第424話 昇格決定
第424話 昇格決定
第33節。
全九試合が終了した。
長かったJ2リーグも、残すところあと一節。
そして。
ここで、二つのクラブの来季が正式に決まった。
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翌朝。
スポーツニュースの画面に、大きな文字が表示される。
**『北海道フェニックスFC、J1昇格決定』**
続いて。
**『エストレヤ千葉、J1昇格決定』**
自動昇格圏は上位二チーム。
最終節を残した段階で、北海道と千葉の二クラブがそこへ入ることが確定した。
開幕から優勝候補として走り続けてきた北海道フェニックスFC。
そして。
開幕五試合勝利なし。
二分三敗。
勝ち点わずか2。
最下位から始まったエストレヤ千葉。
対照的な道のりを歩いた二クラブが。
最終節を前に。
揃ってJ1への切符を手にした。
画面が切り替わる。
そこには、第33節終了時点の順位表が表示されていた。
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### J2 第33節終了時点
| 順位 | クラブ | 勝点 | 成績 | 直近 |
| -- | ----------- | -: | --------- | --- |
| 1 | 北海道フェニックスFC | 71 | 22勝6分5敗 | 3連勝 |
| 2 | エストレヤ千葉 | 71 | 22勝6分5敗 | 7連勝 |
| 3 | 岡山セルフィオFC | 60 | 18勝6分9敗 | 負け |
| 4 | 仙台アステルFC | 56 | 15勝11分7敗 | 負け |
| 5 | 富山ベイウインズ | 56 | 16勝8分9敗 | 負け |
| 6 | 青森ブランシェFC | 52 | 16勝4分13敗 | 4連勝 |
| 7 | 熊本アスフィーダ | 46 | 13勝7分13敗 | 勝ち |
| 8 | 愛媛サザンクロスFC | 45 | 11勝12分10敗 | 勝ち |
| 9 | 相模原マンスリーFC | 44 | 12勝8分13敗 | 負け |
| 10 | 福岡レガーロ | 44 | 12勝8分13敗 | 勝ち |
| 11 | 鹿児島レヴァンテFC | 40 | 12勝4分17敗 | 負け |
| 12 | 山形ブリッツFC | 39 | 11勝6分16敗 | 勝ち |
| 13 | 横浜マンゲールFC | 38 | 10勝8分14敗 | 負け |
| 14 | 伊勢シーガルズ | 37 | 8勝13分12敗 | 勝ち |
| 15 | CS栃木 | 37 | 9勝10分14敗 | 負け |
| 16 | 信州アルプスFC | 33 | 8勝9分16敗 | 勝ち |
| 17 | 秋田ノルディアFC | 31 | 7勝10分16敗 | 負け |
| 18 | 駿河ユナイテッドFC | 27 | 7勝6分19敗 | 負け |
北海道と千葉は、勝ち点71で並んでいる。
勝敗数も同じ。
二十二勝六分五敗。
順位を分けているのは得失点差。
その差で北海道が首位。
千葉が二位。
つまり。
自動昇格する二クラブは決まった。
しかし。
**J2優勝クラブは、まだ決まっていない。**
◇
北海道フェニックスFC。
三連勝。
一時期は神谷の離脱によって勢いを落としたが、終盤へ入って再び立て直してきた。
選手層。
個の能力。
経験。
開幕前から優勝候補筆頭と見られてきたクラブが、最後まで首位を守っている。
対する千葉。
七連勝。
第27節以降。
一度も勝ち点を落としていない。
夏に加入したダニエル、ベニテス、塩川、坂本、笹森、古賀。
既存戦力との融合。
相手ごとの戦術変更。
そして。
仙台戦では、それまでFWだった小林庄雅をアンカーへ置き、公式戦初出場の宍道務をCFで先発させるという大胆な起用まで成功させた。
開幕当初。
最下位だったクラブ。
その千葉が。
最後の一試合を残し。
北海道と同じ勝ち点まで追いついていた。
スポーツ番組の解説者が、順位表を見ながら言う。
「もう昇格争いではないんですよ」
隣のアナウンサーが頷く。
「はい」
「北海道と千葉については、来季J1で戦うことが決まりました。最終節で争うのは――」
一拍。
「優勝です」
◇
その下。
三位から八位。
ここにも。
まだ大きな戦いが残されている。
J2では。
三位から八位までの六クラブが、昇格プレーオフへ進む。
ただし。
そこで優勝しても。
その時点では昇格ではない。
昇格プレーオフを制したクラブは。
J1の16位クラブと対戦する。
そして。
その試合にも勝って。
初めてJ1昇格。
敗れれば来季もJ2。
三位。
岡山セルフィオFC。
勝ち点60。
四位。
