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第二百八話 海の魔物は鮮度が命①

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第二百八話 海の魔物は鮮度が命①

ちょっと長くなったんで2つに分けました。

②は明日更新予定です。

港から戻り、俺たちは冒険者ギルドに来ていた。

窓口でギルドカードを見せると、すぐに連絡がいったのかギルドマスターのマルクスさんがやって来た。

「おう、来たか。それで、今日はどうした?」

「クラーケンを討伐してきました」

そう言うと、マルクスさんがポカーンと口を開けて黙ってしまった。

「あの……」

「ク、クラーケンを討伐してきたって、昨日の今日だぞ? それにお前、船はどうした? ギルド所有の船を借りにきてなかったろ?」

あー、船は冒険者ギルド所有のがあったのか。

まぁ、海の街の冒険者ギルドなんだから海の魔物の討伐とかもたくさんあるだろうし、冒険者ギルド所有の船があるっていうのも頷ける。

でも、そんなら最初から言ってくださいよー。

「えっと、船というか、移動手段はあったんで大丈夫でした」

「そ、そうか。き、聞いてはいたが、やはり規格外の冒険者だな……」

マルクスさん、最後の言葉は聞かなかったことにします。

規格外なのは俺じゃなくってフェルとドラちゃんとスイですからね。

「ということは、クラーケンあるんだな?」

「はい。アイテムボックスに入ってます。それから……」

シーサーペントとアスピドケロンもいたから獲ってきたと説明すると、マルクスさんが口をあんぐり開けて唖然としちゃったよ。

眼帯をした海賊みたいな強面の顔が台無しだな。

「マルクスさん?」

「はッ、す、すまん、驚き過ぎたぜ。とにかく、ここじゃ確認もできんから、倉庫行くぞ」

俺たちはマルクスさんの後に付いて倉庫に向かった。

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

「おい、お前ら仕事だぞっ」

倉庫に入るや否やマルクスさんがそう声をかける。

すると、10人近くいた解体担当の職員がわらわら集まってくる。

「なんすか、ギルドマスター」

「ふふん、驚くなよ、クラーケンだ」

解体担当の職員の間で「おおっ」とどよめきが起こる。

「しかも、それだけじゃねぇ。シーサーペントとアスピドケロンもある」

「ホ、ホントっすか?」

「ス、スゲェッ」

またしても解体担当の職員の間にどよめきが起こった。

「オメェらわかってんだろうな。海の魔物は鮮度が命だ。素早く解体が鉄則だかんな」

「「「「「おっす」」」」」

な、何だかここのギルドって体育会系のノリだね。

「他のギルドと比べると解体担当の職員の人数が多いですね」

「ああ。ここは海の街だからな。海の魔物が持ち込まれることも多い。さっきも言ったように海の魔物は鮮度が命だからな。食用になる身はもちろん、素材になるものも早く処理しないとダメんなっちまうものも多い。だから解体担当の職員は多めに確保してんだ」

