LNCrawler

第十二話 どきどきコンクール −2042年度京都府吹奏楽コンクール−

響け!ユーフォニアム ー 未来楽章 ー — www.pixiv.net · All chapters

第十二話 どきどきコンクール −2042年度京都府吹奏楽コンクール−

「時間が来たのに、まだ表示されんの?」

「うーん、みんな一斉にアクセスしてるんだよ。こうなると、待つしかないな〜」

「それにしても、遅いわ」

隣の椅子に座っている未来が急かすように言ってるけど、こればかりは向こう側の話だろうから私達はどうにもしようがない。

8月8日金曜日17時過ぎの北宇治高校音楽室には、村上部長、小早川副部長と顧問の丸尾先生以外、副顧問の浅田先生含めた吹奏楽部部員全員が集まっており、皆それぞれのスマホの画面を凝視している。

先週から2042年度京都府吹奏楽コンクール……関西吹奏楽コンクール京都府予選が京都市左京区の京都コンサートホールで行われていて、今日がその最終日だった。北宇治吹部は昨日の"高校の部A"の1日目において、出演順3番目で課題曲と自由曲の2曲を、思いの丈をぎゅうぎゅうに詰め込んだ12分間を演奏してきた。

審査の結果、無事金賞の評価をもらえたのだが、次の関西大会に進める代表校の発表は、"高校の部A"2日目の後に行われる"大学の部A"が終わった17時以降に、京都府吹奏楽連盟のホームページ上と会場とで掲示される予定となっている。吹連のホームページ上の発表を待てばいいのだけど、やはり会場で発表される方が早いので、部長、副部長と顧問の先生の3人だけが、お昼過ぎに会場へ足を運んで行ったという状況だ。他の部員はこうして音楽室に集まって、わいわい言いながら結果発表を待っている。

しかし、昨日の朝は本当に慌しかった。4時起きで6時半までに学校へ。それも結構まとまった雨の中だったから、六地蔵の駅から学校までがもう大変だった。

学校へ着くとすぐ、トラックに楽器を詰め込み、会場まではバス移動。会場に着くと間髪入れずに、到着済みのトラックから機材を下ろし楽器置き場へ移動させ、そこでしばらく待機。本番45分前にチューニング室に行き、30分の間にチューニングと課題曲、自由曲の最初の入りを何回か練習して、やっとステージへ行くというスケジュールだった。

そこまでは、良かったんだ……。

私、中学の時は3年間コンクールに出ることができたので、本番の雰囲気は分かっているつもりだった。だから、昨日の本番前までは緊張とか変な汗をかくとか、そういうことはほとんどなく、いつもの演奏会のような感覚を持ったまま、チューニング室での最後の練習をこなすことができていたのに……高校のコンクールは、やはり雰囲気が段違いだったことを思い知らされてしまった。

それに、瑛斗が通う北中は、金賞だけど代表にはなれなかった。リビングでそう報告し、静かに悔しがっていた瑛斗の背中を見たのが一昨日の夜のことだった。それが、私の心に残っていたせいかもしれない。

8月7日木曜日午前9時45分頃。チューニング室では、漆黒のスタンドカラーのスーツに身を包んだ丸尾先生が、合奏形態で椅子に着席している部員たちの前に立ち、本番前の最後の確認を行なっている。

「ではもう一度、自由曲の頭から32小節目までいきます」

丸尾先生がタクトを構えると同時に、みんな楽器を構える。そして、タクトが振り下ろされると同時に、トランペットのファンファーレが部屋中を駆け巡る。今この部屋にはパーカッションは置いていないのでその分迫力には欠けるが、トランペットの華やかさを、クラやフルートなど木管系が中間を、ユーフォやチューバ等低音組が下支えを十分にできていることは、演奏している自分たちがよくわかっている。

「はい、そこまで。うん、いいでしょう」

タクトを下ろした丸尾先生は、満足そうな表情で頭を小さく縦に振る。

「お疲れ様でした。課題曲も自由曲も、練習通りできています。……もうすぐ本番です。何も気を張ることはありません。いつもの練習をいつもの通り再現できれば、それで十分です。結果は自ずとついてくるでしょう」

