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18-31.迷宮都市の少年(5)

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18-31.迷宮都市の少年(5)

※twitterアンケートで人気が高かったので「迷宮都市の少年」が続きました。

「……朝か?」

窓や壁の隙間から光が差している。

喉が痛い。空気が乾燥しているからか?

なんで――そうだ、ここは迷宮都市だ。俺は迷宮都市セリビーラで探索者になった。

身体を起こして周囲を見回すと、狭い部屋にごろ寝する見慣れた顔があった。

大柄なゴンは大の字に寝ていて、下敷きになった痩せたケロスや小柄で物知りなザキが苦しそうだ。物静かなラサは部屋の隅で丸くなっている。

紅一点のシナは女子部屋で寝ているので、金持ちのケロスとラサ以外は暑さに負けてパンツだけの格好だ。

昨日脱ぎ捨てた自分の服を着込んで外に出る。

俺達がいた部屋と同じような部屋が一列に繋がった「長屋」が、この辺り一帯に幾つも建てられている。

大きく伸びをしてから、共同の井戸に行き、列に並んでバケツに水を汲む。

このバケツは部屋に備え付けの 甕 ( かめ ) に水を移したら、返しに来ないといけないらしい。

ちょっと面倒だけど、俺達は迷宮都市に来たばかりで旅に必要な身の回りの物しかないから、こうしてタダで貸してくれるのはとても助かる。

「今日は日課のランニングは無理かな?」

排水路の近くで、顔を洗って水浴び代わりに頭から被る。

「おい! 水浴びなら川でやれ! 貴重な飲み水を無駄にするな!」

井戸の管理をしていた役人に叱られた。

そういえば物知りのザキが言っていた。ここは砂漠の近くだから水が貴重なんだって。

「おはよう、シャロン。早いね」

「おはよう。シナこそ早いじゃないか」

水を運んで戻ると、部屋の前にシナが待っていた。

シナに扉を開けてもらって、水を運び込む。

甕の中には砂が溜まっていたので、少量の水で洗い流してからバケツの水をあけた。もう二回くらい汲んでこないと一杯にならない。

まあ、料理をするわけでもないし、これだけあれば足りるだろう。

「 皆 ( みんな ) 、朝だよ!」

シナが寝ている四人を起こす。

「もう、朝か……」

「床が硬いし、ベッドがほしい」

「狭いんだからベッドなんて無理だよ」

「こんな狭さで五人っていうのが無理なんだ」

ザキとケロスが起き上がる。

「ほら、ゴンも起きて」

「母ちゃん、もう少し寝かせて」

シナが起きないゴンの身体を揺すると、いつもとは違う甘えた声でむずがる。

俺は部屋の隅で丸くなるラサを起こしに行く。

旅の間は俺と同じくらい早起きだったのに、今日はやけに遅い。昨日は初めて迷宮に入ったり、迷賊に襲われたり、探索者達の宴会でご馳走になったりして色々とあったから疲れたのかもしれない。

