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17-50.無垢なる神(2)

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17-50.無垢なる神(2)

サトゥーです。「ルール破りで来る卑怯者に正攻法で打ち勝つ」あるいは「強すぎる敵にルールの隙間を突いて勝ち筋を見つける」というのは相反するようでいて、どちらも物語の定石です。

どちらの展開も好きですが、現実だと相手のルールに乗っかるのは普通に負けフラグだと思うのです。

◇

「糧に」

権能を使ったパリオン神が瞬間移動で迫り、≪滅び≫を帯びた神剣で大型虚空艦ごとカリオン神やウリオン神を屠ろうと斬り下ろす。

――ユニット配置。

「それはもう知ってる―― 視界掌握 ( すべてはわがてに ) 」

転移と同時に、大型虚空艦ごとパリオン神の前に引き戻された。

「 軍神蹂躙 ( トランプル ) 」

――まずい。

蒼い光を帯びたパリオンが、凄まじい突進力で大型虚空艦を真っ二つにする。

ぎりぎりで艦から脱出できたが、自ユニットではない二柱の少女神達や紫幼女達と離れてしまった。

「アリサ。悪いけど安全圏に――」

「――避難しろってんならお断りよ」

言葉の途中でアリサに拒否された。

「アリサちゃんの言う通りだよ! ここは努力、友情で勝利するところだよ!」

「ご主人様、私達もご主人様のお役に立ちたいのです」

「そうなのです! ポチやタマだって頑張るのですよ!」

「あい!」

ヒカルや獣娘達がアリサに続くと、他のメンバーからも一緒に戦いたいと言われてしまった。

「サトゥー、私達からすれば、魔神もパリオン神も大した違いはありませんわ」

「カリナ様の言う通りです。パリオン神に弓引くのは畏れ多いですが、神殺しの大罪を犯した方をお止めするのも巫女としての責務だと思うのです」

「私もそう思います! それに身軽なサトゥーさんなら、きっとパリオン様を止められるって信じてます」

「うん、マスターサトゥーなら大丈夫」

ゼナさんを始めとした仲間達が、 信仰にも似た ( ・・・・・・ ) 信頼を寄せてくれる。

「サトゥー、杖艦」

ミーアに促されて杖艦を出す。

どうやら、彼女は対魔王用の劣化版ではなく、本物の対神魔法でパリオン神と戦う気らしい。

「ご主人様、わたしとヒカルたんの分も」

二人の杖艦に加え、ナナ用の盾艦やサポート用の大型装備も取り出す。

「アリサ、この三型杖艦はアリサのユニークスキルにも耐えられるように作ってある。だけど――」

「わーってるってば。イチャラブできるように、ギリギリのラインを攻めるから」

「できればギリギリを攻めるのは――」

「マスター!」

パリオンが動いた。

権能で潜伏していたウリオン神とカリオン神を発見したらしい。

「コア・ツー、ピンク髪の子達を回収してきてくれ」

次元潜行機能のある小型虚空艦をコアツーに渡し、返事も待たずに戦場へとユニット配置した。

◇

「 神滅剛拳 ( ルーイン・フィスト ) 」

「 無敵の機動 ( あたることなし ) 」

カリオン神の放つ朱色をした光弾の雨を、パリオン神が権能で避ける。

「―― 最強の矛 ( つらぬけぬものなし ) 」

「その願い 能 ( あた ) わず」

パリオン神の放つ必殺の一撃を、ウリオン神が無効化した。

眷属通信でアリサ達が参戦を希望したが、今は好機を待って控えさせている。

杖艦で一撃を入れた瞬間にパリオン神から反撃されるのは確実なので、奇襲するタイミングが重要なのだ。

「 魔術の司 ( マスター・ウィザード ) 」

――げっ。

パリオン神が魔神の権能を使って、神舞装甲や竜破斬を使いだした。

こちらの軽い牽制は神舞装甲で防がれ、竜破斬がオレ達の連携を妨害する。

「―― 最強の刀 ( きれぬものなし ) 」

隙を突いたパリオン神が、オレとウリオン神を振り切って、カリオン神を真っ二つにしようと迫る。

――まずい。

神剣に斬られる寸前に、カリオン神がオレの手元に転移した。

とっさにユニット配置を使ったのだが、上手くいった。共闘しているせいか、カリオン神やウリオン神も自軍ユニットと判定されたようだ。

それにしても、強い。

権能を全力で使う二柱の神々と共闘しているのに防戦一方だ。

「それきらい」

パリオン神がオレを斬ろうと眼前に現れる。

神剣に先立って襲ってきた竜破斬の連続攻撃を、なんとか受け流す。

「ウリオン!」

パリオンの持つ神剣を回避するオレの耳に、カリオン神の叫びが届いた。

ウリオン神の首が刎ねられている。

刎ねたのは大鎌を持つパリオン神だ。

どういう事だ?

