が激高する。

彼女の名前はニュアと言うらしい。

『なら、何しに来たんだい?』

『……勇者捜しに来た』

少し躊躇ってから、人魚幼女がそう口にした。

『勇者? サガ帝国の勇者かい?』

『色々あるの?』

首を傾げる幼女に詫びて彼女の話の続きを聞く。

『それで勇者を見つけて、どうするんだい?』

『氷の悪魔倒してもらう』

人魚幼女によると、氷の悪魔――魔族の蔑称っぽい――が夜中の内に氷の島を運んできて、彼女の故郷の海を凍らせてしまったらしい。

人魚達は氷の悪魔を恐れ、ガルレオン同盟近傍の海域まで拠点を移したそうだ。

――魔族が暗躍しているのかな?

人魚達の集落のあるマップを検索してみたが、巨大氷山らしきものが見つかったものの魔族はいなかった。

『分かった。知り合いに勇者がいるから、なんとかしてくれるように頼んであげるよ』

『ほんと?』

『ああ、本当だよ』

人魚幼女に指切りを教えてやりながら約束を交わす。

「飛空艇を北西に向けてくれ。操舵用モニターに地図を転送しておく」

「了解です!」

船室から出たオレは、飛行服ブラウニーにそう告げてシスティーナ王女達に、人魚幼女を故郷に送る旨を告げた。

「ちょっと、氷山を片付けてくるよ」

「――待ってください!」

勇者ナナシに変身したオレを、システィーナ王女が引き留めた。

「どうかしましたか?」

「私も氷山が見てみたいです!」

「同意」

「わたくしも見てみたいですわ!」

ちょっと意外に思ったが、よく考えたらテレビや映像配信のない世界だと氷山というのは本で読んだ事があるだけの特別なモノのようだ。

そう言うオレ自身も、地球にいた頃は自分の目で見た事がなかったしね。

「それじゃ、あの子を送り届けたら、氷山見物と行きましょうか」

◇

「すぺたるしゅうむ~?」

タマ、スペクタクルと光の国の宇宙人の必殺技が混ざってる。

「確かに肉眼で見ると凄いわね」

「テレビの特番や温暖化のニュースくらいでしか見ないもんね」

日本の記憶があるアリサとヒカルの感想はオレと似た感じだ。

「ん、壮観」

「ええ、ミーア様。とても神秘的な光景ですね」

ミーアとシスティーナ王女はうっとりと。

「あっ! あそこ! 氷が剥がれて海に落ちましたよ!」

「ルル、落ち着きなさい」

「あっちの氷の上に、変わった生き物がいると告げます。捕獲を提案――」

ルルとナナは姦しく。

リザは窘めつつも、いつもよりテンション高めな感じだ。

一方で、ポチとカリナ嬢は口をぽかんと開けて、氷山を眺めていた。

静かだと思ったら、絶景に心を奪われていたようだ。

「……ぐれーと、なのです」

「……凄く、大きな、氷ですわね」

感想が途切れ途切れなのは突っ込まないでおこう。

オレ達は幼女人魚を鰭人族の仮の集落へと送り届けた後、こうして観光に来ていた。

仲間達の反応から分かるとおり、想像以上の絶景だったので大満足だ。

「――皆、堪能したかな?」

名残惜しい感じだけど、放置すればするだけ周辺海域の海水温が下がるので、そろそろ始末しようと思う。

オレは術理魔法の「 理力の手 ( マジック・ハンド ) 」を氷山へと伸ばし、巨大氷山をストレージへと収納した。

ボタボタと海面に落ちるペンギンやアザラシは異界へと回収し、後で彼らの本来の生息地へ返そうと思う。

アザラシは美味しいという話も聞いた事があるので、何匹かは食用に回してもいいかもね。

「マスター!」

「ご主人様、あれを!」

ナナとリザが氷山のあった場所を指さす。

「氷の結晶?」

「何かしら?」

氷の結晶を模したような灰白色の魔法陣が生まれ、そこから何かが出てきた。

キラキラした氷の身体をした、神秘的な印象の生き物だ。

「――魔族」

「中級でしょう」

仲間達が見破ったように、氷の魔法陣から現れたのはレベル47ほどの中級魔族だ。

極地から潮に乗って氷山が流れてきただけかと思っていたのだが、人魚幼女が言った通り魔族が後ろに潜んでいたらしい。

『ヒョォオオオオオ、ワラワの氷塊魔島が無くなってるヒョウ』

……おい。

神秘的な外見を台無しにする語尾だ。

「ご主人様」

視線で問いかけてくるリザに頷いてやる。

リザは槍を魔族に向けると、ノーモーションで高圧縮タイプの魔刃砲を撃ち込む。

『ヒョォオオオオオ――』

リザの魔刃砲は一瞬で中級魔族の胸を貫き、少し遅れてタマとポチが放った魔刃砲が中級魔族にとどめを刺した。

「これは必要なさそうですね」

ルルが空間庫から取り出そうとしていた加速砲を再収納する。

詠唱に時間のかかるミーアや遠距離攻撃手段を持たないカリナ嬢が残念そうだ。

オレ達の視線の先で、中級魔族が黒い靄となって消えていく。

結局、あの魔族が何のために氷山を持ってきたのかは分からずじまいだったが、魔族の企みを一つ潰したので良しとしよう。

今は魔族退治よりも試練の方が優先度が高いのだ。

念のため、火魔法と空間魔法を併用して、低下していた海水温を元の温度に復元しておいた。

◇

『――魔族を退治して、氷山を消した、ですと?』

『うん、そうだよー』

氷山と魔族の処理を行なった後、オレは勇者ナナシの姿で人魚幼女の集落を訪問していた。

『海水の温度も上げておいたから、そのうち故郷に戻れると思うよ~』

久々の勇者ナナシだったせいか、お気楽口調のナナシとして話し始めてしまったので、そのままのキャラで貫いた。

村長が村人の前でその事を話すと、村人達が海面を飛び跳ねて喜んでくれた。

なんとなくイルカショーを思わせる村人達の舞を堪能し、村長が開いてくれた宴を堪能する。

宴で饗された料理は、お世辞にも豪勢とは言いがたかったが、困窮している様子の鰭人族からすると取っておきのご馳走に違いないので、ありがたく頂いた。

それに――。

『勇者様、海葡萄のお酒です』

『お強いのですね、勇者様』

――グラマラスな人魚さん達のスキンシップ過多な供応を受けられたので不満はない。

『勇者様、これを――』

帰り際に玉手箱風のお土産を貰った。

もちろん、中身は老化する煙ではなく、「人魚の雫」という水中で呼吸できるアイテムが詰まっているらしい。

水魔法があれば水中呼吸を付与するくらい簡単にできるのだが、今回の試練で役に立ちそうなのでありがたく貰っておいた。

さて、帰ったら同盟内の不和の調査と骸骨大公とやらが本当に海賊勢力を糾合しようとしているかの確認しないとね。

その後はオレが指揮できる戦力の調達、かな?

※次回更新は 2017/12/24 の予定です。

※アニメの先行上映会が 2018/1/1 に行われるそうです!

詳しくはデスマのアニメ公式サイトをご覧下さい。

http://deathma-anime.com/