第1章 十九節
第1章 十九節
迷宮が鳴いている…詩的表現なんかじゃない、文字通り、咆哮が響き、地が割け、木々が、冒険者たちの町が、燃えている。
いつかに見た楽園の見る影もない。
夜空のようにきれいだった、この階層の夜とは似ても似つかない、暗澹とした暗がり。
美しかった水晶は、二面性のように妖しく…黒く、変色している。
明かりを見つけたとしても、それは階層を焼く怪しい紫炎。
被った煤や砂埃が、負った傷や滴る汗に滲み泥へと変わっていく。
身を煽る熱風と上がる呼吸、固まった泥が再び滲んで泥へと戻る。
戦場ではこの繰り返し、時より流れる血が鮮やかに思えるほど代わり映えしない。
戦況は変わり行く。
でも、勝つためにやることは変わらない。
「っ!」
俺は鍛冶師で、俺は騎士、正義を冠する星々を待つ。
「タイミングは合わせる!行け、ハチマン!」
「っ!はいはい」
「”はい”は一回だ!」
「は、はい!」
戦場の中心で説教を受けるとは思っていなかったが、頼もしすぎる魔術師からの一言だ。
左からアーディ、右からアイズ、俺は正面から四本を伴って接近、ガレスのおっさんは後衛であるリヴェリアさんをカバーしながら、敵の動きに応じて俺たち三人誰かのカバーにも入ってもらう。スピードに長けたアイズと、同じく魔法発動中のアーディならすぐに離脱することで致命傷を受けることはない、何より俺が前衛の中心にいるのは、その戦術をより強固なものにするためでもある。
「アイズ!」
「うん!」
切っ先に風を纏った突撃、回転を帯びたそれは敵の攻撃を弾きながら胴体を捉える。
だが、その鱗に阻まれ貫通には至らずに火花を散らす。
「ここ、でしょ!」
アイズの攻撃が敵の注意を引き付けている内に、アーディが左から懐に回り込む。
その身には薄く黄金を纏っている。
『ディア・カウムディ』回復と強化を同時に行うことが出来る、アーディの魔法。
つなぐ為の耐久戦においてこれ以上ないほど適した魔法だ。
アイズの細剣の刺突では入らなかったが、アーディの片手剣セイクリッド・オースは入った。
やはり、属性付与と能力強化どちらかはないとまともに攻撃とは言えない、何よりいよいよあの鱗の攻略方法が分かってきた。
なら、
「フゥッ!」
切っ先を横に伸ばし同時に炎を先に伸ばしていく。
心臓から湧き出る熱の制御にも段々慣れてきた、今の俺なら血液や水を流すイメージより、鎖を這わせるイメージのほうが扱いやすい。
加速をそのままに小さく跳躍した俺は、先に着地した右足を起点に右に回転する。
飛び出すと同時に後退した二人の退路と大最悪の間を鎖の龍で隔てつつ、残りの二本を翼を抑えるように上から覆いかぶさる形で強襲させる。
回転しつつ右手を縁に添え、振りきる左の力に指向性を与え、当たる瞬間に左足をとてつもない力で踏み込み、両手を引き絞る。同時に上からの強襲を振り下ろす。
上からの大質量とともに、両足には鋭い斬撃。
「やった!」
見事に敵は体制を崩すと同時に両足に大きな切り傷を受け、文字通り膝から崩れ落ちる。
いくら再生するとはいえ、上からの衝撃で思考に多少の障害が出ている筈。
再生の兆しが見えてきたところで、俺はすぐさま後退し、鎖も引き上げる。
『閉ざされる光、凍てつく大地』
当然だ、タイミングは合わせると言った時点で彼女はもうすでに詠唱を始めていた。
読み上げる速度、込める精神力の調整を戦況を見つつリアルタイムで行い、この状況が作られることを待っていた。
一連の流れにおいて、リヴェリアは先んじて予期して、詠唱を開始していたのだ。
冒険者としての歴の長さ、そして魔術師としての経験故にすでにタイミングは合わせてある。
『吹雪け三度の厳冬、我が名はアールヴ!』
跪く大最悪の頭上に、白い魔法円が展開される。
天気は鎖のち凍結だそうだ。
『ウィン・フィンブルヴェトル!』
降り注いだ質量をもった冷気の余波が周辺の焦げた草木を揺らす。
身も毛もよだつをこれ以上ない意味で体感し、一瞬体が震えるが、ここは戦場、敵から意識を逸らすわけにはいかない。
何より相手が相手だ、竜の形をした黒いモンスター、他にはない再生力を持ち、膂力もサイズも火力も桁外れ。
階層を突破してきた、という実績持ちの未知、狂暴、暴力、三拍子揃った確実にこの場で仕留めなければならない存在。
「役不足か?」
しかし、言葉とは裏腹に彼の口は軽く上がっている。
自分自身の役不足を今になって気づいたが、それは些末なことだ。
役不足でも、役を押し付けられたなら、俺は答えるまで…あいつらの鍛冶師として、そして騎士としてやれることをやれている今、俺はこの上なく充実している。
「おっさん!」
「おうさ!」
冷気に不快感を覚えた大最悪は、反撃を開始する。
霜を振り払いながら、尻尾を振り回して鳴らし、一度の羽ばたきで跳躍を補助しながらその大質量が迫る。
お世辞にも早いとは言えないが、威力が威力だ。なんの、防御も対策もなければひとたまりどころか粉みじんになり、血だまりになるだろう。
が、敵の攻撃は即ち隙に他ならない。
あっちが、動いてくれるならこっちは防御を任せられる存在に任せ、同時にカウンターを仕掛ける。
「アーディ、露払いを頼む」
「でも…」
「おっさんは今、防御に専念してる。いくらリヴェリアさんが動きながら詠唱できても、数が来れば詠唱は止まる。今の、状況を維持するにはそれが最適だ」
「…分かった。でも、ハチマンが危なくなったらそっちに行くからね!」
「!…お、おう」
俺って、そんなに頼りないかな?
