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第十話 探偵は駐車場にいる

新西京アンダーズ ―斎藤誠二の事件簿― 亜人と竜が住み弾丸と魔術が交差する都市で、正義を名乗らない探偵はサブカル狂いの黒猫と毒舌Aiと今日も理不尽を撃ち抜く。でもエルフの美女は勘弁な! — novel land.com · All chapters

第十話 探偵は駐車場にいる

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それに――」 足元でリーナスが何かほざきだしたのを俺は即座に遮る。「いえ! ストロベリーシェイクでお願いします! 絶対に! これは譲れません!」 堂々たる漢らしい態度に納得したのだろう。「わかりました! 押忍!」 店員さんも元気よく同意してくれた。 席に向かおうと店内を見回す。いや、待て。椅子はどこだ? 俺の視界には通常の席と椅子など存在していない。座卓と座布団サイズの畳が床の上に置いてあるだけだ。「お客様! 正座でお願いします! 押忍!」 どちらにせよ、胡坐をかくだけのスペースなど無い。なぜだ……ファーストフード店で正座だと? 俺は今、いったい何を経験しているというのか? しかたなく正座をする。隣にリーナスが座り、丸くなった。 しばらく待つと、空手着を着たオークの女の子が俺に元気よく挨拶をしてくる。 俺はぬいぐるみ(チャーリー)を抱えたまま一瞬思考停止。 いや……待て……ぬいぐるみを持ち込まなければOKなのか!? この店の基準がわからん!! 俺は腹をくくった。 チャーリーを預ける前に声をかける。「大丈夫だチャーリー。飯を食べたらちゃんと一緒に行くからな」 チャーリーが微かに頷いた――気がした。……。いやいや、これじゃあぬいぐるみに話しかける不審者では? ハードボイルド私立探偵の俺もやきが回ったもんだ。俺のこの姿を観たら世界中の俺のファンが失望するかもしれん。逆に、新しい魅力的な面としてキャーキャー言われるかもしれん。 カウンターでチャーリーを預け、そのまま注文を行う。押忍チーズバーガースペシャル(コラボセットだ)と押忍ポテトのL、押忍シェイクのストロベリーとバニラ、そして平皿を注文。 ん? 店員さんの顔が渋いな。どうしたんだ?「あのー……何か問題でも?」「ストロベリー……ですか?」「あっ、はい。ストロベリーシェイク、ないのでしょうか?」 俺はホロで表示されているメニューを再度見る。そこにはストロベリーシェイクの記載があった。あるよな。何が問題なのか?「いえ……それは一応掲載しているだけというかなんといいますか――当店のお勧めは圧倒的濃厚抹茶シェイクでございまして――」 抹茶だと? 俺は顔をしかめた。男子たるもの、抹茶は抹茶であって、フレーバーに使うものではない。そもそも論からして押忍バーガーも入れないはずだろうが!「いらっしゃいませー! 押忍ッ! あ、お客様。当店、ぬいぐるみといった『なよなよしたもの』の持ち込みは禁止となっております。預からさせて頂いてもよろしいでしょうか?」 入れた。入れてしまった。 空手着を着た、牙がチャーミングなオークの女の子が俺に元気よく挨拶をしてくる。 俺はぬいぐるみ(チャーリー)を抱えたまま一瞬思考停止。 いや……待て……ぬいぐるみを持ち込まなければOKなのか!? この店の基準がわからん!! 俺は腹をくくった。 チャーリーを預ける前に声をかける。「大丈夫だチャーリー。飯を食べたらちゃんと一緒に行くからな」 チャーリーが微かに頷いた――気がした。……。いやいや、これじゃあぬいぐるみに話しかける不審者では? ハードボイルド私立探偵の俺もやきが回ったもんだ。俺のこの姿を観たら世界中の俺のファンが失望するかもしれん。