「換気しましょう。この部屋、臭うわよ」

ゴンを起こし終わったシナが、窓を塞ぐ木戸を持ち上げて棒を嵌めて支えた。

部屋が臭いというよりは、俺達自身が臭いんだと思う。だって、街を出てから迷宮都市まで、何日も着の身着のままだったんだから。

「どこかで水浴びがしたい」

水くみの時に頭から水を被ったけど、あんなんじゃ気休めにしかならない。

役人のおじさんが川で水浴びしろって言ってたし、水浴びしても怒られない場所をギルドで教えてもらおう。

「変なヤツだな」

「水浴びなんて、夏だけだよね?」

ゴンとザキが怪訝な顔をする。

うん、うちの村でもそんな感じだった。

我が家では変わり者の妹が「健康な生活は清潔から!」って言って、日々の水浴びが普通だったけど、村でも我が家だけだったっけ。

微妙な空気の中に、ゴンの腹の虫が鳴り響いた。

昨日あれだけ食べたのに、健康な身体は早くも朝食を求めているようだ。

◇

「腹減ったな。何か喰おうぜ」

「保存食も残ってないし、美味しい物を食べに行こうよ!」

ゴンの言葉に、金持ちのケロスが賛成する。

「でも、あたし、そんなにお金ないよ」

「俺もないけど心配すんな!」

困り顔のシナに、ゴンが根拠のない励ましをする。

「炊き出しに行こう!」

ラサが言った。

いつも物静かなラサとは思えない力強い声だ。

よっぽどお腹が空いているのか、目が据わっている。

「炊き出し?」

「タダで食べられるって言ってた」

昨日の宴で先輩探索者から聞いたそうだ。

「タダか! 早く行こうぜ! 無くなったら大変だ!」

ゴンが部屋を飛び出していく。

場所も知らないのに、迷いのない動きだ。

皆も、ゴンに続いて出ていく。

「行こう、シャロン」

荷物の中から兜と短剣を取りだしていると、入口で俺が遅れている事に気付いたザキが声を掛けてくれた。

「ごめん、すぐ行く」

「炊き出しに、兜や短剣を持っていくのか?」

「盗まれたら困る」

「確かにそうだね」

ザキも自分の短剣を荷物から拾い上げてベルトに差した。

「なんだ? 兜なんて被って飯に行くのか?」

ゴンにも言われたので、さっきザキに言ったのと同じ事を告げる。

「馬鹿馬鹿しい。そんな重いのを持って行けないよ」

「俺は剣だけ持って行くぜ」

「あたしもナイフを」

ケロスは俺を馬鹿にしたけど、ゴンとシナは武器を回収してきた。

ちなみにラサは最初から短剣を手放していなかった。さすがだ。

「ギルドの裏手の訓練所ってここかな?」

「人がいっぱいいるし、何より良い匂いがしているから間違いないよ」

炊き出しには沢山の人が集まっていた。

「もう我慢できねぇ。早く喰おうぜ!」

「こら! ガキども! 飯が食いたきゃ、ちゃんと列に並びな!」

どんどん前に行こうとしたゴンを、強面のおっちゃんが怒鳴った。

おっちゃんは片方の足が途中から木の棒になっている。

たぶん、迷宮で片足を失って探索者を引退した人なんだと思う。

よく見たら、子供やお年寄りに交じっている大人は、手や足がない人がほとんどだ。

「列に並ぶなら、こっちだぜ!」

俺達と同じくらいの年の子達が声を掛けてくれたので、強面のおっちゃんに会釈してから皆で並ぶ。

「並ぶなら、一番後ろのヤツはコレを持て。後ろに誰か並んだら、そいつに渡すんだぞ」

声を掛けてくれた子が、何か文字が書かれた立て札を渡してきた。

「サイコ? なに?」

「『最後尾はこちら』って書いてあるんだよ」

あまり使わない単語だから、シナには読めなかったようだ。

そういえば昔、妹が「ミミケ」とか言う同好の集まりで、こんな立て札を回す文化があったって言っていたような覚えがある。

「シャロン、どうしよう」

どうでも良い事を思い出していたら、ザキが不安そうにそう言った。

「どうしたんだ?」

「自分の食器は自分で持ってくるみたいだ」

「困ったな」

旅の荷物と一緒に置いてきてしまった。

食器と言っても、カップと椀と匙しかないけど。

「だいじょび~、無かったら貸してくれるよ~」

困っていると、横を通りかかった猫人の子供が教えてくれた。

「ありがとう。助かった」

「なんくるないさ~」

お礼を言うと、不思議な響きの言葉を残して去っていった。

猫人族の言葉かな?

