第五話 資本主義、入場しました
第五話 資本主義、入場しました
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来客の予定を承っております。どうぞ」 ゲートがゆっくりと開き、無人タクシーは静かに滑り出した。 俺は後部座席で両手を広げ、天を仰いだ。「見ろ、雪風、リーナス。俺たちも今日から資本主義の頂点の一員だ。喜べ!!」「……何をしているのですか、あなたは」 雪風の呆れた声が響く。「解らないのか? 富の香りだ。この空気の中には、きっと天然物のステーキくらいの金の匂いが混ざっている」「何だと……!? つまり、我が手に届かなかった絶版のフィギュアたちが、この壁の内側には溢れているということか!」「いや、すまんがそれは無さそうだ」 背後で、重厚なゲートが閉まる音がした。さて。この残酷にまで清潔な街で、俺たちはどんな「不浄」を見つけることになるのか。お楽しみはここからだ。込み始めた。 俺の皮膚は強化されているからリーナスの爪ごときでは……やっぱ痛い。この野郎、どんだけ本気で爪を刺してきているんだ!! だが、ここで引きさがったらこいつは調子に乗る……ここは痛覚遮断をオンにしてでも耐えるべきだろう。 ……俺のジーパンに穴が開いてしまう。糞ッ!「解ったよ! 言っていませんよ!!」 確かに言ってない気がするので俺は白旗を揚げてやることにする。「最初から素直に認めれば良いのだ」 リーナスめ……いつか目にもの見せてやる! 俺は溜息をつき、ホロリンクを起動した。 プライドを質に入れてでも、借りを作らなきゃならない相手がいる。「なぁに誠二」 ホロウィンドウに現れたのは、高級そうなショートケーキを優雅に口に運ぶエルフの美女。ジェーン・カタギリ。 新西京トラストニュースのニュースキャスター兼プロデューサー兼ディレクターにして、この街で最も強力な「声」を持つ女の一人。「今から一区に入りたいんだ。お前の家に行くことにしたい。頼んだぞ」 ま、俺と彼女の仲ならこの程度の要請――「えっ……嫌よ」「何でだ!?」 おい、ここで断られたら俺の計画は一区のフェンス前で野垂れ死ぬことになる。「だって――皆に噂とかされたら恥ずかしいし――」「確かに、このことがばれたら新西京中の女性たちに恨まれるリスクがあるのは理解している――それでも――」「切るわよ」 半眼でそう告げられた。「すまなかった。冗談だ」 俺は即座に白旗を揚げる。「冗談は顔だけにして。で、理由くらいは教えてくれるんでしょうね?」 俺は沈黙した。 依頼人はレイヴンズの監督……ルーブが八百長をしているのならば、サインのやり取りがあるはずだろうが。だが、見つからん」 俺はリーナスに親切に解説をしてやった。「毎試合同じサインを使うわけなかろう」 首をあげてそんなことを言い出した。 馬鹿な、何故嘘だとわかった? いや、落ち着け誠二。奴のペースに飲まれるな。「知らないようだから教えてやるが――探偵には守秘義務ってやつがあるんだ」「あら? 深窓のご令嬢との密会だったんじゃないの?」「……。この間、特ダネ渡してやっただろ? 今回も話せる段階になったら話すよ。それでどうだ?」 ジェーンの緑色の目が輝く。なんて女だ。 これだからエルフの美女は嫌いなんだ。「いいわ。貸し一つよ♪」「じゃあ頼んだぞ。もうじきゲートだ」「はいはい」 やれやれ、今回はたまたま良いようにされたが――次はそうはいかないからな。 新西京一区。 高価なフェンスと高度なセキュリティで守られた、ハイシドと呼ばれる富裕層の要塞。 フェンスで囲まれた安全地帯で、資本主義が吐き出した甘い蜜を啜る連中の住処だ。 無人タクシーが停車し、武装した守衛が顔を出す。 俺は窓を開け、わざとらしく襟を正した。「このフェンスの断絶。資本主義の行き着く果てが『物理的な壁』だというのは、実に皮肉な寓話だと思わないか?」「……どちらへ行かれますか」 守衛は俺の哲学を、道端の小石のように無視した。哲学の通じない相手は疲れる。「ジェーン・カタギリのところだ」「確認します」 数秒の沈黙。「……はい。カタギリ様から来客の予定を承っております。どうぞ」 ゲートがゆっくりと開き、無人タクシーは静かに滑り出した。 俺は後部座席で両手を広げ、天を仰いだ。「見ろ、雪風、リーナス。俺たちも今日から資本主義の頂点の一員だ。喜べ!!」「……何をしているのですか、あなたは」 雪風の呆れた声が響く。「解らないのか? 富の香りだ。この空気の中には、きっと天然物のステーキくらいの金の匂いが混ざっている」「何だと……!? つまり、我が手に届かなかった絶版のフィギュアたちが、この壁の内側には溢れているということか!」「いや、すまんがそれは無さそうだ」 背後で、重厚なゲートが閉まる音がした。さて。この残酷にまで清潔な街で、俺たちはどんな「不浄」を見つけることになるのか。お楽しみはここからだ。過ぎない。 実体を持たぬ企業が、監視の目を欺くための最小限の装飾。 照会:協会の住所を地図サービスで確認。新西京三区の貸しビルの一室。登記上の本店所在地。 現地の光学観測データには看板の影すら存在しない。 テナント一覧にその名は刻まれていない。 考察:ここは場所ではない。ただ郵便物という物質を受け取るためだけに開けられた、 野郎、どんだけ本気で爪を刺してきているんだ!! だが、ここで引きさがったらこいつは調子に乗る……ここは痛覚遮断をオンにしてでも耐えるべきだろう。 ……俺のジーパンに穴が開いてしまう。糞ッ!