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第二十六話「冒険者ギルド」

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第二十六話「冒険者ギルド」

・偽名とルイジェルドの名前に関する云々を追記(12/29)

冒険者ギルド。

そこには数々の猛者が集まる。

肉体に自信を持つ者、魔術に自信を持つ者。

ある者は剣を、ある者は斧を、ある者は杖を、またある者は素手で。

自分は他者より強いと豪語する者、そんな者を心中であざ笑う者。

鎧を付けた剣士がいれば、軽装の魔術師もいる。

ブタのような男、下半身が蛇の女、翅の生えた男、馬の足をもつ女。

あらゆる種族が集い、ひしめき合っている。

それが魔大陸の冒険者ギルド。

リカリスの町の冒険者ギルド。

その巨大なスイングドアが、バンと乱暴に開かれた。

何事かと、視線が集まる。

冒険者ギルドの扉を乱暴に開ける者は少ない。

どこかのパーティが帰ってきたのか?

魔物が襲ってきて、門番が救援を要請したのか?

あるいはただの風の悪戯か?

そういえば、デッドエンドが近くに出没したと聞いたが、まさか……。

そう思った彼らの目に、三人の人物が映る。

一番前に立つのは、少年。

まだ幼い。しかし自信満々の表情。布を巻いた杖、薄汚れてはいるが高級そうな服。

大人だらけ、強面だらけのここに、一切気圧されることなく、堂々と入ってくる。

何者だ、と何人かが思った。あまりに不釣り合いだ、と。

あるいは、見た目と年齢が比例しない種族なのやも、と。

少年の影に隠れるように立つのは、恐らく少女。

その顔は目深に被ったフードのおかげでうかがい知ることは出来ない。

だが、年齢に反して物腰と眼光は鋭い。

腰に差した剣は一目で使い込まれたものだとわかる。

この場にいる何人かが、彼女を腕利きの剣士と認めた。

最後の一人は、背の高い偉丈夫。

額に赤い宝石、顔を縦断する切り傷。

『デッドエンド』の特徴とそっくりだ。悲鳴を上げそうになった者もいた。

しかし、その青い髪。

すぐに勘違いだと知る。よく似た別人だ、と。

異様。

まさに異様だ。

誰一人として普通ではない三人組。

何をしにきたのか検討もつかない不気味さだ。

少年が大声を張り上げた。

「おいおいおいおい! シケたツラしてんなぁ!

こちらにおわす方をどなたと心得る!」

いやいや、誰だよ知らねえよ、と誰もが思った。

「なんとあのスペルド族の悪魔! 『デッドエンド』のルイジェルド様だ!

黙りこくってねえで、怯えるか逃げるかしろってんだ!」

いやいやソレはねえよ、と誰もが思った。

スペルド族の髪の色は目が醒めるような緑だ。

あんな暗くて汚い青色ではない。

「兄貴! こんな田舎にゃあ『デッドエンド』の顔は知られてないようですぜ!

まったく、ちょいと足を運んでみりゃあ、噂はしてても、だーれも気付かねえ」

どうやら、少年はあの青年を『デッドエンド』と言い張りたいらしい。

そう思うと、あの少年の甲高い口上がやけに滑稽に思えてきた。

あっという間に、不気味さが消えていく。

あの兄貴と呼ばれた青年。

なるほど、確かにあの額の赤い眼と、顔の傷はそれっぽい。

だが、大事な所を間違っていやがる。

「プッ」

噴出したのは誰だったか。

「なんだてめえ! なに笑ってやがる!」

少年は耳ざとく聞きつけて、怒りの顔を声の方向へと向ける。

その動作があまりに滑稽で、ギルド内の含み笑いが徐々に多くなる。

そして、誰かが言った。

「プスッ……フッ……だ、だってよ。

スペルド族の髪は……緑だぜ?」

そのとたん、冒険者ギルドのロビーに大爆笑が起こった。

---

笑い声を聞きながら、俺はつかみはオッケーだなと感じていた。

冒険者ギルド。

想像はしていたが、思った以上に粗野な感じだ。

種族が様々なのは、魔大陸だからだろうか。

馬面の男、カマキリみたいな鎌をもった男、蝶みたいな翅をもった女、ヘビみたいな足の女。

人とよく似ているが、どこかしらに違いがある。

また、部位が動物じゃないからといって、人間そっくりとは限らない。

肩から棘みたいなのが生えてるヤツもいるし、全身の肌が青いやつもいる。

腕が四本だとか、頭が二つあるヤツもいる。

人間そっくりだけど、どこかがちょっとずつ違う。

考えれば、ミグルドやスペルドは人族にかなり近い種族だろう。

「あ、兄貴をバカにしてんじゃねえよ!