「「はいっ!」」

「では、村上さん。何かありますか?」

「はい」

丸尾先生の急な指名であっても、村上部長は物怖じすることなく、クラリネットを手にしたまま、席を立って部員たちの前に立つ。

「いよいよ、本番です。昨年、後一歩というところで悔しい思いをし、一からやり直しをしました。練習も基礎練に時間を費やし、一人一人の底上げを図りました。皆んなよく頑張ったと私は思っていますし、みんなも自信を持っていいと思います。後数分で、最終目標へ向けての最初のステップが始まりますが、今まで練習してきたことを、ここで全部出し切りましょう!そして、みんなで音楽を楽しみましょう!」

「「はいっ!」」

村上部長が右手をぐっと握って構えるのを見て、部員全員も右手を構える。

「それでは、ご唱和ください!北宇治ファイトぉーっ!」

「「おーーっ!!」」

皆の心が一つになった時、チューニング室の扉の傍にいたスタッフの女性が、扉を開ける。

「北宇治高校の皆さん、お時間です。ステージ裏に移動してください」

その事務的な声音を受け、部員全員が順番に扉から外に出て、舞台裏へと歩いていく。

「いよいよやな」と私の左側にいた未来が腕を回し、私の右肩をポンポンと軽く叩き、耳元で囁いてくる。

「うん、いよいよだね」

私も囁くように返事する。

「……瑠美子、大丈夫?なんか顔が強張ってない?」

「え……いやいや、なんともないよ」

「そう?なら、いいけど」

「大丈夫、大丈夫」

未来が私の前を歩いて行ったその瞬間、それまで気にしてなかったのに、急に持っているユーフォが重く感じだし、胸の鼓動が強くなりだした。

(あれ?どうしたんだ?……いけない、深呼吸しないと)

到着したほぼ真っ暗な舞台裏で、一つ前の高校の演奏を聴きながら深呼吸をしても、逆に会場全体を包んでいる大きな気が私の中に吸い込まれるようで、落ち着くどころか胸の鼓動がますます大きくなってくるのを感じる。

(まさか……私……緊張してるの……?)

自分を落ち着かそうと、首を左右に振り一旦頭の中を空っぽにしてから、自分のパートのメロディーを思い出そうとするのだが、運悪く前の高校の演奏が頭に残ってしまい、どうにも出だしの音が思い出せない。

(え……なんの音から始まるんだっけ……え?えー……何も出てこない……課題曲、どんなテンポだったっけ……)

ユーフォを強く握りしめていることがわかった。手に汗をかいているのもわかった。指先が震えているような感じもしてきた。頭の中は前の高校が演奏したフレーズだけがひたすらリフレインしている。

(どうしよう……本当に思い出せない。私、何からすればいいんだっけ?)

「塚本さん!」

背中をパシンと叩かれてハッとし、耳元で名前を呼ばれた方を振り向くと、銀色のユーフォを持った小早川副部長が、ニコニコしながら私のすぐ傍に立っていた。

「どうしたの?泣きそうな顔して震えてて……ひょっとして緊張してる?」

「え……あ……私……」

小早川さんの声に対して、返事したいのだけど、どうにも声が出ない。

「そっかそっか、雰囲気に呑まれちゃったか。大丈夫、普段通りに吹けば、十分以上に吹けているから」

「でも……出だし、どんな音だったんでしょう……」

「そっか、課題曲からだね。……それはね、ターラララーララーって。ほら、口ずさんで」

私の背中をポンポン軽く叩いて、リズムをとってくれる。

「ターラララーララーですか」

「そうそう。で、ラーラーー、ラーラーでしょ?」

「はい、ラーラーー、ラーラー、です」

「次は?」

「タタターララー、ラララータター」

あ、フレーズが出てきた。ふふんふふん……出てきた。曲が出てきた!

