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女騎士一行

【Web版】Lv2からチートだった元勇者候補のまったり異世界ライフ — novelup.plus · All chapters

女騎士一行

「アープショー殿ではありませんか!?」 家の近くまでやってきた女騎士一行は、そこにアープショーの姿を見つけてびっくりした表情をうかべていた。「こちらこそびっくりですよ。どうされたんですか?こんなところまで? ここらは野蛮な獣がいまだに多く生息しているので危険ですよ」 そう言いながら、アープショーは、女騎士一行を柵 - 結界 - の内側へといざなった。「……なんといいますか……お恥ずかしいお話なのですが……」 女騎士は、苦笑しつつ、少しうつむき加減になる。「……この話は、他言無用に願いたいのですが……」 そう言うと、女騎士は、事情を説明し始めた。 先日、金髪勇者一行がこの周辺へ行軍した際、 狂乱熊 ( サイコベア ) の集団の襲撃にあい、壊滅・遁走したのだが、 その一件に、金髪勇者がひどく立腹し、城に引きこもって出てこなくなったのだという。 勇者の言い分としては"自分の能力は優れているのだが、それをサポートすべき人材がことごとくカスで使えない。こいつらが自分の片腕として使えるレベルになるまで、自分は魔王討伐に赴かない" とのこと。 このことに慌てた王らは、騎士団らにさらなる鍛錬を厳命した。 最低でも、パーティ単位で 狂乱熊 ( サイコベア ) くらいは狩れるようになってこい、と。 とはいえ、騎士団も、城の警護などもしなければならないので、全員が鍛錬に向かうわけにはいかない。 本来なら、レベルの高い騎士らを優先して鍛錬させるべきなのだが、高レベルの騎士らは、こぞって城の警備任務を選択した。 狂乱熊 ( サイコベア ) は、高レべルの騎士達のパーティであったとしても、倒すのが難しい難敵であり、こんなことで命を落としたくないと考えたためである。 何より、先の勇者一行壊滅事件を受けて、騎士団の中にも『あの金髪勇者は本当に魔王を倒せるのか?』との懐疑的な意見が蔓延し始めており、あの勇者のために命を懸けるのはいかがなものか? 的な考えを持つものが多くなっていたのであった。「その煽りを受けまして、私のパーティにも出撃のお達しが出まして……」 女騎士は、大きな溜息をついた。「我らは、騎士団の中でも、まだまだ新参者です。 それなりに修練は積んでいますが、 狂乱熊 ( サイコベア ) など、狩れるはずがありません…… 先ほど、運悪く 狂乱熊 ( サイコベア ) 出くわしてしまったのですが、危うく我らが全滅するところでした。 たまたま落雷が熊に落ちてくれたおかげで助かったのですが……」「……あの雷……魔法のような気が……しないでもなかった……」 女騎士の後方で、女魔法使いが、顎に手をあて、考え込んでいた。  確かに、あの雷はアープショーが隠れてはなったものであり、この女魔法使いはなかなか鋭くはあるものの、魔法使いとしての実力は、あの戦闘の状況をみるにつけ、かなり劣っているといえた。「しかし、アープショー殿は、ここで何をされているのです?」 女騎士は、怪訝そうな表情をアープショーへと向けて行く。「あぁ、ここの家が放棄されていましたので、買い取って自宅にしたのですよ。 今は、妻とペットと一緒に狩猟をしながら暮らしています……まぁ、まだ1週間ほどですが」 そう言って笑うアープショーに、「……へ? ……つ、妻? ……アープショー殿……ご、ご結婚されていたのでありますか?……」 女騎士は、みるからに狼狽し、ぎくしゃくしながら裏返った声を発する。 その様子を見かねた女剣士らが、女騎士の脇を小突いてどうにか正気に戻らせているのだが「妾って手だってあるんだし、しっかりしろって」 と、小声で言っていたのは、どうにもいただけないな、と内心思ったアープショーであった。