仙台アステルFC。
56。
五位。
富山ベイウインズ。
56。
六位。
青森ブランシェFC。
52。
ここまでは上位に位置している。
特に青森。
四連勝。
終盤へ入って一気に勢いを増していた。
そして。
七位。
熊本アスフィーダ。
46。
八位。
愛媛サザンクロスFC。
45。
ここが。
現在のプレーオフ圏内。
だが。
九位の相模原マンスリーFC。
勝ち点44。
十位の福岡レガーロも。
勝ち点44。
愛媛との差は。
わずか1。
最終節。
八位争いは。
まだ終わっていなかった。
「上は北海道と千葉で優勝争い」
解説者が言う。
「そして中位では、昇格プレーオフ最後の一枠を巡る戦いがある」
「愛媛、相模原、福岡」
「はい。最終節の結果一つで順位が動きます」
一試合。
残り九十分。
その九十分で。
来季への道が。
大きく変わる。
◇
一方。
順位表の一番下。
こちらにも逃げることのできない戦いが残されていた。
18位。
駿河ユナイテッドFC。
勝ち点27。
すでに**J3降格が決定。**
最終節を残して17位以上へ上がることができない。
来季。
J3。
そして。
17位。
秋田ノルディアFC。
勝ち点31。
16位。
信州アルプスFC。
勝ち点33。
この二クラブにとって最終節はあまりにも重い。
J2の17位と18位は。
自動降格。
18位駿河の降格は決まった。
残るもう一つの自動降格枠。
現在そこにいるのは秋田。
だが信州との差は2。
まだ逆転の可能性がある。
そして16位も安全ではない。
J2の16位はJ3の昇格プレーオフを勝ち上がったクラブと対戦する。
勝てばJ2残留。
負ければJ3降格。
つまり信州と秋田。
どちらか一方は最終節終了と同時に自動降格。
もう一方も生き残るためにさらに一試合戦わなければならない。
順位表を見ていたアナウンサーの声も、少し低くなる。
「上では優勝」
「中ではプレーオフ」
「そして下では残留」
「はい」
一つのリーグ。
同じ最終節。
しかしクラブによって戦う意味はまったく違っていた。
◇
エストレヤ千葉。
トレーニングセンター。
クラブハウスの食堂にあるテレビでも同じ順位表が映っていた。
何人かの選手が食事をしながら画面を見る。
そこへ大きく表示される。
**2位 エストレヤ千葉 勝ち点71**
その横。
**J1昇格決定。**
しばらく誰も何も言わなかった。
やがて材木座義輝がぽつりと口を開いた。
「……上がるんだな」
川崎大志が横を見る。
「何ですか急に」
「いや」
材木座は画面を見る。
「分かってたけどさ」
仙台に勝った。
その瞬間可能性としてはほとんど見えていた。
それでも全試合が終わり。
順位表へ。
正式に昇格決定。
そう表示されると実感が違った。
戸塚彩加も静かに画面を見ている。
「開幕の時は、こんなところまで来ると思ってなかったよね」
誰も否定できない。
開幕五戦未勝利。
最下位。
チーム内にも問題あった。
監督。
選手。
フロント。
すべて噛み合っているとは言えなかった。
そこから一つずつ変えた。
人を変え。
戦い方を変え。
チームの空気を変えた。
そして気づけば七連勝でJ1昇格。
◇
だが喜んで終わりではない。
テレビ画面。
一位。
北海道フェニックスFC。
二位。
エストレヤ千葉。
同じ勝ち点。
同じ成績。
得失点差で北海道が上。
戸塚がそこを見る。
「まだ終わってないね」
エミリオが短く頷いた。
「ああ」
ダニエルも画面を見ながら少しだけ笑う。
「昇格は決まった」
そして続ける。
「でも、一位じゃない」
その一言食堂の空気が少し変わった。
J1へ行く、それはもう決まった。
なら残るものは一つ。
**J2優勝。**
北海道フェニックスFC。
開幕前からの最大の優勝候補。
最後の最後まで千葉の前にいる。
ほんの僅か得失点差。
それだけ。
◇
比企谷八幡は少し離れた席で順位表を見ていた。
手元には最終節の資料。
昇格決定。
それ自体もちろん大きい。
クラブにとって来季J1。
予算。
補強。
契約。
すべてが変わる。
けれど今、考える必要があるのはそこではない。
残り一試合。
北海道より上へ行く。
ただそれだけ画面の中でアナウンサーが締める。
『J2は残り一節』
『自動昇格の二クラブは、北海道フェニックスFCとエストレヤ千葉に決定しました』
『しかし優勝争い、昇格プレーオフ争い、そして残留争いはまだ決着していません』
『すべては――最終節です』
八幡は静かにテレビから視線を外した。
昇格決まった。
だがまだ終わりではない。
むしろ最後の九十分。
そこに今季のすべてを置いていく。
J2
二位エストレヤ千葉。
勝ち点71。
七連勝。
そして首位北海道フェニックスFC。
勝ち点71。
残り一試合。
J2王者が決まるまで後、九十分だった。