「ほら、思い出した?」

「はい、出てきました!良かった……ありがとうございます」

「うん、良かった良かった」

小早川さんは私の肩を引き寄せてくれる。

「緊張するだろうけど、大丈夫だよ。ステージには、私たちみんないるから。全員で音を楽しむんだから。心配ないからね」

「そうやで、そん時はみんなに任せな。決して一人にはさせんよ」

隣にいたユーフォの藤村先輩が、私に向かってサムズアップしてくれる

「はい……ありがとうございます」

先輩達の優しい言葉に泣きそうになるのを堪え、会釈で感謝を伝える。

すると、突然舞台の方から大きな拍手が聞こえてきた。前の高校の演奏が終わったようだ。

「さぁー、今度は私たちがあの拍手をもらう番だよ。楽しみだね」

「はいっ」

「行くよ!みんな!」

村上部長の力強いけど囁く声が聞こえ、部員一斉に舞台の方へ歩き出す。……大丈夫、いつも通りに吹くのみだ……自分に言い聞かせながら、小早川副部長や藤村先輩の後について行く。

『続いての演奏は、プログラム3番、京都府立北宇治高等学校です。演奏曲は、課題曲Ⅳ、自由曲、堀川奈美恵作曲”三日月の舞”。指揮は丸尾祐一郎です』

暗転された舞台上で、指定された椅子に腰掛ける。微かに椅子が軋む音、椅子を引く音、靴が擦れる音が聞こえる。当然声を発する人はいない。

私の右側に藤村先輩、その右隣が小早川副部長とユーフォ隊が位置についた。そして、ほぼ同時に部員全員の着席が完了したようだ。それと同時に舞台を照らすライトが一斉に灯される。

丸尾先生が指揮台横で一礼をすると、客席から大きな拍手が湧き起こる。そして、私たちの方へ振り返り、指揮台に上がって私たちを見渡す。

会場は一瞬にして静寂となった時、丸尾先生は微笑んでから、タクトを持ち両腕を上げると、それに呼応し皆が楽器を構える。

一呼吸後、タクトが振り下ろされ、渾身の12分間がスタートした。

翌8月8日金曜日。昨日の慌ただしさが夢だったかと思えるほど、いつも通りに起床して登校し、午前中は数学と英語の補習を受けた。補習と言ってもほとんど自習のようなものだったけど、この補習も今日で終わりとなる。明日からはますます吹部の練習漬けの日々となるが、お盆の3日間は完全にお休み。その次は2泊3日の合宿が行われ、その場で再度オーディションが行われる。まぁ、今日の関西大会に行けるか否かの結果によっては、予定変更される可能性もあるのだけれども。

補習が終わってお昼休み。午後の吹部の練習前に未来とお昼を食べようと、保冷ランチバッグを取り出す。今日のお弁当は、自分で作ったおにぎり2個とウインナー2本と卵焼き2つ、それにしば漬けも少々。野菜系がないのは、今後の課題。

お弁当は平時は母が用意してくれる。ただ今日は、母が座奏コーチを務める立華高校がコンクールに出場する日のため、いつもより早く出勤するといったイレギュラーな時は、自分で用意してたりする。手早さ優先のため、おにぎりだけなんだけどね。

未来も隣の席でお昼の準備をしていると、私たちの前に誰かが近寄ってきた。

「アタシも一緒に構わん?」

「あ、みみちゃん。もちろんどうぞ」

「前空いとるけん、座り」

声をかけてきたのは、ボブカットで、私達よりかは少し華奢な椹木美波さん。クラスメイトであり、同じ吹部でパートはパーカス。中でも打楽器系メインで、シンバルを得意としている。この前のオーディションの頃から、よく話をするようになった。

その、みみちゃんが私達の前の椅子に座り、机の上に大きめのランチバッグをごとんと置いた。中から取り出したのは、明らかに体育会系男子サイズのお弁当箱。しかも2段!

「うわ〜……」

「何、見てんの?」

「いやぁ、そんな大きなお弁当箱、ホームセンターでしか見ないよなぁ、と思って」

いや、ほんと。瑛斗が使っているお弁当箱よりも大きいし。

「だって、お腹空くやん。でも、中はそんなに入れてないんやって。箱が大きいだけなんよ」

そう言いながら、蓋を開けられたそのお弁当箱の下段は、全て白ご飯!上段はどこかのお弁当屋さんの幕の内弁当かと思うほど、おかずがびっしり。それに黄色いヒヨコのイラストでお馴染みの、のり玉ふりかけの袋が付いている。

私はと言えば、自分で握ってきたおにぎり2個。未来はハムや卵焼きやレタスを挟んだサンドウィッチ2つ。彼女のお弁当は、私と未来のお弁当を足し合わせても、まだ4分の1にも満たないぐらいだ。……その細身の体のどこに、そんな量のお弁当を受け入れる場所があるんだろう?

