LNCrawler

第二十七話 この世界は優しくない

とんでもスキルで異世界放浪メシ — ncode.syosetu.com · All chapters

第二十七話 この世界は優しくない

今日は26話、27話更新です。

俺は再びフェルを宿に置いて、この街の酒場に来ていた。

冒険者からいろいろ話を聞くためだ。

この街は大きな街だから、どの酒場にも冒険者はいるだろうと思って入ってみたけど、この店は当たりみたいだ。

冒険者の行きつけの店のようで、冒険者がたくさん集まっていた。

俺は目をつけた多分同じパーティーメンバーだろう4人の冒険者に近づいていった。

「あの、ちょっとお話を聞きたいのですが、よろしいですか?」

俺はすかさず店員を呼んで4人の冒険者にエールを注文した。

「おうおう、よく分かってんじぇねぇか」

リーダーらしい屈強なスキンヘッドの男が俺の肩を叩いて空いてる席に座らせた。

「で、何が聞きたいんだ?」

「私は旅をしながら行商人のようなことをしていますが、こういう仕事を始めてまだ日が浅いのです。だから、経験豊富な冒険者のみなさんにそれぞれのお国事情なんかを聞ければありがたいなと思いまして」

「何だ、そういうことか。それなら俺たちに聞いてきたのは正解だな」

リーダーがそう言うと、リーダーと同じような屈強な体つきの獣人(虎だろうか?)のメンバーが頷いて「確かに俺たちはいろんな国回ったもんな」と返している。

「おぅ、何見てやがる?」

虎なのか?と獣人のメンバーを見ていると、凄まれた。

「ばっか、オメー、この国で奴隷以外の獣人が珍しいからだろうが」

他のメンバーがそう言うと、獣人のメンバーはなるほどといった感じでうんうん頷いた。

「そういうことか。確かにこの国じゃ獣人といやぁ奴隷だからな。それでも、この国はまだマシな方だがな」

獣人のメンバーがそう言うと、リーダーはじめ他のメンバーも「そうだな」と頷いていた。

何でも、ガイスラー帝国とルバノフ神聖王国とルバノフ神聖王国の属国みたいな扱いのソレス王国では特に人族以外である獣人やエルフ、ドワーフの扱いが酷いのだそうだ。

ガイスラー帝国はガッチガチの独裁軍事国家で、皇帝に従わない者には死あるのみで獣人やエルフ、ドワーフなどは家畜と同じだと言って憚らないそうだ。

ルバノフ神聖王国は人族至上主義の宗教国家で、この国で信じられているルバノフ教を信じない者は滅びる運命だと喚きちらし、自分たち独自の神を信じている獣人やエルフ、ドワーフたちは邪教徒だとのたまい酷いことも平気でやるそうだ。

ルバノフ神聖王国の属国扱いのソレス王国も内情はルバノフ神聖王国と変わらないという。

この3国で奴隷となった獣人やエルフ、ドワーフたちの運命は悲惨極まりない。

それに比べれば、このフェーネン王国は奴隷とは言え、安いが賃金をもらえるうえに最低限の生活の保障はされているからまだマシな方なのだという。

「レイセヘル王国はどうなのですか?あの国を通ってきたのですが、獣人は見なかったような気がするのですが……」

「ああ、あの国もなぁ」

レイセヘル王国もルバノフ教を信じる人族至上主義の国で、基本的には獣人やエルフ、ドワーフの入国は認めていないのだそうだ。

だが、今の王になってから領土拡大路線に突っ走っていて、戦が絶えずあちこちで争っている。

その争いで、いるはずのない獣人やエルフ、ドワーフを戦わせているのは公然の秘密なのだそう。

それにレイセヘル王国の多くの貴族が獣人やエルフ、ドワーフの女を性奴隷として囲っているのも有名な話らしい。

…………この世界、優しくないね。

そのレイセヘル王国と国境を接しているマルベール王国は、この4人の冒険者たちの故郷でもあり、人種による差別もなく安心して住めるいい国だと言ってた。

だが、隣国に恵まれなかった。

北には魔族領があり、南にはガイスラー帝国、東にはレイセヘル王国とルバノフ神聖王国だ。

虎視眈々と領土を狙われ続けているそうだ。

事実、ごく最近もレイセヘル王国とマルベール王国の国境沿いで両国軍の睨み合いが続き、戦争は時間の問題とも言われているそう。

そう言えば、レイセヘル王国とマルベール王国が戦争を始めるってキールスの街で聞いたな。

この4人もそういう母国に見切りをつけて出て来たんだそう。

「国に家族でもいりゃあ、こんなことも考えなかったんだが、俺たちはみんな孤児だからな」

何でもみんな同じ孤児院で育った仲間でそのまま冒険者になったそうだ。

冒険者ギルドから各国にCランク以上の冒険者の移動を妨げるなとお達しがあるそうで、国を越えた強大な組織である冒険者ギルドを敵に回すことはできず、各国も渋々ながらそれを認めているということだった。

「俺たちはレイセヘルを通ってここまで来たんだがよ、あの国のヤツらの俺を見る目に胸糞悪くなったぜ」

獣人のメンバーがそう吐き捨てた。

うーん、話聞いてると、この世界大丈夫なのか?

なんかエラい世界に来ちまった気がするんだが……。

話を続けると、今度はレイセヘル王国の東隣にあるというクラーセン皇国の名前が出る。

この国は昔からある歴史のある国なのだが、何でも今は皇王家内でのお家騒動が元で国内が荒れているそうだ。

あとは大陸の南から中央部にかけてあるのが名前もはっきりしないような小国群だ。

ここは群雄割拠状態で、冒険者もあまり近づくこともないような場所らしい。

「でも、5、6年前に海側の小国同士がひっついて、あれ何て言ったっけ?「クワイン共和国だ」そうそう、そのクワイン共和国ってのができたんだけど、早くも分裂の危機だって言ってたな」

うん、小国群のとこは近づかないようにしよう。

あとは、大陸の東にあるエルマン王国とレオンハルト王国。

エルマン王国とレオンハルト王国も差別のない比較的自由な国で、何と言っても軍がめちゃくちゃ強いから侵略される心配もないそうだ。

しかも、このエルマン王国とレオンハルト王国は仲も良く協力体制にあるため、国内情勢も安定しているとのこと。

「俺たちもレオンハルトに行く途中なんだ。そのうちエルマンにも行くけどな」

何でもレオンハルト王国にもエルマン王国にもダンジョンが多くあって、両国とも冒険者としてやっていくのに旨味のある国なんだそう。

出て来たよ、ダンジョン。

やっぱりあるんだな。

ちょっと興味はあるが、入ることはないだろう。

やっぱり安全第一だよな。

命、大事にだぜ。

でも、冒険者からいろいろ話を聞いて俺の行き先が決まった。

これはエルマン王国かレオンハルト王国かの二択でしょ。

どっちも安定した情勢みたいだから、どっちでもいいけど。

問題はフェルに言って向かうルートが分かるかだよな。

こういうとき地図があるといいんだけどねぇ。