「実は、アタシら、この家を目指してきたんだ。ここに放棄された家があったのは知ってたんでね。 さっきこっぴどくやられちまったから、ここで休息しようと思ってさ。 まさか、あんたの私邸になってるとは思わなかったんだけど」 そう言って、女剣士は豪快に笑った。「どうだろう、納屋の一角でも構わないんで、しばらく貸してもらえないか? あんたと奥さんのお邪魔はしないからさ」「それは構いませんが、なんでしたら転移魔法で街までお送りしますよ?」 アープショーの言葉に、一同は皆暗い表情になっていく。「そうしたいのは山々なんですが~……成果を何もあげていない今の状態では街に帰るわけにもいかないのです~……」 女弓士が、力なく言い、そのまま地面にへたりこんだ。 一同の話を聞き、どうにかしてあげたいと思うアープショーではあったが、 女騎士によからぬ印象を持っているリースがどう言うか……そう思案していると「旦那様、リビングでよろしければ一泊していただいてよろしいのではないですか?」 家からやって来たリースが、笑顔でそう言った。「良いのかい?」「もちろんです。困った方を見捨てるわけにはいきませんもの。 『妻』として当然でしょう?」 妙に、『妻』の部分を強調し、女騎士を、一瞬キッとにらみつけるリース。 リースが、アープショーが女騎士達に自分のことを「妻」としてきちんと紹介してくれたことでご機嫌だからこその、この態度なのだということを察し、リースの気が変わらないうちに一行を家の中へと招き入れた。 そこで、女騎士一行は驚愕の表情を浮かべた。「……ぼふ?」 家のリビングの端で、巨大な毛の塊がゴロゴロ転がって遊んでいたのだが、オーバーオールを着てはいるものの、あれはどう見ても「…… 狂乱熊 ( サイコベア ) ……ではないのですか?……あれ?」 ガクガク膝を震わせながら、女騎士は腰の剣に手をかける。「心配しなくてもいいですよ、私たちのペットです。名をサベアと言います」 アープショーに紹介されたサベアは、街で子供たち相手にするように、立ち上がり、両手で力こぶをつくるポーズをとり、そこでクニッと体を横に倒した。 その、愛嬌がありすぎる姿に、女騎士一同は、笑いながら床にへたりこんでいったのだった。 その後、女騎士一同は、アープショーらに名を名乗った。「私は騎士のバリロッサ。 貴族……といっても、今は名ばかりの没落貴族なのですが、そこの長女になります。 騎士として、実家を再興させるのが夢です」「アタシはブロッサム、剣士さ。 バリロッサとは幼なじみで、騎士学校でも同期だった縁で騎士団でも同じパーティを汲んでるんだ。よろしく頼む」「あわわ……わた、わた、私は、その、ビレリー、弓士です~。 その、まだ新米なんで、全然なんですけど、その、よろしくです」「……ベラノ……魔法使い……(ペコリ)」 とりあえず、ケガをしている一同の治療をしてやり、ともに夕食を取った一同は、「お邪魔になってはならないので、我らは野宿でも」 そう言ったバリロッサだったが、家の外の罠に、 狂乱熊 ( サイコベア ) が2匹かかっているのを見て、おとなしくリビングに宿泊させてもらうことにしたのだった。 ちなみに、ブロッサムはサベアとすっかり意気投合したらしく、サベアのお腹の上で眠り始めていたのであった。 他の3人は、アープショーが魔法で作成したベッドを使用していた。 その中で、バリロッサは、満面に笑みを浮かべ、目をランランと輝かせていた。 アープショー殿と、こうして再会できたのは、まさに天啓だ…… 彼に妻がいたのは誤算だったが……ならばブロッサムの言うように、妾でもかまわない。 彼を我が一族に迎え入れることが出来れば、間違いなく、没落してしまったわが生家の再興は可能だ。 そのためならば、私はどんなことでもしようではないか! バリロッサは、毛布を頭から被ると、その顔に満面の笑みを浮かべていったのだった。 その後、彼女のフフフ笑いは、夜遅くまで響き続けたのであった。