「どうぞどうぞ、好きなのあったら何でも摘んでよ。でも、二人ともそれぐらいで足りるん?」

「ま、まぁ……十分かな」

「うちは控えめにはしてるけど、このぐらいやなぁ」

「そお?しっかり食べて体力つけとかんと、合宿の時、恐怖の”10回通し”についていけんようになるで」

「何なん?それ」

「課題曲と自由曲を通して演るんやって、10回連続ノンストップ。課題曲と自由曲で12分だから、2時間やね」

「ええ〜、休みなしで?」

「そうやって。パーカスの先輩が言うてた」

聞いたことがある。お母さんとお父さんが「あれはきつかった」と話していたっけ。

「”三日月の舞”なんか、トランペットほぼ出ずっぱりやん。うわ〜、聞くんやなかった」

「あはは、しょうがないじゃん。頑張れ、未来」

「人の気も知らんで〜」

いじける未来を見て、私とみみちゃんはあははと笑ってしまった。

「ま、それも関西に行けるようになっての話なんやけどね」

「発表までまだ時間があるよなぁ。気になって、何にも手につかん。さっきの授業も、あまり聞いてなかったような」

「私もおんなじ」

そう話しながらも、みみちゃんのお弁当箱からは瞬く間にあったはずの物が消え、その分空きスペースが増えていく。消えていく先はもちろん彼女の中。私は呆気に取られながら、自分のおにぎりを一口頬張る。

「なんか、演奏と発表が別の日ってやっぱ嫌やわ。精神衛生上、良くない」

「こればっかりは、どうしようもないね」

「いくら金賞をくれても、……いや、それ自体も大変だったんやけど、うちらの本懐は次に行くための”代表”やもんね」

「うん。そのために頑張ってるんやけん」

色々話しているうち、皆一通り食べ終えたようなので、私はランチバッグから小さいタッパを取り出す。タッパをパカっと開けて、二人の前にことりと置いた。

「いただきもので申し訳ないんだけど、よかったらどうぞ」

「ブドウ?」

「うん、ピオーネなんだけど。昨日、祖母がお裾分けって言って持って来てくれたの。少しだけしか持って来なかったけど」

「ありがとう!アタシ、ブドウ大好き」

「これ、結構粒が大きいね。親指の倍ぐらいある」

「でしょ?一房がずいぶん大きかったよ」

皆、深い紫色した粒を手にして口に運ぶ。ぶるんとした果皮を歯で割ると、みずみずしい果汁が弾ける。ブドウの甘さの中に、ちょうど良い酸味も含まれてあって……昨日も食べたけど、これは美味しい。

「これ、ホント美味しいね!」

「もう一粒ずつだけど、どうぞ」

「ありがとう、遠慮なくもらっちゃう」

もう一粒口にする。弾力のある果実を歯で割っていく感触が絶妙。これは口福だな。

「瑠美子、ありがとう。美味しかったわ」

「どういたしまして……って、貰い物だけどね」

「なんか、代表かどうかの発表がまだやっていうのに、ちょっと心がざわついてたけど、少し落ち着いた感じがする」

「食べ物の力は大きいね」

「確かに」

あははは、と笑い合っていると、お昼休みが終わりに近づいていたことに気づいた私達は、”ご馳走様”と一緒に合掌し、机上を片づけ音楽室へと向かう準備に移っていった。

そして、その日の夕刻、8月8日金曜日17時過ぎ。ここ北宇治高校音楽室には、村上部長、小早川副部長と顧問の丸尾先生以外、副顧問の浅田先生含めた吹奏楽部部員全員が集まっている。

