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閑話 3人の勇者~冒険者としての日常~

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閑話 3人の勇者~冒険者としての日常~

久しぶりの勇者の話です。

今年最後の更新です。

マルベール王国に入った俺たちは、冒険者として生きていた。

冒険者のギルドカードを所持していたし、それが一番手っ取り早かったからだ。

最初に入った国境の村のランペルツ村でそれまでに仕留めたオークなどの魔物の半分を売りさばいて、路銀を確保した。

その後数日は村で宿をとって、ゆっくり休養した。

それまでは安心して眠ることもできなかったから、俺も花音も莉緒も疲れ切っていたからな。

そして、休養をとった後、村の人に聞いたここから1番近いそれなりに大きな街へと行くことにしたんだ。

その街が、今俺たちがメインで活動しているオルロヴァという街だった。

俺たちはこの街に来てから、ずっと冒険者として活動してきた。

そのおかげでCランクまでランクを上げることができていた。

一時はどうなるかと思ったけど、今はこうして冒険者になってなんとか暮らしていけている。

花音も莉緒も前みたいに笑顔も増えて、無事この国に来れて本当に良かったと思っている。

冒険者の仕事は体が資本だし、すべて自己責任ってことで大変な部分もあるけど、俺たち3人互いに助け合って、今では異世界で自由を謳歌していた。

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

「この依頼なんていいんじゃない? これなら日帰りでいけそうだし」

そう言って花音が指さした張り出された依頼書は、オークを5体討伐という依頼書だった。

条件はオークを5体そのまま持ち帰ることで、損傷が少なければ報酬UPとのことだ。

「私もいいと思うな」

そう言って莉緒も花音に同意した。

オークは人気の食材だ。

俺も花音も莉緒も、2足歩行ってことで最初は忌避感がハンパなかったけど、オークの肉はこの世界じゃ特に珍しいもんでもなく普通の食材として扱われていた。

郷に入っては郷に従えってことで、俺たちも試しに食ってみたんだけど、これが普通に美味かった。

日本でいうところのブランド豚みたいな感じだ。

オークだって意識しなけりゃ、普通に食える。

今では忌避感も薄れて、普通に食ってるな。

この世界の感覚ではオーク肉はちょっといい肉って感じで人気が高い。

オーク肉の料理を看板料理にしている店も多いくらいだ。

そんなわけで需要も高くて、オーク討伐の依頼は常時依頼のような感じでいつでも張り付けられていた。

「オーク5体か。俺たちならいけるな。というか、オークは需要もあるし、5体といわずそれ以上いたら狩ってこよう」

「そうね。私たちなら可能だし」

「うん」

普通の冒険者パーティーだとマジックバッグかアイテムボックスを持ったメンバーがいないと持ち帰るのも大変だけど、俺たちは3人ともアイテムボックス持ちだからな。

しかも、ほぼ無制限に物も入るし。

俺たちは掲示板の依頼書をはがして、この街に来てから馴染みとなった受付嬢の下へと持って行った。

「さてと、そんじゃオーク狩りに行きますか」

俺と花音と莉緒は、オークがいるこの街の南東にある森へと向かった。

「シッ……、オークがいたぞ」

「3匹いるわね。さっき打ち合わせした通り、いつものように。莉緒、お願い」

「うん、分かった」

莉緒が得意の水魔法を無詠唱で使った。

オークの頭上にウォーターボールが出来上がる。

そのウォーターボールがオークの頭をすっぽり覆った。

息のできなくなったオークが混乱して必死にウォーターボールから逃れようとしている。

その隙に俺たちは……。

「花音、行くぞっ」

「ええ」

俺はロングソードを、花音が槍を手にして飛び出した。

「せいっ! せいっ!」

「やぁっ!」

俺が2匹、花音が1匹、それぞれオークの心臓を一突き。

3匹のオークが力なく倒れていった。

このオークの狩り方は、いろいろ試した結果俺たちが編み出した方法だ。

この方法が、1番労力を使わず確実にオークを狩れ、しかも損傷が少ない狩り方だった。

「よし、あと2匹ね」

花音が狩ったオークをアイテムボックスに入れながらそう言った。

「ああ。でも、5匹にこだわらずに狩れるだけ狩っていくぞ」

俺の言葉に、近くまで来ていた莉緒が頷く。

「もうすぐ家賃も払わなきゃだしね。稼げるときに稼がないと」

莉緒の言葉に俺も大きく頷いた。

俺たちはこの街で、宿ではなく一軒家を借りていた。

最初のうちは宿に泊まっていたんだけど、計算してみると宿代も馬鹿にならなかった。

これならば借りた方が安く収まるんじゃないかって莉緒が言い出して、俺たちは家を借りることにしたんだ。

そして運よく借りられたのが今の家だ。

多少ボロいけど、一人一部屋あるし、家賃も俺たちでも払えるくらいだった。

