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第三百七十話 真っ赤な竜巻

とんでもスキルで異世界放浪メシ — ncode.syosetu.com · All chapters

第三百七十話 真っ赤な竜巻

オーバーラップさんの広報室でアナウンスされたので、もうご存知の方もいらっしゃると思いますが

『とんでもスキルで異世界放浪メシ4 バーベキュー×神々の祝福』

12月発売です!

コミック1巻も12月に出ますのでコミック&小説両方よろしくお願いいたします!

デミウルゴス様に行ってみろと言われた山(フェルに聞いたらベリト山というらしい)の目前まで来ていた。

そのベリト山の裾野に広がる深い森。

『この辺りからブラックバブーンの縄張りだ。気を引き締めていけよ』

『おうよ!』

『スイがやっつけちゃうもんねー!』

「お、俺は大丈夫なんだろうか……。不安しかないんだけど」

『まったくお主は弱腰でいかんな。お主には完全防御のスキルがあるのだから、そんなに不安がる必要はないだろう』

「そうは言うけどさ、フェルたちの話を聞いたら不安にもなるさ。数が多いとか石投げてくるとか追い掛け回されたとかさ。確かに完全防御のスキルはあるけど、数で襲われたらめっちゃ怖いぞ」

『ま、そうはならねぇよ。俺たちがいるんだからさ。な、フェル』

『うむ。まとめて彼奴らを始末してくれるわ』

『スイがあるじのこと守るから大丈夫だよー!』

みんな自信満々だな。

まぁ、みんなの実力は知ってるけど、何故か嫌な予感がビンビンにするのはなんでだろうね……。

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

「うおっ、うぉぉぉぉぉぉぉっ!」

俺たち一行は只今絶賛追いかけられ中です。

ブラックバブーン、マジ半端ないです。

ブラックバブーンの縄張りだという森に足を踏み入れた途端に、それは現れた。

2メートル近くはありそうな黒毛のヒヒの魔物だ。

原生林のような森の太い木の枝に、地上に、どこからやってきたのか気が付けば無数のブラックバブーンがいて、俺たちの周りをぐるりと囲っていた。

しかもだ、それが叫び声をあげながら歯をむき出しにして威嚇してくるもんだから、正直俺なんてチビりそうになったぜ。

だけど、フェルとドラちゃんとスイはブラックバブーンの存在に気付いていたみたいで落ち着いたもんだった。

フェルなんて『やっとおでましか』なんて言って、有無を言わさずいきなり前足を大きく振り下ろして 爪斬撃 ( そうざんげき ) を食らわせるし。

その一撃で生えていた木ごと相当数のブラックバブーンが細切れになった。

それでブラックバブーンの包囲網に穴が開いて、そこから俺たちは逃走。

そして今に至るんだけど、当然俺はいつものようにフェルの背に乗っていたわけで……。

「うわっ、うわぁぁぁぁっ!」

木々の間を猛スピードで駆け抜けるフェルに必死につかまりながら、俺はたまらず叫び声をあげていた。

仲間をやられたブラックバブーンは、奇声を上げながら俺たちを追いかけてきている。

しかも、フェルとドラちゃんが話していたように猛烈に石を投げまくりながらだ。

フェルの結界のおかげで石は防げてはいるが、ガンガンゴンゴンと石が当たる音がひっきりなしにしている。

『フェ、フェルッ、この逃走劇はまだ続くのかっ?』

フェルの首元に必死にしがみ付きながら念話でたずねる。

『ドラとスイがどれだけ追っ手を減らせるかだな。ある程度減らしたところで反転攻勢だ』

ドラちゃんは、その翼を生かして森の上空から氷魔法をぶっ放してブラックバブーンの数を減らしていた。

そしてスイは、猛スピードで駆けるフェルの背に乗る俺の肩や背中の上を器用に縦横無尽に動きながら機関銃のように酸弾を連射していた。

『ハッ、どれだけ減らせるかだって? もう半分近くまで減ってるぞ! だけどまだまだだ! こいつらには誰を相手にしてるのかってのを嫌ってほど思い知らせてやるぜ!』

『スイだってもっともーっとヤルんだからー!』

『フハハッ、ドラもスイもその意気だ! この先に空き地がある。そこで一気に残りを叩くぞ!』

『おうっ!』

『分かったー!』

『いやいやいやっ、別にそんな全部相手にしなくていいからっ。とにかく追っ手を撒ければいいだろっ』

もうっ、何でうちのトリオはこんな好戦的なんだよーっ。

あっ、戦神であるヴァハグン様の加護のせいか?

