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16-34.ガルレオン同盟(10)

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16-34.ガルレオン同盟(10)

※2018/2/12 誤字修正しました。

※2018/2/9 一部加筆しました。

サトゥーです。クライアントが100%満足する結果を出すのはなかなか困難です。なぜなら、クライアントが言葉にするのが要求の全てではなく、クライアントが言葉にできないモノこそが本当の要求である事が多いからなのです。

◇

「ペンドラゴン提督、あれを!」

航海士が必死の形相でオレの注意を促す。

ガルレォーク市近海での形勢が完全にオレ達に向いたところで、幽霊船団の巨大な一隻がオレ達の艦隊の頭に食らいつこうと、単独で軌道を変えて突っ込んできた。

「骸骨大公の旗が揚がっています!」

どうやら、骸骨大公の悪あがきらしい。

「天空人たる我に敗北はない!」

巨大幽霊船の船首が、サメのようにぱっくりと開き、そこから何隻もの船が飛び出てきた。

その艦影には見覚えがある。

「――海賊船?」

「提督、あれは我々が戦っていた海賊船です!」

「同盟の護衛艦らしき船もいるぞ!」

航海士や士官達が言うとおり、巨大幽霊船の口から現れたのは海賊艦隊や護衛艦隊の船だった。

先頭の海賊船には偽骸骨大公らしき青年の姿がある。

「なんて姿に……」

そして、それらの艦は全て、幽霊船になっていた。

偽骸骨大公は虚ろな目で虚空を見つめて、怨嗟の声を上げているようだ。

「これが骸骨大公の力なのか……」

旗艦の人々から恐怖に震える声が漏れた。

このままだとちょっとまずい。

「カリナァアアアキィイイイイイイイイック!」

先鋒の役目を終えていたカリナ嬢が、上空から海賊幽霊船の一つに豪快な急降下キックを叩き付けた。

そして、それは一隻にとどまらず、二隻、三隻と一気に貫いていく。

なんていうか名作古典アニメで見たような光景だ。

最後に豪快な水柱を上げ、カリナ嬢が海に没した。

どうやら、最後をどうするか考えずにキックを発動したようだ。

実にカリナ嬢らしい。

「ぼっしゅ~と」

「大変なのです! カリナが溺れちゃうのですよ!」

宣伝工作から戻った二人が、オレの影から顔を出してカリナ嬢が作った水柱を眺めている。

「悪いけど、カリナ様を回収してきてくれるかな?」

「にんにん~?」

「ポチも一緒に行くのです!」

さすがに「 理力の手 ( マジック・ハンド ) 」だと届かないので、タマとポチに回収を頼んだ。

「うぉおおおおお!」

「蹴り姫がやってくれたぜ!」

カリナ嬢の蛮勇に、旗艦や艦隊の士気が一気に上がる。

『減らす?』

『ああ、頼む』

ミーアの提案を承諾する。

士気が上がったタイミングで、海賊幽霊船団をガルーダの必殺技で大きく削ってもらうのだ。

ガルレオン神のオーダーには則していないのだが、ここまでの戦いでガルレオン神への信仰や祈りは十分にアップしているだろうし、何より、このままだと水死体系のアンデッド達と戦う事になりそうだからね。

