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16-33.ガルレオン同盟(9)

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16-33.ガルレオン同盟(9)

※2018/1/29 誤字修正しました。

サトゥーです。シミュレーションゲームはボードゲームの戦争物から入ったせいか、家庭用ゲーム機でも第二次世界大戦もののウォーゲームが好きです。内政が絡む戦国もののシミュレーションだと、どうしても内政が面倒に感じてしまうんですよね。

◇

『すぐ行くよ、ミーア。飛空艇は安全圏に下がるように言ってくれ』

骸骨大公が率いる幽霊船団が、ガルレォーク市上空に出現したと報告が届いた。

マップのマーカー一覧だと、カリナ嬢とシスティーナ王女は地上のガルレオン神殿にいるようだが、あの二人なら急いで救出しなくても大丈夫だろう。

さて、ここから海上を航行していたら時間が掛かりすぎる。

かと言って、ここに同盟艦隊を置き去りにするわけにもいかない。

オレは少しだけ策を弄する事にした。

「黄金の舵輪が――」

オレが手にする「黄金の舵輪」が、荘厳な鐘の音と黄金の光を発したのに気付いた航海士が驚きの声を漏らした。

まあ、オレが魔法で出しているんだけどさ。

「――黄金の舵輪が教えてくれました。ガルレォーク市に危機がせまっているそうです」

「そ、そんな!」

「海賊の大船団から逃れたと思ったら、こんどはガルレォーク市がっ」

オレの言葉を聞いた航海士や副艦長が悲痛な声を上げた。

彼らの家族が危機にさらされているのだから、その反応も当然だ。

次の布石を打つために、オレは天候制御の魔法で分厚い暗雲を呼び、海を荒れさせる。

「ペンドラゴン伯爵! なんとかならないのですか?」

「一つ手があります」

稲光に照らされた副艦長の顔を見つめ返し、力強く頷いた。

「『黄金の舵輪』よ!」

気恥ずかしさは「 無表情 ( ポーカーフェイス ) 」先生に任せ、オレは「拡声」スキルと「演技」スキルを頼りに風音や落雷の音に負けない声を旗艦の人々に届ける。

「偉大なるガルレオン神に仕える信徒達を、神の御許へと運ぶ手助けを!」

なんだか葬送のような言い回しになってしまったが、演技スキルや詐術スキルのお陰で誰も疑問に思っていないようだ。

「『黄金の舵輪』よ!」

再度の呼びかけに合わせて、船を「 理力の腕 ( マジック・アーム ) 」で海面から持ち上げ、そのまま風魔法と重力魔法で船を飛行させる。

持ち上げる時に、「 幻影 ( イリュージョン ) 」の魔法で船に金色の光を帯びさせる。

持ち上げるのと同時に雨脚を強め、視界を狭めておく。その意味は――。

「――船が! 周りに船が!」

雨の向こうに現れた艦影を見つけた船員達が、報告の叫びを上げた。

マーカーを付けておいた同盟艦隊の船を、空間魔法の転移で集めてみたのだ。

ガルレオン神のオーダーは「集団の武」を示す事だから、一隻だけで幽霊船団を撃退してもダメだと思ったので、海賊から逃げるために散開していた護衛艦隊以外の同盟艦船を集結させた。

もっとも、それでも総勢10隻。

幽霊船団は100隻以上いるみたいだし、ちょっと戦力差がありすぎる。

なので、荒天で視界が悪いのを利用して、あらかじめ創っておいたゴーレム船団を合流させておく。

とりあえず、50隻ほど合流させておけば艦隊戦の体裁は整うはずだ。

「ペンドラゴン伯爵、周囲を見慣れぬ軍船に囲まれているそうです!」

「大丈夫ですよ。あれは味方です。黄金の舵輪に導かれて集まったガルレオン神の艦です」

詐術スキルの助けを借りて、航海士達に軍船は味方だと納得させる。

もちろん、ここまでの力業をしてしまうと、オレの魔力も尽きてしまうので、ストレージにストックしてある魔力充填用の魔法道具を掌の中に取り出して補充しておいた。

「ふ、船が空を飛んでいる、だと?」

よろよろと船室から這い出てきたのは、出航後から船酔いでダウンしていた神殿騎士の団長さんだ。

海洋国家の騎士団長がそんな事でいいのかとは思ったが、普段は神殿を守るのが仕事だから、船に弱くてもなんとかなったのだろう。

「偉大なるガルレオン神の奇跡です!」

オレは力強く断言した。

こういうときは、断定した方が説得力がある。

ガルレオン神のオーダーをこなすには、人々の感謝の気持ちや祈りがガルレオン神に届く必要がありそうだから、この方が良いだろう。

「聞け! ガルレオン同盟の戦士達よ!」

オレは状況を飲み込めていない僚艦の艦長や船員達に、「黄金の舵輪」を通じて下された神託だとした上で、ガルレォーク市に迫る危機について語り、これから救援に向かう旨を語った。