オレの目の前にもパリオン神はいる。

偽物じゃない。神剣を持つうえに権能まで使っている。

大鎌を持つもう一体のパリオン神が、今度はカリオン神の首を狙う。

――させないよ。

オレは目視ユニット配置で移動し、パリオン神の大鎌を受け流す。

「ウリオンは生き返るべき!」

カリオン神がウリオン神の首を胴体にくっつけて復活を試みる。

「させない」

神剣を持つパリオン神が少女神達を狙う。

オレは大鎌のパリオン神を目視ユニット配置で振り切って、三柱の神々の間に割り込む。

「一緒に滅ぶ」

眼前に迫る≪滅び≫を纏った神剣。

聖魔神剣を犠牲に――。

――いや、手はもう一つあった。

目の眩むような閃光と轟音と衝撃が、神剣ごとパリオン神を吹き飛ばす。

使ったのはストレージに収納したままだった「魔神の攻撃魔法」だ。

二体目のパリオン神がふらふらと爆炎の向こうから姿を現す。

パリオン神を倒すには至らないだろうけど、それなりの痛手を与えたはずだ。

「マスターは傷付けさせないと告げます」

大鎌のパリオン神の追撃がないと思ったら、ナナと獣娘達が相手をしていてくれたようだ。

「邪魔」

「空蝉の術~?」

「 不落守護領地 ( パラディン・ドメイン ) 」ごとナナを斬ろうとしたパリオン神を、タマの忍術が翻弄する。

「 必中飛剣 ( あたらぬものなし ) 」

パリオン神が「 無限武器庫 ( はてなきつるぎ ) 」で取り出した飛剣を前衛陣に投げる。

「にゅ!」

「ふぁらんくすぅ~、なのです!」

ポチが使い捨てのファランクスで飛剣を相殺する。

完全に相殺しきれなかったようで、砕けた飛剣の欠片とファランクスの残滓がポチ達を吹き飛ばす。

タマが回収していたようだから、ポチはきっと無事だろう。

そして、ポチとタマが作った活路を仲間達が活かす。

「―― 六連竜槍貫牙 《 ドラゴニック・ペネトレイター・ヘキサ 》 」

強化外装を使い捨てにしながら急接近し、パリオン神に「全てを貫く」竜槍の雨を降らせた。

「 無敵の機動 ( あたることなし ) 」

パリオン神がユニークスキルでそれを回避する。

「まだまだあああああああ!」

尻尾からの魔刃砲で無理矢理方向転換したリザが、見たことのない必殺技をパリオン神に叩き込む。

「 無限 ( ドラゴニック ) 竜槍 ( ・ペネトレイター ) 貫牙 ( ・インフィニティ ) 」

残像すら霞むような連続攻撃は、まるで 範囲攻撃のように ( ・・・・・・・・ ) パリオン神を襲った。

「――むう」

パリオン神を守る神舞装甲を砕き、パリオン神にいくつかの傷跡を残す。

「きらい」

リザを狙ったパリオン神の攻撃から救うべく、ユニット配置でリザを引き寄せた。

「よくやったね」

「ご主人様」

リザを褒め、オレはもう一体のパリオン神との激闘を続ける。

「カリナ・セイント・キィイイイイイイイイイイイイック!」

ゼナさんの「 破邪聖軍 ( セイント・アーミー ) 」とラカの超強化でパワーアップしたカリナ嬢の蹴りが上空からパリオン神を狙う。

「もう、当たらない」

パリオン神がユニークスキルでそれを楽々と回避する。

「ラカさん! 今ですわ!」

『散』

パリオン神の側をすり抜ける瞬間、カリナ嬢を包む光が弾けた。

「むう」

『アリサ!』

『おっけー!』

目くらましと同時に、パリオン神の周囲にシスティーナ王女の操る大型ゴーレムが現れた。

アリサの空間魔法による転移だろう。

碧色の光を帯びたゴーレム達が、パリオン神を押さえつける。

「なぜ、避けられない?」

大型ゴーレムからは神力を感じる。

「テニオンの仕業……皆、意地悪」

どうやら、セーラを介してテニオン神も参戦してくれたようだ。

◇

「ウリオンは生き返るべき――」

「――カリオン」

ウリオン神の声が聞こえた。

カリオン神が魔法か権能でウリオン神を復活させたようだ。

――え?

