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第二百八十二話 エルランドさんの解体講座2

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第二百八十二話 エルランドさんの解体講座2

書籍をお手に取っていただいた皆様、本当にありがとうございます!

おかげさまで重版決定です!

イラストを担当していただいた雅先生からお祝いイラストを頂きました。

まさかのカラーですよ!

イラストはオーバーラップのブログでご覧いただけます。

『それでは行ってくるぞ』

『んじゃ、行ってくるぜ!』

『あるじー、行ってくるね~』

「はいはい、いってら~」

フェルとドラちゃんとスイが颯爽と森の中に消えていった。

俺たちは昨日と同じくエイヴリングの街の郊外の森に来ていた。

俺はというと、昨日のショッキングな出来事もあってイマイチやる気が起きない。

ハァ~、まさかフェオドラさんが200歳近くで4人の子持ちで孫までいるとはね……。

ちなみにだけど、聞いた話ではドランにいるお孫さんは10歳の男の子だそう。

エルフだから人よりも成長が遅くて、見た目年齢は5歳くらいらしいぞ。

フェオドラさんにとっても初孫で目に入れても痛くないほどかわいがっていて、ドランに1年近く滞在したのも、フェオドラさんが孫と離れたがらなかったことが要因だとのことだった。

恋が始まる前に終わったよ。

フッ、俺はどこへ行ってもこういう運命なのかねぇ……。

いやいや、まだ諦めるのは早い。

いつか、いつか俺にもきっと!

「あの~、そろそろ解体始めませんか?」

「へ? あ、ああ、始めましょう、そうしましょう」

そういやエルランドさんがいたんだった。

ふぅ、気持ちを切り替えて今はこっちに集中しますか。

昨日と同じ土魔法で作った石の台に取り出したのは、2メートル弱のレッドボア。

フェルたちが昨日獲ってきた獲物だ。

まずは血抜きということで、ヴァンパイアナイフを首元にブスリとな。

どういう原理なのかはわからんが、勢いよく血を吸っております。

うん、今日もいい仕事してくれたよ。

禍々しくもあるこのナイフ、ちょっと不安になってフェルの高性能鑑定もしてもらったんだけど、こんな感じだった。

【 ヴァンパイアナイフ 】

魔鉄とヴァンパイアの骨を混ぜて作製されたナイフ。血に飢えたこのナイフは際限なく血を吸い上げる。このナイフの傷口は治りにくく、出血もなかなか止まらない。場合によっては致命傷ともなる。

ナイフだけど、けっこうエグかった。

場合によっては致命傷て、傷口が治りにくくて出血も止まらないんなら少しの傷も命取りだよね。

しかしながら、血抜きに使用する分には非常に便利なナイフだ。

一抹の不安は残るが、ま、まぁ、これで自分を傷つけない限りは大丈夫だろう…………多分。

血抜きが完了したところで、エルランドさんの解体講座の始まりだ。

「まずは内臓を傷つけないように腹を開いていきます。このとき、内臓を傷つけてしまうと肉がダメになってしまうので注意ですよ」

エルランドさんの説明ではナイフの刃を上向きにしながらやるといいという話だったので、そのとおりにやってみる。

「そうです、そうです。最初はゆっくりで大丈夫ですよ。重要なのは内臓に傷をつけないことです」

言われたとおり内臓に傷を付けないように注意しながらゆっくり切り込みを入れていく。

うん、上手くいった。

パックリ開いた腹の中身が晒される。

おぅ、やっぱりコカトリスとは違うな。

レッドボアの方が臓器も大きくてみっしり詰まってる感がある分グロい。

それでも、しっかりと血抜きしてあるから何とか大丈夫だ。

深呼吸してから、レッドボアをしっかりと見据えた。

「この内臓とこの内臓には排泄物が溜まっているので特に取り扱いに注意が必要です。排泄器官のこの部分は、周りの肉と皮も含めて切り抜いて、繋がっているこの排泄物が溜まっている内臓と一緒に廃棄します」

さすがにこの部分はばっちいから廃棄処理だよね。

「そのほかの内臓も普通なら廃棄するんですが……、食べるんですよね?」

「その辺は状態を見てからですね」

一応食うつもりだけど、それは鑑定してみてからの話だな。

鑑定さん、お願いします。

…………鑑定して見た結果、レッドボアの内臓は全滅だったわ。

残念。

ほぼ全部に「食用は可能だが、臭みがあり非常に不味い」って説明があった。

食えるのは食えるようだけど、マズいって書いてあるものわざわざ食うこともないしね。

ということで、食えない内臓は全部取っ払って土魔法で掘った穴にポイっとな。

あとは、エルランドさんの指示で、頭を切り落として、傷を付けないように丁寧に皮を剥いでいった。

「ここまでくればあとは切り分けるだけですから、ほぼ終わりですよ」

やっぱりレッドボアほどの大物になると手間も時間もかかるな。

初めてにしてはまぁまぁ上手くいったと思うけど。

ちょうど一段落ついたところでフェルたちが森から戻ってきた。

昼飯は、昨日の焼き鳥の残りで焼き鳥丼にした。

飯の上に刻みのりを載せて、その上からたっぷりタレのかかった焼き鳥を載せた簡単丼だ。

腹いっぱい昼飯を食うと、フェルたちは再び鬱蒼と茂る森の中へと元気に繰り出していった。

俺とエルランドさんは、解体講座の再開だ。

皮を剥いであったレッドボアを切り分けたら、2匹目のレッドボアの解体開始。

血抜きをしたら、内臓を傷つけないように腹を開いて……。

「ふぅ、やっと終わった」

エルランドさんの指示を思い出しながら、なんとか2匹目のレッドボアの解体を終えた。

自分で解体して初めて思ったんだけど、今まで魔物の肉って冒険者ギルドで解体してもらってすぐ食っちゃってたけど、いいんかな?