確かヴァハグン様がそんなようなこと言ってた気がする。

いや、でもスイにはヴァハグン様の加護はないはずだけど……。

『よし、速度を上げるぞ!』

『はっ? ちょ、ちょっと待てっ!』

グンとさらにフェルの駆けるスピードが上がる。

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁっ」

風圧で目も開けていられないほどだが、それでも背後からはフェルのスピードにも食らいつくブラックバブーンの気配が。

「ヴォッ、ヴォッ」

「ギャァーッ、ギャッ」

「ヴォッ、ヴォーッ」

無数のなんともいえない騒々しい鳴き声が耳に入る。

『お、おい、フェル、この先の空き地で一気に叩くとか言ってたけど、こんな深い森の中に空き地なんてあるのかっ?』

『ある』

『ほ、本当にか?』

『まったく心配性だな。お主は黙って見てろ』

そうは言うけど……。

さらにグンとスピードが増す。

「うっ、うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ…………」

フェルの首に目を瞑りながらしがみ付くこと数分。

『よし、着いたぞ』

そう言ってフェルが足を止めたそこは、深い森の中にあって木の1本も生えていない不自然なほどにだだっ広い空き地だった。

広さはおおよそサッカーコート2面分。

その空き地の半ばほどまで進んだ所で、ブラックバブーンの群れが雪崩れ込んできた。

「ヴォーッ、ヴォーッ」

「ギャッ、ギャッ」

「ヴォッ、ヴッ、ヴォーッ」

ブラックバブーンたちの威嚇する声が辺りに響き渡ると、空き地の近くの木に止まっていた鳥たちが一斉に飛び去っていく。

『ホゥ、大分数を減らしたではないか』

『まぁな』

いつの間にかフェルの隣へと舞い降りたドラちゃんがそう答える。

『スイ、がんばったー!』

スイもいつの間にか俺の肩から降りて、ポンポン飛び跳ねている。

『よし、最後の仕上げは我がやるとしよう』

フェルがそう言うと同時に、対峙していたブラックバブーンの群れの中心に竜巻が発生した。

そして……。

「うわぁ…………」

つかまるものもなく次々とその竜巻に巻き上げられていくブラックバブーンたち。

フェルの風魔法だろう竜巻がただの竜巻であるはずもなく、いたるところで風の刃が吹き荒れていた。

その竜巻はさながら巨大なミキサーで、容赦なくブラックバブーンを粉々にしていった。

『こりゃあまたエグイ魔法使ったな、フェル』

『フン、此奴らは多過ぎる。これで数の調整もとれただろう』

『わぁ~、赤いのがグルグル回ってるよー! あるじー、見て見てー』

「ウップ……、見てるよ、スイ。……血で真っ赤に染まった竜巻…………」

俺たちの目の前では、血飛沫をあげながら赤い竜巻がグルグルと回っていた。

『もうそろそろいいだろう』

フェルのその声とともに竜巻が止んだ。

それと同時にドチャッとブラックバブーンの細切れになった肉片が地面にバラ撒かれる。

「…………」

『よし、進むぞ』

『おう』

『もう終わりー?』

「いやいやいや、ちょっと待て」

『何だ? ブラックバブーンの肉はマズいからどうにもならんぞ。魔石もないし、毛並みもそれほどいいわけではないから貴重なものではないはずだ』

「いや、そういう意味じゃなくって。まぁ、少しは素材のこともあるけどさ。これだけの惨状なのに、何ともなくさ、なんていうかこうもっと気持ち的に」

『何を言っているのかさっぱりわからん。だいたい強者である我らに向かってきた時点で彼奴らの命運は決まった。それだけのことだ。だいたいダンジョンでやっていたこととそれほど変わらんだろうが』

「言われるとそうかもしれないけど……」

ドロップ品が残るダンジョンと違って、この見た目はリアルというかさ。

『そういうこった。奴らの屍も他の魔物の餌になるか、地に還るだろうよ』

フェルもドラちゃんもこの惨状を当然のことのように受け止めている。

結局のとこ、この世界は弱肉強食ってことだよな。

分かっちゃいたけどさ。

フェルとドラちゃんとスイという強者が俺の味方で本当に良かったよ。

それにしても、真っ赤な竜巻、夢に見そうだ……。

「ところでさ、フェルはこんな深い森の中にこれだけ広い空き地があるの良く知ってたよな」

『む、まぁな。前に此奴らとやりあったときにちょっとな』

「え? ちょっとなって……」

目の前の空き地をグルリと見まわす。

「エェェェ……」

フェル、お前いったい何やらかしたの?