逆に、新しい魅力的な面としてキャーキャー言われるかもしれん。 カウンターでチャーリーを預け、そのまま注文を行う。押忍チーズバーガースペシャル(コラボセットだ)と押忍ポテトのL、押忍シェイクのストロベリーとバニラ、そして平皿を注文。 ん? 店員さんの顔が渋いな。どうしたんだ?「あのー……何か問題でも?」「ストロベリー……ですか?」「あっ、はい。ストロベリーシェイク、ないのでしょうか?」 俺はホロで表示されているメニューを再度見る。そこにはストロベリーシェイクの記載があった。あるよな。何が問題なのか?「いえ……それは一応掲載しているだけというかなんといいますか――当店のお勧めは圧倒的濃厚抹茶シェイクでございまして――」 抹茶だと? 俺は顔をしかめた。男子たるもの、抹茶は抹茶であって、フレーバーに使うものではない。そもそも甘味と別個に抹茶は楽しむものだ。混ぜるな危険なんだよ。ったく、そんなこともわかってないのか?「よし、それに――」 足元でリーナスが何かほざきだしたのを俺は即座に遮る。「いえ! ストロベリーシェイクでお願いします! 絶対に! これは譲れません!」 堂々たる漢らしい態度に納得したのだろう。「わかりました! 押忍!」 店員さんも元気よく同意してくれた。 席に向かおうと店内を見回す。いや、待て。椅子はどこだ? 俺の視界には通常の席と椅子など存在していない。座卓と座布団サイズの畳が床の上に置いてあるだけだ。「お客様! 正座でお願いします! 押忍!」 どちらにせよ、胡坐をかくだけのスペースなど無い。なぜだ……ファーストフード店で正座だと? 俺は今、いったい何を経験しているというのか? しかたなく正座をする。隣にリーナスが座り、丸くなった。 しばらく待つと、空手着を着たオークの女の子が俺に元気よく挨拶をしてくる。 俺はぬいぐるみ(チャーリー)を抱えたまま一瞬思考停止。 いや……待て……ぬいぐるみを持ち込まなければOKなのか!? この店の基準がわからん!! 俺は腹をくくった。 チャーリーを預ける前に声をかける。「大丈夫だチャーリー。飯を食べたらちゃんと一緒に行くからな」 チャーリーが微かに頷いた――気がした。……。いやいや、これじゃあぬいぐるみに話しかける不審者では? ハードボイルド私立探偵の俺もやきが回ったもんだ。俺のこの姿を観たら世界中の俺のファンが失望するかもしれん。逆に、新しい魅力的な面としてキャーキャー言われるかもしれん。 カウンターでチャーリーを預け、そのまま注文を行う。押忍チーズバーガースペシャル(コラボセットだ)と押忍ポテトのL、押忍シェイクのストロベリーとバニラ、そして平皿を注文。 ん? 店員さんの顔が渋いな。どうしたんだ?「あのー……何か問題でも?」「ストロベリー……ですか?」「あっ、はい。ストロベリーシェイク、ないのでしょうか?」 俺はホロで表示されているメニューを再度見る。そこにはストロベリーシェイクの記載があった。あるよな。何が問題なのか?「いえ……それは一応掲載しているだけというかなんといいますか――当店のお勧めは圧倒的濃厚抹茶シェイクでございまして――」 抹茶だと? 俺は顔をしかめた。男子たるもの、抹茶は抹茶であって、フレーバーに使うものではない。そもそも甘味と別個に抹茶は楽しむものだ。混ぜるな危険なんだよ。ったく、そんなこともわかってないのか?「よし、それに――」 足元でリーナスが何かほざきだしたのを俺は即座に遮る。「いえ! ストロベリーシェイクでお願いします! 絶対に! これは譲れません!」 堂々たる漢らしい態度に納得したのだろう。「わかりました! 押忍!」 店員さんも元気よく同意してくれた。 批判を受けるだろうが……アルゴス・セキュリティとしては最小限の被害で物事を収められたと言えよう。 そう考えながら押忍ポテトを押忍シェイクに突き刺す。