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6-4.はじめての盗賊[改定版]

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6-4.はじめての盗賊[改定版]

※改定内容は後書きをご覧下さい。

※9/15 誤字修正しました。

サトゥーです。三戒を「殺すな」「盗むな」「犯すな」だと思っていましたが、実は「盗むな」ではなく「焼くな」だったんですね。

でも3つに絞らなくても、ダメなものはダメですよね。

◇

「「おはようございます、ご主人さま」」

「おはよう」

朝日が昇り始めてすぐに起きてきたリザとルルの朝の挨拶が重なる。

タマを膝から下ろして、リザに謝るべく槍の所へ連れていく。

「こ、これはっ」

流石のリザも絶句している。

見た目は、大切な槍に落書きされたようなものだし。「性能はアップしたんだよ」と言う前に、まず謝るべきだろう。

意を決してリザに一歩踏み出す――が、リザはこちらを見ていなかった。

槍を構えて具合を確かめるように幾度も突く動作を確認している。強打をするときの赤光は前より強い。

「ご主人さま!」

槍を振り終えたリザがこちらに近づいてくる。言い訳の前に、文句を先に聞く事にした。声のトーンが少し高い、怒ってなかったらいいな。

「これが、ご褒美なのですね!」

話の流れが微妙にわからなかったので聞いてみる。

「アリサがルルに『ちゃんと、ご主人さまにご奉仕したら、いつかご褒美が貰えるのよ』って言っていたのです」

その「ご奉仕」と「ご褒美」は、たぶん意味が違う。アリサめ、ルルに変な事を吹き込むな。

とりあえず、喜んでいるみたいなので、この流れに乗ろう。

「リザにはいつも頑張ってもらってるからね。槍の具合はどうだい?」

「はい、重さはいつも通りですが、槍の穂先まで腕の一部になったかのようです」

嬉しそうに槍に頬ずりするリザの邪魔をするのも憚られたので、朝食の後、出発準備をしている時に、勝手に槍を加工した事を詫びておいた。リザには「私も槍も全てご主人さまの物です」と言われたが、それに甘えない様に注意しよう。

◇

ルルに呼ばれてリザが食事の準備に行ってしまったので、オレはタオル片手に野営地の側にある川に行く。せっかく川の側にいるんだから水浴びがしたかったのだ。ちなみに水温は10度以下なので、普通なら風邪を引く。もっとも、氷耐性のお陰かそれほど冷たく感じない。

むしろ、茂み越しに感じるルルの視線の方が気になる。料理をしつつも、こちらのほうをたまにチラ見している。位置的に背の高い雑草の茂みが遮蔽物になるはずなんだが……。

異性が気になる年頃だから仕方が無いか。

アリサが起きてくると色々やっかいな事になりそうなので手早く石鹸で体を洗う。

服を着る前に幾つか魚影が見えたので、木串を投擲して10匹ほどの魚を仕留めてストレージに仕舞っておく。

朝食に魚の塩焼きは定番だとは思うが、リザとルルが既に調理を始めているのに割り込むのも無粋だろう。

体を大雑把に拭いて服を着替える。

髪は濡れたままだが、火の側の方が乾くのが早いだろう。

「おはようマスター」

「おはよう、ナナ。おはようの後で少し言葉を切ってごらん」

「おはよう、マスター」

「うん、いい感じだ」

誉めながらナナの頭を撫でる。

う~ん。見た目は大人の女性なので、頭を撫でるのにすごく違和感がある。

「おはよ」

「おは~?」

「おはようなのです!」

「おはよっっお!」

他のメンバーも起きてきた様だ。オレも返礼しておく。

それにしても、どうしたアリサ?

「どうして?」

何が言いたい?

アリサはオレの濡れた髪を指して言う。

「水浴びするなら一言いってよ!」

「やだよ。言ったら覗くだろ?」

「もちろんよ! 奴隷として、ご主人様の背中を流すのは当然のギムよ!」

「本音は?」

「大自然の中で水浴びする少年! 見逃すには惜しいシチュだわ!」

そこまで赤裸々に言われると、お仕置きする気も無くなる。

普段は寝る前か朝食後に、オレとそれ以外に分かれて濡れたタオルで体を拭くようにしているんだが、アリサのやつは何回かに1回、リザの目を逃れて覗きに来ていた。覗かれたからと言って目くじらを立てるほどでも無いんだが、他の子達に悪影響がありそうなので、覗きを見つける度にお仕置きしている。

……なんというか、男女が逆だ。

◇

その日の魔法の練習もやはり失敗だったので、気分転換を兼ねて馬車の最後尾で木の小盾を作っている。

1つ目を作った後に防具作成スキルを得たので、ポイントを最大まで割り振って 有効化 ( アクティベート ) した。木の盾とは言え、身を守る道具は最高の技術で作りたい。

散らかるので、木屑は広げたシートに落ちるようにしてある。スキル取得後に完成した2個はポチとタマにプレゼントした。ストレージにも盾はあるんだが、ポチやタマが使えそうなサイズが無かったので自作したわけだ。