『 天嵐 ( テンペスト ) 』

ガルーダの黄金の羽根が飛び散り、海賊幽霊船団を縦横無尽に斬り裂いていく。

まさに一網打尽な感じだ。

「――面舵いっぱい!」

突然、航海士が叫んだ。

天嵐 ( テンペスト ) の間を強引に突き抜けた巨大幽霊船が、衝角突撃を仕掛けてきたのだ。

『させません!』

システィーナ王女の操るゴーレム船が、巨大幽霊船の前に割り込んで盾となるが、質量差はいかんともしがたく、巨大幽霊船の衝角を横腹に受けて轟沈する。

もっとも、そのお陰で、オレ達の船は衝角突撃をギリギリで避け、舷側を擦り合わせて激しい火花を上げつつも轟沈を免れた。

「者ども、掛かれ!」

シミターを抜いた幽霊船の船員達が、並進する 旗艦 ( こちら ) へとなだれ込んでくる。

「汚らわしいアンデッドどもめ! ガルレオン神殿にその人ありと謳われた――」

神殿騎士団長が名乗りを上げつつ、嬉々として迎撃に向かった。

どうやら、最後の決戦らしいので、オレも妖精剣を抜いて神殿騎士団長の横に並んでアンデッド達を迎撃する。

「貴様が『黄金の舵輪』の主か!」

アダマンタイト製の青黒い色のレイピアを持った骸骨大公が、神殿騎士団長に突きかかった。

どうやら、神殿騎士団長はオレと間違えられたようだ。

「貴様が首魁か!」

魔刃を帯びた神殿騎士団長のミスリル剣が黒い板のようなモノに防がれる。

その黒い板は骸骨大公の足下の影から出ていた。

骸骨大公は転生者ではなさそうなので、影の中に潜ませてあった影魔法の「 影盾 ( シャドウ・ベイル ) 」を使ったに違いない。

オレは敵艦から襲ってくる 骨騎士 ( ボーン・ナイト ) を、蹴りと妖精剣で斬り伏せながら彼らの戦いを観戦する。

「ぬぅ」

神殿騎士団長がバックステップするよりも早く、骸骨大公が突き出したレイピアが団長の鎧の隙間を狙う。

だが、そのレイピアは団長が使っていた神聖魔法による防御膜によって防がれた。

「ふん、神聖魔法か!」

唸る骸骨大公の背後から野獣のような 食人鬼 ( グール ) 達が現れて、神殿騎士団長に殺到する。

「この卑怯者め!」

「笑止! 下郎を懲らしめるのに、騎士の作法など不要!」

団長の抗議を、骸骨大公が一笑に付した。

まあ、そういう事なら、オレが介入してもいいよね。

「加勢します」

オレは妖精剣を閃かせ、 食人鬼 ( グール ) 達を次々に骸へと変えていく。

「ぐぬぬ、『黄金の舵輪』の主を守る騎士か!」

「いや、本人だよ」

オレは懐に収納していた「黄金の舵輪」をチラリと骸骨大公に見せる。

「ヨコセェエエエエエエ」

骸骨大公が怪しい黒いオーラと共に迫る。

赤と黒の火花を煌めかせながら、オレと骸骨大公は巨大海賊船と旗艦の舷側を右に左に飛びながら剣を交わす。

幾百の剣戟を交わした後、骸骨大公が足を止め奇妙なポーズで口を開いた。

「土着の愚民の分際で、ララキエ最強の剣士と謳われたこの骸骨大公様の剣に匹敵するとは!」

「出自と剣の腕は別物だと思うけどね」

「黙れ! 我が秘剣で滅べ、下郎!」

骸骨大公が怪しい動きで激高する。

「――玄幻乱舞!」

赤黒いオーラを纏った散弾のような多段突きを放ってきた。

どうやら、さっきの奇妙なポーズからの動きは必殺技の予備動作だったらしい。

オレは骸骨大公が使った必殺技らしきモノを、律儀に妖精剣で全て 受け流 ( パリィ ) してみせる。

なんていうか、火花がまぶしい。

そろそろ戦いに幕を下ろしてもいい頃合いだろう。

「バカな! 重い 野人どもの剣 ( バスタード・ソード ) で、我が天空人の剣を捌く、だと?」

まあ、リザやタマでも同じ事ができると思う。

それはともかく。

――チェックメイトだ。

最後に一閃させた剣を鞘に納める。

「なぜ、剣を納める? 我に 敵 ( かな ) わぬと諦めたか?」

骸骨大公が目の奥の赤い光を明滅させながら、訝しげに問い返す。