いや、頼りないわ。できることなら頼りたくないまである。
「ショック?」
「いや…まぁ、いつもの事だし、気にしてない…多分知らんけど」
「はようせんか!」
ガレスが受け止めているのは怪物の右腕、単調なモンスターは一度の攻撃に意識を割きやすい。だが、敵は腐っても黒いモンスター、ガレスを抑えつつも視線だけをこちらに動かし、尻尾を上から叩きつける。アイズを俺は、左右に分かれるように散開し、左右からの攻撃に切り替える。
「アイズ!刺突じゃだめだ、刺すより切りに行け!」
「!うん、分かった」
先ほどのアイズの攻撃と、アーディの攻撃で確信に変わった。
やつの鱗は正面からの攻撃即ち点での攻撃には極めて強いが、その逆に線における攻撃に弱い。
勿論、生半可な斬撃では通らない、属性の付与または、能力の強化による何らかの追加がなければ、傷一つ突かない。
…唯一、ライラに渡してあるあれなら有効かも知れない。
ひとまず、前衛3人全員がそれに当てはまるというのは僥倖というべきだろう。
何より、もう数分すればその両方を満たすやつも来る。
「…あぁ、しんど」
「弱音か?…いいや、いつもの事だったな」
5分経過、団長が言ったのは10分だが、その10分があまりに重い。
神の恩恵を受けているとは言え、体力も肉体の強度も無限ではない、そのどれもが当人たちの努力次第だ。
確かに、上澄みの冒険者二人が最大限の活躍をしてくれているが、その両方が静寂との交戦におけるダメージを完全には拭えていない。前衛を担っている俺たちに関しては、戦闘は可能でもこれ以上の耐久戦は厳しい。
少なくともあと3分は稼がなければならない。
とは言え、防御の要であるおっさんの耐久は持っても、持久力が持たない。
現にこの数分で戦況維持のために、4人には多大な労力を割いてもらっている。
その証拠に俺以上に息が上がっている、肩の上下、呼吸の速さ、血液の移動速度から見ても明らかだ。
「・・・」
「…どうするつもりだ?」
今は一時的に会話ができるような状況だ。
戦術を組み立てるにも手が足りない、知恵が足りない、時間が足りない。
距離をとってあいつらがいるであろう場所から、遠ざけようとして入るが、やつの根源的目標が地上に出ることである以上、これ以上の距離は取れない。できる手があるとすれば今のように攻撃と距離をとるを繰り返し致命傷を受けそうな状況でおっさんにカバーしてもらう。
…だが、これではこっち側の体力が落ちていき、退避に手間取った時のカバーでおっさんの耐久が削られていくだけの消耗戦になる。
なら、やることは一つ。
あいつらは、俺に任せた。
…まぁ、強引に押し付けられたともいうが、それはそれだ。
「…ここから先は俺一人で相手に回る。みんなは露払いを頼む、あいつらが来る前に、こいつ以外の敵を殲滅できていれば御の字だ」
「待て、それでは今以上にお前に負担が掛かってしまう!目上の者としてそれは看過できん」
「そうじゃ!っ!それにこのこやつを相手に貴様一人など、っ!危険すぎる!」
「そうだよ!また、目の前でやられちゃうのなんて!そんなの嫌だよ!」
「うん!」
確かに無謀と言われても、返す言葉がない。
リヴェリアさんとガレスのおっさんの言うことはもっともだし、アイズの肯定には胸が痛む。何より、アーディの目の前で今一度命を落とすようなことがあれば、彼女のトラウマを呼び起こしかねない。
けど、一つだけ、ここまでの経緯で言い切れることがある。
「・・・大丈夫だ。俺は、死なない」
『!』
ただ、その一言。
無知ではないが無謀、無能ではないが不可能と言わざるを得ない。
だというのに、大最悪に向かう彼の背中には、大きなものが乗っていた。
正義のファミリアの証、翼と剣、彼はその旗を今一人で背負っている。
荷が重いなどとんでもない、あの11人をたった一人で支えてきた男の背中は、その一言で十分だと思わせるほどの気迫を放っていた。
進んだ先に燃え盛る炎に負けない赤い焔、彼は自らの騎士道を邁進する。
進んだ先がどれほどの地獄だろうと、救いを与える星々が届くまで、彼は自らを奮い立たせる。
恐れを殺し、左手に刀を握り、右手で旗を振り、戦う。
正義を護り、正義を待つ、信じた11人のための騎士、それが正義を護る騎士、比企谷八幡の正義であり、先駆けの騎士道。
「来いよ、でかいの…不死身じゃないが、しぶとさには自信があるんだ。地元じゃ生ける屍で有名だった俺の生命力見せてやるよ」
目の前に立つ無謀が服を着ているような少年に大最悪は気が付く。
先ほどからちょこまかと周りを動き回り煩わせる、虫。
その中でもひと際目障りな奴が今、目の前にいる。
