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閑話 3人の勇者~マルベール王国王都にて~

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閑話 3人の勇者~マルベール王国王都にて~

オーバーラップ広報室にてアナウンスされたので、ご存知の方もいらっしゃると思いますが、『とんでもスキルで異世界放浪メシ 3 ビーフシチュー×未踏の迷宮』が7月に発売されます!

何卒よろしくお願いいたします!

「ウフフフ」

「エヘへ」

花音と莉緒が俺の腕に自分の腕を絡めてニヤニヤしていた。

「何だよ2人とも」

「だって、ねぇ莉緒」

「ねぇ、花音ちゃん」

「あたしたち夫婦になったんだよ、嬉しいに決まってるじゃん」

「そうだよ。櫂斗君が私たちの旦那様になったんだもん嬉しいに決まってるよ」

そんなこと言うなんて、花音と莉緒もかわいいじゃないか。

でも、俺だってな……。

「俺も花音と莉緒が嫁さんになってくれて嬉しいよ」

俺がそう言うと花音と莉緒も照れながらも嬉しそうに笑ってた。

もちろん2人の指には俺の送った指輪が光っていた。

王都の門を出て10分ほど歩いたところにあるダンジョンに俺たちは来ていた。

花音と莉緒の希望で、王都に着いたその日のうちに土の女神の教会に行って結婚式を挙げた。

2人がこだわった土の女神の教会は、古代ローマの神殿のような感じで美しく荘厳な佇まいだった。

そこで挙げた結婚式だが、結婚式とは言っても、教会にいくばくかのお布施をして教会の奥にある土の女神様像の前で神官に祈ってもらうだけだから、そんなに時間もかからなかった。