「解ったよ! 言っていませんよ!!」 確かに言ってない気がするので俺は白旗を揚げてやることにする。「最初から素直に認めれば良いのだ」 リーナスめ……いつか目にもの見せてやる! 俺は溜息をつき、ホロリンクを起動した。 プライドを質に入れてでも、借りを作らなきゃならない相手がいる。「なぁに誠二」 ホロウィンドウに現れたのは、高級そうなショートケーキを優雅に口に運ぶエルフの美女。ジェーン・カタギリ。 新西京トラストニュースのニュースキャスター兼プロデューサー兼ディレクターにして、この街で最も強力な「声」を持つ女の一人。「今から一区に入りたいんだ。お前の家に行くことにしたい。頼んだぞ」 ま、俺と彼女の仲ならこの程度の要請――「えっ……嫌よ」「何でだ!?」 おい、ここで断られたら俺の計画は一区のフェンス前で野垂れ死ぬことになる。「だって――皆に噂とかされたら恥ずかしいし――」「確かに、このことがばれたら新西京中の女性たちに恨まれるリスクがあるのは理解している――それでも――」「切るわよ」 半眼でそう告げられた。「すまなかった。冗談だ」 俺は即座に白旗を揚げる。「冗談は顔だけにして。で、理由くらいは教えてくれるんでしょうね?」 俺は沈黙した。 依頼人はレイヴンズの監督……ルーブが八百長をしているかもしれんという話を俺がそこらじゅうでペラペラ喋りまくるのを喜ぶわけがない。「まぁ――ほら、俺もてるだろ? 実は深窓の令嬢にこっそり招待されたんだが――」 仕方ない、いかにもありそうな理由をでっちあげるしかない。これならきっと納得して――「切るわよ」 即座にジェーンの冷徹な拒絶が叩きつけられる。 もはやこちらを見てすらいない。「何でだよ!?」「あまりにもくだらない嘘を並べられるとケーキが不味くなるのよね」 ジェーンは金髪のロングヘアをいじりながらそんなことを言う。「……ふむ。それ、さっき俺が言った事だな」 確かにそれもそうか……踊るネオンの光、他の車のヘッドライト――陽が落ちた後、それを認めたくないのだろう、入れ替わるように地に咲き狂う、人工的な星の光に何気なく目をやる。「言っておらんだろう」 新西京の街並みに目をやる俺に、リーナスが大人げない因縁をつけてきた。「え? 言ったけど? 耳遠くなったんじゃね?」「……」「……」 無駄な緊張が俺とリーナスの間に走る。 その緊張を破って雪風のデータ検索の結論が俺とリーナスに転送される。「……ふむ。それ、さっき俺が言った事だな」 確かにそれもそうか……踊るネオンの光、他の車のヘッドライト――陽が落ちた後、それを認めたくないのだろう、入れ替わるように地に咲き狂う、人工的な星の光に何気なく目をやる。「言っておらんだろう」 新西京の街並みに目をやる俺に、リーナスが大人げない因縁をつけてきた。「え? 言ったけど? 耳遠くなったんじゃね?」「……」「……」 無駄な緊張が俺とリーナスの間に走る。 その緊張を破って雪風のデータ検索の結論が俺とリーナスに転送される。「……ふむ。それ、さっき俺が言った事だな」 確かにそれもそうか……踊るネオンの光、他の車のヘッドライト――陽が落ちた後、それを認めたくないのだろう、入れ替わるように地に咲き狂う、人工的な星の光に何気なく目をやる。「言っておらんだろう」 新西京の街並みに目をやる俺に、リーナスが大人げない因縁をつけてきた。「え? 言ったけど? 耳遠くなったんじゃね?」「……」「……」 無駄な緊張が俺とリーナスの間に走る。 その緊張を破って雪風のデータ検索の結論が俺とリーナスに転送される。「……ふむ。それ、さっき俺が言った事だな」 確かにそれもそうか……踊るネオンの光、他の車のヘッドライト――陽が落ちた後、それを認めたくないのだろう、入れ替わるように地に咲き狂う、人工的な星の光に何気なく目をやる。「言っておらんだろう」 新西京の街並みに目をやる俺に、リーナスが大人げない因縁をつけてきた。「え? 言ったけど? 耳遠くなったんじゃね?」「……」「……」 無駄な緊張が俺とリーナスの間に走る。 その緊張を破って雪風のデータ検索の結論が俺とリーナスに転送される。「……なるほどな」 雪風の無機質な結論を読み、タクシーのシートに背を預ける。ダニエル・クレイブの話はやや興味深いが……そこからルーブの八百長にどう繋がるのか?「言っておらん!!」 身を起こしたリーナスが騒いで俺の思索の邪魔をする――予想はしていたが、やはり何も掴めないということが判明しただけだった。 俺を乗せた無人タクシーは、新西京一区――選ばれた者だけが住まう『資本主義の聖域』へと向かっていく。「仕方ない……」 まだ推理するには情報が足りないか?「おい貴様、聞いておるのか?」 リーナスが俺の太ももの上に手を置き、爪を出し始める。 奴の鋭い爪が俺の太ももに食い込み始めた。 俺の皮膚は強化されているからリーナスの爪ごときでは……やっぱ痛い。この野郎、どんだけ本気で爪を刺してきているんだ!! だが、ここで引きさがったらこいつは調子に乗る……ここは痛覚遮断をオンにしてでも耐えるべきだろう。 ……俺のジーパンに穴が開いてしまう。糞ッ!「解ったよ! 言っていませんよ!!」 確かに言ってない気がするので俺は白旗を揚げてやることにする。「最初から素直に認めれば良いのだ」 リーナスめ……いつか目にもの見せてやる! 俺は溜息をつき、ホロリンクを起動した。 プライドを
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