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第二百七十五話 酒、酒、酒

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第二百七十五話 酒、酒、酒

お約束の本日2回目の更新です。

少し長くなっております。

「ゴクゴクゴク、それにしてもこの酒は美味いな!」

「ああ。冷えたエールがこんなに美味いとは知らなかったぜ」

「しかもだ、このムコーダさんの肉料理と抜群に合いやがる」

「ああ、違いねぇ。いくらでもいけるぜ」

それ、エールじゃないんだけどね。

瓶のビールっていったらこれだろってことで、S社の黒いラベルのビールを用意したんだけど、みんな気に入ってくれたようで水みたいにゴクゴク飲んでいる。

酒が入ったことでみんな解れてきたようで、食えや飲めやでワイワイ楽しそうにしていた。

「ぬ、酒がないぞ……」

空っぽになったビール瓶を逆さにしているドワーフのシーグヴァルドさん。

うお、もうないのかよ。

多めに用意したつもりだったんだけど。

予想以上の消費量だ。

みんなよく飲むねぇ。

念のためにとビールを余計に購入してアイテムボックスに入れておいて正解だったぜ。

「追加の酒を出しますんでちょっと待ってください」

俺は、アイテムボックスから新たにビールを出してテーブルに並べていった。

「おうおう、悪いのう」

そう言ってシーグヴァルドさんが手酌でビールをコップに注ごうとしている。

「お注ぎしますよ。ささ、どうぞ」

さっとビールの瓶を奪い、シーグヴァルドさんのコップに注いでいく。

シーグヴァルドさんが「すまんの」と言ってゴクゴクとビールを飲んだ。

「ゴクゴクゴクゴク、プッハ~……美味いっ!」

さすがドワーフ、いい飲みっぷりだね。

「しかし、こんな美味いエールは初めてじゃな。冷えていてのど越し抜群じゃからいくらでも飲めるわい」

「これはラガービールと言って、厳密に言うとエールとは違うんですけどね」

「ん? 違うのか? まぁ、美味い酒なら何でもいいわい。ガハハハハッ」

そう言って笑うと、シーグヴァルドさんはコップに残っていたビールをゴクゴクと飲み干した。

「おっと、忘れるところじゃったわい。昨日言ってた儂のとっておきの酒じゃ」

シーグヴァルドさんが懐から瓶を取り出して俺に渡して来た。

手作り感のある透明な瓶に入った、黄金色の酒。

ドワーフであるシーグヴァルドさんのとっておきの酒だっていうんだから、どう考えてもアルコール度数高そうなんだけど……。

「早速クイっといってみろ」

そう進められては飲まないわけにもいかず、瓶のコルクを抜いてほんの少しだけ飲んでみた。

ゴクリ―――。

カッと喉が焼けるような感覚。

「ゴホッ、ゴホッ、ゴホッ、ゴホッ、ゴホッ…………ハァ、ハァ、な、何ですかこれはッ?!」

ほんの少ししか飲んでいないのに、喉が焼けるように熱い。

普段はビールくらいしか飲まない俺にはキツイの一言。

俺はビールとともに用意しておいたオレンジジュースですぐさま口直しした。

「ガハハハッ、これがドワーフ謹製の酒じゃあ」

何がドワーフ謹製の酒じゃだよ、こりゃアルコール度数が高過ぎて味なんてわかったもんじゃないぞ。

「笑い事じゃないですよー、何ですかこれ、喉が焼けるかと思いましたよ」

そう言って愚痴ると、ガウディーノさんとギディオンさんがやって来た。

それに釣られて影の戦士の面々もやって来る。

「シーグヴァルド、お前、ムコーダさんにその酒飲ませたのか?」

ガウディーノさんが呆れた口調でそう言う。