それでも気持ち的にはまったく違う。

この式を挙げたことで、俺たちは夫婦になったんだなってひしひしと感じた。

それが一昨日の話で、その晩は新婚初夜でゴニョゴニョ……。

ま、まぁ、いろいろあって翌日はゆっくり休んで、今日はみんなでダンジョンへと繰り出してきたわけだ。

俺たちも懐に余裕があるわけじゃないしな。

王都に来る旅の準備でいろいろと使ったし、お布施もバカにならない金額だったし。

貧乏暇なしってわけだ。

そんなわけでダンジョンへとやって来たわけだが、さすが王都のダンジョンだ。

入るだけでも冒険者の行列ができていた。

俺たちは、その行列に並んでいる。

「もう少し時間かかりそうだね」

行列を見ながら花音がそう言った。

「しょうがないよ、王都だもん」

「だな」

「ドロップ品いっぱい出るといいね」

「うん。結婚して運が上がったから、いっぱい出るかも」

そういや、神官がそんなことを言ってたな。

教会で結婚式を挙げると運が上がるらしいぞ。

まぁ、そうは言ってもほんの少しみたいだけど。

それでも上がったなら、少しは期待できるかな。

「だといいけどな。でも、2人とも無理だけはするなよ。約束だぞ」

「分かってるよ。それを言うなら櫂斗もだよ。櫂斗に何かあったらあたし……」

「そうだよ。櫂斗君に何かあったら私だって……」

「分かってるって。これからも3人ずっと一緒だ。これからは安全第一でやってこうぜ」

「「うん」」

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

「セイッ」

俺の得物のロングソードでオークの肩から腹にかけて切り裂いた。

「プギィィィッ」

オークが断末魔の叫び声をあげて倒れる。

そして、ダンジョンに吸い込まれるようにして消えていった。

「ふぅ、終わった」

王都のダンジョンはゲームに出てくるような石壁に囲まれた地下に進むタイプの‟これぞダンジョン”というようなダンジョンで、俺たちはそこの8階層を探索していた。

その8階層にある一室にたむろしていたオークどもを始末したところだった。

「けっこういたから、ドロップ品もけっこう出てるわね」

「ホントだ。オークとは戦い慣れてるし、やっぱりこの階層にして正解だったね」

ここ8階層には、俺たちが今までメインに狩っていたオークが出るということもあり、とりあえずこの階層で金を稼ごうということになった。

その先に進むかどうかは、この階層で探索してみてからにしようと3人で話し合って決めた。

「オークの肉がけっこうあるね」

「うん。でも、アレもあるよ……」

「ウェッ。アレはあたしたちには触れないよね……」

「うん。アレはチョット……」

「櫂斗、アレの回収お願い」

「しょうがないなぁ」

俺は、2人がアレと言うドロップ品を回収していった。

花音と莉緒が触れるのも嫌がるアレとは、オークの睾丸だ。

これは精力剤の原料の1つでけっこういい値で買い取ってもらえるんだぞ。

「今のでそこそこドロップ品も回収できたと思うけど、どうする?」

「まだ余裕あるし、もう少し探索していこうよ。稼げるときに稼いでおきたいし。莉緒はどう?」

「私もそれがいいと思う。私たちならオーク相手に遅れをとることもないし、この階層なら罠の心配もないし」

このダンジョンのことを事前に調べたところ、10階層以降から罠が仕掛けられていることが分かっている。

「2人が大丈夫なら、もう少し探索していくか。じゃ、行こうぜ」

「うん」

俺と莉緒が部屋を出ようとしたところ、花音がなぜか動かない。

「花音、どうしたんだ?」

「うん……。櫂斗、莉緒、ちょっとこっち来てくれる?」

花音がそう言うから、俺と莉緒は花音の下へと駆け寄った。

「ねぇ、あそこ。奥の壁の左側さ、なんかおかしくない?」

そう言って花音が奥の壁の左側を指差した。

花音の指差したところを目を凝らして見てみる。

「別にどこもおかしいようには見えないけど……」

「私もおかしいようには見えないよ……」

莉緒も俺と同じ意見だ。

それでも花音は納得がいかないようだ。

「ちょっと見てくる」

そう言って、奥の壁へと向かっていった。

俺と莉緒も訝しがりつつ花音についていく。

「この辺なんだよね……」

花音がおかしいと感じる辺りの壁をペタペタと触る。

「ほら、何ともないじゃん。花音の気のせ……」

気のせいだと言葉を続けられなかった。

花音が触れたところの壁の一部がポロポロと剥がれ落ちた。

そして現れたのは、直径10センチ程度の魔法陣だった。

「こ、これは……」

「ほら。ここら辺ずっと違和感あったんだよねー」

花音がちょっとばかりドヤ顔でそう言う。

「これって魔法陣だよね。ここに魔力を流すってことかな?」

「多分ね。ちょっとやってみる」

「あっ、待て花音ッ」

止めたが間に合わずに花音が魔法陣に触れた。

ゴゴゴゴゴーッ―――。

壁の一部がスライドして、その向こうに部屋が現れた。

「これは、隠し部屋ってやつか?」

3人で恐る恐る中を覗き込む。

「あ! 櫂斗君、花音ちゃん、奥を見て。あれ、あの木箱って宝箱じゃないかな?」