なるほど。

食用になる部分だけじゃなく、いろんな素材になる部分についても鮮度が大事なのか。

それならこれだけ解体担当の職員がいるのも分かるね。

「それじゃ、クラーケンから出してもらえるか」

「はい」

俺は指示された倉庫の空いているスペースにクラーケンを出した。

「他のもと言いたいところだが、空いてる場所がない。海の魔物は鮮度が命だからな、夕方までには3体とも解体終わらせるようにするから、それまで付き合ってもらえるか?」

さすがは海の街だ。

鮮度が大切だってことは分かってくれてるようで良かった。

「はい、大丈夫ですけど……あ、身は戻してもらって、その他は買取でお願いします」

「分かった。シーサーペントとアスピドケロンの身も最高級食材だからな、買取できないのは残念だが、それ以外全部買取できるのはこちらとしてもありがたい」

何でも、クラーケンは8年ぶりの水揚げで、シーサーペントに至っては13年ぶりなんだそう。

アスピドケロンはSランクだがその中でも下の方なので討伐数もそれなりにありそれほど珍しいとは言えないが、それでもギルドに入荷されたのは2年ぶりだそうだ。

「それじゃ、解体始めるぞっ!」

「「「「「応ッ」」」」」

10人近い解体担当の職員がクラーケンの解体を開始した。

マルクスさんはそれを見ながらいろいろと指示を出している。

これだけの大物が入ったのは久しぶりのことだから、マルクスさんも解体に付き合うそうだ。

『おい』

クラーケンの解体作業を見守っていると、フェルから念話が入る。

『何だ?』

『腹が減ったぞ』

『俺も腹減った』

『スイもー』

あー、そうか。

ギルドに来た時点で昼過ぎてたもんな。

そりゃみんな腹減るか。

『ちょっと待ってて』

「あの、フェルたちが腹減ったみたいなんで、ちょっと食事あげてきちゃいますんで」

マルクスさんにそう断って、倉庫の隅の目立たない場所に移動した。

ここならフェルたちが食ってても見えないだろう。

ここで料理はできないし、ここは菓子パンでいいか。

俺はネットスーパーで大量の菓子パンとサイダーとコーラを購入した。

そして、皿に菓子パンを並べてフェルとドラちゃんとスイに出してやった。

「悪いけど、今はこれで我慢してな。夕方になればクラーケンやらが手に入ると思うから夕飯はいろいろ作るからさ」

『ぬ、しょうがないな』

『夕飯は美味い飯作れよ』

『分かったー』

そう言って菓子パンをバクバク食い始める。

『飲み物はどうする? サイダーとコーラ買ったけど』

『我は黒い方を頼むぞ』

『俺もだ』

『スイは透明なシュワシュワのー』

フェルとドラちゃんはコーラでスイはサイダーね。

深めの皿にそれぞれ注いで出してやった。

『それじゃ、解体終わるまでここで大人しく待っててくれよ』

みんなにそう言って、マルクスさんたちの下に戻った。

解体は進んでいて、既にゲソとワタが取り出されていた。

こちらは全部が素材になるそうだ。

ゲソは吸盤の1つ1つが盾の良い素材になるらしく、マルクスさんもホクホク顔だ。

軽くて丈夫だからクラーケンの吸盤で作った盾はいい値で売れるうえに人気もあるとのことだ。

それに目や口も錬金術の素材の1つで、錬金術師に高値で売れるんだそう。

肝やらイカスミの内臓は、肥料になるそうだ。

聞いた話では貴族向けに栽培されている高級果実の肥料に使われるそうで、通常の肥料の何倍もの値段になるのだが、これがまた売れるとのこと。

全部素材になるとは言ってもゲソだけは、吸盤を取り除いた後は廃棄処分になるらしい。

ゲソはフェルから聞いた話でも硬くてとても食えたもんじゃないってことだったしね。

それから骨も取り外された。

これはしなやかさと強度があることから、大物釣り用の釣り竿の素材になるんだそう。

あとクラーケンはSランクの魔物だから魔石もあった。

ラグビーボールみたいな形の今まで見てきた魔石の中では割と大きめの魔石で深い藍色をしていた。

この魔石も結構質の良いものだったらしく、マルクスさんも笑顔でうんうん頷いていた。

あと残っているのは身の部分なのだが、普通はこの部分は廃棄されていたらしい。

「そっちの身、普通なら廃棄処分になるんだが、本当に食うのか?」

ゲソとワタの処理が進む中、マルクスさんにそう聞かれた。

「はい。フェルがいうには美味いってことですから」

それにどう見てもデカいイカだしね。

俺、イカ好きなんだよね。

見た感じ、クラーケンの身は分厚いけど思ったよりも柔らかそう。

だけど、煮るにしても焼くにしてもこの皮はちょっと邪魔かも。

普通のイカなら煮たり焼いたりするときは皮はそのままでも問題ないけど、クラーケンの皮はちょっと厚みがあるようだから皮むきした方がいいだろう。

このクラーケンにしろ他の魔物にしろ、ここの朝市で買う魚介も含めてだけど、さすがに刺身は止めておこうと思ってる。

異世界の魔物や魚介だからね。

何があるかわからないし、基本は熱を通して食うつもりだ。

あ、そうだ、デカいからクラーケンの皮むき手伝ってもらえないかな。

「あの、これの皮をむくのだけ手伝ってもらえないですかね?」

「ん、いいぞ。何せお前さんは、こうして大物を持ってきてくれたからな」

マルクスさんに聞くと承諾してくれて、解体担当の職員を何人か呼んでくれた。

「それじゃ、手伝いよろしくおねがいします。まずは、ここを……」

エンペラ(耳)と胴の間に腕を突っ込んで外した。

そして、職員の人に胴の先端を抑えてもらいながら、エンペラを俺と別の職員の人で引っ張る。

エンぺラを引っ張って出来た皮の裂けめから、数人がかりで残った皮をむいていく。

エンぺラの皮もむいてと。

ふぅ、よし、あとは……。

骨の付いていた根元の硬い部分は普通は包丁でこそげおとすんだけど、この辺り結構硬いな。

仕方がないから、下の部分は切り落とすことにした。

アイテムボックスからミスリルのナイフを取り出してその部分を切り取った。

「ミスリルのナイフか。さすがはAランクの冒険者だな」

マルクスさんが感心したようにそう言う。

「ミスリルとは言ってもナイフですからね」

そう言って曖昧に笑っといた。

実はこれはとあるところで拾ってきたミスリル鉱石をスイに加工してもらってタダ同然で手に入れただなんて口が裂けても言えないもんね。

皮のむき終わったクラーケンをある程度の大きさに切り分けながら、アイテムボックスにしまっていった。