「行くぞ、戦士達よ! 導け、『黄金の舵輪』!」

オレは「 幻影 ( イリュージョン ) 」の魔法で作り出した「黄金の舵輪」の拡大幻影を船の前に出し、そこに耳目を集めた上で、前方に転移ゲートを作り出す。

拡大幻影の中央からレーザーのような光で転移ゲートを照らし、転移ゲートに黄金の粒子を煌めかせる演出を行なってみた。

ここまで無駄に派手にしたら「神の奇跡」っぽく見えるだろう。

ゲームの開発で、この手のイベントを作るときに、こういった演出は見慣れているので、割と簡単にイメージできる。

もっとも――。

「「「おおおおおお」」」

「「「ガルレオン神に栄光あれ!」」」

「「「神は我らと共にあり!」」」

ピュアなガルレオン同盟の人達には「効果は抜群」だったようで、予想以上にテンションアップしてくれている。

オレは船を飛ばす飛行魔法と艦船の舵をリンクしてから、ゲートへと船を進めた。

◇

「――ガルレォーク市だ!」

「黒い船が空を飛んでいるぞ!」

「海賊船?」

「違う! あれは呪われた幽霊船だ!」

ゲートを抜けると、船員達がガルレォーク市を遊弋する幽霊船団に気付いて口々に騒ぎ出した。

オレはマップ上の幽霊船団にマーカーを付けておく。

ガルレォーク市上空にいつの間にか出現していたからね。

「幽霊船だけじゃないぞ!」

「見た事のない魔物だ……まさか魔族か!」

「違いますよ」

騒ぐ副艦長や航海士の不安を否定しておく。

「あれは私の仲間が呼び出した精霊です。ガルレォーク市を守ってくれていますから、間違っても攻撃しないように僚艦に伝達してください」

ミーアが呼び出したガルーダを攻撃されても困るからね。

オレは視線を巡らせて、幽霊船団のレベルを確認する。

レベル20台の小型幽霊船やレベル30台の中型幽霊船が多いが、レベル40から50の大型幽霊船も少なからずいる。

中でも、黒いペガサスに乗った 怨霊騎士 ( レイス・ナイト ) は機動力が高く、さっきからミーアのガルーダが翻弄されている。

『ミーア、お待たせ』

『ん、待ってた』

オレは空間魔法の「 戦術輪話 ( タクティカル・トーク ) 」でミーアに話しかける。

『システィーナ様、ゴーレム船団の制御をお願いしていいですか?』

さすがに50隻を同時に制御するのは面倒なんだよね。

『分かりました。 千手玉座 ( サウザンド・スローン ) を使いたいので飛空艇に転送してください』

オレはユニット配置でシスティーナ王女を飛空艇に帰還させる。

その時に、骸骨大公が中央神殿の聖堂に現れた事や彼の目的が「黄金の舵輪」である事を教えてもらった。

カリナ様は――いた。

視線の先で、尖塔の壁を 垂直に駆け上がる ( ・・・・・・・・ ) カリナ嬢の姿があった。

そのまま駆け抜け、天へと飛び上がる。

その先には黒い爆雷を地上へと撒く幽霊船があった。

「カ、リ、ナァアアアキィイイイイイイイイック!」

青い軌跡を残し飛翔し、幽霊船を船底から甲板へと貫いてみせた。

轟沈する幽霊船のマストを蹴り、別の幽霊船へと躍りかかり、鎧袖一触で甲板のアンデッド達を蹴散らしている。

うん、そういうのはヘラルオン神の試練向きだね。

『カリナ様、援軍に来ました。こちらの旗艦にお戻りください』

『分かりましたわ! サ、サトゥー、そ、そのわたくしの活躍を……』

『ええ、素敵でしたよ。続きは旗艦で見せてください』

オレがそう答えると、カリナ嬢は上機嫌で旗艦の方へとぴょんぴょんと跳んでくる。

「ペンドラゴン伯爵、これを」

不意に声を掛けられて、航海士から提督が被っていたような帽子とコートを手渡される。

「これは?」

「提督の証です」

指揮権を得る手間が省けるけど、いいのかな?