レーダーに光点が増える。

振り返ったオレの視界に、幾つもの青い剣や槍に心臓を貫かれるウリオン神とカリオン神の姿があった。

青い武器を持つのは、三体のパリオン神だ。

大鎌を持つパリオン神がオレの行く手を塞ぎ、神剣を持つパリオン神が光に還元した二柱の少女神を吸い込む。

「神は遍在する」

それが五体に増えたパリオン神のカラクリらしい。

二体でも劣勢だったのに、五体にも増えられたら勝負にならない。

おまけに神を殺すたびにパリオン神の神力が増加している。神剣に吸収されているように見えるが、神剣を介してパリオン神に神力が流れ込んでいるようだ。

何か起死回生の手が必要だ。

『ご主人様。三秒で上に――』

アリサからの眷属通信が入った。

◇

「3、2、1――」

目視ユニット配置で上空へ。

もちろん、仲間達も同時に引き寄せる。

パリオン神達の視線がオレ達を追う。

「 神話崩壊 ( ミソロジー・ダウン ) 」

「 神話封滅 《 ミソロジー・エクステンション 》 」

「 神話喰狼 ( ミソロジー・イーター ) 」

三つの対神魔法が不意打ち気味に五体のパリオン神を飲み込んだ。

「およ? 避けられなかったわね」

「うん、意外だったね」

「学習能力の欠如」

ゴーレム達に押さえつけられた一体はともかく、他の四体まで命中したのは意外だった。

恐らく、オレ以外の者が彼女に痛打を与えられるとは思わなかったのだろう。

「凄まじい破壊力です」

「イエス・リザ。あの攻撃を受け止める自信はありません」

「大勝利~?」

「 えむべぺー ( ・・・・・ ) はアリサとミーアとヒカルなのです」

ポチはきっとMVPと言いたいのだろう。

「二人とも喜ぶのは倒したのを確認してからですよ」

その通りだ。

「おおう……」

爆炎を吹き飛ばし、一体に戻ったパリオンが現れた。

腕や身体の一部を失い、身体の表面もボロボロにひび割れ、血の代わりに青黒い光が流出している。

光輪が明滅し、声もひび割れている。

「……油断した」

神様でも意識の外からの奇襲には痛打を避けられなかったらしい。

「でも、もう油断しない」

パリオン神が気合いを入れると、失った身体が逆回しのように元に戻る。

さらに、身体から噴出していた青黒いオーラが化粧やドレスアーマーへと変化し、背中に藍色と朱色の光輪が増えている。背中にあった青い輪が冠のようにパリオン神の頭部へと移動していた。

