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16-30.ガルレオン同盟(6)

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16-30.ガルレオン同盟(6)

※2018/1/8 誤字修正しました。

サトゥーです。歴史物のシミュレーションゲームだと諜報や破壊工作が大きなウェイトを占めることは少ない気がします。やっぱり、戦場の花は軍隊同士の合戦だからでしょうか?

◇

「思ったよりも怪我人が多いですね」

海賊船の移乗攻撃を受けた二番艦では、死者4名負傷者17名もの被害を受けていた。

オレ達が始末した随伴従魔の攻撃をまともに受けていたら、艦隊そのものが全滅していた可能性が高い。

「こいつがザムドか……」

提督の前に縄で縛られた海賊船長と骸骨騎士ザムドが引っ立てられてきた。

死者と負傷者の大部分はザムドの手によるモノなので、船員達の憎々しげな視線が集中している。

「死ね」

「――なっ」

いきなりザムドを斬り殺そうとした提督の剣を、鞘に入ったままの妖精剣で阻止する。

処刑するのは構わないけど、目の前で残酷ショーを開催するのは止めてほしい。

「どういうつもりだ?」

「彼らを捕縛したのは私の配下です。処刑はガルレォーク市に連行して褒賞金を受け取ってからにしていただきたい」

「ぐぬぬ――」

残酷ショーを阻止するために少しだけ威圧スキルに頼ったお陰で、提督からの反論を封じ込める事に成功した。

「それに処刑などより、怪我人の治療と敵本隊の警戒をした方がよろしいかと」

「治療など、とうに始めさせておる――敵本隊、だと?」

「ええ、敵が単艦で襲ってきたのは、従魔による奇襲で我々の艦隊に大打撃を与える為でしょう。なら、その後にガルレォーク市を襲うための本隊が続いていると考えるのが普通では?」

「と、当然だ! それくらい貴公に言われずとも分かっておる!」

提督はそう言うと、鳥人達や風魔法使い達に探査を命じる。

今回は魔力炉の補助を付けて行うらしい。

◇

「では、私は海賊達の曳航準備を進めさせていただきます」

海賊船長と骸骨騎士ザムドの二人に加えて、他の捕縛海賊達も拿捕した海賊船と共にオレ達の飛空艇でガルレォーク市まで曳航する事でまとまった。

もちろん、海賊船の売却益は提督と海賊討伐艦隊で分配される。

移動中に海賊が反乱を起こさないように、ミーアの精霊魔法で眠らせようと思う。

あの魔法は術者が解除するか術理魔法の魔法破壊を使わない限り目覚めないので、犯罪者の運搬に便利なのだ。

「ふん、海賊どもに手間をかけよって……」

提督は不満そうだが、言質は既にとったので華麗にスルーしておく。

――ん?

「提督、二番艦の怪我人の治療が途中のようですが?」

「あれで十分だ。気になるなら貴公が治療してやれ」

厭そうな顔をした提督が、犬を追い払うように手を振る。

とりあえず許可が貰えたので、飛行靴を履いて隣の船に移動した。

「貴族様、当艦に何か御用で?」

二番艦の艦長が乗り移ってきたオレを見て問いかけてきた。

「怪我人の治療が途中で終わったように見受けられたので様子を見に参りました」

「ああ――止血は終わっています。血を流しすぎた者は戦闘で使えませんが、めしでも食わせておけば港に戻るまでに動けるようになるでしょう」

いや、そっちじゃなく。

オレが視線を向けた先を見て、艦長が痛ましそうな顔になる。

「船の魔法使いや船医に部位欠損は治せません。もっとも、今すぐガルレォーク市に連れて帰ったとしても、こいつらにガルレオン神殿の高位神官様達の治療を受けられるほどの金はありません」