「儂のとっておきの酒といったらこれに決まってるじゃろう」

「アハハハ、ドワーフのとっておきなんて飲んだらダメだぜ、ムコーダさん」

ギディオンさんが笑っている。

「そういうギディオンも昔シーグヴァルドにこの酒をすすめられてぶっ倒れてたな」

「ちょっ、リーダー、バラすなよぉ~」

それを聞いて影の戦士の面々が笑う。

「ガハハッ、ドワーフの酒はキツイって聞くからなぁ」

まったくアルコール度数が高けりゃいいってもんじゃないんだよ。

…………いや、待てよ。

アルコール度数が高い酒つったら、俺も用意してたじゃん。

実を言うと、今日のことを考えて、昨夜のうちに酒を何種類か用意していたのだ。

せっかくテナントに酒屋が入ったことだしということで、酒屋のメニューを見ているうちにあれもこれもとなって最終的にけっこうな種類になってしまった。

しかしながら、今朝になってよくよく考えたら‟BBQに一番合うのってやっぱビールじゃね?”と思って、酒は結局ビールだけ出したんだ。

それで、その用意した酒の中にネタで仕入れたある酒があるんだよね。

フフフフフ、これならドワーフ謹製のこの酒にも劣らないぜ。

「シーグヴァルドさん、実はですね是非ともあなたに飲んでいただきたい酒があるんです」

俺はアイテムボックスからそれを取り出した。

ポーランド産のウォッカで、アルコール度数は実に96度。

世界最強のウォッカと言われている品。

これだけアルコール度数があるとすぐに火がつくもんだから、正に火気厳禁の酒だ。

ウォッカはストレートで飲むならキンキンに冷やして飲むんだって酒好きの知人に教えられていたから、氷でキンキンに冷やしてからアイテムボックスで保存しておいた。

昨夜のうちにネットスーパーでグラスの類もいろいろ仕入れてあって、その中にショットグラスももちろんあった。

キンキンに冷えた世界最強のウォッカをショットグラスに注いだ。

ドワーフ謹製のあのキツイ酒を常飲してるなら、これもストレートで1杯くらい大丈夫でしょ。

「シーグヴァルドさん自慢のドワーフ謹製の酒に勝るとも劣らぬ酒ですよ」

「なぬ? どれどれ……」

俺からショットグラスを受け取ったシーグヴァルドさんが、世界最強のウォッカをクイっと飲み干した。

「グ、グォォォォォォォォッ!」

う、うおっ、な、何だ?!

さ、さすがにアルコール度数96度はドワーフでもマズかったか?

「な、な、何じゃこれはッ?! トロっとして甘味もあって素晴らしく美味いのに酒精は恐ろしく強いぞい!」

イヤイヤ、ちょっと、シーグヴァルドさん、顔近いから。

「くれっ、もっとくれいっ」

シーグヴァルドさんがブフーブフーと鼻息も荒くもっとくれと迫って来る。

「いや、あのですね、飲んでいただいて分かるとおり、この酒は恐ろしく酒精が強いんですよ。ですから、そんな一気には……」

酒好きの知人がウォッカはストレートで飲むならキンキンに冷やしてとは言っていたものの、実を言うと、この世界最強のウォッカだけはストレートで飲むのは止めておけと言ってたんだよね。

この酒を仕入れたのも、あくまでネタだったんだけど……。

いくらドワーフとはいえ、さすがにこれをカパカパ飲んだら大変なことになるだろ。

「儂はドワーフじゃ、このくらいの酒何ともないわいっ。そんなことより早くこの最高にウマい酒をくれいっ!」

「いや、ですからね、これはそんなにたくさん飲むもんじゃないんですって」

ネタのつもりだったのに、チクショー。

俺が止めてるってのに、その間もシーグヴァルドさんのクレクレコールは続いている。

クッソー、ええい、ままよ!

