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第二百十四話 キシャール様って抜け目ない

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第二百十四話 キシャール様って抜け目ない

フェルとドラちゃんとスイはリビングで昼寝している。

さてと、俺はなにしようかな。

夕飯の準備っていっても、今日はあんまり準備するほどのこともないしね。

さすがにフェルたちもこう魚介ばかり続くと肉が食いたくなったようでさ……。

『ここの魚は美味いが、こう続くとな。夕飯は肉がいいぞ』

フェルがそう言い出して、ドラちゃんもそれに同意してさ。

『確かに。がっつり肉食いてぇな。あ、あの甘辛いタレで焼いたやつ、何つったっけ? えーっと、あっ、焼き肉丼だ! 焼き肉丼がいいぜ!』

ドラちゃんはドラちゃんで、焼き肉丼が食いたいって言い始めて。

『スイもお肉がいいかなぁ。焼き肉丼食べたいなー』

スイもそれに同調して焼き肉丼食いたいって言い出しちゃってさ。

元々みんな肉大好きだからね。

それなら、今日の夕飯は焼き肉丼にするかってなったんだ。

あれも肉焼いて焼き肉のタレを絡めるだけだからな。

米を炊く必要はあるけど、そんな時間がかかるもんじゃないからね。

そうなると、暇なんだよね。

なにすっかななんてボーっと考えてると、何か忘れてることがあるような気がする。

何だっけ……?

………………あっ!

神様たちの 捧げ物 ( 貢物 ) を忘れてた!

ネイホフを旅立つ前にしてからすっかり忘れてたぜ。

1週間過ぎてるし、マズイな。

そのうち神託がきちゃうな、こりゃ。

よし、今ちょうど暇だしやっちゃうか。

俺は2階の部屋に移動した。

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

「みなさん、お待たせしました。いますか?」

ドタドタと音がしたと思ったら、すぐに声が聞こえた。

『お主っ、また忘れておったなーっ!』

『やっと来たわねぇ』

『まったくお前忘れんなよなっ』

『……忘れる、ダメ』

『お主っ、忘れるなんてあり得んぞっ。罰当たり者めがっ!』

『そうだぜー、もう少しで暴れるところだったぜ』

約一名危ない発言があったけど、ここは聞こえなかったことにしておこう。

『異世界人クン、あなた1週間に一度っていう約束だったのに忘れたわよねぇ?』

この声はキシャール様か。

キシャール様って抜け目ないんだよな。

嫌な予感が……。

『約束を破ったのだから、ここは銀貨6枚のところ金貨1枚にすべきだと思うのよね』

そう来たか。

キシャール様の言葉に『そうだそうだ』『うむ、いい考えじゃ』と同意する神様たちの声が聞こえる。

確かに忘れてたけど、銀貨6枚をいきなり金貨1枚にUPか、うーん。

『異世界人クンは、私たち神々との約束を破ったのよ、それがどういうことだかわかってるのかしら?』

そう言われると……。

忘れてたのは全面的に俺が悪いしなぁ。

まぁ、金はあるし、今回限りいいか。

『あら、今回だけじゃなくずっとよ』

「ええっ?」

『あなたはね、神々との約束を破ったのよ。忘れたって理由でね、それ分かってる?』

グッ……。

事実だから反論できねぇ。

『それをこれから金貨1枚にしてくれればチャラにしてあげるわよってことなのにねぇ』

ぐぬぬぬ。

やはりキシャール様は抜け目ないぜ。

はぁ、しょうがない。

今回は俺が悪いしな。

それに、ここで何か言ってもキシャール様に勝てる気がしないぜ。

「わかりました。今日から金貨1枚にUPします」

そう言うと神様たちの歓声が。

『分かればいいのよ。分かれば』

そう言うキシャール様の声が聞こえた。

キシャール様の顔は見たことないけど、ドヤ顔してるのが目に浮かぶよ。

『さすがはキシャールなのじゃ』

『ホントだぜ』

『……よし』

『よくやった。キシャール見直したぞい』

『よく口が回る女だと思ってたが、さすがだぜ』

はぁ、そんじゃ早いとこやっちゃいますか。

「それじゃ、今回から金貨1枚ということで。最初はニンリル様ですか?」

『そうじゃ、妾なのじゃ。妾はいつもどおり不三家のケーキなのじゃ。この前の丸くて大きいケーキがいいぞ!』

はいはい、ホールケーキね。

『ニンリル、あなた大丈夫なの?』

『何がじゃ?』

『あの大きなケーキ1人でガツガツ食べてたけど、あなた最近太ったんじゃなくって?』

『ぐぬっ……』

この声はキシャール様と ニンリル様 ( 残念女神 ) か。

思ってたとおり1人でホールケーキ食ったんか。

それもいっき食いとはね。

「あの、この丸い大きなケーキは普通は切り分けて何人かで食うもんなんですよ」

『う、うるさい、うるさい、うるさぁいっ! わ、妾がどんな食べ方をしようが文句を言われる筋合いはないのじゃ!』

逆ギレかよ。

さすが 残念女神 ( ニンリル様 ) 。

そう言うなら別にいいんだけどさ、太っても文句はなしですからね。

あくまでも自己責任でお願いしますよ。

俺はニンリル様ご所望のホールケーキを選んでいった。

金貨1枚となるとけっこうな量になるな。

選んだのは、真ん中のクリームの間にもイチゴを挟んだイチゴショートのホールケーキSサイズと、チョコスポンジにチョコクリームを挟み上にはイチゴを飾ったチョコレートケーキのホールケーキSサイズ、それからイチゴがこれでもかと載ったイチゴタルトにアップルパイだ。