『Vaaaaaaa!!!!!』
咆哮に大気が震える。
4人は思わず視界を覆うが、彼は刀を左に微動だにすることなく受け止め、視線を外さない。
先ほどとは何かが違う。
自意識がないはずの存在にそう思わせるほど、彼の纏う雰囲気は変わっていた。
身に流れる熱が、周囲の大気を焦がすのは当たり前、だが目の前の生き物も同様に感じるほど、彼も熱を帯びていた。
「…っ!」
右手を振り上げ、4本の鎖の龍に指示を出す。
注意を散漫にさせ、判断を遅らせる。
その間に、相手の懐に飛び込んで、縛る、斬る、止める。
俺一人じゃ勝てないのなんて分かってる。
だから、今からの数分は耐えの番だ。
緊張で体温が上がっていく。
まるで見えない鎧を着ているかのような、感覚だ。
硬くなったわけではないのに、何故だろう、無敵な感じがする。
今なら、何だってできる気がする。
こいつを止めるなんて、容易いことのように感じる。
「・・・」
『!』
両足を縛った、翼を抑えた。あとは、斬りかかるだけ。
だが、奴は判断を誤らなかった。
大最悪は、鎖を無視して、こちらに一撃を振り上げた。
巻きあがった土煙の向こう、振り下ろした手の先には、取るに足らない虫が一人つぶれている筈だった。
実際には、そんな現状は起きていない。
寧ろ、彼はその質量をものともせず、刀の上身、それも刃の部分で滑らせるように逸らし、大最悪の右脇から左脇腹までを切り裂いた。
「捉えたというのか!」
「あの細い刀身でようやりよる!」
「私も…」
「…大丈夫だよね」
ま反対の戦場を横目で見やるが、拮抗できているというのが見て取れた。
たった一人、自身をはるかに超える体躯、質量、体積を誇る敵を前に臆するどころか正面から受けて立っている。
勇猛も、勇敢も、ただ一人でなしてい彼を見て、アーディはただただ疑問だった、「何が彼をそこまでさせるのか?」
だが、その答えはいたってシンプル、彼のこれまでを見ていた彼女からしてみれば火を見るよりも明らかだった。
「アストレア・ファミリアのため…か」
口から漏れ出た、その一言にアーディはクスリと笑った。
納得だ。彼の生きる原動力そのものとまで言える彼女たちのためだというのなら、あそこまでの胆力は当然とまで言える。
だが、納得できると同時に彼女は知らず知らずの内に、自身も知りえない「羨ましい」という感情が過っていた。
「・・・」
油断はしない、妥協もしない、寧ろ首を取りに行くつもりで丁度いい、いや足りないくらいだと。ハチマンは敵の懐を針を縫うように飛び回り、拘束と攻撃、一撃離脱と鎖との交互に攻撃を繰り返しながら、より多くの情報を持ち帰るためにあらゆる部位への攻撃を続けていった。
加速していく呼吸を所々にある、合間を縫って一定に保つ、
「ここでも、ない…か」
胴体、足、翼の根本、爪、角、顔面と繰り返していくが、
「そろそろヤバいなぁ」
鎖は先ほどの熱線を一部受けており、ところどころでプラプラと鎖が伸びている。牙は無事だが、胴体はその際の摩耗と拘束時の応力でゆがみ始めている。何より、これ以上の体力消費はなるたけ抑えたい。
よって、ここからは回避優先で行かせてほしいが、
「あと、一か所当ててないところがある…」
それは背面、鎖による拘束や攻撃は時々与えているが、背中を庇うような飛び方と回避、何よりさっきの熱線から一番怪しいのはやはり、隆起したあの背中。胴体にぶっ刺した際の抵抗の様から、胸の中心それも、背中に近い奥のほうに弱点があると、ここまでの攻略からハチマンは見ている。
「それを担保するには…やっぱり、開けてみるしかないよなぁ」
ちょっと絵面的にえぐいし、あんまり俺も見たくないけど、やってみるしかない。
思い立った瞬間ハチマンは左足に力を入れ、一時的にとった距離を急速に詰める。
大最悪は両手を内側に勢いよく寄せ拍手をするようにハチマンを叩き潰そうとする、が読んでいたかのようにその進路を鎖の龍が飛来し弾く、同時に弾かれた腕に鎖が巻き付くと反対方向に引っ張りあう、胸ががら空きだ。
『VaaaaaAaaaa!!』
「うるせ」
がら空きになった胴体に、再び八相を構えながら加速する。
蹴りが来ることなど予想積み、何よりお前は飛翔するには少し時間が必要、今から羽ばたいても遅い。
ハチマンは腕を弾くように伸ばした鎖を蹴り上げようとした足に嚙みつかせ動きを封じる。
「いい加減、腹割って、話そうぜ…物理的に」
さっきも言ったがこいつの体は点に攻撃に強く、線の攻撃に弱い。
が、その再生力のせいで切った傍から塞がっていく、だったら切ってすぐ傷口を広げるように引っ張ってやればどうなる?