「本当の本当に強い酒で、普通は何かと割って飲むんですからね! このままで飲むのはこれが最後ですよ! いいですね!」

そう言って、シーグヴァルドさんの持つショットグラスに2杯目の世界最強のウォッカを注いだ。

それを再びクイッと飲み干すシーグヴァルドさん。

「クッフ~ッ、効くの~! 美味いッ、美味いぞッ!」

俺とシーグヴァルドさんのやり取りを、ガウディーノさんとギディオンさん、そして影の戦士の面々は呆気にとられて見ていた。

「シーグヴァルドが驚く酒とは……」

「おいおい、あのシーグヴァルドが効くとか抜かしてるぞ」

「強い酒でも笑いながらカパカパ飲んでいくドワーフが驚く酒なんてあんのかよ……」

みなさんが飲んだらおそらくぶっ倒れますから。

「もう1杯ッ、もう1杯くれいッ」

「ダメですってシーグヴァルドさん。あれで最後って言ったじゃないですか」

「そんなケチケチするな。後生だから、な」

後生だから、な、じゃないよ。

「あーもう、その酒以外にもいろいろありますから、そっち飲んでくださいよ」

さすがにアルコール度数96度の強烈なウォッカを飲み続けたら、いくらドワーフだってどうなるか分かったもんじゃない。

「なぬっ、いろいろあるじゃと?! それを早く言えいっ!」

へいへい、ちょっと落ち着いてくださいよ。

酒のことになると本当にドワーフって目の色変わるね。

「みなさんもどうぞ」

ガウディーノさん、ギディオンさん、それから影の戦士の面々にも声をかける。

そして、昨夜仕入れた酒をアイテムボックスから出してみんなの前に並べていった。

すべて無難にランキングの中から手頃な値段で飲みやすそうなものを選んでみた。

まずはウイスキー。

酒好きコンビの神様たちの付き合いでいろいろ見ているのもあって、ウイスキーが多めになってしまった。

国産メーカーのヒゲのおじさんのラベルが有名な飲みやすくて飽きないクリアな味わいのウイスキー。

それから、世界中で好まれているブレンデッド・スコッチ・ウイスキーで、40種類以上の原酒をブレンドして生み出した豊かかつ滑らかな味わいのウイスキーだ。

最後は、「本物は、妥協しない」をコンセプトに、バーボンウイスキーといえばこれという品だ。

アルコール度数は高いがバーボンを試すなら是非これをとの力説コメント付きだったから購入してみた。

続いて仕入れたのがブランデーだ。

フランスのメーカーで、皇帝ナポレオン1世にコニャックを献上し、ナポレオン3世の時代には‟皇室御用達”にまでなったメーカーの品だ。

高めの値段のものが多いブランデーの中でも、比較的リーズナブルに楽しめるとのことでランキング入りしていたもの。

フルーティーな風味で、熟成感を感じるまろやかな口当たりで美味しく飲むことができるそう。

それからジンも仕入れてみた。

青いボトルが美しい女性にも人気のジンだ。

これは俺もロックで飲んだことがあるんだけど、ハーブと柑橘系の香りがしてスッキリした爽やかな飲み口で飲みやすかった。

ジンだからアルコール度数は高いのに、飲みやすいからついつい飲み過ぎるのが難点だな。

俺もこれで次の日エライ目にあったよ。

あと最近ファンが急増中らしいということで、ラム酒も買ってみた。

グアテマラ産のラム酒で、ロックやストレートで飲むのに向いているダークラム。

23年ものの原酒を20種類以上ブレンドしてさらにホワイトフレンチオーク樽で4年も熟成させたプレミアムなラム酒。

‟芳醇な香りと甘くまろやかな味わいは是非ともラム酒初心者に味わってほしい”と店長からのコメントもあったので、ちょっと高かったけど買ってみたよ。

そして、最後の酒は日本酒だ。

新潟県の酒蔵が造っている酒で、評判がいいので俺も知っていた。

スッキリとした味わいだが旨味もあってキレのある後味と喉越しの良さがある辛口の酒だそうで、月間ランキング堂々1位に輝いていたので買ってみたよ。

以上の酒をズラリとテーブルの上に並べた。

どれもロックかストレートでいける酒だから、氷を入れたグラスと何も入れないグラスを用意した。

「どうぞ」

そう言うとワッとムサイ男どもが群がった。

「よっしゃ、酒じゃーッ!」

並べられた酒を見て酒好きドワーフのシーグヴァルドさんが興奮している。

「それにしても、こんなにたくさんの種類の酒を用意できるなんて、さすがムコーダさんだな」

ガウディーノさんがそう言うと、みんなが同意している。

「酒にはちょっとした伝手がありましてね……」

テナントの酒屋という伝手があるんだから嘘は言ってないよ、嘘は。

「比較的酒精が強いものが多いんで、ゆっくり飲んでくださいね」

みんな次々と酒瓶に手を出していく。

「これ、香りがいいぞ」

「俺はこっちの方がいいな」

「これ、美味そうだ」

「俺はこの青い瓶のを飲んでみるぜ」

クレメントさんが青いボトルのジンをそのままグラスに注ごうとしていた。

「ああっ、その酒はロックで飲む方が」

「ん? そうなのか?」

その傍らではガウディーノさんが、氷の入ったグラスにブランデーを注ごうと……。

「あ、そっちは氷の入ってないグラスでっ」

「そうなのか?」

とやり取りをしているうちに、シーグヴァルドさんがやらかした。

バーボンウイスキーをグラスに並々と注いで一気にあおりやがった。

「クッハーッ、美味い!」

「ちょ、ちょっと、それも酒精が強いんですからゆっくり飲んでくださいよぉ!」

「美味い酒がたんとある! 今日はとことん飲み明かすぞぉ!」

「「「「「「おうっ!」」」」」」

それからは、カオスに突入。

酒を出したのは俺の間違いだったよ、ハァ……。

感想でいただいた酒を参考にさせていただきましたw