……なるほど。

部位欠損を治すには、高価な上級魔法薬やエリクサーが必要となる。

上級の神聖魔法や精霊魔法があれば手足や内臓の復元もできるが、普通の上級魔法では指などの末端部分の復元くらいしかできない。

もっとも、切り取られてから時間経過が短くて、切られた部位が残っているなら中級魔法薬や中級以上の回復魔法でも治せるのだ。

「ならば、私どもが治療しても構いませんね?」

「それは願ってもないことですが……閣下がですか?」

「いえ、私の仲間には水魔法の達人がいますから」

オレはそう言いながら空中に浮かぶ飛空艇を見上げた。

「大したお礼はできませんが、お願いできますか?」

「ええ、彼女達の乗船を許可頂ければ」

艦長は女性の乗船を一瞬だけ躊躇っていたが、すぐに許可をくれた。

オレは空間魔法でミーアに連絡を取り、飛空艇を二番艦の傍らに呼ぶ。

「傷口」

「みなさん、傷口を洗って切断面を合わせてください」

オレはミーア先生の短い言葉を翻訳し、間接的に治療を手伝う。

「……■■■■ 生命水 ( リカバリー・ライフ ) 」

ミーア先生の魔法によって船員達の部位欠損が治っていく。

切断面がずたずたになっていた二人ほどの船員は、傷口に「理力の手」を伸ばして上級魔法薬を塗布しておいてやった。

「おおお、指が動くぞ!」

「俺の足も動く!」

「腕もだ!」

「膝も痛くない!」

「魔法使い殿、感謝するぜ」

「ありがとう、魔法使い様!」

魔法の効果が収まると船員達の野太い歓声とミーアへの感謝の言葉で溢れた。

「サトゥー」

男達の勢いに怯えたミーアがオレの背後に隠れる。

「がははは、お前らの顔が怖いとよ」

その様子に船員達から明るい笑いが零れる。

ミーアは不満そうだが、ふくれっ面のミーアのほっぺを 突 ( つつ ) くと、いつもの笑みを見せてくれた。

さて、この船の治療も終わったし、ミーア達には飛空艇で海賊船を運搬する振りを頼んでおく。

さすがにガルレォーク市まで往復したら敵本隊との戦闘に間に合わないので、海賊船はオレが作った異界の海に浮かべておいて後で港に運ぼうと思う。

◇

「提督! 二時の方角、距離9000に艦影らしきモノを捉えました。数は8から10ほどであります」

三人で協力して探索魔法を使っていた風魔法使い達が報告する。

マップで調べた時は20隻ずつの3集団だったはず――再確認してみたところ、20隻ずつの2集団は遠距離からこちらの艦隊を囲むように移動しており、風魔法使いが見つけた艦隊は2隻ずつが船をロープなどで接舷させていた。たぶん、1隻に偽装しているのだろう。

「二時の方角で距離9000なら、海藻諸島のあたりか……やっかいだな」

提督が海図を見ながら厭そうに呟く。

オレのマップ情報によると、海藻諸島周辺は岩礁や海藻タイプの魔物や海藻に潜む魔物が多い難所だ。

おまけに小さな島が多いため、海賊が隠れられる場所が多い。

実際、島の幾つかには海賊らしき男達や何艘もの小型の舟が潜んでいる。

「少し時間を空けて、再度探索魔法を使え。移動方向と速度を調べる。通信士、各艦に伝達、半舷ずつ休息と軽い食事を取らせろ」

提督がそう指示した後、各艦の艦長達を集めさせる。

今後の方針を伝えるためだろう。

「よし、艦隊を三つに分けるぞ」

海図を睨んでいた提督がそんな事を言い出した。

「提督、僭越ですが――」

「多数で当たれなどという常識論はいらんぞ」

オレの苦言を察知した提督がばっさりと拒否し、彼の部下に向かって編成を伝える。

「不利を悟って海藻諸島の小島に逃げ込まれたら面倒だ。護衛艦を二つに分ける。支艦隊1に海藻諸島の南の海峡から北上させる。支艦隊2は北側から散開して南下しろ。俺達は最短距離を突っ切って海賊どもに襲いかかる」

旗艦隊が13隻、支艦隊二つが6隻ずつ。数こそ旗艦隊が倍ほども多いが、正面から戦う旗艦隊の方が危険が大きい。

そのせいか護衛艦隊の艦長達からは否定的な意見は出なかった。

相手の数が風魔法使い達の索敵通りなら、提督の作戦も悪くないと思う。

だが――。

「提督、先ほどのクラーケンのような魔物がいたら危険です。それに敵艦隊が発見した10隻だけとは限りません」

「ふん、そのくらいは分かっておる」

「ならば――」

「作戦は変えん。敵艦隊が隠れていたらその時点で臨機応変に対応すればいい」

臨機応変……作戦もなしに臨機応変って、要は行き当たりばったりって事だよね?