「おい、シャロン! 俺達の順番だぞ!」

後ろ姿を追っていた俺をゴンが引っ張る。

そうだ。ご飯を食べなきゃ。

俺達は食器を借りて炊き出しを受ける。

炊き出しの料理は、二種類の大きな団子が入った良い匂いのスープと香ばしい焼きたての薄いパンだ。パンはけっこう大きい。

「受け取ったら移動して。そこに立ってたら邪魔よ」

「すみません!」

お姉さんに促されて移動する。

「おい、あそこに座ろうぜ!」

ゴンが適当な場所を見つけて陣取り、皆でそこに腰を落ち着けて食事を摂る。

「美味い、美味い、美味い」

ゴンが同じ言葉を繰り返しながら食べる。

少し薄味だけど、とても美味しい。妹が作らせるダシ入りの料理みたいだ。

妹に言われて、狩人さんから貰ってきた骨を煮てダシ取りをさせられたっけ。

「美味いだろ。これは『伝説の料理人』の一番弟子。『メイド王』ルルちゃんがレシピを作った料理なんだぜ」

「――ジェルさん!」

俺達にそう声を掛けたのは、先輩探索者の「大盾のジェル」さんだった。

俺達の近くで食べていたらしい。

「ジェルさんも炊き出しを食べるの?」

「二日酔いの朝はここの朝飯が美味いのさ。もちろん、俺は金を払ってるぞ。他にも『ぺんどら』とか寄付をしている連中がたまに食べに来てるぜ」

言われて見ると、青いマントの獣人が端っこの方で食べている。

「俺はそろそろ行く。お前らは講習か?」

ジェルさんは空の容器を荷物に戻しながら立ち上がる。

「いえ、まだ何日か先です」

「それなら、飯を食い終わったらギルド前に行ってみろ。口入れ屋が日雇いの人足を集めているから、適当な仕事を探せばいい。ベリア運びあたりなら、お手軽だと思うぜ」

そう助言してジェルさんが去っていった。

「スープの具はお芋の団子と豆の団子の二種類なんだね」

「肉がちょっと入ってて美味しいね」

シナとザキが笑顔で言葉を交わす。

「少し崩してスープと混ぜると味が変わって楽しい」

「へー、やってみよ」

ラサが教えてくれたのを試してみてる。

そのままのスープも美味しいけど、崩した団子が交ざったスープも食感や味が変わって新鮮な気分で味を楽しめる。

「そうか? 味が薄いよ。なんだか食べた気がしない」

不平屋のケロスが料理の味に文句を言った。

「味が薄いのはわざとだって言っていたガウ」

青いマントを着た大柄な犬人がケロスに言う。

「わざと? なんでそんな事をするんだ」

ケロスは腰が引けていたけど、怯えながらも犬人に噛みついた。

「ルルさんやアリサの話だと『少し物足りないくらいが丁度良い』らしいガウ。お金ができたら別の料理を食べたくなるくらいが ジリツ ( ・・・ ) を促すんだって言っていたガウ」