兄貴はな、俺たちが荒野で魔物に襲われてるところを助けてくれたんだぞ!」

気圧されることなく、俺は適当に演技しながら中へと入っていく。

「聞いたか! で、デッドエンドが人助けだってよ!」

「ヒャハハハハ! す、すげぇいいやつじゃん!」

「マジかよ! 俺も助けてもらいてぇ! ギャハハハ!!」

いつもなら、こういう嘲笑を聞くと足が竦むところだが、

演技をしているせいか、あるいは笑ってる奴らに現実味がないせいか。

それとも、俺も成長したからかな?

いやいや。

増長はすまい。

大体、今の笑いは俺ではなく、ルイジェルドに向いているのだ。

俺の足が竦むわけがない。

調子にのるのは、自分に対する敵意を対処できるようになってからにしよう。

とりあえず辺りを見渡す。

この場にルイジェルドを本物だと思ってる奴はいないことを確認。

ここで、事前に用意しておいたセリフA。

「こいつら許せねえ! 兄貴! やっちまってくださいよ」

「ふっ、笑いたい奴は、笑わせておけばよいのだ」

ちなみに、笑わなかったパターンのBも存在している。

「よいのだ……(渋い顔)、だってよ!」

「も、もう大物気取りかよ!」

「や、やべぇ、おれ謝っちゃいそう」

こいつら、ルイジェルドがホンモノだってわかったら、

泣いて謝るんだろうな……。

「ふん! てめえら、兄貴の寛大さにせいぜい感謝するんだな!」

俺は捨て台詞を言って、周囲を見渡す。

左手には、紙がベタベタと貼り付けられた巨大な掲示板。

右手には、4つのカウンターが並んで、職員が呆気に取られた顔でこちらを見ている。

右手だ。

俺は二人を伴って歩いて行き……ってカウンター高ぇな。

ルイジェルドに目配せして、持ち上げてもらう。

「おい職員! 冒険者登録したい!」

ギャラリーに聞こえるように、大声で言った。

後ろで沸き起こる大爆笑。

「で、で、デッドエンドが、に、 新人 ( ニュービー ) だってよぉ!」

「げはっげほっ……腹いてぇよ!」

「すげぇ、お、俺、デッドエンドの先輩になっちゃった!」

「そ、それマジ自慢できるわ!」

よし、もういいだろう。

「うるせえな。

職員の声が聞こえないだろが!」

そう叫ぶと、冒険者たちはニヤケ顔のまま、

口をつぐんで静かになった。

「わ、わかった、わかったよ」

「さ、最初の説明は大事だもんな……ぷすす」

「くくく」

まだ含み笑いが聞こえるが、よし。

これでいいだろう。

---

さて。

苦節約44年。

とうとう俺は、念願のハローワークへと赴いた。

『水聖級魔術師』という資格を手に、

途中で仲間になった『 百年単位の無職 ( ハンドレットニート ) 』と共に……。

脇には養わなければいけないワガママ娘が一人。

働かなければ、食っていけない―――。

というのはさておき。

「では職員さん。お騒がせしました。

よろしくおねがいします」

オレンジ色の髪をして牙を生やした女性職員。

胸元の大きく開いた服装で、もちろん谷間が見えている。

もっとも、乳房が三つ並んでいるので、谷間は二つある。

一つ増えるだけで二倍になるもの、なーんだ。

「え? あ、はい。冒険者登録……ですよね?」

彼女はいきなり態度の変わった俺に戸惑ったようすだった。

ま、ずっと演技していてもボロが出るだけだしな。

ナメられないように演技してたって事でオッケーよ。

「はい。なにせ、新人なもので」

「でしたら、こちらの用紙にご記入ください」

三枚の紙と細くとがった炭が渡される。

紙はどれも同じものだ。

名前と職業を書く欄があり、注意事項と規約が書いてある。

文字が読めない奴はどうするんだ?