「まだ気づかないのか?」

骸骨大公の指先や体表からは、黒い灰がボロボロと零れ始めていた。

そして、その足下には砕けた赤い 魔核 ( コア ) の破片――。

「コ、コレ、ハ……永遠ノ生ヲ約束サレタ天空人タル我が……ホロブ、ノ、カ……」

自分の身体を見下ろした骸骨大公が、双眸から赤と黒の光を迸らせながら顔を上げた。

「マダマダァアアアアアアアアアアアア!」

叫んだ骸骨大公が身体に漆黒のオーラを纏わせて掴みかかってくる。

だが、その指がオレの身体に触れる前に、黒い灰となって消え去っていく。

「だから、チェックメイトだって言ったんだよ」

聞く者のいない呟きを一つこぼし、周囲を見渡す。

骸骨大公の死に少し遅れて、巨大幽霊船が崩れて海に没していく。

何隻か残っていた海賊船が逃走を始めたが、正体不明の魔刃砲弾に貫かれて次々に沈んでいく。

念のため、タマやポチのいる場所の手前に「黄金の舵輪」っぽい魔法陣を出しておいたので問題ないだろう。

――そう、すべては「神の奇跡」って事で納得してほしい。

「敵は全て滅んだ! オレ達の勝利だ!」

「「「うぉおおおおおおおお!」」」

オレの勝利宣言に艦隊の人達から大きな歓声が上がる。

ついでに戦闘である程度散っていた暗雲をもう少し吹き飛ばして、隙間から陽光をこぼして神秘的な感じに演出する。

ダメ押しに、もう一度だけ「黄金の舵輪」の幻影を天空に映しておいた。

オレはその幻をバックに船をガルレォーク市の港に着水させ、着水の水しぶきに紛れてゴーレム船をユニット配置で拠点へと送り返す。

ついでにガルレオン神殿が見える丘の上に、保護していた人達を転移させておこう。

面倒だし、捕縛した海賊達も一緒でいいかな?

「ガルレオン神に栄光あれ!」

「「「ガルレオン神に栄光あれ!」」」

桟橋へと入港する時に、港に集まった人達にガルレオン神を称賛するセリフを叫び、神殿騎士達に護衛されて中央神殿へと向かう。

バルコニーや庭先で花を育てている家が多いせいか、中央神殿に着くまで花びらのシャワーで歓迎された。

なんだか英雄か花婿の気分を味わってしまったよ。

◇

「お帰り――神の試練を果たせし者よ」

ガルレオン中央神殿に到着すると、男性巫女―― 覡 ( かんなぎ ) のサウァーニ少年が出迎えてくれた。

「さあ、神へ報告と行こう」

気さくにオレを連れて儀式の部屋に向かおうとするのは良いのだが、オレの腰に回そうとした手はやんわりと拒絶しておいた。

サウァーニ少年が「つれないねぇ」と呟いていたが、オレは聞こえないふりをしておく。

試練を受けた時と同様に、サウァーニ少年を介してガルレオン神へと報告を行う。

『――見事。我が証を与える』

ガルレオン神のセリフだけはヘラルオン神と同じだったが、その言葉に重なるように「過剰演出」「祈願十分」「戦略不足」「信奉十分」「戦術的逆転不足」といった不満と満足が入り交じった声が届いたが、オレの目的は「神の試練」を果たして証を集める事なので特に問題ない。

>称号「ガルレオンの証」を得た。

>称号「ガルレオンの認めし者」を得た。

>称号「ガルレオンの聖者」を得た。

>称号「ガルレオンの使徒」を得た。

>称号「自作自演」を得た。

>称号「過剰演出」を得た。

>称号「ヘボ演出家」を得た。

>称号「ヘボ軍師」を得た。

うん、納得いかないのは分かったから、称号システムに介入してまで不満を述べるのは止めてほしい。

短い交神を終え、意識を神殿へと戻す。

天から降り注ぐ光の中に、光の粒子が集まり、一つの煌びやかな 王笏 ( セプター ) へと変じた。

ゆっくりと落下してくる王笏を掴む。

AR表示によると「黄金王笏ガルレアゥフ」という名前で、「神授の宝具」の一種らしい。

ヘラルオン神から貰った「黄金短剣ヘラルシェフ」が柄には小さな太陽石が嵌まっていたように、この王笏の先端にも濃い蒼い宝石―― 海神 ( わだつみ ) 石が嵌まっていた。