そしてポテトでシェイクをすくい、口に放り込む。塩気と甘味のコントラストが口中に広がった。うむ、美味しいな。何かポテトがやたら固いが。どうなっているこの店。さらに、バンズに挟まっているのがハンバーグではなく、ただの分厚いステーキなのはどういう理屈だ。 ハンバーガ―とは? 気を取り直してハンバーガーに齧りつく……なんでハンバーガーに挟まっているのはステーキじゃなくてハンバーグなのか俺はよーく理解した。か・み・き・れ・な・い! 必死にステーキを嚙み切る。顎の筋トレに良さそうでとてもよろしい。味は文句なしに美味しい。バターベースのシンプルなソースにマスタードシードのぷちぷちした食感、ローズマリーの香り、程よい塩気にチーズの旨味、トマトの酸味とレタスのしゃきしゃき感が……おっと、リーナスにもポテトを食わせてやろう。平皿にいれたシェイクに、ポテトを突き刺していく。もはや立ち並ぶ墓標のようだ。ストロベリーシェイクを飲んで口の中をリセット。再びハンバーガーに向かう。「ほら、正解であっただろう? 美味である♪」 リーナスが尻尾を振って何か言っている……ま、嬉しそうだから良いか…… そんなこんなで張り込みを続けていると、ターゲットが家に帰ってくるのが見えた。立ち上がり、店の出口へと向かう。 店員さんの胸のネームプレートを見て、頭を下げた。「ごちそうさまでした。美味しかったです。ありがとう大山さん」 店員さんからチャーリーを受け取る。「チェストォ! またのご来店をお待ちしております! 押忍!!」 チェストは薩摩示現流であって正拳突きとは関係ないよな……? 背後に響く独自過ぎる接客用語に見送られ、店を後にした。 そのままターゲットの家の駐車場前に移動。そこに停められている高級スポーツカーを物陰から眺めつつ考える。そうだな……二時間。二時間だ。二時間待って何も起きなければ、俺は帰ろう。それは祈りにも近い想いだった。 (???) 家に帰宅した俺は、荷造りを行っていた。本当に必要なものは少ない。すぐに終わる。「糞が! 俺は勝ち組だ! 勝ち組なんだよ!」 そう自分に言い聞かせる。違和感はあった。だが、俺は勝ち組だ。絶対に負け組――欲しい物も買えない、金持ちが自慢げに見せびらかす高級品を指を咥えて見ているだけの毎日――には戻らない。 まだ間に合う。今だ、今さえ切り抜ければなんとでもなる……イギリスのアヴァロンに行こう。あそこはエルフの美人や可愛いフェアリーが多いと聞く。しばらく身を隠すのに最適だ。 新西京八区の港湾区画まで車を飛ばしていって、そこから車を乗り捨てて船をチャーター。大陸に渡ってしまえば何とかなる。金だ、金さえあればたいていの無理は効く。金こそがこの狂った世界の唯一の真理なんだ。そう、何だって買えるんだ。 俺は玄関から出て、駐車場に止めてある高級車に向かった。目の前に、薄汚れたぬいぐるみを抱えた……ぬいぐるみだと? なんだこの不審者は。赤いコートの男が立ちはだかる。「おいおい、夜勤明けに大荷物を抱えてどこに行くつもりなんだ、サル? 少し話そうぜ」「誠二……!」 つい数時間前に……久々に連絡を取ってきた男が目の前に立っていた。椅子など存在していない。座卓と座布団サイズの畳が床の上に置いてあるだけだ。「お客様! 正座でお願いします! 押忍!」 どちらにせよ、胡坐をかくだけのスペースなど無い。なぜだ……ファーストフード店で正座だと? 俺は今、いったい何を経験しているというのか? しかたなく正座をする。隣にリーナスが座り、丸くなった。 しばらく待つと、空手着を着たオークの女の子が俺に元気よく挨拶をしてくる。 俺はぬいぐるみ(チャーリー)を抱えたまま一瞬思考停止。 いや……待て……ぬいぐるみを持ち込まなければOKなのか!? この店の基準がわからん!! 俺は腹をくくった。 チャーリーを預ける前に声をかける。