「海賊だけならばそれで良いかもしれませんが、旗艦隊以外の二つがクラーケンに遭遇したら――」

「クラーケンは先の一匹だけだ」

オレの言葉を遮るように提督が断言した。

「根拠はおありですか?」

「無論だ」

実際のところ、クラーケンは偽骸骨大公の船の傍にもう2匹いるし、魚雷烏賊も50匹近くいる。

「もし、やつらがクラーケンを複数従えるような手段をもっているなら、とっくにガルレォーク市やガルレオン同盟の港を襲っておるわ」

いや、だから、今がまさに襲おうとしているところじゃないか。

オレがそう口にしようとしたその時、水兵の一人が おたま ( ・・・ ) を片手に階段を上ってきて叫んだ。

「提督! 大変です!」

「何事だ!」

提督が水兵を怒鳴りつける。

「食料の樽が腐ってやがります! おまけに飲料水の樽も全て穴が空けられておりました!」

海賊達が送り込んだ破壊工作員達の仕業だろう。

先ほどの戦いの最中に動いていたのは気がついていたのだが、ちょっとしたマッチポンプの為に見逃していたのだ。

「腐敗毒のようですね」

提督達と一緒に樽の様子を見にいく。

幸い、酒樽は無事だったようなので、最低限のカロリーは取れそうだが、戦闘前に酔っ払うわけにもいかない。

水魔法使いがいれば、海水から飲料水を作る事も可能なので全滅する事はないのだが、その場合、水魔法使いの魔力が戦闘ではなく、ライフライン維持に使われる事になる。

「他の艦から分けさせる――待て、他の艦は?」

提督がようやくその可能性に気がついたようだ。

「す、すぐに調べさせます!」

士官の一人が甲板へと駆け戻っていく。

その結果は――。

「25隻中、19隻の食料と水が全滅。残り6隻も二割程度しか残らなかったか……海賊どもめ」

提督が握りつぶした帽子を甲板に叩き付けた。

3週間分の食料と水を搭載していたらしいから、単純計算で全艦隊の1日分しか食料が残っていない事になる。

ここからガルレォーク市までは3日かかるので、直帰したとしても飢えるのは確実だ。

「こんな事なら、あの魔物の肉を……」

船の調理師が海を物欲しげに見つめながら呟いた。

クラーケンや魚雷烏賊達の死骸は魔核だけを取り出して海に投棄したので、それを後悔しているのだろう。

もちろん、こっそりと「理力の手」を伸ばしてストレージの中に回収してあるんだけどさ。

「提督、一度ガルレォーク市に――」

「バカを言うな! 勝利は目前なのだぞ?」

慎重派の士官の言葉を提督が遮る。

彼は何が何でも海賊を討伐したいらしい。

「お困りのようですね」

「何が言いたい?」

提督が困るのを見る趣味もないので、オレは食料の提供を申し出た。

「食料だと? 25隻の艦隊分の食料だぞ? 貴公の魔法の鞄がどれほど底なしだろうと、1200人分の食料を取り出せるわけがあるまい」

「そうでもありません」

ストレージの中には100万人都市を何年でも賄えるだけの食材があるしね。

「とりあえず、飲料水と保存食、あとはスープ用の乾燥野菜とデザート用の乾燥果実あたりを出しましょう」

オレは格納鞄経由でストレージから、口の大きな空間拡張袋を取り出し、そこから水や食料の入った大樽を次々と取り出していく。

「おぉおおおおぉ」

「すげぇ……」

「嘘だろ?」

船員達がそれを見て驚きの声を上げた。

結構な容量だしね。

「水の入った大樽を一人で持ち上げてやがる」

「しかも疲れた様子もないぞ」

どうやら、驚かれていたのは重い樽を軽々と扱っていた事らしい。

「さすがは魔王殺し……」

「やっぱ、マジだったのか」

「昨日のやたら強い部下が倒したのかと思ってたぜ」

「見た目が貴族の御曹司みたいだから仕方ねぇよ」

聞き耳スキルが甲板にいる船員達の雑談を拾ってくる。

「この艦はこれだけあれば足りますね。では、私は他の艦にも食料を提供してきます」

「か、感謝、するペンドラゴン伯爵」

複雑そうな提督の声を背中に受けながら、他の艦に飛行靴で回る。

連絡船で運搬するのも大変だからね。

「まあ、親切心だけじゃないんだけどさ――」

それぞれの艦に寄った時に、暴徒鎮圧用の超小型ゴーレムを潜ませておいた。

なくても余裕で制圧できるけど、ゴーレムがあれば命令一つで鎮圧できるから楽なんだよね。

◇

「艦長! 風魔法使いより報告! 海賊どもは島沿いを低速で航行しておるそうです。おそらく、海賊船が集結中だと愚考いたします」

へばった風魔法使い達の代わりに士官がそう報告してきた。