「っふ!」
袈裟切りが会心に入る。
腹鱗をないものかのような見事な一筋が現れ、残身に振りぬいた切っ先が地面に接する寸前で右の手のひらを静かにすっと上げ、目にも止まらない速さで、手の甲を返し握りこむ。
「(今)!」
瞬間、両の手を捉えていた鎖の龍がお互い真反対の方向に引っ張られ、ギリギリと音を立てる。
だが、音を立てているのは鎖だけではない、大最悪の体もミチミチと肉を引っ張る音が聞こえる。
同時に、再生を始めていた一閃が広げられ、再生を止めながらも拡張していく、血が噴き出し、筋繊維が千切れる音とともにその奥底にあるものを露わにする。
「あれは!」
「魔石か!」
「あんな、ところに!」
「!!」
予想は当たり、これでここからのプランが決まった。
あいつらが来てからの攻撃の方向性、戦い方、戦術、弱点が露見した今なら盤石を期せる。
が、何もあいつらを待たなくてもいいかの知れない。
「今ここでお前を始末すれば、いいだけの話だ」
幸い、弱点は丸見え、砕くも割くも切るも、俺の自由だ。
こいつが抵抗して、傷が塞がらない内に斬る。
刀を斜に構え、左を踏み込もうとした瞬間だった。
『VaaaaaaVwoooooo!!』
大最悪は方向を上げ目を血走らせながら、体の中心に向けて全力で力んでいく。
食いしばりすぎて口から血が垂れてきているが、その全てを生存本能が勝っていた。
苦痛も、屈辱も、与えられた命令をただ本能的に熟すという命題の前には無力、怪物故にリミッターがない?
違う、生きとし生けるあらゆる生物すべてに生存本能によるブーストは存在する。
火事場の馬鹿力は人間だけの専売特許ではないのだ。
「うっそだろ」
鎖はブツンブツンと切れ、力んだ力のせいで足場が崩壊する。
踏み込みが強制的に終了させられたことによりハチマンは体制を崩し、ほんの一瞬冷静さを欠いてしまった。
「ヤバ…っ!」
敵を侮っていた訳ではない、戦場において油断はどれほどの命取りになるかは身をもって知っている。
だが、彼は若さゆえに振りほどけない油断があった、束ねた鎖は完璧、以下なら取れる。、その一瞬の慢心を奴は逃さなかった。
千切れた鎖が消えるまでの数舜の間に、彼に向けて腕を振りぬいた。
咄嗟に防御の体制をとり、刀の腹で受けることには成功したが、空中で諸に受けたハチマンは先ほど以上の威力で弾き飛ばされる。その威力は常人であれば体が弾けるレベルのものだった。
水切りのように地面を数度跳ね、大きな岩に叩きつけられることでようやく止まったが、先ほどと違い、奴から俺は補足される距離にいる。
背中に衝撃、刀を隔ててとは言え今までとはけた違いの威力の一撃を受け、両手と足が痺れて揺れている。
立ち上がらなければ不味いというのに、立ち上がるための力が逃げていく。
幸い血は流れていない、以前のような失血のパターンはない、がこれはこれで本当に不味い。
露払いを頼んでいる4人が大最悪に向かってくれているが、今のやつの膂力を相手にあの四人だけでは分が悪すぎる。
せめて、鎖をと痺れる片手をあげるが反応があるのは2本のみ、カバーしきれない…
そう思った次の瞬間には奴はこちらに向かっていた。
翼をはためかせながらの突進、自らの体を浮かせて速度を増した大質量がこちらに向かってくる。
目の前の絶望に、どうしたものかと幾度もの思考を巡らせているとき、いくつもの場所で林が揺れる音がする。
この階層における火災と先ほどの小規模な崩落により階層に風は吹いているが、それと同時に11の足音がする。
…間に合ってくれたか。
その瞬間、安心感で肩から力が抜ける。
間違ってもこれは油断じゃない、
「「っ!」」
信頼だ。
大最悪が目と鼻の先に迫る中で、背後の林から二つの影が飛び出す。
跳ねるように飛び出した彼女らは、携えた刀で、木刀で、その翼を落とす。
突進を支えていた浮力がなくなり、走るための膂力が不足し、膝から崩れ落ち慣性そのままに体を引きずっていく。
大質量が地響きを伴いながら地面を削る中、切り裂いた二人は至極冷静に着地し静かにたたずんでいた。
『VuVaaaaaaaaaa‼』
屈辱に震えるように勢いよく顔を上げ方向を上げるが、
『っ!Vsaaaaaaaaa!』
顔を上げる方向が分かっていたかのように弓矢が飛び、片目と塞がりかけていた胸を捉える。
今一歩魔石を砕くには至っていないが、再生を妨げる形で突き刺さり、分かりやすい目印のようになっている。
「おぉ、間に合ったか」
「これでお役御免か…」
「私も一緒に戦うよ!」
「ん…私も」
二人を皮切りに林の奥から、仲間たちが姿を現す。
最終決戦…全員で片をつける。と、後衛も、前衛も、全員が敵を見下ろす位置に現れる。