魔物の肉って解体してすぐに料理しても美味かったから今まであんまり気にならなかったけど、牛肉とか豚肉とか熟成した方が美味いっていうじゃん。

猟師さんが猪を解体する場合も、内臓を取り出したあとは冷たい水の流れる沢に置いて熟成させるって話をきいたことがあるし。

魔物の肉だから一概に一緒にしちゃうのはあれだけど、美味しくなるならありだよな。

「エルランドさん、魔物の肉は熟成しないんですか?」

「じゅくせい? それ、何ですか?」

エルランドさんは知らないみたいだね。

「えっと、肉をですね低い温度の場所に一定の期間置いておくと美味くなるって聞いたことがあって……」

「いや~、それはないですよ。肉の鮮度を保つために冷蔵所を使うことはありますけど。そもそも魔物の肉は新鮮なものほど美味しいんですよ」

エルランドさんの話によると、魔物の肉は鮮度が落ちるごとに味も落ちていき、塩を利かせて干し肉なんかにしない限りは、1週間から10日ほどで黒っぽく変色して瘴気を発するようになるそうだ。

もちろんそうなれば食うことはできないし、あとは腐っていくだけ。

そんなこともあって、魔物の肉は新鮮であれば新鮮であるほど美味いというのが定説だという。

なるほどねぇ。

今までは冒険者ギルドで解体してもらってアイテムボックスにしまうだけだったから、正直そういうのあんまり気にしてなかったわ。

1番は腐らないようにってことだけど、それも俺の時間停止のアイテムボックスにしまっておけば問題ないしね。

魔物の肉も鮮度が命なのか。

時間停止のアイテムボックス持ってて良かったぜ。

「それで、今日の夕飯は、その新鮮なレッドボアの肉を使った料理ですか?」

エルランドさんが期待のこもった眼差しで聞いてくる。

そんな期待しないでくださいよ。

とは言っても、せっかく自分で解体したレッドボアだしな。

レッドボア、味は豚と猪の中間という感じなんだよな……。

豚、猪、豚、猪…………味噌仕立てのぼたん鍋なんかいいかもしれない。

よし、今日の夕飯はぼたん鍋に決定!

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

宿に戻ると早速夕飯の用意を始める。

ネットスーパーで材料をそろえたら、調理開始だ。

ぼたん鍋のレシピは、実家にいたころにご近所さんから猪の肉をお裾分けしてもらったときに作ったものを参考にしてみた。

フェルたちが腹減ったの大合唱だから、材料もスピード重視で用意したぞ。

土鍋に水と鰹と昆布の合わせ出汁の素(顆粒)・おろししょうが(チューブ入り)・酒・しょうゆ・砂糖・みりん・味噌を入れて煮だったら、解体したあとにぼたん鍋のために薄く切っておいたレッドボアの肉を弱火で煮込んでいく。

灰汁は丁寧に取り除いて、肉がある程度煮えたら野菜投入。

ダイコンとニンジンは火が通りやすいように短冊切りに、シメジとエノキは石づきをとって適当にほぐしたもの、ぶつ切りにしたハクサイと斜め切りにしたネギを入れていく。

野菜が煮えたら、最後にミズナを入れて完成だ。

材料を切って煮るだけだから、超お手軽。

ゴボウを入れても美味いけど、水にさらす手間があるから今日はナシで。

フェルとドラちゃんとスイの土鍋は肉多めで作ってみたぞ。

「はい、熱いから気を付けろよ~」

フェルは風魔法で冷ましてから食い始めた。

ドラちゃんも真似して風魔法で冷ましている。

スイは熱くてもけっこう平気なようだ。

『今更レッドボアかと思ったが、なかなか美味いではないか』

『肉が柔らかくて美味いぞ』

『おいしーよー!』

ぼたん鍋、好評なようで良かった。

「さ、俺たちも食いましょう」

エルランドさんと俺は1つの鍋で。

「レッドボアの肉といえば焼くものと思っていましたが。煮込みも美味しいですね~」

うんうん、美味い。

レッドボアの肉も美味いけど、何といってもこのスープが美味い。

野菜の甘味と肉の出汁が溶け込んで絶品だ。

フフフ、最後が楽しみだね。

フェルたちも何度も鍋をおかわりして、いよいよ最後の〆。

最後、残ったスープにうどんを入れて……。

クツクツ煮て、よし、これくらいかな。

「鍋料理の最後のお楽しみ。〆のうどんだよ」

初めてのうどんはちょっと食いにくそうだったけど、モチっとした食感のうどんはみんなに大好評だった。

俺としては久々のうどんに大満足だ。