と、思っていると。

「文字が読めないのでしたら、代わりに読み上げますよ?」

そういう事らしい。

「いえ、必要ありません」

俺が読みあげて、エリスに聞かせてやる。

要約するとこんな感じだ。

========================

1.冒険者ギルドの利用。

冒険者ギルドに登録することで、冒険者ギルドのサービスを受けることができる。

2.サービス内容

全世界における冒険者ギルドでは、仕事の仲介、報酬の受け渡し、素材の買取、貨幣の両替等のサービスを行なっている。

世界情勢の変化で、通知することなくサービス内容が変更されるものとする。

3.登録情報

登録された情報は冒険者カードにて冒険者自身が管理することとなる。

紛失すれば再発行は可能だが、ランクはFからとなる。

また、各地域毎の罰金が発生する。

4.冒険者ギルドの脱退。

ギルドに申し出れば、脱退が可能。

再登録も可能だが、ランクはFからとなる。

5.禁止行為

以下に定める行為を禁止する。

(1)各国の法令に違反する行為

(2)ギルドの品位を著しく貶める行為

(3)他冒険者の依頼を妨害する行為

(4)依頼の売買行為

禁止行為が認められた場合、罰金と冒険者資格を剥奪とする。

6.違約金の発生

請け負った依頼を失敗すると、違約金として報酬の2割を支払う。

期限は半年間。支払えなければ、冒険者資格は剥奪となる。

7.ランク

冒険者はその実力に応じて、SからFまでの7段階でランク分けされる。

原則として、自分のランクの上下1つ以内の依頼までしか請けることはできない。

8.昇級と降級

ランクに応じた規定の回数の依頼を成功させることで、昇級することが可能。

ただし、実力が伴わないと感じたら、そのままのランクでいることも可能。

また、一定回数連続で依頼を失敗することで、1つ下のランクへと降級する。

9.義務

魔物の襲撃などで国より要請を受けた場合、冒険者はそれに従う義務がある。

また、緊急事態において、冒険者はギルド職員の命令に従う義務がある。

========================

エリスは途中からうんざりした顔をしていた。

彼女は、こういう堅苦しい文章は苦手なのだ。

俺も、そんなに得意じゃない。

けど、こういうのはきちんと読んでおかないとな。

とりあえず、特に問題はなさそうだ。

と、その前に。

「職員さん、質問があるんですが」

「なんでしょうか」

「この文字って、どこの言葉でもいいんですか?」

「どこの言葉というと、例えば……?」

「人間語とか」

「あ、それでしたら大丈夫です」

『それでしたら』。

マイナーな部族が使っている特殊な文字とかはダメなんだろう。

もちろん、日本語も無理だろう。

俺は魔神語で書いておく。

人族と思われるより、見た目が年若い魔族と見られていたほうが都合がいい。

「エリスも自分で書いてください」

エリスにも自分で書くように伝える。

こういう契約書は、自分で書いたほうがいい。

ちなみに、ギルド内での会話は全て魔神語だ。

彼女がむっとしつつも静かなのは、周囲の言葉がわからないからだ。

もし彼女が嘲笑を生で聞いたら、剣を抜き放って襲い掛かったかもしれない。

「使う気はまったくないんですが、もし偽名を使った場合はどうなりますか?」

「特に罰則はありません。あくまで登録名なので」

「犯罪者が名前を変えている場合もありますよね?」

「魔大陸と他の大陸では犯罪者の定義も違いますので、冒険者ギルドに迷惑を掛けなければ問題ありません。ですが、一度冒険者資格を剥奪されたのなら、少なくともこの大陸で二度目の登録はできないと考えてください」

