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第三百五十二話 限度ってものがあるよね

とんでもスキルで異世界放浪メシ — ncode.syosetu.com · All chapters

第三百五十二話 限度ってものがあるよね

10階層―――。

聞いていたとおり、冒険者の姿は皆無だった。

遠目に見ても巨体であることが分かるダンジョン豚の上位種が、寝転がったりムシャムシャと草を食んだりしている。

「みんな、ここからは遠慮する必要ないぞ」

『うむ。分かっている。上位種の美味い肉だな』

ダンジョン豚の上位種を追うフェルの目がギラついていた。

『狩りまくるぜ!』

『美味しいお肉いっぱい獲るよー!』

ドラちゃんもスイもヤル気満々だ。

「それじゃ、俺は回収に徹するから、みんなお願いな」

俺がそう言うと、フェルとドラちゃんとスイが草原に散っていった。

「それにしても、上位種は普通のダンジョン豚の2倍の大きさって言ったけど、マジでデカいな……」

ダンジョン豚の上位種は遠目に見ても迫力のある巨体をしていた。

そう独りごちる間に、ダンジョン豚の断末魔の悲鳴がそこかしこから聞こえてきた。

「プギィィィィッ」

「ブッヒィィィィッ」

「ブッ、ブヒィィィッ」

…………狩り、順調のようだな。

「さてと、俺も肉を回収にいくとするか」

まずは破竹の勢いで次々とダンジョン豚を狩りまくるフェルの下へ。

フェルの通ったあとには、数多のダンジョン豚の肉塊が転がっていた。

それを、1つ残さずせっせと拾っていく。

その間にも、フェルは確実にダンジョン豚の群れを見つけては次々と狩っていく。

ダンジョン豚の上位種の群れを見つけて突っ込んでいく。

フェルの狩りは単純かつ確実だ。

ダンジョン豚に向かって前足を振るう。

フェルが編み出したという 爪斬撃 ( そうざんげき ) だ。

爪先に魔力を込めそれを放出することによって斬撃を生み出して敵を切り裂くとかいうトンデモ技。

前足一振りの 爪斬撃 ( そうざんげき ) で数十いるダンジョン豚の群れを壊滅させ、次の群れへと向かうフェル。

「狩るのが早すぎて、回収が間に合わないんだけど……」

拾っている間にも次々と群れを肉塊にしていくフェルには付いて行けず、思わずそうボヤく俺。

「ああっ、もうあんな遠くへ」

フェルはというと、既にはるか遠くの群れを狩っている最中だった。

「もういいや。フェルのはあとで回収するとして、ドラちゃんとスイのを回収しよう」

比較的近場で狩りをしているドラちゃんとスイの狩った分を回収することにした。

まずは、ドラちゃんの方へ。

群れを狩るということもあって、氷魔法を使っていた。

宙に浮かんだいくつもの先端が尖った氷の柱がダンジョン豚に降り注ぐ。

「プギィィィッ」

「ブヒィィィッ」

「ブヒッ」

氷の柱に貫かれたダンジョン豚が悲鳴をあげ、その巨体がドシンッと音を立てて倒れていく

「ドラちゃんの狩りも順調だな」

『俺にかかれば当然よ。よし次だ次。どんどん肉を確保するぜ!』

そう言って次の群れへと向かうドラちゃん。

俺はドラちゃんの残した肉塊をせっせと拾った。

もちろんだがちゃんとモツもあったぞ。

次はスイの下へと行ってみた。

スイも元気よくダンジョン豚の群れを狩っていたよ。

得意の酸弾を次々と飛ばしてダンジョン豚を肉塊に変えていく。

ビュッ、ビュッ、ビュッ、ビュッ、ビュッ―――。

スイに的確に頭を撃ち抜かれたダンジョン豚は悲鳴を上げることもできずに倒れていった。

「すごいぞ、スイ!」

『エヘヘ~、スイすごいー? でもね、もっともーっといっぱい狩るんだー。フェルおじちゃんにもドラちゃんにも負けないもんねー』

「そうかそうか」

『あるじー、もっと豚さん倒してくるね~』

「おう、気を付けるんだぞ」

『分かったー』

そう言ってスイは次のダンジョン豚の群れへと向かった。

俺はスイの残した肉塊をこれまたせっせと拾っていく。

「ふぅ、それにしても切りがないな。ま、ここで美味い肉が確保できるのはありがたいからな、がんばろう」

俺は、肉塊を見つけては次々と拾っていった。

そして、1時間後―――。

「おー、腰が痛い」

ずっと前傾姿勢で肉を拾っていたもんだから腰に来た。

腰を伸ばすように上体を後ろに反らした。

「大分拾ったはずなんだけどなぁ……」

周りを見渡すと、まだまだ肉塊がそこかしこに転がっていた。

「既に3桁を超える肉塊が俺のアイテムボックスに入ってるんだけど」

ジャンニーノさんにはダンジョン豚とダンジョン牛の上位種の肉は、それぞれできれば10頭分欲しいと言われている。

その分を納めたとしても、手元には十分残るってのに。

「って、まさか……」

確かに遠慮する必要はないって言ったけど、限度ってもんがあるよね。

もちろん、その辺はみんなも分かってると思うんだけど。

何か嫌な予感が……。

いや、でもいくらなんでもその辺は分かるよねぇ。

そんなことを考えていると、背後からフェルとドラちゃんとスイの声が。

『おい、終わったぞ』

『狩りまくってやったぜ!』

『いーっぱい倒してお肉にしたよー』

錆びたブリキの人形のように、ギギギとゆっくりと振り返った。