「大丈夫だチャーリー。飯を食べたらちゃんと一緒に行くからな」 チャーリーが微かに頷いた――気がした。……。いやいや、これじゃあぬいぐるみに話しかける不審者では? ハードボイルド私立探偵の俺もやきが回ったもんだ。俺のこの姿を観たら世界中の俺のファンが失望するかもしれん。逆に、新しい魅力的な面としてキャーキャー言われるかもしれん。 カウンターでチャーリーを預け、そのまま注文を行う。押忍チーズバーガースペシャル(コラボセットだ)と押忍ポテトのL、押忍シェイクのストロベリーとバニラ、そして平皿を注文。 ん? 店員さんの顔が渋いな。どうしたんだ?「あのー……何か問題でも?」「ストロベリー……ですか?」「あっ、はい。ストロベリーシェイク、ないのでしょうか?」 俺はホロで表示されているメニューを再度見る。そこにはストロベリーシェイクの記載があった。あるよな。何が問題なのか?「いえ……それは一応掲載しているだけというかなんといいますか――当店のお勧めは圧倒的濃厚抹茶シェイクでございまして――」 抹茶だと? 俺は顔をしかめた。男子たるもの、抹茶は抹茶であって、フレーバーに使うものではない。そもそも甘味と別個に抹茶は楽しむものだ。混ぜるな危険なんだよ。ったく、そんなこともわかってないのか?「よし、それに――」 足元でリーナスが何かほざきだしたのを俺は即座に遮る。「いえ! ストロベリーシェイクでお願いします! 絶対に! これは譲れません!」 堂々たる漢らしい態度に納得したのだろう。「わかりました! 押忍!」 店員さんも元気よく同意してくれた。 席に向かおうと店内を見回す。いや、待て。椅子はどこだ? 俺の視界には通常の席と椅子など存在していない。座卓と座布団サイズの畳が床の上に置いてあるだけだ。「お客様! 正座でお願いします! 押忍!」 どちらにせよ、胡坐をかくだけのスペースなど無い。なぜだ……ファーストフード店で正座だと? 俺は今、いったい何を経験しているというのか? しかたなく正座をする。隣にリーナスが座り、丸くなった。 しばらく待つと、空手着を着たオークの女の子がやってくる。「押忍! ご注文有難うございました! それでは感謝の正拳付きを――」 トレイを置くと意味の解らないことを彼女は言いだした。「いや、結構です」 俺は丁寧に断る。「押忍! それは残念です!」 元気よく、しかし顔は哀しそうに彼女は答えた。「何故だ! 我はみた――」 リーナスが要らないことを言う。「押忍! それでは――」 女の子の顔がぱっと明るくなる。「結構です」 俺は心を鬼にして、声の温度を落として返事をした。そして彼女を追い返すため、手を振って下がらせる。 とぼとぼと立ち去っていく彼女の後姿を見送った。……何であんなに残念そうなんだ。とりあえずリーナスのために平皿に押忍シェイク(バニラ)を入れてや――固い、なんだこのシェイクは。ふざけんなよ! 最早ソフトクリームですらない、ただの凍った何かだ。なんとか手で温めて溶かしてかきだすと、嬉しそうにリーナスが舐めだした。 現状を把握する必要がある。ニュースを聞こう。ホロリンクで新西京トラストニュースのチャンネルを呼び出す。ホロテレビでのんびり見たいが、この殺風景な店内にそんな洒落たものはない……代わりに壁に空手着、瓦割り用の瓦、ぬんちゃく、トンファーが飾ってある。この店、完全にいかれてやがる……『新西京トラストニュースから緊急速報です!』 俺が立ち上げたホロに、薄いピンクのスーツを着た緑色の瞳の金髪ロングヘア、グラマラスなエルフの美女――ジェーン――が映し出される。『元アルゴス・セキュリティの風紀課に所属していた宍戸元刑事がなんと、退職時に持ち出した麻薬をストリートギャングに横流ししていたという事実が判明いたしました。