「それで大丈夫なんですか?」

「問題はありますが、魔大陸には生まれた時に名前を持たない方も大勢います。なので、偽名を禁止すると登録できない方が大勢出てきてしまいます」

なるほど。

大陸毎で冒険者ギルドの管轄は違うのかもしれない。

スペルド族だと冒険者ギルドに登録できない可能性もあったからロイスという偽名も考えておいたが、とりあえず、問題なさそうだ。

「ここで登録してから別大陸に渡った場合、登録しなおす必要は?」

「ありません」

だよね。

「書かれましたら、こちらに手を乗せて頂きます」

と、用意されたのはエロゲーの箱ぐらいの大きさを持った透明な板だ。

真ん中のあたりに魔法陣が刻まれている。

下には、金属のカードが敷かれている。

ふむ。なんだろうか。

「こうですか?」

とりあえず、まず俺から。

ぺたりと手を載せる。

職員がそれを確認すると、板の端をポンと指で叩いた。

「名前・ルーデウス・グレイラット。

職業・魔術師。

ランク・F」

職員が用紙の内容を淡々と読みあげて、もう一度ぽんと指先で叩く。

すると、魔法陣がほんわりと赤く光り、すぐに消えた。

「どうぞ、こちらがあなたの冒険者カードになります」

何の変哲もない鉄の板。

そこには、ボンヤリと光る文字で、

------------------------------

名前:ルーデウス・グレイラット

性別:男

種族:人族

年齢:10

職業:魔術師

ランク:F

------------------------------

そう書かれていた。人間語だ。

しかし、なるほど。そういう魔道具か。

てか、これを使えば本を書くの簡単なんじゃなかろうか。

冒険者ギルドのような公的な場所で使われているなら、

もっと出回っていてもいいはずだし……。

いや、こっちのプレートにも仕掛けがあるのかもしれない。

名前、職業、ランクに関しては職員が手動で入力するみたいだが、

性別、種族、年齢に関しては手から読み取れるのか……。

まずいな。

人族であることを隠しておこうと思ったのに、年齢と種族名が出てしまった。

まあいいか。なんとかなるだろう。

------------------------------

名前:ルイジェルド・スペルディア

性別:男

種族:魔族

年齢:566

職業:戦士

ランク:F

------------------------------

あ、もしかして、これスペルド族って出ちゃうんじゃねえの?