冒険者ギルドから少しだけ距離があるが、商人の持ち家だったその家には小さいが風呂付きなのも決め手になった。

この世界じゃ風呂に入れるなんて豪商か貴族くらいなもんだけど、日本人の俺たちが風呂に入れないってのはかなりキツかったからな。

魔石を補充しないと風呂が使えないって話だったんだけど、水魔法が得意な莉緒と火魔法が得意な俺がいるからなんとかなるんじゃないかって言ってさ。

実際やってみたら何とかなった。

莉緒が水魔法で風呂に水を溜めて、そこに俺が手ごろな大きさのファイヤーボールをぶち込むんだけど、最初は温度調節に苦労したぜ。

今じゃ慣れたもんだけど。

俺は、俺と花音と莉緒で自由に暮らす今の生活が気に入っている。

この生活を維持するためにも、俺たちはこうしてせっせと依頼を受ける毎日を過ごしているっていうわけだ。

「櫂斗、花音、オークだよ」

小声で莉緒がそう言った。

莉緒の見ている方向を見ると……。

「オーク4匹ね。櫂斗、莉緒、さっきと同じ手はずで」

「ああ」

「うん」

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

「ふぅ」

さっき狩ったオーク3匹をアイテムボックスにしまった。

「今日はこの辺にしておくか」

俺たちは最終的にオーク16匹を狩ることに成功した。

なかなかの成果だ。

「そうね。それよりお腹減った~」

花音がそう言う。

そう言われると、確かに。

グゥゥゥ~―――。

空腹を意識したら俺の腹が鳴いた。

俺の腹の音を聞いて、花音と莉緒がクスクス笑っている。

「笑うなよー。腹減ったんだからしゃーないだろ」

「ごめんごめん。お昼大分過ぎちゃってるけど、食事にして、それから帰ろうか」

莉緒がそう言うと、花音が「そうしよ、そうしよ」とはしゃぎ出す。

森の中でも比較的安全な辺りまで移動して、俺たちは遅めの昼飯をとることにした。

莉緒がアイテムボックスから鍋を取り出した。

俺たちのアイテムボックスは時間停止状態だから、熱々のままだ。

「いい匂い~」

花音が待ちきれないといった感じで自分のお椀を持ちながらそう言った。

「今日はシチューだよ」

莉緒が鍋をかき混ぜながらそう言う。

シチューのルーがないのに、どうやって作れるのか不思議だけど、莉緒が小麦粉を使ってどうとかって言ってたな。

俺にはさっぱりわからんけど。

「櫂斗、お椀」

「ああ」

花音は既によそってもらったようだ。

俺も莉緒にお椀を差し出すと、そこにたっぷりとシチューをよそってくれた。

「それじゃ、食べよっか」

「うん」

「ああ」

「「「いただきます」」」

シチューを口に入れると、野菜の優しい甘味とクリーミーな味わいが口いっぱいに広がっていく。

やっぱり莉緒の作る飯は美味いな。

「おいし~。やっぱりこういうところで温かいもの食べられるっていいよね」

花音の言う通りだ。

最初は飯も屋台で買ってアイテムボックスに入れていたんだけど、思ったよりも食費がかかることになってな。

で、携帯食も試してみたけど、これがマズいのなんのって。

あんなもの人が食うもんじゃないぜ。

それなら自分たちで作ろうって話になったんだけど、そこで大活躍したのが莉緒だった。

「ああ、莉緒様様だぜ」

「そんな。こんなの普通だよ」

莉緒は謙遜していつもそう言うけど、かなり料理上手だと思う。

「どうせあたしは料理下手ですよーだ」

「そんな。花音ちゃんも手伝ってくれたじゃん。私は手がこんなだから、皮むきとかは全部花音ちゃん任せだし」

「その皮むきさえも最初は四苦八苦してたけどね。こんなことなら、お母さんのお手伝いをもっとやっておけばよかったって後悔したもん」

「でも、花音ちゃんは洗濯とか率先してやってくれてるし」

「洗濯なんて魔法で何とでもなるもん。やっぱ料理だよねぇ。何であたしが味付けすると美味しくないのかな?」

花音には悪いが、料理は莉緒に任せておくのが1番だな。

そうすりゃ文句なしに美味いものが食える。

とは言っても……。

「俺から言わせてもらうと、2人ともスゲェよ。俺は家事一切からっきしダメだからな!」

料理? 洗濯? 何それ。

俺がそんなんできるわけねぇじゃんよ。

「櫂斗、それ威張って言うことじゃないから」

「フフフ、ほんとだよ」

花音は呆れ顔だし莉緒は笑ってる。

「あ、唯一できることがあったな。風呂沸かし」

「アハハッ、確かに。お風呂沸かしは櫂斗が1番上手かも」

「でも櫂斗はそれだけだしねー。櫂斗はもっとあたしと莉緒に感謝しなさいよー」

「はいはい、2人には感謝してますって」

そう言うと、花音と莉緒が笑ってた。

大変なこともあった。

ここは日本じゃないし、不便なこともたくさんある。

だけど、花音と莉緒と過ごす今が幸せだと感じる。

この生活を守るためにも、俺は冒険者としてがんばるぜ。

今年は書籍化など嬉しいことが満載でした。

来年もよろしくお願いいたします。

そして、皆様よいお年を。