今は3個目を加工していたのだが、そろそろ時間なので道具を片付ける。

それに気付いたアリサが、顔を向ける。

「さっき言っていたやつら?」

「ああ、もうすぐだ。街道に2人。街道の側の左右の林の中に5人ずつ。少し離れた木の上に2人だ。街道の2人はアリサ、右側の林の5人をリザ、ポチ、タマ。樹上の2人と左の林の5人はオレが倒す。ミーアとナナはルルの護衛を頼む」

オレの指示に皆が頷く。事前に説明しておいたので、特に質問は返ってこなかった。

皆緊張しているが、大した敵ではない。左側に7レベルの敵がいる以外は2~3レベルの雑魚だ。獣娘達なら一人で殲滅できるだろう。

少し湾曲した林の間の街道を進むと道の上に座り込む男女が見えた。

見た感じ普通の村人風だ。「お~い」とこちらに声をかけてくる。

馬車の速度を緩めると、男が寄ってきて何か話し始める。

「すまない、妻が、がががが」

「ふん、盗賊の小芝居に興味は無いのよ」

アリサの問答無用の精神魔法が男女を直撃する。馬を巻き込まないような位置取りをするのに苦労した。自分は小芝居するのが好きなくせに。

そう、この14人の男女は盗賊だ。

その戦果を確認せずにクロスボウ2丁を交互に構えて樹上の弓兵を射落とす。死んでないはずだ。

馬車の後部から飛び出した獣娘達が林の中に突撃していく。オレも御者台から飛び降りて反対側の林の中へ突撃する。

ものの数分で、「オユ村盗賊団」は壊滅した。半数以上が怪我をしているが誰も死んでいない。今は武装解除して木に括り付けてある。ちゃんとしたロープを使うのは勿体無いとリザが言うので木の蔓でグルグル巻きにしてある。

街中の当たり屋の一件で気がついたんだが、この世界の賞罰に「傷害」や「暴行」は無い。念の為、皆のステータスを確認したが賞罰に変化は無かった。

さらにアリサの魔法で意識を刈り取った後に、 睡眠空間 ( スリープ・フィールド ) で寝かせてもらった。

念の為、マップで確認したが、この領内に「オユ村」という村は無い。

「ところでコレ、生かして捕らえてどうするの? 伯爵さんの町って、わりと遠いよね? 殺した方が早くない?」

「なるべく殺すなとの指示でしたので誰も殺めていませんが、盗賊は見つけ次第殺すべきです。報奨金目的であれば首だけで足ります。それに、盗賊を殺しても賞罰が『殺人』になる事もありません」

アリサとリザの意見は殺伐としているが、この世界では当然の扱いなんだろう。こいつらを見逃した結果、次にここを通る商人や旅人が殺されたり違法奴隷として売られたりするだろう。

だからと言って、獣娘達が人を殺めるのも見たくないし、自分が殺すのも嫌だ。可能な限り殺人は避けたい。

もっとも、身内の命が危険に晒されたら、あっさり前言を撤回しそうな気もする。オレは偽善者であって聖人君子じゃない、その時は仕方ないと諦めよう。

本人の希望だったとは言え、ゼンも死なせてしまったしな。

「こいつらは伯爵の町まで連れていって、犯罪奴隷として売る。ここで殺すよりは利益がでるだろ?」

殺すのが嫌だからと言って、逃がすつもりも無い。罪は相応に償ってもらおう。彼らの「賞罰」ステータスは「殺人」「強姦」「窃盗」などが付いている。無罪の者はいなかった。

リザはまだ言いたそうな顔だったが、オレの決定にそれ以上の異議を唱える気はないようだ。

「しかた無いわね~ そういう事にしておいてあげるわ」

アリサはそう言って、外人っぽいポーズで首を振る。心配してくれているのはわかるが、ちょっとムッとする仕草だ。

そして、オレに指を突きつけて、こんな言葉を続けた。

「いい、自分の命が危ないときは、迷わず相手を殺しなさい。それが、この世界のルールなの。あの国の平和さを引きずって、無様に死ぬことなんて許さないんだから!」

◇

それにしても、流石に14人は多すぎた。ほとんど荷物を載せていない馬車とはいえ、後ろ半分以上が盗賊で埋まってしまった。しかも臭い。

起きて騒がれても面倒なのでアリサの魔法に加えて、最初の野営地で作成した 睡眠薬 ( スリープ・ポーション ) を追加投与して伯爵の町まで眠らせて連れていった。

2日ほどだったが、盗賊たちの臭いと鼾で大不評だった。

次に盗賊を見つけたら、半殺しにして放置しよう。人里離れた場所から犯罪者を連行するのが、こんなに大変だとは思わなかったよ。

[改定内容]

※5/7 主人公の言動が不自然だったので、『ところでコレ、生かして捕らえてどうするの?』あたりから後を改稿しました。

※5/8 賞罰についてリザのセリフや「グルグル巻き」の後に追記しました。

※5/8 防具作成スキル取得を忘れてました。盾作成シーンが少し変わっています。