【喧嘩】
【喧嘩】
テーマ【喧嘩】
◎オムニバス形式(全4話)
◎Xにて投稿した短編集です
◎検索避けの名残で、名前は略もしくは平仮名表記になってます。
呪術/脹相夢
★喧嘩ネタ
愛情を掛けた言動しか彼からは受けた事がなかったので、このピリピリとした冷たい空気の打破の仕方を私は知らない。「…怒ってる?」「怒ってる」腕を組んだまま据わった目でこちらを睨んで来る彼。初めて向けられた冷徹さに、なす術もなく小さく身を縮めながら何度も謝る。わかったわかった、仕方のない奴だなぁ、と。いつものように笑って許してくれることを期待してみても、今回ばかりはそうはいかないようだ。「俺と言うものがありながら…」「ごめんなさい」だからと言って、飲みの席でお酒を一口回し飲んだくらいで、そんな焼け爛れるような嫉妬をみせるのはどうなのか。「もう、呆れて嫌いになっちゃった?」「そんな事はありえない」とはいえ、その怒りは嫉妬としても置き換えられるので、当然愛は依然としてここに残ったままではあるが。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
呪術/直哉夢
★喧嘩ネタ
膨れた頬の輪郭を視線でなぞりながら、隠しもせずに感情を見せつけてくるその裏表のない素直さに、口元を緩ませながら呆れたよう笑ってやる。きっかけなんて忘れてしまうほどに些細なことであったが、彼女からすればそれはそれは重大な事態であったようなので、その気が晴れるまで付き合ってやろうと椅子に腰掛けていた姿勢を正す。それで、お前はどうしたいん?「危ない事をしに行くなら、私も一緒に連れて行って」「危ないのにか?」「危ないから、よ」もう帰って来ないかもしれないなんて、そんな不安な気持ちで待たされるこっちの身にもなってよ、と。震える瞳が潤んでいたので心が揺れた。「そっか、そやな、それは俺が悪かった」好かれているからこその不満をぶつけられても、痛くも痒くも怒りもせんが、初めて知った彼女の心細さに胸が切なく締め付けられた。「置いていかへん、約束しよ、な?」せやから早いとこ仲直りして、またこの腕の中でコロコロと笑って過ごしてくれや。「ほれ、おいで」「……ん」「早よせぇ、もう待てへんて」いまだほんの少し残る気まずさに、躊躇を見せる彼女の腕をそっと引き寄せて腕の中に閉じ込める。いつ終わるかわからん命、喧嘩なんかで不毛に時間を溶かしてる暇なぞないやろう。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
呪術/伏黒夢
★喧嘩ネタ
「ごめん」や「ありがとう」の簡単な言葉も言えないくせに、なにが彼女を守りたいのだと冷やかすように自分を笑った。守りたかったのはその笑顔だったというのに。「…めぐみのばか」「アンタほどじゃないです」謝らねば、と思った瞬間には口は再び悪態を吐いていた。やっと上げられたばかりの顔がまた暗く曇ってしまい、数分前と同じように気まずそうに目を伏せる。そこから読み取れるのは自己防衛と拒絶でしかない。「大っ嫌い…」漏らされた怨言に、それは禁句だろうと顔を顰める。好意を大前提とした繋がりでしかない俺達から、それを失くしてしまえば、途端に脆くひび割れてしまうことくらい何故わからないのか!「…それ、本気で言ってます?」「…」「全部終わるけど、良いんだな…」ピリリとひりついた空気の中で、ようやく視線がかち合った。揺らぐその瞳の奥に、身を裂くような凄まじい後悔が見て取れるので、終わりたくない気持ちは同じなのだと顔に出さぬまま安堵する。「なんとか言えよ」「…めぐみこそ…」「は?なんで俺が……!」煽り合っても一向に収拾のつかない根比べに、どうせ俺もアンタも口では素直になんてなれやしないのだと。言葉の代わりに引っ掴んだ手を見下ろしながら、そっと指を絡ませてやる。吐く言葉とは裏腹に手付きに愛しさを滲ませた。「…っ、めぐみ」「なんですか」「……いや別に」強張っていた表情に赤みが差した。ほんの数秒前にはツンと顔を背けてたくせに。早々と素直に指を絡め返して来るなんて、強情ながらもいじらしいひとだ。「……手、もう触れないのかと思った」「俺もですよ」甘えるように擦り合わされた指先に、胸中の天秤が呆れよりも愛しさに大きく傾いたので、ふっと小さく息を吐き出し心に余裕を取り戻す。「大嫌いとか、ああいうのは今後は無しです」「…うん」「傷付きました」「……ごめん」やっと聞けたその3文字に、色々言いましたが俺はちゃんと好きですからね、と対等な勇気を返してやろう。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
呪術/夏油夢
★喧嘩ネタ
◎高専時代
「バカ!アホ!スケベ!」程度の低い暴言を3つ吐き捨てながら、こちらを睨め上げる目は赤い。「ごめんごめん、可愛いかったからつい…」「だからって、みんなの前でキスして来るとか本当バカなんじゃないの!?」恥ずかしがり屋でシャイな彼女の性質はわかってはいたが、みんなの前で「夏が買ってくれたんだぁ」と愛しそうに贈った指輪を撫でる姿に、思わず気持ちが昂ってしまった。恥ずかしさを怒りに変えてツンと尖った態度で拗ねる彼女。そんな姿ですら可愛くて愛しくて胸が幸福で満たされる。「さとるとはいばらには、からかわれたし…」「うん」「しょーこは呆れて笑ってた」「あー、ふふふ」想像に容易いそれぞれの反応を思い浮かべながら苦笑をすれば、両手で頬を包んで俯いてしまった。「ななみ…なんでかムッとしてたなぁ…」「は?」それはもう少し詳しく教えて?と詰め寄りながら、もう一度だけ縄張りを張るようにその唇にマーキング。「……やきもち?」「違うよ」「え、嫉妬でしょ?」「違う」