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第百六十二話 ウゴールさん激おこ

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第百六十二話 ウゴールさん激おこ

石龍様から素敵なイラストをいただきました。

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ムコーダさんが男前w

俺たちは冒険者ギルドにやって来ていた。

多分窓口で声をかけなくても、職員から話がいってすぐにエルランドさんがやってくるだろう。

用件は例のダンジョン産の品々の買取の件についてだ。

エルランドさんはウゴールさんと話はまとまったのかね。

まぁ決まってなかったら、また明日にでも来るけどさ。

ちなみに朝は昨日漬けたブラッディホーンブルの味噌焼き丼にしてみたけど、いい具合に漬かってて美味かったぞ。

ダンジョンも潜ったし、もうそろそろ次の街へと行ってもいい頃合いなんだけどね。

何にしてもダンジョン産の品々の買取について話がまとまってからだな。

その後は旅の間に食う分の料理の作り置きもしておきたいしね。

「ムコーダさん、いらっしゃい。ささ、こちらへ」

「今日は私もご一緒させていただきますので」

来たね、エルランドさん。

今日はウゴールさんも一緒か。

まぁ、監視なんでしょうね。

前科大ありの人だから。

エルランドさんとウゴールさんと俺は、お馴染みになりつつある2階のギルドマスターの部屋に向かった。

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

「オークの皮、リザードマンの皮、オーガの皮、トロールの皮、ミノタウロスの皮、オーガの魔石(極小)、トロールの魔石(小)、ミノタウロスの魔石(小)、ジャイアントキラーマンティスの魔石(小)はすべて買取させていただきます。あとはパラライズバタフライの麻痺毒の鱗粉を15とワイルドエイプの毛皮を20、それからマジックバッグ(小)が買取可能ということなのでそれもお願いいたします」

副ギルドマスターことウゴールさんがそう言った。

何でも革鎧になる皮の素材はどこでも不足気味なんだそう。

特にダンジョン産のものは強度もあることから人気もあるとのことで、なるべく確保したいとの意向のようだ。

魔石についても、これはどれだけあっても売れないということはないから、売れ筋の小さなものをなるべく確保したいとのことだった。

しかし、ウゴールさんの意向に意を反する人が……。

「い、いやね、ウゴール君、さっき君が言った品々もいいと思うんだけどね、こう、もうちょっとさ珍しい品をだね」

そう言い出したエルランドさんをギロリと睨むウゴールさん。

「ギルドマスター、昨日散々話し合って結論は出てると思うのですが、まだ何かあるのですか?」

ウゴールさんに睨まれながらそう言われるが、エルランドさんもめげない。

「い、いや、そうなんだけどさ、今君が言った皮とか魔石がこのギルドに大きな利益をもたらすのは分かるんだよ。だけどさ、冒険者っていうのは夢がある仕事だと思うんだ。こういうものを得たら一攫千金も夢じゃないって示すためにも、ここは、ほらリストにあったヴァースキの牙とか皮とか、マンティコアの皮とか毒針とか、ギュスターブの皮とか牙とか背骨とかがいいと思うんだ。ちなみに僕のおすすめはヴァースキの牙とマンティコアの毒針とギュスターブの牙と背骨あたりだよ。ああ、ここは思い切ってベヒモスの皮っていうのもありだよね」

美形壮年エルフがニコニコ笑顔でそう言う。

女性ならコロッと騙されそうだけど、相手はあのウゴールさんである。

エルランドさんの手綱をしっかりと握るウゴールさんが、当然そんなことで言いくるめられるはずがない。

「フンッ、一攫千金とか夢とかおっしゃられますけどね、さっきさらっとギルドマスターがおすすめだと言ったヴァースキの牙やらギュスターブの背骨やらはすべて剣になる素材ですよね? あなた自分の趣味で言ってるでしょう」

ウゴールさんがそう言うとエルランドさんが挙動不審に。

「い、い、いやいやいや、ち、違うからね。ま、まさか、そんなはずないじゃないか」

いや、エルランドさん、どもり過ぎだから。

それって「はい、そうです」って言ってるようなもんだぞ。

「大方この間ムコーダ様から買い受けた 地竜 ( アースドラゴン ) で作る剣と一緒に飾っておきたいとでも思ったのでしょう」

えー、そんな理由でなんてまさかねぇ。

そう思っていると、エルランドさんがギクッと体を強張らせて「何故それを……」なんてつぶやいている。

え? ホントにそんなしょーもない理由なわけ?