「終わったって、何が?」

『ダンジョン豚の狩りに決まっているだろう』

『最後の1匹まで狩り尽くしてやったぜ! なっ!』

『うんっ。お肉いーっぱいだよー!』

…………。

1匹残らず……、お肉いっぱい……。

10階層に広がる草原を見渡してみる。

……いない、ダンジョン豚の姿が1匹も見当たらない。

「お前ら、狩りすぎぃぃぃぃぃっ」

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

「フゥ~、やっと回収し終わった。ひどい目にあったぜ」

『お主が遠慮はいらんと言ったのだろうが』

『そうだそうだ』

『お肉いっぱい獲っていいと思ってたのー』

「いやさ、そりゃそうだけど、限度ってもんがあるだろう。この階にいるダンジョン豚を狩り尽くすのはやり過ぎだろうが」

マジックバッグも使って、みんなに手伝ってもらって回収した肉塊は、最終的には400近くに上った。

狩りをしていた時間よりも回収に当てた時間の方が長かったくらいだ。

「残しておくのももったいないから全部回収したけど、次の11階ではほどほどにな。もう少し欲しいなと思ったら、また潜ればいいんだしさ。この街にはまだ来たばっかりなんだから」

今借りてる家だって一応1週間分の賃料は支払い済だし、場合によっては延長するつもりだしさ。

『む、分かった』

『へいへい』

『分かったー』

「じゃ、11階に進むか」

『待て、その前に飯だ』

『俺も賛成ー。いい加減腹減ったぞ!』

『スイもお腹空いた~』

言われてみれば、確かに。

今日は朝早くからここに潜ってるけど、この階で大分時間とったからなぁ。

「それじゃ、ここで飯にするか」

さて、何を作ろうかな。

飯のあとは11階、12階が控えているから、そんなに時間は取れないし。

本当ならドロップ品で出たモツを使いたいところだけど、下処理に多少時間かかるしなぁ。

ここは……。

取り出したのは、この階で獲れた肉塊。

ダンジョン豚の赤身と、脂身の層がきれいに重なり合った、実に美味そうなバラ肉だ。

ここのドロップ品、モツはモツのみで出てきたし、もしかしたらと思って鑑定してみたら、肩、肩ロース、ロース、ヒレ、バラ、モモと見事に部位ごとに分かれていた。

さすがというか、肉に特化したダンジョンだけはあるよ。

パッと作れるっていったらやっぱり炒め物。

炒め物に適した肉って言ったらやっぱりバラ肉だよね。

でもって、肉塊の回収でちょっとヘバッた体のスタミナ回復も兼ねて選んだメニューは……。

「やっぱ豚キムチ炒めでしょ。アイテムボックスには炊いた飯もあるし、これは豚キムチ丼しかないな」

そうとなればネットスーパーで材料を調達だ。

肝心要の白菜キムチとタマネギ、万能ネギにニンニク、それからゴマ油と温泉玉子を購入。

調味料類は特に買い足す物はないからこれで大丈夫だな。

まずは、ダンジョン豚のバラ肉の薄切りを一口大に切って、酒・塩・胡椒で下味をつけておく。

次はニンニクをみじん切りにして、タマネギを縦に薄切りに、万能ネギは小口切りにする。

白菜キムチは大きければざく切りにしておく。

あとはフライパンで炒め合わせていくだけだ。

まずはフライパンにごま油とみじん切りにしたニンニクを入れて熱して、香りが出てきたところで下味をつけたダンジョン豚のバラ肉を投入。

肉の色が変わってきたら、薄切りのタマネギを入れて炒め、タマネギがしんなりしてきたところで白菜キムチを加えてキムチが全体に馴染むよう炒め合わせる。

最後にめんつゆとマヨネーズを入れて味を調えて少し炒めれば出来上がりだ。

マヨネーズを入れると、キムチの辛さがマイルドになるしコクがでるからおすすめだな。

これならスイもいけるだろう。

「土鍋で炊いたホッカホカの飯を丼に盛って、その上にたっぷりと豚キムチを……」

おおっ、これだけでも美味そうだけど、まだまだ完成ではないぞ。

豚キムチ丼の真ん中に温泉玉子を載せて、上から万能ネギをパラパラと。

「よし、完成だ! フェルとドラちゃ……」

呼ぶまでもなく俺の後ろでスタンバッてました。

みんな涎たらしながら。

「はい」

みんなの前に出してやると、待ってましたとばかりに豚キムチ丼を頬張る。

『むぅ、これは辛くて独特の味わいだがクセになりそうな味だな』

『確かに。食ってると、また次、もう一口ってなる味だよな』

『ちょっと辛いけど、これならスイも食べられるー! 美味しいよー!』

キムチは匂いもあるし、どうかなとも思ったけど、まぁまぁ好評だな。

良かった、良かった。

久々の豚キムチ丼、俺も頂くとしよう。

口いっぱいに豚キムチ丼を頬張る。

うん、やはり豚キムチと米は合うな。

それにしても、ダンジョン豚の肉は美味いな。

ダンジョン豚のバラ肉の赤身と脂身のコクのある味わいが味の濃いキムチにも負けていない。

キムチの辛さも、マヨネーズを加えたことによってまろやかな辛味になっているから食べやすい。

これは箸が進むな。

『おい、おかわりだ』

『俺も同じく』

『スイもおかわりー!』

「あー、はいはい、ちょっと待って」

追加の豚キムチ丼を作っていく。

みんなに腹いっぱい食わせたら、次はダンジョン牛の上位種がいる11階だ。

待ってろよダンジョン牛ー。