敵を囲み、立ち上がるのを待つ。
だが、一人だけまだ見えていない者がいる。
その一人はゆっくりと俺の後ろの林から現れて、俺の横につく。
「お待たせ…待った?」
紅い彼女は、この戦場に一層似つかわしくないような笑顔で微笑みかけながら、未だに座りこけている俺に手を伸ばす。
その頭には白百合の意匠が見えていた。
いつもと変わらない様子の彼女に、安心と共にフッと小さく笑ってしまう。
だが、それでこそ団長、それでこそ俺たちのアリーゼだ。
「長すぎだ」
売り言葉に買い言葉を返しながら、向けられた手に手を伸ばす。
力強く引っ張り上げられ、痺れていたことを忘れたように立ち上がる。
一瞬よろけるが、アリーゼが肩を貸してくれる。
「っ!もう!そこは、いや今来たところ、って返すところでしょ!」
「10分待ったんだが?」
いつものようなやり取りのお陰で、息を入れなおすことが出来た。
はたから見ればため息なのだろうがアリーゼには伝わったようだ。
支えてくれていたが、離してくれた。
「よし!みんな!決着をつけるわよ!」
11人の乙女と1人の鍛冶師。
12人で絶対悪を代弁する大最悪を討つ。
人として、正義のファミリアとして、自らの手で、
彼女の一言で、各々が動き始める。
詠唱を始めるもの、弓を引くもの、突撃するもの、期を伺いながら一閃の機会を狙うもの。
誰もが自らにできる最大をもって、討伐に臨む。
最初に仕掛けたのは敏捷に長けた狼人、ネーゼが曲刀を振りぬき足の腱を切り裂き立ち上がった大最悪のバランスを崩す。
一撃離脱により、すぐさま離れ、体制を崩したすきにリャーナとセルティの魔法が飛び交う。炎の魔法が崩れる足に直撃し、焼き払い、雷撃が再生後の自由を奪う。着実なダメージと後続への支援を行いつつ、再びネーゼが突進し、再生を繰り返させる。
「どんどん行くぞ!リャーナ!セルティ!ガンガン回せよ!」
「無茶言わないでよ!こちとら並行詠唱できないのよ!」
「でも、精神力が続く限りどんどん打ちます!」
片足を抑えたスリーマンセルに加え、両翼を抑えるため、アスタがその小柄な体からは考えられないほどの力を使い、盾の縁で殴りつける。
盾であるが故に丈夫さには自信たっぷりだし、守るための武器である以上多少の損傷はやむをえない…が、鈍器として使うとは思っていないから、あとの整備が怖いというのが鍛冶師の本心だ。
「フンヌ!」
再生を繰り返す翼に打撃を与えて、内部の骨をズタズタにしているのだ。
可愛らしい見た目と打って変わって、
「エェイ!」
高く可愛らしい声に似つかわしくないほど、その攻撃から出ている音はまるで枯れ木を踏み潰したかのような爽快な音が出ている。
もっとも、その実踏み潰されてい粉々になっているのは生物の骨であるが…
振りほどき矢が外れた目が再生を始めているが、それを見逃さないのがノインだ。
戦場を駆け、木々の間を飛び回りながら、何本もの矢をつがえその全てを命中させている。
事前に打ち合わせていたことだが、彼女たちの役割は大最悪をこの場から動かさないこと。
接近を担っている4人が足を奪い、ノインが目視でもってその移動を制御する。
「ネーゼ!次内股に斬りなさい!少し左に行きすぎよ!」
「あいよ!」
「アスタは…」
「ホェ?」
「そのまま頑張って…」
敵ながら可哀そうになるほど惨い攻撃だと思うのか、ノインはそれ以上の事は言わなかった。
「私たちの負けてられないね!」
「もちろん!」
片やメイスを持った回復術師のお姉さん、片や身の丈を超える大剣を携えるアマゾネスのお姉さん。
どちらも甲乙つけがたい美女であるのは変わりないが、戦い方はアスタに次いで過激である。
「そこ!」
「止めるよ~♪」
波状攻撃を続けるスリーマンセルと戦況を把握する狙撃手、飛翔を妨害するタンクが、激しい戦闘を行っている中で、隙を見て攻撃する観察眼と判断力、敏捷はネーゼにわずかに及ばないイスカだが、力のステイタスはずば抜けて高い、それは本来後方で回復を行うはずのマリューも同様。
ファミリアの中でも、輝夜が霞むレベルのお姉さん力を持つ二人だからこその判断力と信頼。
そこから繰り出される、脇への大きな斬撃と、膝の皿を砕く鈍撃。
先ほどの彼の一閃を想起させる攻撃に大最悪は思考のリソースをイスカに割くが、その隙を逃さず波状攻撃に加えてマリューの一撃によって、膝がまるでトマトが弾けるかのように破壊される。
『・・・』
「どうしたの?」
先ほどから翼の破壊を続けるアスタを除いた5人が、思わず口を噤むえげつなさ、に当人は自覚なし。