エルランドさんェ……。

「まったく、あなたという人は……。だいたいですね、あなたが挙げた品は1つ買取するのにいくらかかると思ってるのですか? 今ムコーダ様に伝えた品々すべての買取代金の半分はそれ1つでかかることになるでしょう。しかも言うに事欠いて、ベヒモスの皮などとふざけたことまで言う始末とは。ベヒモスの皮など買取代金の半分どころか全部でも買えませんよっ!」

バンッ―――。

ウゴールさんがエキサイトしてテーブルを叩いた。

おぅ、ウゴールさん激おこ。

ま、まぁ、お気持ちは分かりますよ。

「ウ、ウゴール君、そ、そんな怒らないでよ。ちょっと言ってみただけじゃないか……」

いやいや、ちょっとじゃないよね、あわよくば手に入れられればって考えてたんじゃないの?

「はぁ、もういいです。ギルドマスター、あなたは黙ってるように」

あらら、お黙りって言われちゃったよ。

「ムコーダ様、変なところをお見せしてしまって申し訳ありませんでした。先ほど私が申し上げた品々を買い取らせていただきたいのですが、よろしいでしょうか?」

「はい、もちろん大丈夫ですよ。物はどうしましょう、ここに出しちゃっていいんですか?」

「量があるので、倉庫の方でお願いいたします。それらを検分した後に精算となりますので、実際にお支払いするのは明日になります」

まぁ、そりゃそうだよな。

品質のチェックやらあるだろうし。

「それでですね、倉庫に行く前にお話しておきたいことがあるのですが……」

ウゴールさんの話は、端的に言えばダンジョン産の品々を商人ギルドにも売ってもらえないかということだった。

通常は冒険者が得たものを買取に出すのは冒険者ギルドとされているが、今回俺がダンジョンから持ち帰ったものは多すぎるため冒険者ギルドでもすべては買取しきれない。

商人ギルドでもそれが分かっているようで、冒険者ギルドで買取が終わってからでいいからうちでも買取させてくれと言ってきているらしいのだ。

「ご承知のとおり、冒険者から冒険者ギルドが買取するのは冒険者たちを守るためでもあります。冒険者が海千山千の商人を相手にするのはなかなか難しいものがありますからな。中には騙されて大幅に安く買い叩かれてなんてことも出てきかねませんからね。そういうことを防ぎ冒険者を守るためのものではありますが、少量の取引や今回のように冒険者ギルドで買取しきれない場合などはその範疇外です」

なるほどね。

少量の取引か、俺も以前にランベルトさんと直で取引したことがあるな。

そう言えば、ランベルトさん“ギルドを通さずに冒険者から直接買うという行為は、冒険者ギルドからも商人仲間からも目をつけられる行為だけど少量であればその辺は目を瞑ってもらえる”って言ってたもんな。

今回は、冒険者ギルドで買取しきれない場合に当てはまるわけか。

「前回、ダンジョン踏破目前まで行ったギルドマスターのパーティーが宝石類を多く持ち帰ったこともあって、商人ギルドでは宝石類を期待しているようなのです」

そうなんだ。

宝石類、たくさんあります。

今すぐ買取してもらう必要もないんだけど、正直俺は宝石類興味ないしね。

買取してくれるっていうなら、それでも全然かまわない。

「それでですね、お時間があるようでしたら、この後か明日にでも一緒に商人ギルドまで行って欲しいのです。急ぎで申し訳ないのですが、商人ギルドからは何度も催促が来てまして……」

「そういうことでしたら、この後でも大丈夫ですよ」

「本当ですか? いや、これはありがたい。では、倉庫に行った後に私が商人ギルドまでご案内いたしますので」

ウゴールさんがそう言うと、黙っていたエルランドさんが「ちょっと待って」と割って入った。

「ムコーダさんを商人ギルドまで案内するなら私がやるよ。ギルドマスターの私が行った方がいいよね」

エルランドさんは当然という感じでそう言うが、ウゴールさんは意に介さず。

「何をおっしゃってるんですか。そう言って、また仕事をサボる気でしょう。そうはさせませんからね。ギルドマスターはここで仕事していてください。それに王都に行く準備はどうなってるんですか? 私、準備進めててくださいって言いましたよね?」

