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第三百十八話 後ろ盾

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第三百十八話 後ろ盾

3月25日(土)発売

『とんでもスキルで異世界放浪メシ2 羽根つき餃子×幻の竜』

1巻に引き続きゲーマーズ様で実施となる、小冊子付き限定版の追加情報です。

今回も雅先生描き下ろしイラストが表紙です!

・「危機一髪」

・「火の女神アグニ様のある日の1日」

・「危機一髪~後日談。アップルパイを作ろう~」

・「駄女神、あんこを語る」

・「野菜もたまには食べましょう」

・「女神様座談会」

限定版には以上の短編6本を収録。

詳しい情報は↓こちらで。

http://blog.over-lap.co.jp/gentei_tondemoskill2/

通常版・限定版 同日の3月25日発売です!

フェルたちを引き連れて冒険者ギルドに入る。

俺を見た職員がサッと席を立った。

その後すぐにギルドマスターが姿を現した。

「おう、引き渡しは明日の約束じゃなかったか? それとも早速依頼を受けに来てくれたのか?」

「いえいえ、違いますよ。買取の件とはまた別件で、ちょっと……」

「そうか。なら2階で話を聞こうか」

俺たちは2階のギルドマスターの部屋へ向かった。

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

「……というわけで、この街に家を買いましたのでその報告です」

ギルドマスターにこの街に家を買ったことと、それに伴って奴隷を買ったこと、そしてランベルトさんとの商いに関して評判の良くない商会に目をつけられていることなどを話した。

「よーしっ、よしよしよしっ! よくやった! これでこの街もSランク冒険者のいる街になったな!」

ちょっと、そんな興奮しないでくださいよ。

「ギルドマスター、あのですね、この街に家は買いましたけど、まだ定住すると決めたわけでは……」

「何言ってんだよ、この街に家を買って奴隷まで買ったんだろ?」

「いやまぁ、それはそうなんですけど……」

「冒険者やってたら旅に出ることも多々あるだろうけどよ、帰ってくるのはこの街だってことだろ?」

「そりゃ、家がありますからね」

「そんなら拠点をこの街に決めたってことじゃねぇか」

…………そういうことになるのか?

「何にしても、Sランク冒険者がこの街を拠点にしたってだけで箔がつくってもんだ!」

ギルドマスターにしてみると大いに歓迎すべきことらしい。

まぁそういうことなら、俺の頼み事も頼みやすいってもんか。

「それで、話の続きなんですけど、もし、何かあったときは、うちの奴隷たちを冒険者ギルドで匿ってほしいんです」

ランベルトさんにも頼んであるけど、こういう場所は多いに越したことはない。

「それくらいお安い御用だ。それにしても、お前も厄介な所に目をつけられたもんだなぁ」

ギルドマスターも件の輩スタース商会のことは知っているようで渋い顔をしている。

「あそこの後ろ盾になっているのはクルベツ男爵だって言われてるんだが、どっちもズル賢くて尻尾をつかませやしないって話だ」

ギルドマスターの話では、男爵という下級貴族といえども貴族は貴族で、確たる証拠もなく捕まえるわけにもいかず王宮でも苦慮しているそう。

「それにこう言っちゃなんだが、下級貴族の方が質が悪いのが多いんだよなぁ。今回の件だって、お前のことは王宮から伝達されているはずなんだが……」

俺の話も下級貴族の男爵くらいに伝わるときには伝聞の伝聞の伝聞くらいになっていて、重く受け止めてはいないんだろうっていうのがギルドマスターの推測だ。

それに、平民に近い下級貴族の方が案外と貴族だってことを鼻にかけてる輩が多いという。

そんなこともあって、平民風情がどうなろうと我関せずで、大きな利益を生むスタース商会のやることにも特に口を出していないのだろうということだった。

「でも、そうなると、俺の所が襲われたとしても、結局確たる証拠がなきゃそのクルベツ男爵もスタース商会も罰することはできないってことですよね?」

「まぁ、そうなるわな」

「スタース商会ってなかなか尻尾をつかませないって話ですから、もし、俺のところを襲ったにしろ、スタース商会に繋がる証拠なんて残さないような気がするんですよね……」

「だろうな。裏稼業の奴らを雇い入れるにしても、スタース商会に繋がるような依頼の仕方は絶対しないだろうな」

何だよ、それじゃ襲われたら襲われ損ってことか?

