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第17話 人を探す

心が読める会社員は、詐欺師の情報を売って子どもたちの居場所を守る — solispia.com · All chapters

第17話 人を探す

人を探すのは、思っていたより難しかった。

直人は休日の午後、図書館の角落でノートを開いていた。周囲には、受験生らしき学生や、仕事の資料を広げた会社員が座っている。静かな空間なのに、直人の頭の中はざわついていた。誰を探すのか。何を基準に探すのか。能力で拾った断片を、どう繋げるのか。答えは、まだぼんやりしている。図書館の窓から見える空は、薄い灰色だった。雲が低く、雨が降りそうな気配がある。直人はノートのページをめくりながら、これまでの断片を思い返していた。偽名の傾向。受け子の連絡順。狙われやすい条件。使い回しの口座名義。それらを並べても、具体的な「誰か」にはたどり着かない。ページの端に、まだインクの乾いていない字が残っている。能力の条件。拾った断片の傾向。それらを、何度も読み返した。ノートの表面が、指先にわずかにざらついている。その感触を、意識の端で捉えた。周囲のページをめくる音、ペンを走らせる音、誰かが小さく咳をする音。それらが、遠くから聞こえてくる。直人は、その音の中で、自分の中のざらつきが、わずかに形を変えるのを感じた。窓の外の空が、さらに灰色を濃くしている。その色を、意識の端で捉えた。図書館の空気が、わずかに動いている。その動きを、意識の端で捉えた。

午後三時を過ぎた頃、直人は席を立った。図書館を出て、駅前の商店街をゆっくり歩いた。人の流れは、平日より少し緩い。買い物袋を提げた主婦。部活帰りの学生。犬の散歩をする老人。誰もが、それぞれの用事の中にいる。直人は、その流れの中で、誰かの断片が浮かぶのを待った。だが、意図的に探そうとすると、かえって何も浮かばない。能力は、欲しいときに動くものではなかった。商店街の店先の明かりが、すでに点き始めている。ガラスに映る自分の姿が、薄く見える。疲れた顔。目の下の影。その姿を見て、直人は小さく息を吐いた。人を探す、という言葉が、今の自分には重すぎる。探しているのは、助けるべき人なのか。それとも、止めるべき人なのか。その境界すら、まだ曖昧だった。通りの車の音が、遠くから聞こえてくる。風が、顔に当たる。春の風なのに、少し冷たい。直人は、その冷たさを、胸の奥に沈めて歩いた。商店街の角で、直人は足を止めた。前の店のガラスに、自分の姿が映っている。スーツではない私服の自分。疲れた顔。目の下の影。その姿を見て、直人は小さく息を吐いた。ガラスの向こうに、店内の人々の影が動いている。誰もが、それぞれの用事の中にいる。直人は、その影を見ながら、自分の中の迷いが、わずかに形を変えるのを感じた。風が、ガラスの表面をかすめていく。その音を、意識の端で捉えた。通りの空気が、わずかに動いている。その動きを、意識の端で捉えた。

夕方になっても、具体的な手がかりは得られなかった。直人は駅のホームで電車を待ちながら、空を見上げた。雲がさらに低くなり、雨がぽつぽつと降り始めた。ホームの屋根から落ちる水滴が、アスファルトに小さな染みを作っていく。その染みを眺めながら、直人は思った。人を探すのは、地図を広げることではない。まず、自分の中の迷いを、少しだけ整理することから始まるのかもしれない。ホームのベンチに座っている人々の姿が、雨の中でぼんやりと見える。誰もが、それぞれの用事の中にいる。直人は、その姿を見ながら、自分の中の迷いが、わずかに形を変えるのを感じた。雨の音が、ホームの屋根を叩いている。その音が、妙に耳に残った。電車が近づいてくる音が、遠くから聞こえてくる。その音を、意識の端で捉えた。ホームの照明が、雨の中でぼんやりと光っている。その光を、意識の端で捉えた。ホームの空気が、わずかに動いている。その動きを、意識の端で捉えた。

帰宅後、直人はノートを開いた。ページの端に、まだインクの乾いていない字が残っている。

探す対象は、まだ決まらない。

ただ、見えてしまった揺れから、目をそらさないことだけは、決めた。

書き終えたあと、直人は天井を見上げた。蛍光灯の白い光が、冷たく感じられた。明日もまた、街に出る。人の中へ入る。近づけば、何かが浮かぶかもしれない。浮かばないかもしれない。それでも、見えてしまったものからは、もう目をそらせない。その性質を、今夜は少しだけ、自分のものとして受け入れていた。窓の外で、雨の音が続いている。その音が、部屋の静けさの中で、妙に身近に感じられた。直人は、その音を聞きながら、ノートを閉じた。カーテンの隙間から差し込む街灯の光が、床の上に細長い影を落としている。その影を、ぼんやりと見つめた。影の中に、自分の足の形が薄く映っている。その形を見ながら、直人は小さく息を吐いた。部屋の暗さの中で、自分の心臓の音が、少し大きく聞こえた。その音を、意識の端で捉えながら、直人はベッドへ向かった。雨の音が、窓の外で続いている。その音を、意識の端で捉えながら、直人は目を閉じた。明日もまた、街に出る。人の中へ入る。近づけば、何かが浮かぶかもしれない。浮かばないかもしれない。それでも、見えてしまったものからは、もう目をそらせない。その性質を、今夜は少しだけ、自分のものとして受け入れていた。部屋の空気が、わずかに動いている。その動きを、意識の端で捉えながら、直人は目を閉じた。

直人はベッドに横になったまま、雨の音を聞いていた。雨の音が、窓の外で続いている。その音が、部屋の静けさの中で、妙に身近に感じられた。人を探すのは、地図を広げることではない。まず、自分の中の迷いを、少しだけ整理することから始まるのかもしれない。探しているのは、助けるべき人なのか。それとも、止めるべき人なのか。その境界すら、まだ曖昧だった。部屋の暗さの中で、自分の心臓の音が、少し大きく聞こえた。その音を、意識の端で捉えながら、直人は目を閉じた。明日もまた、街に出る。人の中へ入る。近づけば、何かが浮かぶかもしれない。浮かばないかもしれない。それでも、見えてしまったものからは、もう目をそらせない。その性質を、今夜は少しだけ、自分のものとして受け入れていた。カーテンの隙間から差し込む街灯の光が、床の上に細長い影を落としている。その影を、ぼんやりと見つめた。影の中に、自分の足の形が薄く映っている。その形を見ながら、直人は小さく息を吐いた。