みんなそれぞれのスマホの画面を更新しても、変化がないことに飽き飽きしていた頃、突然誰かのスマホの呼び出し音が鳴りだした。

「はい、浅田です。はい……はい……」

浅田先生が音楽室の入り口付近でスマホを耳にしているが、まだ呼び出し音が続いている。

「あ、はい!もしもし!」

呼び出し音が鳴り続けていたのは、DMの新田さんのスマホだった。スピーカーモードにして、話し始めている。

『あ、翔子?聞こえる?コンクールの結果見た?』

電話の相手は、コンサートホールに行っている村上部長だ。

「まーだ。サイトが更新されなくて見れてないんよ」

『やっぱり。んじゃ、結果言うよ。うちら、次に行くよ!京都代表だよ!』

「え?ホント?」

『こんな大事なこと、嘘言うはずないやんか』

「よーし。みんなー!代表になったよ!関西大会に行くよ!」

「「「やったーー!」」」

新田さんからの”代表になったよ”の声を聞いて、みんな一斉に歓喜の声を上げる。拍手したり、ハグしあったりして、みんなで喜びを分かち合っている。

『もしもし、翔子?』

「はい、いるよ」

『結果発表も見たんで、こっちはもう帰るから。そっちも、今日は解散するように言っといて。で、明日からはまた頑張るぞって』

「了解。じゃ、また明日。気をつけて帰ってや」

『わかった。じゃ、また』

「うん、お疲れ様」

スマホの画面をタップした新田さんは、ピアノの前に立ってぱんぱんと手を叩き、湧き上がっている歓声を一旦落ち着かそうとする。

「はーい、注目ー。えー、みなさん、お聞きの通りです。我が北宇治は関西大会に駒を進めることになり、この瞬間に、私たちの当面の目標が”府大会突破”から”全国へ行くぞ”に切り替わりました。明日からは、もっと密度の濃い練習メニューをこなし、来たる8月31日の関西大会に備えます。とりあえず、今晩は十分喜びを噛み締めてもらって、明日からは、気持ちを新たにして再スタートします。よろしいですか?」

「「はいっ!」」

「浅田先生から、お願いします」

浅田先生は眼鏡をクイっと軽く持ち上げて、手を後ろに組み、静かに話し始めた。

「では、私から一言。まずは、京都府大会突破、おめでとうございます。みなさんは府の代表になったのですから、それに驕ることなく、また他校の吹奏楽部員の思いも背負うことになりましたので、その人達のことも慮りつつ、関西大会突破を目指しましょう」

「「はいっ!」」

「ありがとうございます。では、今日はこれで解散します。お疲れ様でした!」

「「お疲れ様でした!」」

ざわざわとする中、未来が満面の笑みで話しかけてくる。

「やった、まずは府大会突破や」

「うん。よかった。これで、明日からやらなきゃいけないことがはっきりしたね」

「うん」

手元のスマホをちらっと見ると、いつのまにか吹連のホームページが更新されていた。”京都府立北宇治高等学校 金・代表”とある。”代表”、この字を見て自然と口角が上がってしまう。

あ、そうだ!お母さんは?立華はどうなってる?大丈夫とは思うけど…… 。

「ん?瑠美子、帰らんの?」

「帰るけど……ちょっと……待って」

スマホをフリックして、立華の名前を探す……確か、演奏順は最後から2番目だったから……あった。”立華高等学校 金・ 代表”とある!

「よかった……代表だ……」

「あ、ひょっとして立華も代表?」

「うん」

「そうかぁー、やっぱり立華が来たかぁ……もう一校の代表は?」

「えーっと……洛秋、だって……」

「え?龍聖は?」

「龍聖、龍聖は……金賞にはなってる」

「ダメ金か……今回、洛秋が上回ったんか」

立華も洛秋も龍聖も今日が出番だったから、どんな演奏をしたのか私達は分かってはいないのだけど、僅差も僅差だったのだろうと思う。もし、今の北宇治がこれらの学校と直接比較されたら、どうなっていたのだろうか……いや、考えるのは止そう。私たちは、私たちができることを全力でするしかないのだから。

「明日から、ますます頑張らなきゃね」

「うん」

音楽室を出る私と未来。まだ中には、浅田先生と新田さん、それと数人の3年生が残っている。最後に鍵を閉めて出るつもりなんだろう。

廊下の窓越しに見える外では、もうすぐ陽が沈み、次第に暮れて行く。裏山の蝉もツクツクボウシの鳴き声の方が増えてきた。

季節は容赦なく進んでいく。

私も負けずに進んでいかないと。