「私の独断ではありません。僚艦の艦長達も指揮権を委譲すると旗と信号で示しています」

「ペンドラゴン伯爵、『黄金の舵輪』の主に従うのは同盟艦隊の総意だ。証を受けられよ」

神殿騎士団長の言葉に背中を押されて、航海士から帽子とコートを受け取る。

帽子の位置を直しながら、オレは艦隊の提督席へと登る。

「総員! まずは幽霊船団をガルレォーク市上空から追い出すぞ!」

オレの号令で艦隊が戦闘速度で幽霊船団へと進軍を始めた。

◇

「提督! 右舷から黒騎士7騎が来ます!」

「そちらに気を取られるな! 前方の敵大型艦に集中せよ!」

旗艦に向かっていた 怨霊騎士 ( レイス・ナイト ) が、空から降ってきた黄金の帯に邪魔されて軌道を修正して離れていく。

『ありがとう、ミーア』

『ん、守る』

先ほどの黄金の帯は艦隊上空に位置したガルーダによる牽制だ。

宙返りした一騎の 怨霊騎士 ( レイス・ナイト ) が、諦め悪く直上から急降下攻撃をしてきた。

「カリナァアアアキィイイイイイイイイック!」

マストを駆け上がったカリナ嬢がそれを迎撃した。

「格闘姫がまたやったぜ!」

「蹴り姫、最高!」

「さっきも幽霊船を沈めてたし強ぇえな」

「それを言うなら昨日のクラーケンだろ、格闘姫がいれば艦隊も安泰だぜ」

甲板の船員達が腕を振り上げて、格闘姫や蹴り姫というあだ名を付けられたカリナ嬢の戦果を称賛する。

それはそうとして、最後のヤツは親父ギャグをスルーされて寂しそうだ。

「あの縦ロールすげぇええ――あれだけ動いてて崩れてねぇぞ」

「そっちかよ! すげえって褒めるなら、あの胸だろ!」

「確かに、嫁に欲しいぜ」

もっとも、馬鹿な事を言って気を紛らわせている者も少なくないようだ。

「ぐれいと~?」

「さすがはカリナなのです」

オレの足下の影から顔を出したタマとポチが、「勝利」と「友情」の扇子を手にカリナ嬢を応援している。

二人の力を借りたら、 怨霊騎士 ( レイス・ナイト ) も軽々と殲滅できるんだけど、それだと「軍勢の武」を示せないんだよね。

「提督! 敵の呪黒砲の射程に入ります!」

「魔力砲を斉射しろ!」

オレは有効射程外から、牽制の魔力砲を撃たせてガルレォーク市の上空から追い出す事に専念する。

敵は今のところ、こちらの意図通りにガルレォーク市上空から退避してくれている。

「提督、これは罠だ。このままだと敵艦隊に囲まれるぞ」

忠告してくれる神殿騎士団長の言葉に首肯する。

罠なのは分かっている。

だけど、ガルレォーク市上空から幽霊船団を追い出す方が重要だ。

このままだとガルレォーク市の一般市民に被害が広がっちゃうしね。

幸いな事に、こちらの軍勢は中核の10隻以外はゴーレム船だし、それらを壁に使えば艦隊への被害は無視できる。

それに、罠に捕まって不利になってから逆転した方が、民衆の受けが良さそうなんだよね。

◇

「提督、囲まれそうです」

「この辺りまで来れば十分そうですね」

十分に幽霊船団をガルレォーク市直上から引き離せた。

この辺りなら、ガルレォーク市から観戦できて、都市に被害が出ない絶好のポジションだと思う。

「くは、くははははは――愚かな者どもよ! 速やかに『黄金の舵輪』を差し出せば、安穏とした死を与えてやるぞ! それとも永劫の隷属が好みか……くは、くはははは!」

ひときわ巨大な幽霊船から、骸骨大公の勝利宣言が聞こえてきた。

どうやら、わざわざ拡声の魔法道具を使ってまで勝ち誇りたかったらしい。

「て、提督」

「大丈夫。まだ包囲は完成していないよ」

オレは怯える航海士にそう告げて、提督帽の角度を直す。

「総員! 雌伏の時は終わりだ! 敵の包囲を食い破り、反撃に転じるぞ!」

オレは「演技」スキルに身を任せ、艦隊の人々を鼓舞する。

『システィーナ様、予定航路を送ります。ゴーレム船団の操作を』

『承知しましたわ!』

めずらしく、システィーナ王女がテンション高めの声で返事をした。