「この料理はあくまで補助的なものって事?」

「その理解で正しいガウ。迷宮都市の料理は味が濃いから、物足りなく感じる人が多いガウよ」

ザキやラサには理解できるようだ。

「君達も早く卒業できるといいガウね」

犬人は人懐こい笑みを浮かべて去っていった。

食事を終えたオレ達は、食器を返した後、ジェルさんに教えてもらったギルド前へと向かう。

◇

「うわっ、もの凄い活気だ」

人がいっぱいいる上に、 皆 ( みんな ) ガヤガヤと何か大声で言い合っている。

「糞尿の回収は一日に銅貨五枚だ! 汚れてもいい格好で来いよ!」

「臭い仕事はねーよ」

「でも、銅貨五枚だぞ?」

「解体所の掃除係を五人募集する! 日当は銅貨三枚だ! 余った屑肉もついてくるぞ!」

「俺やる!」

「肉、食べたい! やる!」

「俺も俺も!」

解体所は人気らしい。

ゴンがふらふらと行きそうだったけど、シナがなんとか引き留めた。

俺達はジェルさんが言っていたベリア運びの仕事を探す。

「ベリアを一〇枚運ぶたびに銅貨一枚だ! 何人でも雇ってやるぞ!」

「あった! あそこだ!」

俺達より年下の子供達から、身体に障害を持った大人まで色んな人がベリア運びの仕事を受けていた。

「俺達もやります!」

「よし! お前ら見ない顔だな。初めてか?」

口入れ屋の言葉に頷くと、彼は紐付きの札を俺達に一枚ずつ渡しながら、簡単に仕事を説明してくれた。

「この札を首から下げて、都市の外のベリア畑に行け。札を下げずにベリアを刈っていたら捕まるから必ず見えるところに身につけろ。場所は他のヤツについていけ」

説明を受けている間にも、常連らしき人達が札を受け取って走っていく。

「ベリアは知ってるな? 欲張って運べない量のベリアを刈ったら現場の監督官に殴られるから気をつけろ」

「へん! あんな葉っぱなんて何枚でも運べるぜ!」

ゴンがそう嘯いて勝ち誇る。

その間にも次々と働きたい人がやってきて、札を受け取っては駆けていく。

「どうしてあんなに急ぐんだろう?」

「場所取りだ。南門から近い場所はすぐ人でいっぱいになるからな」

俺の疑問を口入れ屋のおじさんが教えてくれた。

「やばい! 俺達も急ぐぞ!」

それを聞いたゴンが駆け出す。

「待ってよ!」

ケロスとシナも駆けていく。

「ボク達も行こう」

ザキがラサや俺に声を掛け駆け出す。

――兄さん。

俺も駆け出そうとして足を止めた。

――初めて何かをする時は、焦ってはダメ。必ず準備と情報収集をして。

脳裏に妹の教えが甦る。

「シャロン?」

「どうした?」

ラサとザキが俺を振り返る。

「待って、準備と情報収集だ」

俺は口入れ屋の方を振り返る。

「あの! ベリア畑に行く前に何かした方が良い事はありますか?」

口入れ屋のおじさんは俺の問いかけにニヤリと口角を上げた。

「錬金ギルドの裏手で背負い籠が借りられるぜ。ベリアは棘が痛いから手袋もあった方がいい」

「ありがとう、おじさん!」

俺は口入れ屋のおじさんにお礼を言って、教えてもらった錬金ギルドに向かう。

そこでは札と探索者証を見せて籠を借りている。探索者じゃない街の子達は別のモノを見せていた。俺達も列に並ぶ。

「ほれ、壊すなよ」

札と木証を見せて、怖い顔のおじさんから籠を受け取る。

おじさんの横にいた少年が、木証の番号を帳面に記録していた。

――そうだ。ゴン達の分も。

「もう三つ貸してください」

「一人一つだ」

「友達の分なんです」

「ダメだ」

食い下がったけどダメだった。

籠を持ち去る人がいたらしくて、その対策で札と探索者証をセットで確認できないと貸してくれなくなったらしい。

「お前らもちゃんと返しに来いよ。面倒だからって、そこらへんに捨てておいたら、無料の貸し出し自体がなくなるからな」

おじさんはそう言って、さっさと行けと俺達の背を押した。

――面倒でもルールは守りなさい。それが兄さんの助けになるから。

妹の言葉が脳裏を過る。

村にいた頃は口うるさいだけだと思っていたけど、こうして外の世界に出たら、それにちゃんとした意味があった事に気付かされる。やっぱり、俺の妹は凄いヤツだ。

◇

南門の前の通りは、都市に入ってくる荷馬車や隊商が列をなしている。

村のお祭りの何倍も賑やかだ。昨日の探索者ギルド前も凄かったけど、ここはもっと凄い。

「こっち」

ラサが身軽な動きで人々の間をすり抜ける。

俺とザキもその背を追って門へと向かう。

「ベリア刈りか。見ない顔だが初めてか? ベリア畑はあっちだ。魔物はいないけど、気をつけて行けよ」

門の衛兵に紐付きの札を見せたら、おおよそのベリア畑の方を教えてくれた。

籠を背負った人達は門を出たらバラバラの方に走っていくので、どっちに行ったらいいか困っていたから助かる。

「あれかな?」

一番近いベリア畑らしき場所が見えてきた。

衛兵や口入れ屋のおじさんはベリア畑って言っていたけど、とげとげの分厚い葉がわさわさ生えた株が幾つも群生しているだけの場所だ。

「なんでダメなんだよ!」

「そうだそうだ!」

ゴンとケロスがいた。

けっこう早く出たくせにまだこんな場所にいるって事は、どこに行けばいいか分からなくて迷ったんだと思う。

槍を持った男の人がゴン達を追い払う。

「ここは足が悪い奴らが優先なんだよ! 元気な奴らは向こうの畑に行け!」

妹が言ってた「シャカイフクシ」ってヤツかな?

ゴン達と合流して、別の畑に向かう。

「ここはダメなのか?」

葉を刈られた株が並んでいる。

その株の中にいくつか葉が生えているのがあった。

「待って」

腕まくりして畑に入るゴンを、ザキが止めた。

「看板に採取禁止って書いてあるよ」

立て札には赤い塗料で大きく×が描かれ、下に文字が書いてある。

「誰も見てないし、いいじゃねーか」

「ダメだよ。まだ葉が小さいから、すぐにバレると思う」

不満そうなゴンにそう言って次の畑に向かう。

近い場所のベリア畑は、刈り尽くされて採取禁止になっているか、先客がいっぱいで手を出す余地がない所ばかりで、けっこう遠くまで行く羽目になった。

なんとか人の少ないベリア畑を見つけたので、そこで刈る事にした。

ベリア畑では大勢が協力して葉をもいでいる。

「俺達もやるぞ!」

「痛っ」

「とげとげが刺さった」

止める暇も無く素手で作業をしようとしたゴンとケロスとシナが、手を怪我してベリアの葉から離れた。

「俺がやるよ」

グローブを着けた手で葉を持ち上げ、小柄なラサが分厚い葉の根元に小さなナイフで切れ目を入れる。小さなナイフだと上手く切れないみたいだ。

「俺様がやってやる!」

ゴンが乱暴に剣で斬り付けた。

ベリアの葉が勢いよく切断され、汁が飛び散った。

「危ないな」

もうちょっとで、俺の足まで斬られるところだった。

「株の幹や根っ子は傷付けるなよ! 次が取れなくなるぞ!」

近くで作業していた大人に叱られる。

「六人でやるのは効率が悪い。二手に分かれよう」

ザキがそう言って三人ずつに分かれる。

ゴンはシャツを脱いでそれを手に巻いて作業をする事にしたようだ。ゴンが持ち上げた葉を、ケロスとシナがナイフで切る役だ。ケロスが文句を言いながらベリアの葉の根元に潜り込んで作業する。シナは文句こそ口に出さなかったが、葉の下に潜り込むのが怖いようだ。