「まぁ襲われないのが1番ってことだな。そのための手っ取り早い手段としちゃ、クルベツ男爵もスタース商会も手を出せないような後ろ盾なりコネを作ることだ」

そうなるのか……。

ランベルトさんの店はラングリッジ伯爵がご贔屓にしてることもあって、直接手出しされることはないだろうって話だったもんな。

俺もその辺考えなくちゃダメかも。

今までは面倒だって貴族とは関わってこなかったけど、みんなの安全を考えると貴族と関わりを持つことも致し方ないか……。

俺1人だったらフェルたちもいるし、何の心配もないけど、今はそうもいかないもんな。

特に俺が旅に出たときなんかは、今の状態だと心配だ。

タバサたち腕の立つ元冒険者がいても、何をやってくるかわからないし。

「ギルドマスター、ラングリッジ伯爵様と繋ぎを持ってもらうってことできますか?」

「そう言うと思ったぜ。お前がこの街に家を持ったってことは、どの道報告せにゃならんし、ミスリル鉱山を見つけた実績もあるから大丈夫だろう」

おお、案外大丈夫そうだな。

でも……。

「お会いするにしても、やっぱりお土産なんか持参した方がいいですよねぇ?」

「まぁ、そりゃあな。手ぶらよりは土産でもあった方が心証はいいだろうよ」

だよねぇ~。

石鹸やらシャンプーやらはお土産に入れるとしても、それだけだとインパクトがないよな。

これだってランベルトさんの店で売ってるんだから、既に手に入れてる可能性だってあるわけだしさ。

「伯爵様へのお土産って何がいいですかね?」

「うーむ、伯爵様となると大抵のものは手にしてらっしゃるからなぁ」

そうだよね、金もあるだろうし。

「何かこんなものがあればとかおっしゃっていたの噂でも何でも知りませんか?」

俺にはネットスーパーもあるし、もしかしたらそれに合ったものをお土産にできるかもしれないしさ。

「そうだなぁ…………、あっ! そういや伯爵様も儂と同じ悩みをお持ちだったな」

「ギルドマスターと同じ悩みって?」

「それはなぁ……」

ギルドマスターが切々と語ったのは、ズバリ髪の悩みだ。

ギルドマスターだが、ここのギルドマスターになって20年近く経つこともあり、領主のラングリッジ伯爵とは大分長い付き合いなのもあっていろいろ個人的なことも話し合う仲のようだ。

その中で話題となったのが髪のことらしい。

世界は違えどある程度の年齢になると、こういう悩みはどこも一緒だな。

ギルドマスターも抜け毛と年々後退してくる額の生え際は悩みの種なんだそう。

言われてみると確かに生え際が大分後退している。

「効果があるという薬はいろいろと試してみたんだがさっぱりでなぁ」

実感がこもっているだけに哀愁が漂っている。

抜け毛に薄毛の悩みか。

確か、ネットスーパーでそれらしい商品があったような気が……。

キシャール様に献上するシャンプーやらトリートメントを見ていたときに見た気がするんだよなぁ。

「それでしたら何とかなるかもしれません」

ガタッ。

「なぬっ?!」

ギルドマスターが目の色を変えて立ち上がった。

「おっ、おいっ、何とかなるって、そんなものがあるのかっ?!」

ちょっ、ギルドマスター、興奮しすぎ。

「いや、まぁ、ちょっとした当てがありまして……」

「ゴホンッ、それを伯爵様にってことだな?」

「はい、一応」

「しかしだ、伯爵様に渡すには効果のほどを確かめてから渡すべきだと思うぞ」

…………あんた、欲しいだけやん。

「効果のないものを渡しても、伯爵様をぬか喜びさせるだけ。効果がないとなれば、もしかしたら、お怒りになるやもしれんぞ」

まぁ、確かに一理ある。

効果云々は、こういうものはすぐに効果が出るわけじゃないだろうからあれだけど、少なくとも頭皮が荒れないかどうかくらいは確かめておいたほうがいいかもしれない。

ここに是非とも使いたいって人がいることだし。

「それじゃ、ギルドマスター、是非とも試していただけますか?」

「うむっ。責任をもって使ってみよう」

物は明日買取の代金を取りに来たときに渡すことで話はまとまった。

「明日、必ず、必ず持って来いよ」

「分かってますって。あ、そうだ、極小の水の魔石と火の魔石が欲しいんですけど、どこに売ってるんですか?」

「極小の魔石か? それならうちでも売ってるぞ」

冒険者の持つ生活系の魔道具に極小の魔石が必要になることもあるため、極小に限り冒険者ギルドでも取り扱っているそうだ。

窓口で普通に買えるらしい。

俺は、窓口で極小の水の魔石と火の魔石を3個ずつ購入(極小と言えど魔石は魔石で1個金貨2枚だった)し、冒険者ギルドを後にした。

帰ったら、ネットスーパーで育毛剤を買わないとな。