アルゴス・セキュリティは既に宍戸容疑者の身柄を確保し、余罪を追及中とのことです。宍戸元刑事はストリートギャングと交渉する一週間前にアルゴス・セキュリティを退職していました。アルゴス・セキュリティは ――」 抹茶だと? 俺は顔をしかめた。男子たるもの、抹茶は抹茶であって、フレーバーに使うものではない。そもそも論からして押忍バーガーも入れないはずだろうが!「いらっしゃいませー! 押忍ッ! あ、お客様。当店、ぬいぐるみといった『なよなよしたもの』の持ち込みは禁止となっております。預からさせて頂いてもよろしいでしょうか?」 入れた。入れてしまった。 空手着を着た、牙がチャーミングなオークの女の子が俺に元気よく挨拶をしてくる。 俺はぬいぐるみ(チャーリー)を抱えたまま一瞬思考停止。 いや……待て……ぬいぐるみを持ち込まなければOKなのか!? この店の基準がわからん!! 俺は腹をくくった。 チャーリーを預ける前に声をかける。「大丈夫だチャーリー。飯を食べたらちゃんと一緒に行くからな」 チャーリーが微かに頷いた――気がした。……。いやいや、これじゃあぬいぐるみに話しかける不審者では? ハードボイルド私立探偵の俺もやきが回ったもんだ。俺のこの姿を観たら世界中の俺のファンが失望するかもしれん。逆に、新しい魅力的な面としてキャーキャー言われるかもしれん。 カウンターでチャーリーを預け、そのまま注文を行う。押忍チーズバーガースペシャル(コラボセットだ)と押忍ポテトのL、押忍シェイクのストロベリーとバニラ、そして平皿を注文。 ん? 店員さんの顔が渋いな。どうしたんだ?「あのー……何か問題でも?」「ストロベリー……ですか?」「あっ、はい。ストロベリーシェイク、ないのでしょうか?」 俺はホロで表示されているメニューを再度見る。そこにはストロベリーシェイクの記載があった。あるよな。何が問題なのか?「いえ……それは一応掲載しているだけというかなんといいますか――当店のお勧めは圧倒的濃厚抹茶シェイクでございまして――」 抹茶だと? 俺は顔をしかめた。男子たるもの、抹茶は抹茶であって、フレーバーに使うものではない。そもそも甘味と別個に抹茶は楽しむものだ。混ぜるな危険なんだよ。ったく、そんなこともわかってないのか?「よし、それに――」 足元でリーナスが何かほざきだしたのを俺は即座に遮る。「いえ! ストロベリーシェイクでお願いします! 絶対に! これは譲れません!」 堂々たる漢らしい態度に納得したのだろう。「わかりました! 押忍!」 店員さんも元気よく同意してくれた。 席に向かおうと店内を見回す。いや、待て。椅子はどこだ? 俺の視界には通常の席と椅子など存在していない。座卓と座布団サイズの畳が床の上に置いてあるだけだ。「お客様! 正座でお願いします! 押忍!」 どちらにせよ、胡坐をかくだけのスペースなど無い。なぜだ……ファーストフード店で正座だと? 俺は今、いったい何を経験しているというのか? しかたなく正座をする。隣にリーナスが座り、丸くなった。 しばらく待つと、空手着を着たオークの女の子がやってくる。「押忍! ご注文有難うございました! それでは感謝の正拳付きを――」 トレイを置くと意味の解らないことを彼女は言いだした。「いや、結構です」 俺は丁寧に断る。「押忍! それは残念です!」 元気よく、しかし顔は哀しそうに彼女は答えた。「何故だ! 我はみた――」 リーナスが要らないことを言う。「押忍! それでは――」 女の子の顔がぱっと明るくなる。「結構です」 俺は心を鬼にして、声の温度を落として返事をした。そして彼女を追い返すため、手を振って下がらせる。 とぼとぼと立ち去っていく彼女の後姿を見送った。……何であんなに残念そうなんだ。とりあえずリーナスのために平皿に押忍シェイク(バニラ)を入れてや――固い、なんだこのシェイクは。ふざけんなよ! 