これから先も彼女の逆鱗には触れないようにしようとひそかに思う5人だが、それでも手は緩めない。
どこかに必ず生まれる必殺の隙を生み出すため、そして、その必殺を絶対に逃さない5人の為に攻撃を体力が尽きても続ける。
場面が変わって、戦場の脇、残り少ない体力でも自分にできる最大限をしようと老骨に鞭を討つ2人と、細剣を振りながら大最悪の戦場への隙を伺う少女は未だに減らない他階層からの化物たちの進行に対応している。
「あれを倒せば解決するはず」
「まだかアストレアの娘ども」
「・・・」
「数が多すぎて応援に行けない」
まるで息を吹き返してきたかのようだが、これがこの戦いが佳境に入ったが故なのかは不明だ。
四方どこを見ても化物が跋扈する様相に、手を焼いていると、林の一部が揺れそこから小さな影が飛び出す。
「ほらよっと!」
木々の間を飛び回りながら戦場を移動していたライラが、飛び出し。空中か化物が進行している進路上に爆弾を複数投げる。
ものの数秒で爆発し、複数のモンスターが爆散し残ったモンスターも足をがれきに奪われる。
「ライラ!」
「よっ!」
「あっちはどうなっている」
「小僧は無事か!」
「あぁ、騎士様は無事、戦場は今必殺のための時間稼ぎ中だ」
「必殺?」
「おらっ!おうよ!それにはここから狙ったほうがいいと思ってな!」
扇形の武器で化物を討伐しながら、背後に背負った長槍を見やる。
先端の魔剣が一回切りと聞いたときは不良品の供養かとも思ったが、あのハチマンの事だ、それ相応のもののはず。
それこそ一回きりであるが故のとてつもない威力とか。
「必殺と一緒にここらの敵もなぎ倒す算段だ。だから、その時はフォロー頼む」
「任せておけ!」
「期を誤るなよ」
「上等!」
数を熟しながら、機会を伺い敵を背後から追撃する、あたしにぴったりの役割じゃねぇか。
自らが望まずとも適した役割が望んだ役割になり、その上自分の得意分野、その重畳にライラも思わず口角が上がる。
「さ、俺たちも行くぞ~」
「言われなくとも!」
「というか、それ私が言う事じゃない!」
「遅いのが悪いぞ団長殿、もう少し生き急げ」
「嫌よ!私はマイペースに美しく、流麗に生きていくの。あ、もちろん私は老いても美しいけど♪」
相も変わらず喧しいことこの上ない。
火蓋が切って落とされてすぐ、4人は手筈のすり合わせを行った。
事前にステイタスの更新を行いながら、作戦を考え、それをハチマンに伝えるために出遅れたといっても過言ではない。
「まったく、私はあなたの言いたいことが視線だけで分かるっていうのに何でそっちはわかってくれないのかしら」
「相互理解って難しいって話?」
「違う、一方的な愛では無敵になれないって話」
「もっと難しくなったんすけど…」
アリーゼの愛とやらはみんなを愛するという事なのだろう。
愛多き我らが団長様の高説は今に始まったことじゃないし、圧強めなのもいつもの事なので華麗に聞き流していると、いよいよ何度目かの接敵だ。
「・・・抜け駆けか?」
「あら、生き急いでるだけよ?」
「二人とも戦場ですよ!」
『分かってる!』
「あ、あぁあ、はいすみません出過ぎた真似を…」
「…いや、お前は欠片も間違ってない」
戦場には先んじて動く手筈となっている7人が、敵の足止めと体力を削り、隙を見て俺たちがとどめを刺すというのが作戦だ。
もっとも、俺はこの3人のサポートがメインだ。
何より、ここに至るまでにすでに2時間以上をかけて魔石の魔力を奪ている。
もう一押し、敵の再生力が少しでも落ちてくれればすぐさま必殺にシフトする。
「ハチマン!」
「はいよ」
アリーゼの指示に従って、背後から2本の鎖の龍を呼び出す。
8本あったものがもう2本しか残っていない、がここまでくれば2本で十分何せここからは足場兼盾として使い潰すつもりだからな。
「フっ!」
「ヤァ!」
鎖の龍から鎖の龍へ飛び乗ることで斬撃を繰り出していくが、
「・・・」
力のステイタスが足りていない、獲物の精度も腕も申し分ないという自負がある。
だが、決定的に足りていないのだ、一撃一撃を致命傷にするための要素、それが足りていない。
好敵手の持つあの木刀は彼女の故郷の聖木から作られたものだと聞く、エルフはゆかりある素材を用いた武器を使うことで、潜在能力が格段に上がる。彼女の場合は、シンプルな強化と魔力伝導の強化という形で現れ、彼が得た情報である、有効だの条件を明確に満たしている。
「…食わず嫌いをすればおいて行かれる、か」
であれば、使いたくないなどと言ってはいられない。
蠢き続ける鎖の上で、攻撃の手を緩めないリオンと打って変わり、輝夜は一度立ち止まり、彼岸花を鞘に納めた状態で体の正面に持ち、右手で目貫を握り、左で鞘を下す。
