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5-15.合流(2)

デスマーチからはじまる異世界狂想曲( Web版 ) — ncode.syosetu.com · All chapters

5-15.合流(2)

※2/11 誤字修正しました。

サトゥーです。巨乳派じゃないつもりでしたが、目の前にあると視線がロックオンしてしまいます。

誘惑に負けない強い心が欲しいサトゥーです。

◇

散々泣いてすっきりしたのか、事の顛末について質問攻めにされた。勇者とか紫の光とか転生者とか話しにくい事は後回しにして、魔法使いは目的を果たしたので二度とミーアを狙わない事、蟻や魔物達も残っていない事を大雑把に説明した。

「う~、色々隠してるでしょ?」

「まあね、そのうち話してもいい時期になったら言うよ」

あまり聞いて楽しい話でも無いだろうが、アリサにも関わる話だから2人きりの時に伝えよう。

「約束よ! 寝物語にでも期待してるわ」

アリサの調子も戻ってきたようでなによりだ。

オレは簀巻きにしていたミーアと№7の梱包を解いて馬車に乗せる。

「ちょっと、エルフっ娘はともかく、こっちの巨乳美女は何なの? 魔術士とどんな話を付けたって言うのよ~~~!」

アリサの絶叫が響き渡る。

セーリュー市まで聞こえそうだから、止めてくれ。

「それに、わかるでしょ? この人の素性!」

アリサの言葉に頷く。正体がホムンクルスだからな。

その騒ぎでようやくミーアが目を覚まして、周りをフラフラと見回す。

「……夢?」

「違うよ」

「助かったの?」

「間一髪ね」

ミーアの口調がうつってしまったように短く返答してしまった。アリサに語ったのと同じような事を話してやる。

「私は人の世の礼儀を知らないの。里のエルフは100年以上も一緒にいるから私が何も言わなくてもわかってくれるけど、外では違うってリーア――母が言っていた」

おお、ミーアが長文を喋ってる。

「お礼が言いたいなら『ありがとう』で十分よ。相手が若い男ならお礼を言うときにニッコリ笑ってあげたらいいのよ」

ミーアの言葉にアリサが気軽に答える。何か違和感が?

そうかミーアの喋る言葉がシガ国語だったのか。後で聞いたら、元々喋れたそうだ。喋らなかった事を尋ねたら『人族の言葉は何かカチカチ言ってるように聞こえるから嫌い』と言ったニュアンスの答えが返ってきた。

ミーアは立ち上がり、佇まいを正して俺に丁寧にお辞儀する。

「ありがとう、サトゥー」

「どういたしまして」

そういえばミーアに礼を言われるのは初めてだ。

オレは茶化さず答礼する。

「改めて名乗ります。わたしはボルエナンの森の最も年若いエルフ、ラミサウーヤとリリナトーアの娘、ミサナリーア・ボルエナンです」

彼女はそう名乗ると「あなたに最大の感謝を」と言って俺の額に口付ける。

>称号「エルフの友」を得た。

◇

「この女は?」

「そうそう、忘れるところだったわ。また女を増やすの?」

「ご主人さま不潔です」

「成り行きでね」

ミーアの目覚めで蚊帳の外に置かれていた№7に話題が戻る。

ミーア、アリサ、ルルの言葉を聞いていると、なんか浮気を責められる亭主の気分になってくる。

幸せそうに気絶している№7を揺すって起こす。

「……オハヨウ?」

「うん、おはよう。状況はわかる?」

「しばらくお待ちください」

相変わらず抑揚の無い話し方だ。癖なのか首をコテンと倒して黙考する。

隣で見ていたアリサが「気持ち悪っ」とか言っていたので、窘めておく。

「メッセージキューに情報が残っていました。前マスターの死亡およびワタシの所有権の放棄が記録されています。他の幾つかの記録からアナタには新しいマスターになる資格があります」

そこまで言って№7は、オレの返答を待つ。

まあ巨乳美女が仲間になるのに文句はない。彼女の主人だったゼンは死んだし、おそらく仲間も残っていないだろう。

オレが口を開くより早く、一番最初に反応したのはアリサだった。「ちがう、そうじゃないの」と言って№7を馬車の隅に引っ張ってこそこそと話している。

「ご主人さま、ここに座って~ みんなはこっちね~」

それから暫くアリサの好きな小芝居に付き合わされた。何かのパロディーっぽいんだがオレにはさっぱり判らない。そしてよく判らないまま、オレは№7にマスターと呼ばれるようになり、代わりに「ナナ」という新しい名前をつけてあげた。

オレが名付けた名前を聞いたアリサから 詰 ( なじ ) る様なジト目を向けられたが、ネーミングセンスが無いのは仕様なので諦めてほしい。

小芝居の意味は最後までわからなかったが、№7の称号が「ゼンの人形」から「サトゥーの 召使 ( めしつかい ) 」に変わっていたので何か深い意味があったのかもしれない。