最早ソフトクリームですらない、ただの凍った何かだ。なんとか手で温めて溶かしてかきだすと、嬉しそうにリーナスが舐めだした。 現状を把握する必要がある。ニュースを聞こう。ホロリンクで新西京トラストニュースのチャンネルを呼び出す。ホロテレビでのんびり見たいが、この殺風景な店内にそんな洒落たものはない……代わりに壁に空手着、瓦割り用の瓦、ぬんちゃく、トンファーが飾ってある。この店、完全にいかれてやがる……『新西京トラストニュースから緊急速報です!』 俺が立ち上げたホロに、薄いピンクのスーツを着た緑色の瞳の金髪ロングヘア、グラマラスなエルフの美女――ジェーン――が映し出される。『元アルゴス・セキュリティの風紀課に所属していた宍戸元刑事がなんと、退職時に持ち出した麻薬をストリートギャングに横流ししていたという事実が判明いたしました。アルゴス・セキュリティは既に宍戸容疑者の身柄を確保し、余罪を追及中とのことです。宍戸元刑事はストリートギャングと交渉する一週間前にアルゴス・セキュリティを退職していました。アルゴス・セキュリティはこの犯罪行為に一切関与していないとのことです。また、今回の不正は宮下ケイさんにたいする銃撃事件への関与も確認されており――』 さて、ここまでは予想通りだ。というか、こうじゃないと困る。 俺が宍戸を殺すのはリスクが高い。警官殺しは面倒なことになりがちだからな。もちろんアルゴスセキュリティは麻薬を持ち出されたことに対する批判を受けるだろうが……アルゴス・セキュリティとしては最小限の被害で物事を収められたと言えよう。 そう考えながら押忍ポテトを押忍シェイクに突き刺す。そしてポテトでシェイクをすくい、口に放り込む。塩気と甘味のコントラストが口中に広がった。うむ、美味しいな。何かポテトがやたら固いが。どうなっているこの店。さらに、バンズに挟まっているのがハンバーグではなく、ただの分厚いステーキなのはどういう理屈だ。 ハンバーガ―とは? 気を取り直してハンバーガーに齧りつく……なんでハンバーガーに挟まっているのはステーキじゃなくてハンバーグなのか俺はよーく理解した。か・み・き・れ・な・い! 必死にステーキを嚙み切る。顎の筋トレに良さそうでとてもよろしい。味は文句なしに美味しい。バターベースのシンプルなソースにマスタードシードのぷちぷちした食感、ローズマリーの香り、程よい塩気にチーズの旨味、トマトの酸味とレタスのしゃきしゃき感が……おっと、リーナスにもポテトを食わせてやろう。平皿にいれたシェイクに、ポテトを突き刺していく。もはや立ち並ぶ墓標のようだ。 味にチャレンジするのは嫌いではない。だが、今の俺の状態をみてくれ。この疲れ切ったボロボロの俺を。ここは確実に一定以上の品質が保証されているモスチーズバーガーで疲れをいやすことが先決。というか個人的にモスを超えるハンバーガー店は存在しない! わかるんだよ! リーナス!」 泣き落としプラスあいつの大好きなロボットアニメネタまで叩き込む。完璧な説得術だ。「愚かなり誠二。押忍バーガーは今、伝説のロボットゲームとコラボしているのだぞ? 貴様ほどの男が何故それをわからない!」 リーナスはコラボグッズが欲しいだけだった……何だこいつ……ふざけんな!「うるせー! 半分死にかけてる時にコラボ特典とかどうでも良いんだよ!」 俺はついに本音をぶちまけた。「あれだけノリノリで遊んでおいて貴様ーッ!」 知るか! それとこれとは別だ!  頭にきた俺は強硬手段に出た。何やらまくし立てている馬鹿のことはいったん無視。モスの自動ドアを潜る。奴もモスチーズバーガーを食えばコラボの事なんてきれいさっぱり忘れるだろう。それだけのポテンシャルがモスにはある。「いらっしゃいま――」 ドワーフの女子店員の笑顔が固まった。液体窒素でもぶっかけられたみたいだ。