「商船を襲って拠点に帰るところのようだな。足の遅い今なら、分けた艦隊を回り込ませても間に合いそうだ」

やはり包囲殲滅作戦を変更する気はないようだ。

「護衛艦隊を予定の航路に向かわせろ」

提督がそう宣言し、二隊に分かれた護衛艦隊を海藻諸島の南北へと発進させた。

オレのマップで見る限り、旗艦隊を囲もうとする海賊艦隊と接触する事はなさそうだから、そのまま余計な口を挟まずに発進を見守る。

「旗艦隊はしばしこの海域にて時間を調整する」

提督が食事休憩を再度指示する。

ビスケットなどの保存食を囓るだけだったのを、ちゃんとした食事に変更したようだ。

「――伯爵様、すみません」

「構いませんよ」

船倉に樽を運び込むのを手助けするついでに、厨房で野菜スープを作るのを手伝ってみた。

鮮度が良すぎるのがバレそうなので、干し肉以外の肉類を提供するのは旗艦だけだ。

「良い匂いだな――」

「待ちきれねぇ」

そんな声が聞こえてきたので、完成した料理から順番に提督のもとへと運ばせる。

艦内では序列が重要らしいので、提督、士官、船員の順で食事が提供されるらしい。

オレも艦長と同席して食事を摂らないとまずいので、後を料理長に任せて厨房を去った。

「うぉおおおおおおおお」

食事に手を付けた提督が雄叫びを上げた。

周りの上級士官達は毒かと手を止めたが、提督が猛烈な速さで食事を続けるのを見て、自分たちも匙を口に運ぶ。

「う、美味い!」

「こ、これは凄いぞ」

同席する上級士官達が料理を称賛する。

とりあえず、口に合ったようで良かった。

オレも手早く食事を摂る。

あんまりゆっくりだと、周りでお預けを食らっている船員達がかわいそうだからね。

◇

「敵艦が見えてきました」

「どういう事だ? 報告の倍の数がいるぞ!」

提督が風魔法使いを睨み付ける。

「お、おそらく、会敵までの間に敵の増援があったのでは……」

風魔法使いが口にした。

「言い訳など不要だ。さっさと再探索を行え! 水魔法使いも海中の探索だ! クラーケンはともかく魚雷烏賊がいたらやっかいだぞ!」

魔法使い達の詠唱とほぼ同時に敵海賊艦隊がこちらに向けて進軍を開始する。

中央にいるのは偽骸骨大公が乗る真っ黒い海賊船だ。

「海中に巨大な生き物がいます!」

「クラーケンか?」

「だとしたら少なくとも二匹、さらに海中には無数の大型の魔物の気配があります」

水魔法使いの報告に提督が顔を引きつらせる。

水魔法のソナー系魔法だと、あまり正確な数や種類は分からないようだ。

「ば、ばかなっ」

提督が悲鳴を上げそうな顔でそう叫んだ。

「転進! 全力でこの海域から離脱する! 風魔法使い! 探索など中断して船の増速に魔法を使え!」

提督の叫びと同時に、風魔法使いからの報告が届く。

「敵海賊艦隊発見! 前方の艦隊と同規模の海賊艦隊が少なくとも二つ! 我々を包囲しつつあります!」

「ば、ばかな! ばかな、ばかな、ばかな!」

壊れたレコードのような提督の繰り言を、誰一人として止めようとしない。

きっと、船に乗っている人達の気持ちも同じなのだろう。

「――そろそろ出番かな?」

今にも泡を吹きそうな提督の顔を眺めながら、誰にも聞こえないほど小さな声で呟いた。

試練の本番がようやく始まるようだ。

※次回更新は 1/14(日) の予定です。

※2018/1/14追記

ごめんなさい、18:00には間に合いそうにありません。日付が変わるまでには必ず!

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「デスマーチからはじまる異世界狂想曲」EX巻は1/10(水)の予定です。一部の早売りのお店では既に店頭に並んでいるようです。

詳しくは活動報告「デスマEX巻の見どころ&帯付き表紙公開」をご覧下さい。

いよいよ 1/11(木)より本作のアニメ放送が始まります!

私も年末に第一話を見せていただきましたが、予想以上に素晴らしいできだったので、ぜひ一度視聴してみてください。

放送局やキャストなどの情報は活動報告「1/11よりTVアニメ放送開始!」をご覧下さい。

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◆◆アニメ版の感想は活動報告の方にお願いします!◆◆

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また、活動報告に元日のイベントの模様を紹介してありますので、ご興味があればそちらも、ぜひ。