雨 影使い
雨 影使い
雨だった
かなめは夏風邪をひき休んでいる
梓は私家版の写真集"かずは"の最終校正と印刷打ち合わせでいない
珍しく誠と2人で事務所に居る
誠が黙って珈琲を入れて持って来てくれる
カップを持った誠は通りを見下す窓辺に立つ
雨ですね
スニーカーを履きノースリーブのワンピースを着た誠
この頃随分と遥に似て来た
そうだな
と俺はデスクで報告書を見返していたが頭に入って来なかった
諦めて書類を置いて珈琲を飲んだ
香りの良い珈琲だ
豆 変えたのか?誠
はい いつものは原産国で珈琲の木が弱ってしまって駄目らしいです
雨を眺めながら誠は言った
俺もカップを持って窓の側に行った
三階から見る街並みは雨に叩かれて白く霞んでいた
何か元気ないですね?ご主人様
そうか?
はい
いつもなら畳み掛けて来る言葉が続いて来ない
そんな沈黙が心地よく雨音と香りを楽しむ
そっと誠が俺を見上げる気配がする
いや 体調とか心配事はないよ
大丈夫
そうですか
じゃ…
かずはさん?
うん?いや…
織田に いや旦那の方だが 何か吹き込まれたのか?
…
若い頃の話は半分くらいに聞いておくんだな
それに "かずは" と言う女はあの頃にしか居ない女だからな
もの問いたげな沈黙
それに織田は知らないんだ
…怜子は "かずは" に似てるんじゃない
"しおり" に似てるんだよ
….誰ですか?
初めての女
…
初恋は成就しないって昔から言うけどせめて 自分の好みの女の子なんかと恋に落ちるもんじゃないな
そうなんですか?
その怜子さんに似た人とは?
結婚が決まってたんだよ
まあ なんだかんだで昔の事を 思い出してたら メランコリックな気分になっただけだ
男は未練たらしく思い出を取っておくものらしい
この間も織田 妻の方な 少女趣味だと笑われて…
撮影の時ですか?
撮影場所な
まあ 確かに…思い出したのは そうなんだが
と俺は苦笑した
ふ〜ん
…みんなその
最初の人に似てるんですか?
そんな訳は無いよ
小柄で…いい性格なだけだ
いい性格?
皆 俺の弱味を突いて来るんだ
初めて 誠が笑いを見せた
それは親しみの湧く人柄ですね
そうだろうな
俺も笑い返した
だからな 何も心配するような案件はない
それにしても…梓はいい腕になったなぁ
夏が楽しみだ
撮影合宿ですか?
うん
梓に飛鳥 由香も夏で今までの関係から卒業するかも知れないな
ふふ
なんだ?誠?
心配して損したって
だろ?
いいえ
ご主人様の甘いとこ 変わりないなあって思って
うん?
多分 3人とも肝心な所では関係性 変わりませんよ?
なんだかんだ言ったって織田さんもかずはさん…メグミさんも
なんだ?怖い事 言うなよ
ふふふ
仕事に戻ります!