神聖魔法の補助道具らしい。

セーラに良さそうだけど、さすがに信仰する神と別の神から下賜された神器を使うのはまずいだろう。

「へー、神器を下賜されるのを初めて見たよ」

意識を取り戻したサウァーニ少年が、王笏を見て目を丸くした。

「触ってもいい?」

「どうぞ」

オレはサウァーニ少年に王笏を手渡す。

彼は興味深そうに、王笏を色々な角度から眺める。

周りの神官や巫女達が平伏しているのとは、温度感がまるで違う。

「ありがとう、すごい神器だね」

サウァーニ少年がなんの未練もなくオレに王笏を返す。

他の神官や巫女達が惜しそうにしているのと対照的だ。

「ガルレオン神殿で祀っていただけるなら、お渡しいたしますが――」

「別にいいよ。それは君がガルレオン神から下賜されたものだし、何より中央神殿には偉大なるガルレオン神の加護と無敵の神器『黄金の舵輪』があるって、今回の一件でよく分かったからさ」

――すみません、ほとんど自演です。

サウァーニ少年の爽やかな顔に、少しだけ罪悪感を覚える。

神官や巫女達は欲しそうだけど、誰もサウァーニ少年を押しのけて欲しいと言わないので、そのまま懐経由で王笏をストレージへと収納した。

――ん?

一瞬だけ、舌打ちのようなイメージが脳裏を過ぎったけど、きっと気のせいだろう。

オレはガルレオン中央神殿を去り、ガルレォーク市主催の宴でもてなされた後、ガルレオン同盟を発った。

「サ、サトゥー! 雲の間に何かいますわ!」

ガルレォーク市の空港を飛び立って少しした頃、カリナ嬢が空の彼方に黒い飛行物体を発見した。

マップ情報によると――。

「サガ帝国の飛空艇みたいですね」

しかも、大型の戦列砲艦だ。

前に勇者メイコがイタチ帝国で乗っていたという飛空艇と同型艦だと思う。

しかも、メイコとは別の召喚勇者が乗っているようだ。

「もしかしたら、ガルレオン同盟の危機を救いに来たのかしら?」

「そうかもしれませんね」

王女の予想に首肯する。

魔族も絡んでいたみたいだし、勇者の行動としてはおかしくないはずだ。

さすがに、サガ帝国が勇者を先頭に立てて侵略戦争をするはずもないしね。

少しだけ様子を見た後、オレは飛空艇を目的地へと回頭させた。

◇

「お土産だよ」

「うわー! 美味しそうな真鯛とタコじゃない!」

「牡蠣やムール貝もあるぞ」

ガルレォーク市のタコと貝類は絶品なので、ぜひとも仲間達やエチゴヤ商会の皆にも食べさせてやりたかったんだよね。

「どっちも市場で買ってきたの?」

「いや、真鯛の方は氷山の一件で助けた人魚達からのお礼の品だよ」

イルカに騎乗してわざわざガルレォーク市まで、立派な真鯛を持ってきてくれたのだ。

「どんな料理にしましょう?」

「真鯛は刺身――だけじゃ、ワンパターンだから、半分くらいはカルパッチョにでもしてみようか。牡蠣は――」

「生がいい!」

腹痛を恐れないアリサが手を挙げて主張した。

まあ、たとえ 中 ( あた ) ったとしても、万能薬やエリクサーで治るから大丈夫だけどさ。

「分かった。氷の皿に載せて用意しておくよ。悪いけどレモンの在庫がないから取ってきてくれ」

「おっけー!」

アリサがレモンの果樹園へと転移する。

「ムール貝は無難にパエリアでいいかな?」

「はい、腕を振るっちゃいます!」

腕まくりするルルに貝の入った篭を渡し、「他には何がいいかな」と呟きながらサイドメニューを考える。

「にく~?」

「ポチは魚さんや貝さんも肉と一緒が嬉しいと思うのです」

肉好きなタマとポチから修正案が出たので、パエリアに合いそうな肉料理を考える。

やっぱり、食事は仲間達と一緒が楽しいね。

そんな和気藹々としたオレ達のもとに、一つの通信が届いた。

「サトゥー様! セーリュー市のゼナ様から通信が――」

里帰り中のゼナさんに何かがあったようだ。

※次回更新は 2/11(日) の予定です。

※2018/2/9 ガルレォーク市を出発する部分に少し加筆しました。

※アニメ版の感想は活動報告の方にお願い致します。

※2/10発売のドラゴンエイジ3月号からデスマ外伝「アリサ王女の異世界奮闘記」のコミカライズ版がスタートします! 活動報告の記事にスクリーンショットを何枚か上げておいたので宜しかったらごらんくださいな~