『ミーア、ガルーダを寄せて』

『 天嵐 ( テンペスト ) ?』

ミーアがガルーダの必殺技を使うのかと尋ねてきた。

『いや、それはもう少し後だ。まずはカリナ様を乗せて敵の包囲を食い破ってくれ』

『ん、了解』

「カリナ様、ガルーダに騎乗して先鋒をお願いします」

「分かりましたわ! サ、サトゥーに褒めてもらえるくらい格好良く戦ってみせますわ」

微妙に死亡フラグくさい発言をするカリナ嬢に、「期待しています。でも、怪我はしないでくださいね」と釘をさしておく。

手を握って言うのは、カリナ嬢のポンコツエンジンにターボが入りそうなので止めておいた。

『我が艦に続け!』

オレは「拡声」スキルで旗艦に指示を出し、一糸乱れぬ華麗な操船で閉じきっていない幽霊船団の包囲の隙間へと殺到した。

「マジンホー連打ですわ!」

カリナキックだと海上に落ちるので、魔刃砲で無双する事にしたようだ。

たぶん、彼女の足下から顔を出して応援しているタマとポチの助言だろう。

『タマ』

『何~?』

『ちょっと頼まれてくれないか?』

『おっけ~?』

『ポチもやるのですよ!』

『じゃあ、二人にお願いしよう』

オレは猫忍者タマと犬勇者ポチに、市内での宣伝工作を頼む。

主に、黄金の艦隊がガルレオン神の奇跡によるものだというチラシをバラ撒いてもらうのだ。

そんな裏工作をしている間に、カリナ嬢とガルーダを先頭とした隊列が幽霊船団の包囲の隙間をこじ開けて突破する事に成功した。

幽霊船達が慌てて回頭を始めるが、互いの船が邪魔になって、なかなか思うように操艦できていないようだ。

「縦列陣で敵艦隊を押し包め! そのまま包囲の内側に向けて魔力砲を斉射! 旗艦が狙った艦を集中的に叩け!」

オレの指示に従って、艦隊が細長い戦列で薄皮のように幽霊船団を囲みつつ、魔力砲の砲弾を幽霊船に撃ち込んでいく。

相手が中型や大型の幽霊船だと、魔力砲だけでは倒しきれないので、ある程度、魔力砲弾が命中したところで、オレの「 爆裂 ( エクスプロージョン ) 」で止めを刺しておいた。

もちろん、一方的な攻勢だったわけではない。

幽霊船から呪黒砲の砲弾が飛んできており、内側に配したゴーレム船の装甲やマストを砕いて、何隻か沈められていた。

「威力が高いですね」

「ああ、下手に直撃を受けたら沈みそうだ」

航海士と神殿騎士団長がそんな会話を交わす。

今のところ直接戦闘がないので、神殿騎士達は暇なようだ。

「『黄金の舵輪』よ! ガルレオン神の栄光を示せ!」

オレは適当な言葉を叫んで、幻影の魔法で艦隊を黄金の光で包み、そのタイミングで各艦に防御魔法を付与しておく。

自重して、呪黒砲の弾丸を10発くらい防げる程度の性能の魔法にしてある。

幽霊船団の周りを旋回しつつ、砲撃を加える。

「め、目が回る」

「撃て、撃て、撃てぇええええ!」

「神の威光を示すのだぁああああ!」

ハイテンションな旗艦の人達の声を聞き流しながら、オレは着実に敵艦を削る事に専念する。

幽霊船団を外側から削るように飛翔するオレ達の艦隊と、それを追う幽霊船が、黄金と黒の輪を空に描き、赤と黒の砲弾でお互いを削っていく。

適当なタイミングで、「 爆裂 ( エクスプロージョン ) 」を混ぜておいた。

その反則技のお陰もあって海賊船団はどんどん数を減らしており、このままいけばオレ達の勝利で終わりそうな感じだ。

「「「ガルレオン! ガルレオン! ガルレオン!」」」

ガルレォーク市の人々が高台や城壁に上がって、ガルレオン神の名を連呼する。

タマとポチによる宣伝工作が成功したようだ。

このまま終わってくれたら楽なんだけど――。

「――そうはいかないみたいだ」

オレはそう呟きながら、一隻だけ針路を変えた骸骨大公の旗艦を睨み付けた。

※次回更新は 2/4(日) の予定です。

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