と、思ったが、ルイジェルドのカードには魔族との表示。

実にアバウトだが、ほっとする。

年齢が出てしまったが、職員の人も別に気にしていない。

魔族だとそれほど珍しくもないのか。

ルイジェルド・スペルディアという名前も、あまり気にしていないようだ。

偽名とでも思っているんだろうか。

心外だな、使わないと言ったばかりだというのに。

それとも、もしかして『デッドエンド』の本名がルイジェルド・スペルディアだとは知らないのかもしれない。

さっきから、デッドエンドって単語は聞くけど、ルイジェルドって単語は聞かないもんな。

ちなみに、彼のカードは魔神語で書かれていた。

------------------------------

名前:エリス・ボレアス・グレイラット

性別:女

種族:人族

年齢:12

職業:剣士

ランク:F

------------------------------

エリスが出来た所で、登録完了だ。

エリスのものも人間語だった。

「僕と彼ので文字が違うようですが?」

「はい、文字は種族毎で変わります」

なるほど、人族は人間語、ってことか。

「ハーフの場合はどうなるんですか?」

「混ざる事もありますが、基本的には血の強い方で表示されます」

「人族でも魔神語しか読めない人とかはいますよね?」

「その場合は、カードの真ん中を指で抑えて、変えたい言語を言ってください」

試しに、カードの真ん中を押さえ、『獣神語』と言ってみる。

すると、表示が変わった。

なるほど。面白い。

『魔神語』、『闘神語』。

次々に変えてみると、職員にたしなめられた。

「あまりやりすぎますと、カードの魔力が切れるのが早くなりますので、お気をつけ下さい」

「切れるとどうなるんですか?」

「ギルドにて補充が必要となります」

やはりカードのほうにも仕掛けがあるのか。

小さな魔力結晶でも埋め込んであるのだろうか。

「魔力が切れると、情報が消えるとかはない?」

「ございません」

「長いこと一つのカードを使い続けると、電池の減りが早くなるとかは?」

「でんち……? 魔力のことでしたら、ありません。魔力は通常で一年程は持ちますが、依頼完了の都度、魔力充填を行いますので、通常は切れることはありません」

「再充填にはいくら掛かるんですか?」

「料金は掛かりませんが……」

じゃあなんでたしなめるような事を言ったんだ、と思ったが、あんがいカードの魔力が切れて冒険者ギルドに怒鳴りこんでくる奴がいるのかもしれない。

どこの世界にもクレーマーはいそうだしな。

「わかりました、気をつけましょう」

それにしても、充電式か……。

誰が考えたのか知らないが、面白いシステムだな。

これを利用すれば、もっとあれこれ出来ると思うんだが……。

冒険者ギルドが技術を独占しているのだろうか。

まあ、いまは考えないでおこう。

「んふふ」

エリスは自分のカードを見て、にまにまと笑っていた。

嬉しいのはわかるけど、無くすなよ?

「パーティの登録はなさいますか?」

「パーティ登録? あ、します」

職員に言われて気づく。

書類にパーティの事が書いてなかったから失念していた。

最初から、パーティは組む予定だったのだ。

「その前に、パーティについて詳細を伺っても?」

「はい」

と、職員が説明してくれる。

・パーティは最大7人まで入る事ができる。

・パーティにはリーダーの上下1ランクまでしか入ることが出来ない。

・受けられる依頼はパーティランクで決まる。

・パーティランクはメンバーの平均値。

・依頼成功時の昇格値はパーティ員全員に入る。

・パーティに加入していても、個人での依頼受注は可能。

・加入にはリーダーとギルドの承認が必要。

・脱退にはギルドの承認だけでいい。

・リーダーにはメンバーを強制脱退させる権限がある。

・リーダー死亡時には、自動的にパーティ解散となる。

・2つ以上のパーティでクランを結成することが出来る

・優秀なクランにはギルドより様々な特典がある

クランの部分はまあいいか。

しばらくは関係なさそうだし。

「では、パーティ名は何に致しますか?」

「『デッドエンド』でお願いします」

職員の顔がひきつった。

が、そこはさすがプロ。すぐに笑顔を取り戻した。

「わかりました。冒険者カードをお預けください」

俺たちはしまったばかりのカードを取り出し、渡す。

職員はそれを持って奥へと行き、ちょっとして戻ってきた。

「はい、どうぞご確認ください」

------------------------------

名前:ルーデウス・グレイラット

性別:男

種族:人族

年齢:10

職業:魔術師

ランク:F

パーティ:デッドエンド(F)