これにはニンリル様も興奮して早くよこすのじゃーって騒いでた。

それにしても、これ本当に1人で食うつもりなのかね。

ホント自己責任でお願いしますよ。

「次は……」

『はいはい、私よ~』

キシャール様ね。

となると当然あれか。

『私はもちろん美容製品がいいわ~。今回から金貨1枚なんだから効きそうなのがほしいわね』

高額商品に手を出しますか。

こういうのは際限ないからね。

姉貴にこれ欲しいのよねと見せられた雑誌を見せられたのを思い出した。

あんときは値段を見て二度見したぜ。

お値段なんと108,000円(税込)。

冗談かと思ったぜ。

10万だぞ10万。

買う人いるのかと思ったけど、実際買おうとしてるやつここにいるわと思ったら女の美容に掛ける執念は怖いって思ったものよ。

そんな思い出はさておき、キシャール様のものを選ばないと。

このネットスーパーは俺が使ってたとことほぼ同じで、国内の有名化粧品会社の主なシリーズはなぜか買えるんだよな。

そっちを見ていると、お、これなんかどうだろう。

「キシャール様、これどうです? この化粧水とクリームでちょうど金貨1枚です。肌にハリを与えて若々しい肌に導きますって書いてありますよ」

俺がそう言うとガタガタガタッと音がした。

『わ、若々しい肌ですって? それっ、それよそれっ! それにしてちょうだい!』

あれ?キシャール様ってお肌の曲がり角を気にする年齢なのか?

『うふふ、女性に年齢を聞くのはマナー違反よ』

……ブルルッ、うう、何だか寒気が。

「あ、そうだ。前回の繰り越し分の銀貨1枚はどうしますか?」

『今回金貨1枚にUPしてくれたから、それは大目に見てチャラにしてあげるわ。その代わり次回もいいの選んでね』

前回の繰り越し分はチャラにしてくれるようだ。

とは言っても今回から金貨1枚だしね。

複雑だよ。

俺はキシャール様のために化粧水とクリームを購入した。

「えーと、次はアグニ様ですか」

『おうっ、オレだ。オレはやっぱビールだな。それと何か美味いつまみもあったらそれも欲しいな』

ビールとつまみか……。

金貨1枚の予算だと、ここはケース買いもありか。

どれどれ、お、A社のプレミアムなビールはケースで売ってるな。

これはアグニ様も美味いって言ってたし、買いだな。

それからいつものようにK社のプレミアムなビールとYビスビールの6本パック。

あと今回はS社のプレミアムなビールも6本パックで。

ビールに合うっつったらやっぱ揚げ物でしょってことで、残りは揚げ物中心の惣菜を購入した。

「お次は……」

『私、ルカ。迷ったけどやっぱりニンリルと同じの』

ルカ様もケーキの魔力にやられちゃったみたいですね。

でも、大丈夫か?

自己責任でお願いしますからね。

『大丈夫。私はニンリルと違って成長期。だから太らない』

あ、そ、そうなんですか。

『わ、わ、妾だってな、ふ、太ってなどいないっ』

あ、 ニンリル様 ( 残念女神 ) の声が聞こえる。

どもってるのが認めてるようなものだぞ。

ルカ様にニンリル様と同じケーキを購入していった。

次は当然……。

『次は儂らじゃなっ』

『おうっ、待ってたぜ』

『『金貨1枚ずつか。グフフフフ』』

グフフフフって、気味悪い笑いしないでくださいよ。

『まずはいつもの世界一のウイスキーじゃな。あれは外せん』

『だな』

『他は今まで飲んだことないもんがいいと思うんじゃが……』

「あ、それなら、高くて手が出なかったやつとかどうです?」

今までの予算だとS社のウイスキーを買うと、手が出なかったものもけっこうある。

『おお、それはいいな。どうだ鍛冶神の』

『うむ。儂もいいと思うぞ』

「これなんかどうです?」

俺が2人に見せたのは黒いラベルの俺でも知ってる有名なアメリカ産ウイスキーだ。

説明書きにプレミアムウイスキーって書いてあるし、いいと思うんだけど。

『お、これは飲んだことないやつだな』

『儂も飲んだ覚えがないのう。これでいいと思うが、戦神のどうじゃ?』

『俺もこれでいいと思うぜ』

ということで購入。

それから……これもまだ買ったことないのだと思うな。

「これどうです?」

緑の瓶のスコットランド産のウイスキーだ。

『これも飲んだ覚えがないのう』

『ああ』

ということでこれも購入。

あとは……お、これが残りの予算にちょうどいいくらいだし、いいかも。

「最後にこれどうですか?」

日本のメーカーのシングルモルトウイスキーだ。

『これも見た覚えねぇな』

『儂もじゃ』

ということで最後にこれも購入した。

ふぅ、あとは段ボールの祭壇にそれぞれ載せてと。

「みなさん、お受け取りください」

段ボール祭壇の上から品々が消えていく。

すぐさまワッと神様たちの歓声が聞こえた。

さて、ようやく終わった。

神様たちを相手するのは無駄に疲れるね。

夕飯はもちろんみんなのリクエストの焼き肉丼を作ったぞ。

ワイバーンの肉でロングセラーの焼き肉のタレを使ったんだけど、みんな美味そうにガツガツ食ってたよ。

やっぱ焼き肉丼は間違いないね。

でも、明日はまた魚介だぞ。

材料もそろったし、いよいよ海鮮BBQだ。