莉緒に言われて奥に目を向けると、確かに古めかしい木箱が鎮座していた。

「ホントだ! あれ、宝箱だよ。早く開けてみよう!」

そう言って花音が宝箱に向かおうとするのを寸でのとこで止めた。

「待てッ! 罠があるかもしれない、ここは慎重にだ」

「そうだよ。花音ちゃん」

「えーっ、でも、ここ8階でしょ。罠はないって話だったんじゃないの?」

「そうだけど、ここは隠し部屋なんだぜ。そこも同じとは限らないだろ」

「そうそう。私たちには鑑定スキルがあるんだから、まずは鑑定してみようよ」

「分かったわよ。それじゃ、鑑定。……うん、罠はないみたい」

俺も鑑定してみると……。

【 宝 箱 】

宝箱。罠は仕掛けられていない。

「うん、大丈夫みたいだな」

「そうだね」

莉緒も鑑定してみたらしく頷いた。

「それじゃ、開けてみよう」

「あたしが開けたいな」

隠し部屋の第一発見者として、宝箱を開けるのは花音に譲った。

花音がゆっくりと宝箱を開けると……。

「なんか、ちょっとばっちい麻袋と、これはポーションかな?」

中には少し汚れた麻袋と小瓶が入っていた。

「まずはこっちの麻袋の中を見てみよう」

麻袋を取り出して中を覗く。

「おおーっ」

「金貨だわっ!」

「100枚くらいはありそう! ヤッタね!」

中を見て俺も花音も莉緒も興奮した。

これがあればしばらくは生活に困ることもない。

「次はこれだ。花音の言うとおりポーションなんだろうけど、まずは鑑定だ」

【 エリクサー(劣化版) 】

エリクサー(劣化版)。劣化版なので寿命が延びることはない。四肢欠損を含むあらゆる怪我及び万病に効く。

「これっ……」

「エリクサー、だって……」

「エリクサー……」

「莉緒ッ、やったぞ!」

「莉緒、これで腕が治るよ!」

「わ、私の、腕が……」

「そうだ! これで莉緒の腕も元通りだ!」

「うぐっ、り、莉緒っ、良かったね。本当に、良かったっ……」

「花音ちゃんっ、ぐすっ」

俺たち3人は抱き合って泣いて喜んだ。

高ぶっていた気持ちが落ち着いたところで、莉緒にエリクサーをすすめた。

「莉緒、早速試してみろよ。確か、怪我の場合は半分は飲んで半分は患部にかけるのがいいらしいぞ」

「い、いいのかな? よく考えたら、これを売れば3人とも一生暮らしていくだけの資金になると思うんだけど……」

「何遠慮してんだよ! いいに決まってるじゃないか!」

「そうだよ、莉緒! お金ならほら、宝箱に入ってた分があるじゃん。遊んで暮らしていくほどはないけど、しばらくは生活には困らないから大丈夫だよ」

「分かった。それじゃ……、あ!」

莉緒がエリクサーを飲む寸前で止めた。

「何だ、どうした?」

「あのね、これって、ここで飲んだら、すぐに腕が治るのかな? そうだとしたら、ダンジョンを出るときに怪しまれないかなって」

「あっ、そうか! 確かに莉緒の言うとおりかも。ここのダンジョンにはたくさんの冒険者が入っていくから、あたしたちのことを覚えてる人がいるかどうかわからないけど、もし、覚えてる人がいたら、絶対にお宝見つけたんだってバレちゃうよね」

「うん。それでね、変な人に目を付けられるとかしたら、面倒なことになるんじゃないかなって思ったの」

「確かに花音と莉緒の言うとおりだ。魔物より何より人が1番狡猾だってことは、俺たち身をもって経験してるしな」

俺の言葉に花音と莉緒が深く頷く。

「それに、よく考えると、王都にいる間にエリクサーを飲むのはマズいかもしれない。宿の従業員たちは俺たちの名前も分かってるわけだしさ。他の宿泊客も俺たちのこと見てるし、片腕だった莉緒の腕が次の日には生えてたなんてなったら絶対に騒がれると思う」

「確かに」

「うん。櫂斗君の言うとおりだと思う」

「それなら……」

今日狩ったオークのドロップ品だけ換金して、隠し部屋や宝箱のことは一切黙っていようということになった。

そして、王都も明日には離れようということで決まった。

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

王都を出て丸1日。

街道沿いを進んでいるが、今のところ近くに人の気配はない。

「よし、この辺でいいんじゃないか?」

「うん。王都からもだいぶ離れたし、いいと思う。莉緒、飲みなよ」

「うん」

莉緒はアイテムボックスからエリクサーの入った小瓶を取り出して、半分を一気にあおった。

そして、もう半分を無くなった左腕の肘の辺りに振りかけた。

すると、莉緒の体が淡く光りだし、左腕の辺りが強く発光した。

「莉緒ッ、大丈夫かッ?」

「莉緒ッ!」

莉緒を包んだ光は10秒ほどで収まった。

「櫂斗君、花音ちゃん、これ……」

「莉緒ッ、左腕っ」

「莉緒の腕が元に戻った!」

莉緒の左腕が元通りになっていた。

「私の、私の腕が、元通りにっ。あ、ありがとう2人とも」

それから俺と花音と莉緒は抱き合って号泣した。

ちなみにダンジョン前の行列では、櫂斗一行の醸し出すピンク色の空気に周りの冒険者たちは血涙を流していたそうなw