「うそっ、あれでもダメなの」

「まっずいわね」

確かに対神魔法三連発で与えたダメージを一瞬で回復されるとは思わなかった。

「天罰」

アリサ達のいる場所に、パリオン神の攻撃魔法が飛ぶ。

それは予想していたので、最適なタイミングでユニット配置で引き寄せ、他の子達と一緒に安全地帯――コアツーの乗る小型虚空艦に後送する。

その場に残った杖艦が一瞬で蒸発した。

パリオン神は排除そのものには興味がないようで、アリサ達を倒したかどうかの確認をしない。

「次はテニオン」

パリオン神が無感情に呟く。

「でも、その前に――」

パリオン神がオレの眼前に現れた。

「――邪魔なイレギュラーは排除する」

≪滅び≫を帯びた神剣が迫る。

オレはユニット配置で数百キロを離れた。

だが、一瞬の猶予もなく、パリオンが眼前に現れる。

「神は遍在する」

つまり、どこにでも現れられるという事か。

どうりで視界掌握で妨害しなかったわけだ。

――くっ。

受け止めた聖魔神剣ペンドラゴンが軋みを上げ、無残に折れた。

――まずい。

「貰った」

パリオン神の持つ大鎌がオレの首を刈りに来る。

漆黒と虹色の火花が飛ぶ。

受け止めたのは虹色の剣。

聖剣エクスカリバーと竜神の牙を融合して作った聖神剣エクスカリバーだ。

「なるほど、牙は二本」

パリオンがこくこくと頷く。

ピキッと音がして虹色の剣にヒビが入る。

少女神を吸収して神力を増したパリオン神は、以前の何倍も強力になっているようだ。

◇

「でも、それで終わり」

数合の後、聖神剣エクスカリバーが砕けた。

「魔神と一緒に取り込んであげる」

パリオン神の剣と大鎌が迫る。

砕けた二本の虹剣でパリオン神の神剣と黒く染まった大鎌を受ける。

虹剣の柄が砕け、魔界の大地に叩き付けられた。

ごりごりと大地を抉り紫色の土に半ばまでめり込んで止まった。

脳裏に仲間達の顔が浮かぶ。

走馬灯なんてやめてくれ。

今度はブライダル・ナイツの面々がフラッシュバックする。

――スケジュール表が二枚

どうして、そんなイメージが――。

起死回生の品を求めてストレージを見る。

――あった。

ならば、打つ手はある。

眷属通信で必要最小限を伝え、オレはユニット配置で移動する。

パリオン神が沈めた大型虚空艦の上甲板だ。

「無駄」

パリオン神が一瞬で追いついてきた。

「これで終わり」

「ああ、これで終わりだ」

オレは思考でストレージを操作する。

光点の位置 ( ・・・・・ ) が命綱だ。

「素直。素直なのは良い事」

パリオン神がこくこくと頷く。

「痛くしないであげる。何か言い残すことは――」

言い残す事?

オレは原始魔法で神力の糸を操作する。

パリオン神に気付かれないように細心の注意を持って。

「そうだな……」

オレが言うべき事は――。

「――チェック、メイトだ」

「チェックメイト? 知ってる。勇者から学んだ。あなたはチェックメイト」

パリオンが大鎌と神剣を振り上げる。

「違う」

「違う?」

首を傾げたパリオンが、自分の下半身を縛る神力の糸に気付く。

「無駄」

糸を切るためにパリオンが剣を振る。

それと同時に、虚空艦の甲板を突き破って虹色の牙がパリオンの身体を背中から貫いた。

艦内に出した「全てを貫く」 竜神の牙 ( ・・・・ ) を、虚空艦の中に潜んでいた仲間達が突き立てたのだ。

「どうして……」

パリオン神の身体が激しく明滅する。

「パリオン、お前の敗因はオレが一人だと思い込んだ事だ」

どちらかというと、彼女が敗北したのはストレージの 複製バグ ( ・・・・ ) だ。

ブライダル・ナイツの結成式の日にアリサ直筆のスケジュール表が二枚あったように、二本しかないはずの「竜神の牙」が複製されて増えていたのだ。たぶん、後者は 竜神 ( カグラ ) の仕業だろう。

「まだ。まだ負けてない」

パリオン神は竜神の牙で神核を傷付けられてなお、滅びる事なく戦意を持ち続けている。

『すぉおおだぁああ』

黄色い輪が腕に変わってパリオンの髪を掴んだ。

『むわああだあああ』

『おうわってえええ』

『いぬぅああああい』

橙、蒼、紫の輪も腕に変じてパリオンの身体や顔を掴む。

奪った神力の中に神々の意識が残っていたらしい。

「うるさい。大人しくする」

『さとぉううううう』

『いまあああああ』

朱と藍の輪が輝いて、パリオンを空へと吊り上げる。

どうやら、ウリオンとカリオンはオレが何を していた ( ・・・・ ) か、知っているようだ。

空の上でパリオンが腕を千切って捨てる。朱と藍の光輪はそのままだ。

「まだ。まだ負けてない」

パリオン神が肩で息をする。

神核を傷付けられ、かなりの神力を失ったせいで、パリオン神の存在が不安定に揺らぐ。

「いや、お前の負けだ」

――なぜならば。

「オレはもう――」

空を見上げる。

「 勝利を宣言 ( チェックメイト ) したのだから」

魔界の空を突き抜けて、星無き空に星が降る。

「――いやだ!」

パリオンが転移する。

それと同時に星が消える。

「無駄だ」

権能は神々が振るう奇跡の力だ。

流星雨は最強の竜神が自らを殺す事ができるほどの神力を篭めた、とびっきりの権能を使い捨てにする。

その力に抗える者はいない。

オレは目を閉じる。

脳裏に星降りが映った。

幼き神の背をめざし星が降る。

パリオン神が人界に逃げようと、神界に逃げ込もうと、星は降る。

力尽き、足を止めた時、それがパリオンの終わる時だ。

星は無慈悲にその身体を砕き、神の大地を穿ち、神座すら粉砕した。

>称号「神殺し:パリオン」を得た。

>称号「神」を得た。

>スキル「神殺し」を得た。

>職種の制限事項が解除されました。

> 特殊能力 ( アビリティ ) 「ユニット作成」が解放されました。

※次回更新は2/23(日)の予定です。

※「職種」が思い出せない方は「1-1.デスマーチから始まる天変地異」を読み返すと幸せになれます。