刃が軽く覗くと鈍い光の上に人差し指を添え、指関節を浅く切らせる。
『!?』
「・・・」
赤い血が刃先を滴り滑る中で、輝夜は刃を収め、居合の構えをとる。
この局面で自らを傷つけ、尚且つ獲物を劣化させるような行動をとる輝夜に、戦場でありながら驚愕と疑問を持つアリーゼとリューだが、ただ一人事情を知るが故に鍛冶師としては発狂物の所業を静観するハチマン。
『禍つ彼岸の花』
この戦いにおいてはじめての詠唱を輝夜は行う。
硬い鎖の上、強い踏み込みによって鎖が撓むが気にすることなく一閃を光らせる輝夜。
『ゴコウ!』
大最悪の胸部に飛来した輝夜は居合を完遂した。
同じタイミング同じ位置に魔力の斬撃が敵の胸部を深く切り裂く。
輝夜の魔法である『ゴコウ』は任意の位置に魔力の斬撃を五つ生み出す魔法、そしてこれと同時に居合を行うことで魔法と物理的斬撃を両立する攻撃だ。本来これは、魔力の斬撃で包囲し、居合を放つ連続技だが、彼女は包囲ではなくそれすらも攻撃に使ったそれはなぜか。
彼女のスキルである『殺剣血統』は自らの血を媒介とした、毒属性の付与。
続いて『一光血光』は血を帯びた斬撃による傷口の浸食を行うスキル。つまり、輝夜はこの一撃による付随効果によって必殺への足掛かりにするつもりなのだ。
輝夜の魔法、スキルを把握しているのはアストレアともう一人だけ、
「今だ、アリーゼ。」
「ライラ!」
先ほどの言葉通り、アリーゼは俺の視線だけで事情を察し、決着へと繋ぐ判断する。
「狙いはあそこ!」
そこには魔石は見えていないが、再生力が強制的に抑制されている、斬撃の跡。
青く滲んで血管を侵食している毒が、再生と拮抗し、計六つの斬撃による大きな傷となっている。
明確な弱点が見えたライラは、背中の魔槍を抜錨し、アクロバティックに化物たちの頭や肩を踏み台にしながら戦場を一望できる高さに跳躍し、大最悪と群れを一直線上に捉える戦場の端に構える。
「待ってたぜ!」
槍の真ん中から逆手に持ち、中腰に構え視線を大最悪に固定する。
この距離で傷跡が見えるはずがと思っていたリヴェリアだが、彼女は育ち故に目がいい、団長からのサインが下った時点でその視線は目標を捉えている。
『行けよ!雷轟!』
矛先の魔剣の名を叫ぶと槍から体にかけてが黄色い雷に包まれる。だが、ダメージは無い、寧ろいつも以上に体が軽いくらい、体の奥から力が引き出されているような感覚だ。
体の端から端までを伸ばすような勢いで振りぬき左を思い切り踏ん張る。ライラの全力の投擲
彼女の手を離れると同時に、矛先が二又に割れ、弓の一矢にをはるかに凌駕する速度で飛んで行く。
その速度は、空気を割き余波だけで跋扈していた化物を一掃するほどの威力だ。
「みんな!退避よ!」
ライラにゴーサインを出してすぐ、アリーゼは攻撃中の7人に退避の指示を飛ばし、同時にハチマンに視線を送り頷く。
彼もこちらの意思を察してか、無言で走り出す。
今度は伝わったと満足していると、遠方が強く光る。
「(あれの威力なら顔ごと吹き飛ばせる)」
散開した7人に対し、アリーゼ、リオンの二人が大最悪に向かっていく。
一撃を終え、空中に投げられた輝夜を鎖の龍で回収し、そのまま退避させる。
「直撃まで2!1!」
木の上で全体を見渡す砲手であるノインが大きく声を上げる。
直線状にある木々をなぎ倒しながら直進する一条の光。
音速を超え、空気を割きながら、とてつもない熱量と雷を纏う槍。
それはもはや槍の投擲などという単純なものではない、魔力兵器と言わざるを得ないほどの破壊を伴う一回きりの魔槍。
現に、槍の服地効果で限界以上の力を引き出されたライラはあっちでダウンしている筈だ。
『VaaaaaaaAAAA』
撃ち落とそうと、ブレス攻撃の準備をしているようだが、遅すぎる。
何より、もう当たってる。
ノインのカウントが始まった時点で槍は目視出来ていたし、大最悪は目と鼻の先に捉えていた。
避ける挙動すら許さない速度による回避不可能の一撃。
何よりたった一度きりといったはずだ。
槍が直撃すると同時に凄まじいエネルギーを帯びた槍は、大最悪の頸から上をまるでないものかのように貫通し、消し去る。
同時に、槍そのものが空力摩擦によって塵になるがこれでいい。
流石ライラだ、狙いに狂いはない…だが、奴が反撃の姿勢を見せたせいで僅かに、上に逸れてしまい、魔石に直撃はしていない。
「リオン!」
「はい!」
しかし、それすらも計算しているのがアリーゼ・ローヴェル。
いや、計算などというものではない、野性的な勘がそうさせたのか、彼女はライラに投擲を合図した時にはすでに走り出していた。