ウゴールさんがそう言うと、エルランドさんがあからさまに目をそらした。

あちゃー、準備してないんですね。

「はぁ~、準備してないんですね。よくそれで、私が案内するなんて言えましたね」

「いや、だってさ……私、本当はそんなの行きたくないし。面倒だし……」

だから面倒とか本音言わないの。

仮にもギルドマスターなんだから。

というか、俺、お願いしたいことがあったんだった。

「エルランドさん、王都に行ったら王様に会うんですよね?」

「ええ。謁見することになりますよ」

「それでしたら……」

俺はアイテムボックスからダンジョン産のあるものを取り出した。

「これを王様にお渡し願います。この国の王様には本当に良くしていただいてますので。フェルたちと一緒にこうやって自由にしていられるし、貴族からの勧誘もないし、本当にありがたいことです。これからもよろしくお願いいたしますとお伝えください」

エルランドさんが王宮に説明に行くって聞いてから考えてたんだ。

この国の王様の鶴の一声で自由にしていいってなったし、貴族からも変な茶々入れられることもないわけだしさ。

感謝してるよ。

それに、これからもよしなにって意味もあるしね。

まぁ言ってみれば投資だね。

こんなものでこれからの自由が確保できるなら安いもんだ。

「はい、それはいいですけど……これは?」

エルランドさんが俺が渡したものを見て聞いてくる。

「ああ、それはダンジョンの宝箱から出た”解毒のネックレス”です」

そう言ったら、エルランドさんもウゴールさんも驚いている。

「マジックアイテムじゃないですか。いいんですか?」

「これは王様が持ってるのがいいと思うんです」

いろいろとね。

王様くらいになると、毒による暗殺とかありそうだし。

「そりゃ王宮としては喉から手が出るほど欲しいアイテムでしょうが……本当にいいんですか? 売れば相当の金額になりますよ?」

「もちろんいいです。王様にお渡しください」

フェルたちのおかげで、金にはまったく困ってないからね。

それにぶっちゃけ”解毒のネックレス”って神の加護がある俺たちには必要ないアイテムだし。

状態異常無効化バンザイだね。

「ギルドマスター、報告だけではなく重大なお役目が出来たではないですか。このような素晴らしいアイテムをお預かりして王に献上するお役目なのですよ。抜かりがあっては困ります。気を引き締めて準備に取り掛かってくださいよ、いいですね」

ウゴールさんがエルランドさんに念押しする。

「それでは私たちは倉庫に行きましょう」

椅子の裏ですっかり寝こけていたフェルとドラちゃんを起こして、ウゴールさんとともに倉庫に向かった。

ちなみにスイはいつもの革鞄の中だ。

「それでは出してもらってもよろしいですかな?」

「はい。まず最初はオークの皮でしたよね。それからリザードマンの皮、オーガの皮、トロールの皮……(中略)……パラライズバタフライの麻痺毒の鱗粉が15と。えーと、他は何でしたっけ?」

何か多過ぎて忘れちゃったよ。

「ワイルドエイプの毛皮を20とマジックバッグ(小)ですな」

ああ、そうそう。

俺はワイルドエイプの毛皮を20とマジックバッグ(小)を取り出した。

「これで全部だと思うのですが、確認してください」

そう言うと、ウゴールさんは倉庫にいたマルセルさんほか解体担当職員の手の空いてる人たちに手伝ってもらい確認していった。

「そっちも大丈夫ですな。そっちもですな。……ムコーダ様、申し上げた品々を確かに受け取りました。至急査定をしまして明日には代金をお支払いいたしますので」

ふ~、やっとダンジョン産の品が少しは捌けたな。

でも、まだまだ残ってるのは残ってるんだけど。

「それでは、商人ギルドにご案内いたします」

そうだ、この後は商人ギルドへ行くんだったね。

ウゴールさんの後に付いて俺たちは商人ギルドに向かった。