【強い生き物】月(中編)
【強い生き物】月(中編)
僕の視点は何かを捉えた。 ある星が見えてきたのである。 その星は光り輝いてはいなかった。 色は青。 地球でいうところの海があるからだろう。 休眠状態から蘇るには 水分が必要なのだ。 僕の視点は だんだんと その星へと近づいていく。 丸く立体的に見えていたその星が 平く平面的に見えてくる。 陸地があることが分かる。 僕の視点は さらにその星に近づく 海と陸地を分ける輪郭は視界から消えて 陸地の中に森と建物が見えてくる。 地球でいうなら アマゾンにオフィスビルが点在してる そんな感じだ。 舗装された道はない。 その虫は、空を飛べるためだろう。 正確には 空を飛べるように進化したためだろう。 そこで 僕の視点は 空間的な移動をやめ 時間的な移動を始めることにした。 時間をさかのぼるということだ。 僕の視点は ある物が月の着陸に失敗するのを見た。 バラバラになった。 その虫は月にばら撒かれた。 そんな中 ある一対の虫だけは 宇宙空間へと投げ出されていった。 この出来事は その星の視点からすると 何億年も前の話しで 叙事詩的な物語があるのなら 最初の一文になるであろう そんな出来事であった。 そして 何億年もの長い時間 宇宙を漂い続けた。 高温、高圧、放射線 そんな過酷な環境にも耐えられた。 休眠状態であったためだ。 そして ある星の近くを漂っていた時 その星の重力に引きつけられて その星のある水たまりに落ちた。 その虫は 何億年もの深い眠りから覚めた。 そして 独自の進化と発展を遂げた。 僕の視点は 時間的な移動から 空間的な移動に戻ることにした。 そこには 強い生きものが 知的な生命にまで進化した姿と その世界が広がっていた。