「これからよろしく、ナナ」

「はいマスター。コンゴトモヨロシク」

……今度は何を教えた、アリサ。

◇

新しい仲間が増えた後、オレはミーアを連れて何でも屋の店長さんの所を訪れる事にした。他に頼るもののない他の娘と違ってミーアには同族がいるからな。

オレの滞在証書の期限が来ていなかったので、入市税は免除された。他のメンバーや馬車まで入るとその限りではないそうなので、一人で店長さんを呼びに行く。

「こんにちはナディーさん」

「こんにちは。あれ? サトゥーさん、昨日出発してませんでした?」

「ええ、実はエルフの迷子を保護したので、店長さんに力を借りようと思ってお伺いしました」

「人が良いですね、その為にわざわざ引き返してきたんですか」

ナディーさんは愛想よく迎えてくれたが、最後の方は少し呆れ気味だった。

「店長はまだ寝ているので、起こしてきますね。このソファーにでも掛けて待っていてください」

そう言いながらナディーさんが、テキパキとソファーの上の男物の服や雑誌っぽいものを片してスペースを作ってくれる。きっと店長さんの私物だな。

待つ間、なんとなく雑誌っぽいものを手にとって見る。シガ通信と書かれたゴシップ誌のようだ。10ページも無いが、こういった雑誌が懐かしくて目を通す。どこそこの貴族の令嬢と探索者の恋の行方とか、王都風俗マップとか、いかにもな記事が多い。

上の階からナディーさんが店長さんを起こす声が漏れ聞こえる。

闘技場の有名闘士達の対戦についての記事を読み流していると、2人が階下に下りてきた。

「お邪魔しています」

「……どこだ?」

「もう、店長! 普通の人と話すときは、もっとちゃんと喋ってください。ごめんなさい、サトゥーさん。エルフの娘さんはどこに居ますか?」

寝起きで機嫌が悪いのかと思ったが、この人も無口キャラか。エルフのデフォルトが無口なんじゃないだろうな?

2人を門外広場の馬車の所まで案内する。何でも屋を 空 ( から ) にするのに、「closed」とかの看板を出す様子はなかったが、いいのだろうか?

御者台で番をしていたルルに、ミーアを呼んでもらう。

「ミーア? まさか、迷子はミサナリーアなのか?」

「そうです、ご存知でしたか」

「ああ」

最初の独り言は流暢なのに、返答は単語なのか。ナディーさんが困ったような顔で店長を見ている。なるほど、この人が店でいつも寝ている理由がわかった気がする。

「ユーヤ?」

「ミーア」

「ん」

「家出か?」

「違う」

「迷子「違う」」

「リーアは」

「家」

「そうか」

「どうして?」

「……後始末だ」

2人のエルフの単語の応酬が面白い。意思の疎通はできているようなのだが、端からは何を言いたいのか通訳が欲しくなる。迷子と言われた時だけミーアが食い気味に否定していたが、後は交互に一問一答を続けている。

ナディーさんの補足もあって、2人の会話が大体わかった。 店長 ( ユーヤ ) さんもミーアと同じ氏族の出身で、大叔父のトーヤ氏の仕出かした事の後始末の為に10年前からセーリュー市にいるらしい。彼は言及しなかったが、恐らくトラザユーヤの迷宮の事だろう。

店長さんにはミーアが魔術士に攫われてきた事、魔術士のアジトが鼠人族の領地内にあった迷路の様な地下施設だった事、脱出する時に迷路の自爆装置が作動して魔術士もろとも埋まってしまった事を伝えた。

「帰る?」

「帰らない」

「そう」

「仕事がある」

話の流れで少し不安そうにしていたナディさんだが、店長さんのその言葉で晴れやかな笑顔に戻った。

「どうする?」

「帰る」

「帰れるか?」

「サトゥーと一緒」

どうも、店長が里まで送るかどうか尋ねて、ミーアはオレが送るから大丈夫と言いたかったらしい。本当に、よく通じるもんだ。100年単位で一緒にいると、ツーカーの仲になってしまうんだろう。

最後に店長さんに「頼む」と言われた。そのまま店に帰ろうとする店長さんをナディーさんが引きとめ、騎士ソーンにミーアの身分証明書を作ってくれるように交渉しに行ってくれた。

ナナの種族をごまかして身分証明書を作れないか2人に相談してみたんだが、店長さんが「まかせろ」と言って「 偽装情報 ( フェイク・パッチ ) 」という術理魔法でナナの種族を「人族」に偽装してくれた。

その時に店長さんに注意されたが、この魔法で誤魔化せるのは、レプリカのヤマト石だけらしく、前に迷宮を出た時に見たオリジナルのヤマト石や 能力鑑定 ( ステータス・チェック ) では見破れてしまうそうだ。

ちなみに、この状態のナナをオレのAR表示で見ると「種族:人族」「種族:ホムンクルス」と二重で表示され、鑑定だと「種族:人族(偽)」となった。

とりあえず、店長さん達のおかげで、無事に2人の身分証明書ができた。これで途中の町にも寄れるだろう。

身分証を作り終わるのを待っていたオレに、店長さんが「ん」と言葉少なに貨幣の入った小袋を渡してくれる。

「ミーアの路銀にしてください。店長のヘソクリですから小額ですけどね」

「よけい」

ナディさんの補足の内容が気に食わないのか、店長さんの文句が入る。

「ありがたく頂いておきます」

そう言って、その小袋を受け取る。

特に必要でもないが、断るのも無粋だろう。後で全部、ミーアに渡そうと思う。

馬車の出発を見送ってくれる店長さんたちに、ミーアを森に届けたら手紙を送る事を約束した。

馬車は昨日と同じ道を進む。

今度こそ本当に何事も無い平和な旅路になる事を祈って、ガタゴトガタゴトと街道を進む。

今回で波乱の5章は終了です。

この後、何話か幕間を挟んで6章になります。

ナナが仲間になるシーンはイマイチ気に入らないので時間が出来たら改稿するかもしれません。