リオンは言わずもがな、アリーゼが走り出すと同時に行動を始めていた。
それは底のない信頼の表れだ。
直撃はしないまでも余波によって露出した明確な弱点、それは引きずり出した時に見たそれはほんの一部だったようで、見えたのはこれまで見たことがないほど巨大な魔石。換金すればおそらく屋敷が一つ建つと目算できる。が、残念ながらやつを完全に討伐するには、あの魔石は砕かざるを得ない。
「「っ!」」
大最悪の魔石周辺の肉が蠢きはじめ再生を始めようとしている。
アリーゼとリオンが急ごうと加速するが、その時野生の勘とでもいうのか残った両手を二人に向かって伸ばす。
最後の抵抗、苦し紛れの足掻き、言い方はいくらでもあるが、奴は奴らしく意地汚く抵抗することを選んだらしい。
「・・・」
それを黙って許す俺たちじゃない。
「…アーディ!」
伸びた二本の手は、二人に届くことはなかった。
アリーゼに伸びた手は俺の鎖が、リオンに伸びた手はアーディが、弾いた。
「行って!リオン!」
「…えぇ!」
弾かれた腕を潜り抜け、輝く黄金と、情熱の紅は跳躍する。
『花開け!アガリス・アルヴェシンス!』
風に靡く綺麗な赤色が散り行く日の子と燃え盛る炎を伴い、剣を引き絞る。
揺れる金色のポニーテールが、駆ける彼女を一層美しく彩りながら、木刀を引き絞る。
その瞬間はまるで時間がゆっくりと流れているかのようだった。
大最悪という都市への災害を討伐する戦い。
だが、とある神はこうも言った。
「これはきっと、小さな正義たちが強大な絶対悪を討ち滅ぼすための戦いでもあったんだ…」
甲高い音を伴って、魔石は砕けた。
二人の一閃は見事に大最悪に届いたのだ。
振りぬいた一閃の勢いに体が追い付かず、二人は踏みとどまることも着地の体勢をとることもできずに落ちていく。
「ちょおおおおお!」
「クッ!このままでは」
俺は、再度鎖を操作し、二人を受け止める。
二人をこちらに輸送している中で、大最悪の体は崩壊が始まった。
白く小さな光を伴いながら巨大な体躯は、ボロボロと崩れていく。
「こんなの見たことない…」
「えぇ、よほど特別なものだったようですね…」
地面に近づき、二人が地上に着地すると同時に、鎖も消えていく。
流石に限界だったようだ。
寧ろ、他の6本のように、しっかり壊されるよりましな終わり方か…
「やった、やったやったー!」
「おぉおお!討伐完了だ!」
「ま、随分手こずったけどね…」
大最悪が完全に崩壊し、灰に変わる。
その中には砕かれた魔石がゴロゴロと転がっていた。
その様を見てようやく実感する。
「俺たち、やったんだな…」
階層はまだ暗いままだが、天井にきらめいている巨大な魔石が、黒から澄んだ水晶に戻っているのを見て俺は安堵の言葉を漏らした。
「うん!やった!僕たちやったんだよハチマン!」
「おぉう、それはそうと自然な感じで片組むのやめてね、ドキドキするから」
「ちょっと!聞き捨てならないんだけど!」
「なら、私たちもやってやろう…」
「いや、待て。話せば分かる」
ゾロゾロと二人が俺の両サイドを固めようとしてくるが、それをドウドウと馬を落ち着かせるような形で納めていると。
「やったね。みんな、無事!ハチマンも今度は無事だよ!」
「あぁ、あ・た・し・らの騎士様のことだ。また、無茶して体掻っ捌かれてちゃたまったもんじゃねぇもんな」
「みんな~、傷が残ってたら治すから集まって~」
それもそうだ、みんな五体無事ではあるが、ところどころ傷を受けたり、青くなったりしている。
マリューの精神力が心配だが、次期にリヴェリアさんも来る…おそらく大丈夫だろう。
抜け出すなら今、か…
----------------------------------------------------------------
いやー、彼は抜け出して一体何をするつもりなんだろうなぁ(棒読み)(他所向きながら)
さて、なんちゃっておじさん構文は捨て置いて。
何とか、討伐まで来ましたねぇ。
あと、なんか残ってたかなぁ…えぇえっとなんだっけ?あ、そうだ、変身。
とかではなく、アルフィアとの決着が残ってたねぇ、そうだったそうだった(酢賀ムーブ)
という事で、卒研とか課題とかバイトとかしながら命と睡眠時間削ってデッキ調整しながらだからクオリティ落ちてたらごめんねってことで…あ、でも戦後の掘り下げは次でもちょっとだけすると思うよ。多分知らんけど。
じゃ、ここまで読んでくれてありがとう、これからもダンまちをみんなで応援していこう!
コメント、誤字脱字、とかとかあったら是非教えてください。ハゲみになります!
という事で、おやすみー