「俺達もやろう。ラサ、これを使いなよ」

「分かった」

俺は自分の短剣をラサに貸し、俺が葉を持ち上げてザキやラサに葉を切る係を任せた。

「この短剣、すごい切れ味だ」

ラサはベリアの葉を一瞬で切り取れた事に驚いた声を上げる。

「痛て……切った葉っぱを受け止めるときも痛いな。切れそうになったら、一人が受け止める準備をした方がいいかも」

切れた葉が勢いよくぶつかったザキがそう提案する。

ゴン達の方でも同じ経験をしたみたいで、切れそうになったらケロスが受け止める役に回っていた。

時間は掛かったけど、皆で協力して、なんとか一人一〇枚の葉を取れた。

「疲れた」

「思ったより大変だね」

「腰が痛い」

いつの間にか砂まみれになっているし、ベリアの汁が掛かってベタベタする。

自分の分の籠にベリアを入れていると――。

「葉っぱの切り口を下にするな。汁が垂れすぎると買いたたかれるぞ」

近くを通ったおじさんがそう助言してくれた。

「余計なお世話だ」

ゴンがおじさんに文句を言う。

――親切にされたらお礼を言いなさい。

そうだ。妹がよくそう言っていた。

「おじさん、ありがとう! 注意するよ!」

俺がお礼を言うと、おじさんは後ろ手に手を振って去っていった。

ぶっきらぼうだけど、親切なおじさんだと思う。

「けっこう嵩張るな」

籠にベリアの葉を詰めたけど、思ったより入らない。

一〇枚くらいでいっぱいだ。

「俺のも入れろよ」

「僕のも入れて」

「あの、あたしのも」

ゴン達も籠に入れようとするが、余分に入れてももう二枚がやっとだ。

「これ以上は入らないよ」

「なんで俺達の分まで借りてこないんだよ!」

「そうだそうだ!」

「一人一つしか借りられなかったんだよ」

文句を言うゴンとケロスに説明する。

「――ちっ。もう頼まねぇよ!」

ゴンが舌打ちして、近くの雑草でベリアの葉を縛って担ぐ。

「いてっ!」

肩に棘が刺さって痛かったらしい。

「くそっ!」

ゴンは悪態をついてベリアを地面に落とし、服を脱いでベリアの葉を纏め、身体にくっつかないようにひきずっていく。ケロスもそれをマネる。

「どうしよう」

シナが困り顔で周囲にせわしく視線を巡らせた。

さすがに女の子が服を脱いで裸で帰れないか。

「枚数は減るけど、少しずつ分けて運んであげるよ」

俺達で籠に二枚ずつ余分に入れれば六枚は運べる。

「ありがとう、シャロン。途中で籠を運ぶのを交代するね」

「俺はいいから、ラサやザキと代わってやってよ」

俺達は余った四枚を作業中の人に押しつけてゴン達を追う。

服で縛って運ぶのは難しいらしく、南門よりかなり手前で追いついた。ケロスに問われてシナの分を手分けして運んでいる事を言うと、ゴンと二人で「ずるいぞ!」と文句を言われた。

ゴンやケロスは葉っぱの切り口を揃えずに束ねていたので、束ね直した方がいいと助言したけど「うるさい」と一蹴されてしまった。

「ダメだな。引き摺られて葉っぱが傷んでいるし、切り口を下にして運んだから薬効成分の汁がだいぶ流れちまってる。大負けに負けて、賤貨二枚だ。次も同じようにして持ってきたら、買い取ってやらねぇからな」

「そんなあ」

ケロスとゴンは服に穴が空いた上に、手間賃を削られて散々だ。

ちなみに、俺とザキとラサは一人銅貨一枚。六枚の葉を運んだシナは少し減って賤貨三枚だった。

やっぱり事前の準備と情報収集は大事だね。

俺は心の中で、妹に感謝した。

◆◆とある山村にて◆◆

「――はっ」

村の近くの河原で作業をしていたら、ロム兄さんからの愛を感じた。

やっぱり、私達は結ばれる運命にあるに違いない。

幸せに浸っていると、後ろでジャリッと重い足音がした。

私は警戒心も露わに振り返る。

同時に、スカートに隠した短剣の柄に指を這わした。

「レイナさん、こんな場所にいたんですね」

男の人の声に警戒心を解いた。

この人は大丈夫だ。

「こんにちは、アキンドーさん。久しぶりね」

※次回更新は、11/14(日)の予定です。

※デスマ24巻は2月に延期されました。もうしばしお待ちください。