皐月 影使い
皐月 影使い
あ?姉さん…あ ごめんなさい人違い
え?皐月
つい 声を掛けられて反応してしまった
どうしかしたか?美香
と ご主人様が振り返る
"あ ちゃあ〜"
美香?ママなの?
と 娘の皐月が目を見開き呟く
駅前の広いメインストリート
ピーカンの夏の暑さに負けないようにベアトップのシャツに薄い透けた上着を羽織りショートパンツにサンダル履きの私はどう見ても二十代の若者スタイルでご主人様とデート中だった
私の実年齢が56歳なの以外は不審な点は無い
外観は20歳代にもどしている
ただ良く似た顔でTシャツミニスカートで驚いて棒立ちになっている18歳の私の娘が姉と間違えて声を掛けて来なければ
確かにカンナと似ているのは否めないけどまさかまだ九州の大学の学生寮住まいの皐月がこっちに居るとは思わなかったから油断した
あ 娘なの
と小声でご主人様に告げる
察したご主人様は少し考えて頷いた
こんにちは
黒川皐月さん いや堀さんでいいのかな?
あ…
警戒を滲ませた目で私とご主人様を見比べる
あ 私は柳と言います
あなたの亡くなったひいお祖父様の友達です
堀のおばあさまもご存知ですよ
え?ひいお祖父様の?でも 歳が…
ああ 私はこう見えて40代ですから
私が大学生の時にお祖父様は理事長をなさっていて…
まあ 良く可愛がって頂きましたよ
俺の顰めた顔で察したらしい皐月さんは少しだけ顔を緩めて
お祖父様もよく思い出話でおっしゃるわ…
まあ 最たるものがこのあなたのお母さんのお世話係でしたよ
私の英語の講師先生だったんですけどね
…美人講師で有名な先生だったから 同級生に妬まれましたよ
皐月さんはついにクスッと笑った
そんな話 パパから聞いた事 ないけど
そうですか?黒川さんは妻自慢が凄かったですけど
パパを知ってらっしゃるの?
はい
うちのホスピスで黒川さんの最後は看取らせて頂きました
私の看護師の妻がお世話させて頂いたんです
驚きと疑惑の間で振れていた気持ちが父親の事を聞いたせいでごく普通の疑問にまで落ち着いたようだ
あの?母とはどんなご関係ですか?
そうですね
若い頃からの話まで遡りますから長い話になりますけど…
皐月さんはご予定は?
こちらでショッピングした後で母に連絡して泊めて貰うつもりで来ました
あの…転学の相談とかする為に
ああ じゃあ軽食でもどうですか?ご一緒に
はい
強い眼差しで頷いた