あの表情を解凍するには、ピナツボ火山噴火相当の火力が必要になるだろう。どうした? 俺の背後になにか? まさか血に飢えたオーガあたりが俺の後ろでショットガンでも構えているのか? しかたがない。一肌脱いでやるとするか。俺もつくづくお人よしだな。即座に銃を抜けるよう、ゆっくりと少しだけ腰を落としながら振り向くと――いや……何もいないじゃないか。どうやら気のせいだったようだ。再度前に向き直る。これじゃあ俺が不審者みたいだろう、まったく。俺がイケメンすぎたからって、驚きすぎだよお嬢さん。 ……やれやれ、ちょいとエキサイトな夜を過ごしたせいか神経過敏に――気を緩めた瞬間のことだった。俺の両腕がいかつい力で拘束される。いつの間にか、モス制服を着こんだオーガとトロールの店員が俺の左右に立っていた。「申し訳ありませんお客様。他のお客様のご迷惑になりますので」「えっ……ちょ、まてよ! 店内はガラガラだろ――」 赤子のように軽々と持ち上げられ、外に放り出される。尻餅をついて呆然とする俺を尻目に、オーガとトロールは手を払いながら店内に戻っていく。「ったく、血まみれで火薬くさくて、あげくにぼろぼろの熊のぬいぐるみを抱えているとか……完全にいかれてるだろ」「深夜シフトはこういう『超えた』客が多いから嫌なんだよなぁ……」 深夜午前三時、いかに新西京が眠らない街とはいえ――人通りのほぼ無い中、俺は呆然とモスバーガーを見上げることしかできなかった。俺の鼻先で、無慈悲に扉が閉まる。 あまりのことに愕然とする俺の肩に、肉球の柔らかい感触が伝わってきた。右を向くと、リーナスの左手? 左足? が俺の肩に置かれている。そしてふざけたことを言い出す。「理解したか? 己の現状を? 我はこれを予見していたのだ。貴様の今の風体、最早不審者の域を超え、田舎の寒村一つを壊滅させてきたばかりの連続殺人鬼である」 絶対嘘だ。それなら、そもそも論からして押忍バーガーも入れないはずだろうが!「いらっしゃいませー! 押忍ッ! あ、お客様。当店、ぬいぐるみといった『なよなよしたもの』の持ち込みは禁止となっております。預からさせて頂いてもよろしいでしょうか?」 入れた。入れてしまった。 空手着を着た、牙がチャーミングなオークの女の子がやってくる。「押忍! ご注文有難うございました! それでは感謝の正拳付きを――」 トレイを置くと意味の解らないことを彼女は言いだした。「いや、結構です」 俺は丁寧に断る。「押忍! それは残念です!」 元気よく、しかし顔は哀しそうに彼女は答えた。「何故だ! 我はみた――」 リーナスが要らないことを言う。「押忍! それでは――」 女の子の顔がぱっと明るくなる。「結構です」 俺は心を鬼にして、声の温度を落として返事をした。そして彼女を追い返すため、手を振って下がらせる。 とぼとぼと立ち去っていく彼女の後姿を見送った。……何であんなに残念そうなんだ。とりあえずリーナスのために平皿に押忍シェイク(バニラ)を入れてや――固い、なんだこのシェイクは。ふざけんなよ! 最早ソフトクリームですらない、ただの凍った何かだ。なんとか手で温めて溶かしてかきだすと、嬉しそうにリーナスが舐めだした。 現状を把握する必要がある。ニュースを聞こう。ホロリンクで新西京トラストニュースのチャンネルを呼び出す。ホロテレビでのんびり見たいが、この殺風景な店内にそんな洒落たものはない……代わりに壁に空手着、瓦割り用の瓦、ぬんちゃく、トンファーが飾ってある。この店、完全にいかれてやがる……『新西京トラストニュースから緊急速報です!』 俺が立ち上げたホロに、薄いピンクのスーツを着た緑色の瞳の金髪ロングヘア、グラマラスなエルフの美女――ジェーン――が

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