------------------------------

よし。

しかし、デッドエンドとか文字で見てみると恥ずかしいな。

人の口から聞くと、あんなに恐ろしい響きなのに……。

(F)と付いているのはランクだろう。

「以上で登録終了となります。お疲れ様でした」

「はい、お疲れ様です」

「依頼を受ける際には、そちらの掲示板よりお剥がしになり、受付まで持ってきて下さい」

「はい」

「買取は建物の裏となっておりますので、お間違えのないようにお願いします」

「裏ですね。ありがとうございました」

ふう、ようやく終わったか。

---

早速、俺たちは掲示板の方へと移動した。

受けられる依頼はFとE。

そのランクに大した依頼は無い。ほとんどが町中で出来る仕事だ。

倉庫整理、調理補助、帳簿記入、迷子のペット探し、害虫駆除。

どれも簡単にできそうで、どれも賃金が安かった。

ちなみに、依頼書はこんな感じだ。

=========================

F

・仕事:倉庫整理

・報酬:石銭5枚

・仕事内容:重いものの運搬。

・場所:リカリス町12番地、赤い扉の倉庫

・期間:半日~1日

・期限:無期限

・依頼主の名前:オルテ族のドガム

・備考:荷物が多くて手が足りねえ。誰か手伝ってくれ。力があればあるほどいい。

=========================

=========================

F

・仕事:調理補助

・報酬:石銭6枚

・仕事内容:皿洗い、食事の運搬等

・場所:リカリス町4番地、足踏亭

・期間:1日

・期限:次の満月まで

・依頼主の名前:カナンデ族のシニトラ

・備考:大勢の予約客が入った。手伝いが必要だ。ついでに味見もしてくれると助かる。

=========================

=========================

E

・仕事:迷子のペット探し

・報酬:屑鉄銭1枚

・仕事内容:いなくなったペットの捜索・捕獲

・場所:リカリス町2番地・キリブ長屋・3号室。

・期間:見つかるまで

・期限:特に無し

・依頼主の名前:ホウガ族のメイセル

・備考:うちのペットがいなくなっちゃって帰って来ません。お小遣いをはたいて依頼します。誰か探して下さい。

=========================

どれもパーティで受けるようなものではなさそうだ。

低ランクのときは、基本的にソロなのだろうか。

依頼成功時の昇格値は全員に入るらしいし、

低ランクの時はパーティでいくつかの依頼を受けて、

手分けするという方法が主流なのかもしれない。

「とりあえずは、何か簡単そうなものからかな……」

しかし、なんでペット探しがEなんだろうか。

あ、町が広いからか。

ついでに言えば、「見つかるまで」ってのがキツイと見た。

死んでいる可能性もあるからな。

でもお小遣いをはたいてか、きっと可憐な少女に違いない。

誰か行ってやらないと可哀想だなぁ……。

「ドラゴンと戦うのとかないの?」

「Sランクにあるぞ。これだ」

「ほんと!? ………読めない」

「北の方にはぐれ竜が一匹住み着いたと書いてある」

「勝てるかな?」

「やめておいた方がいい。竜は強いからな」

「そう。でも、討伐系がいいわね……」

「討伐系はCランクからだな」

「Cランクからしかないの?」

「そのようだ」

「最初はゴブリンとかと戦うって聞いたことあるけど?」

「この大陸にそんな弱い魔物はいない」

エリスはルイジェルドに依頼内容を読んでもらい、物騒なことを言っていた。

ルイジェルドは面倒見がいいなぁ。

「おいおい、ぷくく、で、デッドエンドの 皆さん ( ・・・ ) よ。

そこは、ふふ、ちょっと、くくく、ランクがたけえんじゃ、ねえのかい?」

と、さっき笑っていた内の一人が、

ニヤニヤしながら二人に近づいていく。

馬の頭を持った、筋肉ムキムキマッチョマンだ。

俺は一瞬で彼の前に移動し、二人と馬面の間に割ってはいる。

「うるせーな! ちゃんとFかEを受けるよ!」

「おいおい、怒んなよ。アドバイスしてやろーってんじゃねえか」

「なんだとぉ?」

「ほら、この依頼だよ。迷子のペット探し」

ペリッと剥がしたのは、さっき俺が見ていたやつだ。

「これは町が広すぎるから難しいって思ったんだよ」

「おいおいおいおいおい。お前さんの兄貴は『デッドエンド』、スペルド族だぜ?」

「だからなんだってんだよ!」

「額に付いてる眼は飾りか? 広いたってその眼がありゃ一日も掛かんねぇじゃねえか」

む。

なるほど。

言われてみれば確かに。

生物の探しもの系はルイジェルドがいれば楽勝だ。

例え相手が猫でも、彼なら

………てか、何がアドバイスだ。

俺たちを偽物だと思って煽ってるだけじゃねえか。

「うるせえな! ほっとけよ!」

と、突っぱねては見たものの、

迷子のペット探しは、ルイジェルドの能力をうまく活かせる。

頭の片隅にとどめておいた方がいいだろう。

「兄貴! 行きましょう!」

「ん? 依頼は受けなくていいのか?」

「いいんスよ! こんな状態で依頼を受けたってロクな事がないっすからね!」

どのみち、今日は顔見せと登録だけのつもりだった。

依頼はどんなものがあるかと見てみただけだ。

本格的な活動は明日からだ。

「行きましょう」

俺たちが冒険者ギルドを出ると、ギルド内で大爆笑が起こった。

「おいおい、依頼も受けずに帰るのかよ!」

「さすがデッドエンドさんは余裕だぜェー!」

「ギャハハハハハ!」

ルイジェルドは困惑の表情をしていた。

本当にこれでいいのか、と。

これでいい。

とりあえずは成功だ。

デッドエンドの名前を聞いて、警戒でも緊張でもなく、笑いが起こっている。

理想的とはいえないかもしれない。

だが間違いなく、一歩前に進んだ。

少なくとも、俺はそう確信していた。

---

こうして、俺たちは冒険者となった。